The 100th big machine club
2011.01.08-09 第100回でっかいもん倶楽部 in 伊豆半島 ―伊豆の踊り子(前編)―
前日、あっという間に早寝した分、ムダに早起きして準備完了。 リアシートに荷物を積み、ETC車載機をタンクにガムテで貼り付けたら、
クソ寒い朝っぱらから、元気に出発だ。 常磐、首都高と乗り継いで、東名の海老名サービスエリアへ向かう。 寒いから空いてるかと思ったが、よく考えたらクルマの人には寒さとかあんま関係ないわけで、相変わらず混んでる東名を、気持ちよくすり抜けながらすっ飛ばす。つっても150スピード(1/2時速)くれぇのもんだけどね。ウルトラ寒いし。 前日の段階でNEKOさんから、「小田原厚木道路なら、平塚で待ってる」と言われてた。 なので最初はGOと平塚で待ち合わせようかと思ったんだが、サイトの方に海老名SAと告知してあったので、「もし誰か来た時に、すれ違ってもヤだな」と思い、念のために海老名へ向かったのだ。かつて急に集合場所を変えて、OTOさんとはぐれかけたことがあったからね。
到着して携帯をチェックして見ると、「行くよー」とメールが入っていた。「やっぱり海老名に来といてよかった」と胸をなでおろしながら、mixiのボイスに『9時20分くらいまで待つ』旨を書き込み、しばらく待ってると、やがてメールを寄越したオトコがやってきた。
ゼファー1100に乗ってやってきたのは、もちろん、カミナリだ。
新しいカミナリ号は、まだRSのスポークホイールが入ってる。 「おー! ひさしぶりー! 寒みぃなぁ。今日は途中までだって?」 「寒いねぇ。とりあえず、昼くらいまでかな」 「つーか新カミナリ号はどうよ?」 「まだまだ慣れないねー」 「今日はのんびりツーリングだからな?」 「タイアもないし、のんびり行ってもらわないと困るよ」 ニヤっと笑ったら、休憩所でタバコ一本吸ったあと、ふたりで平塚へ。120くれぇののんびりペースで走ると、冷たい風が体温を奪ってゆく。ダウン二枚重ねの俺でも寒いんだから、革ジャンのカミナリはかなり寒いだろう。ふたりとも縮こまって走る。 が、やっぱりミラーにダチの姿が写ってるのは楽しい。
平塚に着くと、すでにみんな集まっていた。
NEKOさんのジレラ『フォコ500ie』、その後ろがNEKOさんの友人こいちゃんさん……つーのもなんかアレだし、こいさんでいいか。その、こいさんのスカイウエイヴ。さらに後ろがGOのBMW。みんな荷物満載のキャンピングモードだ。
左からGO、NEKOさん、こいさん、カミナリ。 しばらくみんなで雑談しつつ、タバコが切れたのでスペアを出そうとユリシーズのそばへ寄ると、ちょうど駐車場に入ってきたキャンピングカーから、男がひとり出てきた。こちらを見てニヤニヤ笑ってるその顔を見た瞬間、俺はみんなのそばに行って警告を発した。 「なんか変なヒトがくるから、みんなクチきいちゃだめだ」 つって笑ってると、やってきた男はNEKOさんの隣に座り込む。
ボブさんだ。 「この寒いのにキャンプなんてバカだねー!」 自分もキャンピングカーで来たくせにとツッコむまもなく、 「NEKOさん、ポリシー通り半ヘルで走んなよ」 と、早くもNEKOさんにツッコんでる。 んで、ボブさんの話をよくよく話を聞いてみると、どうやら一緒に行くわけじゃなく、お見送りに来ただけらしい。ちょうど出るところだったので、そんなに長くは話せなかった。つわけで「見送りなのに、なんでキャンピンカーで来たんだあのヒト?」つー疑問をクチにする暇もなく。 ボブさんはホーンを鳴らすと帰っていった。
NEKOさん、こいさん、GO、俺、カミナリの順だったかな? 俺たちは並んで小田厚を走り出す。 そこそこクルマが走ってるが、NEKOさんとこいさんがガシガシすり抜けていくので、俺らもその後に続いた。GOが出たり、NEKOさんが出たりと前後を入れ替えつつ、皆でひらひらと走る。ETC積んでるのが俺とNEKOさんだけなので、料金所で前に出ることが多かった。 上天気(寒いけど)の中を、アホほどすっ飛ばすでもなく、気持ちよく走りぬけ。 高速を降りたら、一般道はそこそこ渋滞していた。 が。 そこで大人しく走るようなヒトたちでないことは百も承知、二百も合点。 「NEKOさん前だもんなぁ、行くんだろうなぁ……ほら行った」 案の定、せまっくるしい海岸線のワインディングを、バッカバカすり抜けてゆく。こいさんも、マシン的にかなり苦しいはずなんだが、関係ねぇとばかりに豪快なパッシング。「海がキレーだなぁ」なんつって余所見してっと、ポツンと取り残されかねない。 混んでる国道を通ったとは思えない短時間で、熱海に到着。
目の覚めるような空の蒼(あお)と海の青。
そんな美しい景色をバックに、一服しながらバカ話を繰り広げる。 カミナリのサスのバネが逆巻きだとか、熱海の秘宝館は秘宝館の中でもイチバンだとか、ハタから聞いたらくだらない話で盛り上がる。しかし、さすがに渋滞の中を延々パッシングするのは疲れたなぁと思ってると、NEKOさんが「こっからは混まないよ」と嬉しい情報。 熱海峠を抜けて、伊豆スカイラインを目指すことになった。
入りっぱなから急激な登りの、かなり狭いワインディングを、NEKOさん先頭に走り出す。 しばらく走ったところで、さすがにタイトなワインディングだと旋回がキビしいこいさん、NEKOさんに離され始めたのを潮に、「先に行け」と道を譲ってくれた。GO、俺、カミナリの三人でNEKOさんを追いかける。相変わらずスムーズなGOの走りを眺めてると、NEKOさんの姿が見えた。 三輪のフォコは荒れた道でも開けてゆけるアドバンテージがあるけれど、如何せん非力。 アクセル全開でも加速が鈍いのが、目に見えて判る。 「なはは、NEKOさん苦労してるなぁ」 笑いながら後ろを見ると、カミナリも若干、乗りが悪い。 「やっぱまだ、足が痛むのかな? まあマシンにも慣れてないだろうしなぁ」 でかい事故の後の復帰ってのは、思った以上に身体が動かなかったり、感覚が戻らなかったりで、ひどく歯がゆい思いをする。それこそ俺は、そんな話のエキスパートだから(胸を張るところじゃありません)、ヤツの気持ちがとても理解できた。しかし、それは自分で解決するしかない。 そしてもちろん、俺はカミナリがそれを解決できることを疑ってない。
狭いワインディングを駆け抜けると、伊豆スカイラインの入り口に到着する。 スカイラインに入ってすぐの展望所で、とりあえず一服。
いつもテールランプとアスファルトしか見てない俺も、今日はしっかりと景色を見る。
抜けるような蒼に、日本最高峰が映える。
みんなが「寒い」言う中でただひとり、「暑い」とか抜かしてた電熱超人GO。 電熱ベストのスイッチ入れたのは朝イチだけで、このころには切ってたらしいのだが、それでも、暑いつってた。「俺もちゃんとしたダウン入りのツーリングジャケット買おうかなぁ」なんて、一瞬だけ思った。性能のいいウインタージャケットはクソ高いから、たぶん買わないと思うけど。 最近、ホンキでビンボーだからね。
改めて伊豆スカイラインを走り出す。 入りっぱなの路肩には雪が残ってるだけじゃなく、ところどころ塩カル(塩化カルシウム:融雪剤)が撒かれていた。日陰には濡れた路面も残っている。とてもすっ飛ばすコンディションではないのだが、こいさんにはあんまし関係ないようだ。スカイウエイブ鬼バンクですっ飛んでゆく。 「ま、地元のヒトだから判るんだろう。こいさんが行けるってことは、俺も行けるな」 相変わらずアタマの悪い基準でそう判断した俺は、センスタをガリガリ言わせながら高速コーナーに突っ込んでゆくこいさんのラインをトレース。少なくとも俺の知ってるビックスクータではありえない速度で突っ込んでゆく後ろ姿に、おもわずニヤリとしてしまう。 「なはは、やっぱNEKOさんのトモダチだわ」 そんな風に楽しく走ってたら、あっと言う間に冷川へ到着。
ここで、こいさんとふたり後続を待ってると、ほどなくやってくるダメ人間たち。 「かみちゃん、この路面でよく行くよなぁ。バカだなぁ」 「や、こいさんが行けるなら行けると思ったんですよ」 「俺ならコイツの後ろなんかゼッタイ付けないけどな。信用できねぇもん」 「ありゃ、そんじゃ俺とこいさんで『信用できないコンビ』じゃないすか」 バカ話して笑い、トイレや一服休憩を入れる。
GOとNEKOさん、こいさんの三人がルートを話し合ってるので、俺はあわてて地図を引っ張り出し確認した。このまま付いて行くだけじゃ、お客さんになってしまうと思ったからだ。そんな事で文句を言う連中じゃないのは判ってるが、単純に、コレは俺の気持ちの問題。 やがてルートが決まり、走り出す。 冷川から修善寺を抜けて、目指すはもちろん西伊豆スカイライン。 西伊豆スカイラインに入ったところで、今度は俺が先頭になる。とりあえず判るところまでは走ろう。道やタイアと相談しながら、バカっ飛ばしでもない、そこそこのペースで走っていると、だるま山高原の展望所だか休憩所が見えた。 「あれ、ここらだったか?」 と速度を緩めたところで、GOがすすっと抜いてゆく。 なるほど、まだ先だったかとうなずいて、こんだGOの後ろを走る。BMWのやわらかいサスをしなやかに動かしながら、実にスムーズに走ってゆくGO。しかし、そのペースはかなり速い。道が若干荒れてたり、ウエットだったりすると、すすすっと離されてしまう。 「しっかし上手めぇな、あのオトコぁ」 感心しながらも、ユリシーズと対話することに没頭してゆく。
西伊豆スカイライン〜西天城高原道路の展望は、伊豆屈指と言ってもいいだろう。 稜線を走るワインディングは、ガードレールもないまま空に向かって駆け上がってゆく。登りきって前が開けた瞬間、目の前に広がる真っ青な空と、高原の中をダイナミックにうねる道。GOを追いかけつつも、広がる雄大な景色に、「おぉ!」と声を上げて感嘆する。 と、景色が美しいからだろう、GOもペースを落としたり。 景色を見たり、またすっ飛ばしたり、『これぞまさにツーリング』と言う気持ちのいい走りだ。 やがて仁科峠あたり、宇久須線との分かれ道で、GOが単車を止めた。
宇久須線が全面通行止めになっていたのだ。 だとしたら、そのまま進むしかないのだが。 「この先は、けっこう狭くて走りづらいんですよ。くねってるから時間も掛かるし」 「でも、こっち行くしかないんだよな?」 「ま、そうなんですけどね」
ここで休憩しながら、単車の話や、この先の話をする。 「スポークホイール、カッコイイですよね」 「でもな、GO。カミナリはホイール変えちゃうらしいぞ」 「前カミナリ号のホイールがリアだけ残ってるから、フロントも買ったんだ」 「あとは納品されるのを待つだけか?」 「いや、もう届いてるんだけど、めんどくさくて」 「ぎゃはははっ! って、あれ。なんだこのペットボトル」 「かみちゃん、ションベンだよそれ」 NEKOさんの言葉に、あわてて手を引っ込める41歳。つーかね、こんな美しい景色の中で、ナニをどうイカれちゃったら、ペットボトルにした小便を捨てられるんだろう。公道すっ飛ばして走ってる俺たちに言えたギリじゃねーか知らんけど、どうもムカっとくる。 とは言え、この景色と楽しい走りに、いつまでも怒ってはいられないんだけど。
ここらで時間は昼くらい。 「寿司は寒いから、ラーメン喰うべよ」 NEKOさんの言葉で、峠を下ってラーメンを食うことに決まる。俺たちは暖かいラーメンを求めて走り出した。GO、俺、カミナリ、NEKOさん、こいさんの順だったか、まるで和歌山の酷道のようなせまっくるしいタフなワインディングを下ってゆく。 そんな見通しの悪い狭い場所だけに、道がしっかり濡れてたり荒れてるわけで。 もちろんペースは上がらない……はずなんだが、残念ながら前をゆくのは、変態GO隊長。じわーっと下るしかないはずの道を、ひょいひょいと軽快に走り抜ける。別にオーバーアクションするでもなく、アホほど開ける訳でもないのだが、いつの間にかスルスルと離れてゆく。 「あわてるな、あわてるな。ここであわてるとすっ飛ぶぞ」 自戒しながら、GOの姿はいったん忘れ(つーか見えなくなってんだけど)、メリハリをつけながらリーンアウトで積極的に曲がってみる。イッコ上のギアで走ってるから、多少のラフな操作でもケツが出ることもなく、だんだんイイ感じになってきた。
と、工事に引っかかったGOの姿を発見。 「よし、GOを見ないようにしながら、自分のリズムで走るぞ」 もちろんGOも俺も、『すっ飛ばしてる』と言うほどの速度じゃない。どちらかと言えば、あやつる方に重点を置いた走り方だ。そのうち、『イチバンしんどい区間』は抜けたようで、道が広くなったり狭くなったりしつつも、だんだんと広がってくる。 「なはは、楽しいなぁ」 ケタケタ笑いながら走ってるうちに、気づけばすっかり平地に出ていた。 伊豆半島の南西岸、国道136号に出た信号で、NEKOさんに先頭交代。裏道に入りちょろっとクネクネ走ったところで、どうやら件(くだん)のラーメン屋さんに到着した。NEKOさん、こいさん、俺、GOが駐車場に単車を入れてると、カミナリが路肩に停める。
「俺は、このへんで」 「あ、そうか。昼くらいまでだっけ。今日はありがとな!」 「いや、楽しかったよ。皆さんも、ありがとうございました。お気をつけて!」 つわけで爽やかな笑顔を残し、カミナリは帰っていった。ケガ後のリハビリ的な走りのはずなのに、わざわざ顔出してくれて、狭くて走りづらい道や、変態どものアホみたいな走りに付き合ってくれて、ホントありがとう。楽しかったよ。 また、一緒に走ろうな!
さて、残りの連中でラーメンを食うわけだが。 「ここはエビそばだか、そんなのが美味いんだよ」つーNEKOさんの言葉に、エビたんめん(中国名前がついてたからわからんけど、たぶん)を注文。沖縄の話やNEKOさんの奥さんの話なんかを聞いて笑ってると、やがてエビたんめんがやってくる。写真、撮るの忘れた。 「間違えて五人前作っちゃったから、エビ多目に入ってるからねー」 と言うおばさんの言葉もフルシカトで、たんめんをかっ込むヤロウ四人。サッパリとして野菜たっぷり、エビもぷりぷりで美味しかった。食ってる最中にNEKOさんが、「あれ? 間違えたかな? 有名なのはエビそばじゃなくてヤキソバだったかも」と、すげぇ今さらの情報に大笑い。 さて、昼飯食ったら、こんだ買い出しだ。 当初は荷物をキャンプ場においてから、改めて買い出しに行こうと言う話だったのだが、タフな道を走ったせいで距離のわりに疲れた我々は、『めんどくさい』と言う非常に合理的な理由によって、買い出しを済ませてからキャンプ場へ向かうことにする。 つわけで、近くのスーパーへ。
俺はビール四本とジャックダニエル一本、鶏肉とおつまみ牛タンを買った。
気持ちよく曲がる136号を並んで走っていると、NEKOさんがすっ飛ばし始めた。 が、こいさんが乗らなかったので、俺とGOもこいさんの後ろについて淡々と、海岸線の国道を走る。そのうち道が海岸を離れ、ちょっとした山間部に入り込んでゆく。ステキなワインディングじゃないのと思いつつ走ってると、不意にこいさんがわき道へ入った。 そのまま付いてゆくと、あっさりキャンプ場に到着。
さすが、『ここらの道は地図が要らない』こいさんだ。 ところが。 キャンプ場についたはいいけど、NEKOさんが居ない。 「なんだよNEKOさん、道に迷ってんじゃねーか?」 こいさんの言葉に笑いつつ、NEKOさんを待つ間に、GOがキャンプ場の入場手続きをしてくれた。そのうちNEKOさんもやってくる。「どこ行ってたんすか」「いやー、軽トラぶち抜いたら、その先がちょうどいいS字でさあ。しばらく走っちゃったよ」と、相変わらずのダメ人間っぷり。
上の写真の坂道を上ってゆくと。
ここが今夜の宴会場であり、宿でもあるキャンプスペース。 写真の左側に低い土手があり、その上からは
なかなかの絶景。 この右手の方には富士山が見える。 とは言え、今の俺らにはオーシャンビューよりビールだ(GOを除く)。
さっさとテントを張って。
マメタンも点火して、準備完了。 上の写真でわかるだろう、左のこいさんも、右のNEKOさんも同じイスを使っている。そう、ウワサのキャンプ最強イス、『コットンダック』だ。もちろん俺のも同じイスだ。何人ものキャンパーがイロイロと試し、最終的にたどり着くと言われている、究極のキャンプイスである(言いすぎです)。 重量はあるし、かさばるんだが、それでもキャンプ時の快適性はナンバーワンだ。 ナンバーワンのはずだった。 しかし。 「GO、コットンダック買わないの? やっぱコレ最強だよ」 「ふんだ。そんなこと言うなら、僕の最強のイスを見せてあげますよ」 いいながらGOが持ってきたのは。
「あんだよ、銀マットじゃねーか」 と笑う俺の前で、次の瞬間、ごろり寝転ぶGO隊長。 「寝っ転がると楽ですよ〜♪」 ……なんだろう。なんか負けた気がする。
「お、かみちゃん火ぃあるじゃん。ちょっと貸して」 NEKOさんの言葉に、「もちろん、いいっすっよ』と答えるや否や、彼はなにやら袋を取り出し、中に入っていた白い物体を、ワリバシに突き刺している。そこでNEKOさんのたくらみを看破したかみさん、爆笑しながら、 「ぎゃはははっ! 似合わねぇ! 何やってんすか」 「バカだなぁ、美味いんだぞ」
だとしても、アナタと焼きマシュマロは絵的にナシです。
とにかく今回は、フォコと言う積載性の高い単車に、リアボックスまで積んできたNEKOさん。
ジンギスカン鍋(驚くことに陶器製だった)に、熱燗セット、切子のグラスと色んなものを準備してきていた。ところが、モヤシを炒めつつ取り出した肉を見て俺は、『どうも、俺の知ってるのと違うなぁ』と不審に思う。なので率直に聞いてみた。 「NEKOさん、それ、羊肉ですか?」 「牛だ」 「いやいや、全然ジンギスカンじゃねぇじゃないすか。鍋まで本格的に用意したのに」 「バカだなぁ、かみちゃん。ジンギスカンて言うのは羊のことじゃないんだよ。どんな肉だろうと、この鍋を使って喰えばジンギスカンなんだ。むしろジンギスカンって言うのは様式だな。肉の種類なんてどうでもいいんだ」 ものすげぇさらっとウソをつくNEKOさん。 もちろん、GOやこいさんも爆笑、いや苦笑してるか。
ビール呑んだり、熱燗呑んだりしてるうちに、どうやらあたりが暗くなってきた。
海に沈む夕日。 西側の海岸ってのは、コレがあるからいいね。
夕闇にたたずむ、GO隊長。もとい、GO☆ダークエンジェル。 2011年冒頭にして、100回目のでっかいもん倶楽部を飾るにふさわしい、華麗なお姿。 シルエットオンリーだけど。
そうこうするうち、太陽はあっという間に沈んでゆく。 さあ、本格的な宴の時間だ。
NEKOさんのガキのころの話、単車に乗り始めたきっかけ、面白いダチの話。 もちろんスケベ話にバカ話。合間にこいさんが、NEKOさんの秘密をバラして爆笑をさらう。俺も負けじと単車の話、乗り方の話、エンジンの話にビューエルの話。そしてもちろん、ダチの話。NEKOさんがGOの走りを褒め、俺のバカさをからかう。 「GO!!!君はよ、無理なくすーっと走ってくのがいいよな。ムダに荷重を前後させないで」 「こいつが前後させ始めたらすげぇっすよ。キレるみたいに曲がってきますからねぇ」 「ふたりともグリップをバカ握りしねーでセルフステアさしてんのはいいよ。かみちゃんはバカだけど」 「ぎゃははははっ!」 最高に楽しい、大騒ぎの宴会だ。
ここに書けないような話をして大笑いしながら盛り上がったり、NEKOさんの『奥さんとのやり取り』を聞いて笑いながらも、「仲良しだなぁ」と感心したり。こいさんがNEKOさんのライディングの弟子だと言う話を聞いたり、こいさんの弟さんの話でゲラゲラ笑ったり。 クソ寒い中、物好きにもわざわざオモテで、酒を呑みながら笑いあう。 単車乗りでよかったと、心から思える時間だ。 ただ。 いいだけ呑んで喰って、ゴキゲンに出来上がってはいるんだが、如何せん焚き火がない。コレだけはホント、失敗だった気がする。いや、ものすげぇ楽しいんだが、楽しいからこそ、酔ってもごまかしきれなくなってきた、圧倒的な寒さが悔しいのだ。 とにかく風が強くなってきて、寒くてどうにもならない。 何時だったか時計さえ見てないが、ダメ人間たちは、自分のテントにもぐりこんだ。
マメタンで、ある程度テント内を暖め、蹴っ飛ばしちゃう前にオモテに出す。 びょうびょうと吹き荒れる風の音が、やけに威圧的だ。 それでも寝ちゃうのがもったいない気がして、「音楽でも聞こうか」とMP3プレイヤを引っ張り出して電源を入れると、『Low battery -Bye Bye-』と表示され、「バイバイじゃねーよ、このヤロウ」と大声でわめく41歳。それから携帯を取り出して見ると、電波が来てないからだろうか。 こっちも、 あっという間に電池がなくなってきている。 「ち、大人しく寝ろってことか」 つぶやいてシュラフにもぐりこむと、あっという間に夢の中へ落ちていった。
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