The 100th big machine club

2011.01.08-09 第100回でっかいもん倶楽部 in 伊豆半島

―伊豆の踊り子(後編)―

 

クソ寒いながらも楽しかった夜は明け。

珍しくイチバンに起きたかみさん、景色を眺めながら、まずは一服。

本日もツーリング日和だね。よく見ると岩の右側に、

 

富士山の姿も見える。

しかし、夜ほどではないものの、相変わらず強い風が吹いている。

寒い寒いと縮こまりながら、テントの撤収をはじめた。

やがてみんな起きてきて、それぞれに撤収作業をしていく。最後に起きたNEKOさんを待ちながら、GOとふたりで今日の予定を話し合った。NEKOさんとこいさんがまっすぐ帰るようなら、ココで別れてワインディングを走るか、こないだ写真を撮りはぐった西湖へ行こう。

するとNEKOさん。

「こいちゃんに話を聞いた方がいいよ。道なら全部アタマに入ってるから」

つわけで、こいさん、NEKOさんも交えて今日の予定を考えるのだが、そのうちふと気づいた。そう言えば俺、伊豆の南端って行ったことがないや。つわけで、せっかく西湖へ向かうルートを考えてくれてる皆さんには申し訳ないが、やっぱし南端を回るルートでお願いします。

撤収を終えたら、NEKOさん、こいさん、GO、俺の順で走り出した。

 

抜けるような青空のもと、国道136号線、『マーガレットライン』を走り出す。

これがまた、実に気持ちのいい道路だった。

いや、ワインディングとしても、もちろん気持ちよく曲がってるんだが、それにプラスして朝方だからだろう、クルマが少ないのがいい。くねくねとしたトリッキーなワインディングから、かなりすっ飛ばせる高速ワインディングまでそろったマーガレットラインを、朝からガシガシ駆け抜ける。

やがて先頭のNEKOさんと離れ始めたところで、こいさんが「先に行け」と譲ってくれた。

こんだGOのペースで引っ張ってもらいながら、NEKOさんを追いかける。追いついたあたりで、道は県道16号との分岐。右へ折れて石廊崎へ向かう。この県道16号もくねくねよく曲がった道で、前をゆくNEKOさんやGOの背中も楽しそうだ。

大根展望所の手前あたり、トンネルを抜けた瞬間。

びょう!

強い風が吹いてGOがぐらりとバランスを崩す

「うっわ怖ぇ。今日は風がハンパねぇな。それとも突端だからかな?」

強風にビックリしてると、NEKOさんが前に出て、そのまま右手の駐車場へ。

あいあい岬ドライブイン。

駐車の仕方がバラバラなのは、それぞれが『強風に耐えるための位置』を模索した結果だ。

石廊崎からの景観。

雲の奥行きと波の白が、空と海の青に映えて、なんとも美しい。

 

断崖に経つ樹木は、強風に吹かれ風下に流れながら育っている。

能登でもこんな木を見たなぁと思ってると、NEKOさんがにやっと笑って

「オールバックになってるじゃん」

とたんに、もうオールバックにしか見えなくなってきた。

 

ここでもやっぱり、バカ話と単車の話が中心。

「NEKOさん、フォコ、すげぇ面白そうですけど、登りはやっぱ厳しそうですね」

「そうなんだよ。もちっとパワーが欲しいなぁ」

「何馬力でしたっけ? 40? 50?」

「40。足は悪くないから、も少しパワーが……あ、そうか。ターボ入れればいいのか」

「なはは、なるほど確かに。フロント二輪なら、少しくらい扱いづらくても大丈夫そうですね」

「オートマだからレスポンスはもともと悪いし、それよりぐわーっとパワーが出てくれた方が楽しい。そうかそうか、ターボ入れりゃ面白そうだな。帰ったらちょっと調べてみよう。よーし、楽しくなってきた」

俺が『いくつまで単車に乗れるか』は判らない。

だけど、乗れる限りはこんな風に、いつまでもガキのまま楽しんで乗っていけたらいいなと、この時、心からNEKOさんの生き様をうらやましく思った。同時に、「いつまで乗っていけるのかな」と不安に思う心を、豪快に吹き飛ばしてくれる先達に会えた幸運を感謝した。

 

ワインディングはまだまだ続く。

石廊崎からしばらくは山間のワインディングだったが、途中で海が見えてくる。「うおぉ、すげぇキレイ」わめきつつ、そっからは少し開けて広くなった道を、これまたゴキゲンに攻める。対向の見えない曲がりこんだ右はリーンアウトで攻め、広めの左はインかウィズでタイアの喰う感触を楽しみ。

ワインディングを、踊るように抜けてゆく。

寒さもすっかり忘れて、きゃっきゃと嬌声を上げながら走っていると、やがて国道へ戻った。

と、信号待ちでGOが、ヘルメットのシールドを開ける。

「楽しい道でしょ?」

「気ン持ちいいねぇ!」

「こないだ、しんごとココを走ろうと思ってたんですよ」

もし俺を仲間はずれにして『こんな楽しい道』を走ったと知ったら、俺、確実に『わら人形』つくるぞ。丑三つ時に電動ハンマーで、五寸釘100本くらい打ち込んでやるからな?

 

市街地を走り、途中で給油。

東へ向かって走り続けていると、だんだん道が混んできた。それもハンパな混み方じゃなく、明らかに観光地的な混み方だ。どうやら、この先の目的地、『爪木崎』へ向かうクルマの様だ。国道を折れて爪木崎に向かう道へ入ると、さらに渋滞がひどくなる。

さらに厄介なことに、異常に歩行者が多くなってきた。

「あんだこれ、いくら観光地つっても、ちと歩行者が多すぎないか?」

いぶかしみながらふと見ると、道端に『爪木崎フラワーウォーキング』のノボリが立っている。

なるほど、ウォーキングイベントだったか。

クラッチを握る手が重くなってきたころ、ようやく駐車場に入ることができた。

この時期の爪木崎は、水仙が有名らしい。

ま、水仙って言われても、俺はイッコも頭に絵が浮かんでこないけど。

駐車場から見た海岸。

この海の青は、今回のツーリングで一番のシビれる青だった。

駐車場から歩いて海岸まで下ってゆくと、日曜市場みたいなのが出てる。

ここでNEKOさんやこいさんが干物を買い込み。

そのあと、ダメ人間には珍しく、花を観賞するのだが。

来た道を登ってる段階ですでに軽くヤラれる、かみは歩かないで有名な、かみさん41歳。

GOとNEKOさんは元気。

 

これが水仙か。そう言えば見たことあるようなないような。

 

登り切ったあたりから横に入って、温室のある花園へ向かう。

なんか輪っか状の花壇。何の花か、俺にはもちろんビタイチわからない。

 

枯れ木でこしらえた人形。農夫と牛かな?

 

天皇陛下の行幸があったときに、陛下手ずから植えられた松だそうだ。

 

コレはわかる。菜の花だろ? 俺だってこのくらいは知ってるんだよ。

つーか菜の花を見てると、利根川の土手を走りたくなるね。

 

マクロを使って背景をぼやかしてみた。

意外とやれるじゃん。

一眼レフ買うとハマるからやめて、しばらくコンデジでイロイロやってみよう。

 

ここから温室に入って、南国らしい花を見る。

さすがにコレだけ樹木があると、入った瞬間、ムっと草いきれが立ちのぼる。

 

コレは名札を見たから覚えてる。ブーゲンビリアだ。

名札にはブーゲンビレアって書いてあったけど。

 

バナナの木。南国の主食になる『甘くないバナナ』って、いちど喰ってみたいな。

 

極楽鳥花(ストレリチア)だそうだ。ナオミに聞いた。

「なんか鳥みてぇな花だな」と思って撮ったら、やっぱしそんな名前だったか。

 

暖かい温室の中で南国を堪能したら、さて、そろそろ帰りますか。

走り出した国道135号線は、さすがに日曜の南伊豆。いいだけ渋滞しまくってるので、こいさんとNEKOさんについてガンガンすり抜ける。それでも道があまり広くないから、一台抜くのもなかなかやっかいだ。俺らはまだしも、スカイウエイブのこいさんはえらい難儀してた。

そんでも、後ろについてのんびりしないのは、この人たちのデフォルトだ。

やがて東伊豆あたりの土産物屋にあった大きな駐車場へ入るNEKOさん。

昼飯でも食うのかと思ったら、ココは飯屋じゃないらしい。

「かみちゃん、この後は山ぁ走るのかい?」

「そのつもりです」

「俺らぁこのまま国道で帰るわ。伊豆スカの入り口なら、カンバン出てるから」

「わかりました! 今日はありがとうございました。楽しかったです」

つわけで、ここから流れ解散の段取りになる。

伊豆七島が見えるという展望所。写真にはあんま写ってないけど、いくつか島が見て取れた。

 

こいさんにも「ありがとうございました。また走りましょう!」とアイサツしたら、「来週は飲み会だよ」とニッコリ。や、さすがに来週末は仕事の準備します。てなわけで、そのあとしばらく走ってから、ガソリンスタンドが見えたところでGOと給油に入り、ふたりとはココでお別れになった。

NEKOさん、こいさん、めちゃめちゃ楽しい走りと宴会、ありがとうございました!

またタイミングが合ったら、遊んでやってください!

 

さて、給油を済ませたら、いつもの慣れた二台。

GOとふたりで国道をのんびり走り、伊豆スカイラインを目指す。途中でGOがナニカを指差すので、「なんだ?」と思いながらそちらを見ると、前にRやじゅんなんかと伊豆を走ったとき入ったことのある、DHCの経営する赤沢温泉だった。

「おぉ、こんなとこまで来たのか。んじゃ、伊豆スカはもう少しだな」

その辺からは、わりと見慣れた道で、あれよあれよと言う間に伊豆スカ。

「昼飯、亀石で食べようと思うんですけど」

「そだね、んじゃ亀石で喰おうか」

つわけでココからはGOがゆっくり、俺は前に出て若干飛ばし始める。とは言え道のコンディション的には最高ってワケでもないから、それなりに気をつけながら、慎重に速度を増してゆく。クルマもそれほどいないので、パッシングも苦労はない。

直線ではソコソコ、コーナリングはも少し頑張って、とにかく気持ちよく。

 

冷たい風を切り裂きながらゴキゲンに走っていると、ミラーにライトが写った。GOが追いついてきたのかと思ったら、追いついてきたのはクルマだった。追いついてきたと言うことは、俺より速く走ってるわけだから、とりあえず道を譲って様子を見る。

すると轟音を響かせてすっ飛んでゆくBMW。

詳しい車種なんかもちろんわからんが、飛ばしっぷりといい、曲がりっぷりといい、スポーツ車であろうとは推察できる。なので俺も、少し頑張って追いかけてみた。すると、BMWも明らかに速度を上げてゆく。にゃはは、こらぁ楽しいじゃないの。

「でも、ツッコミで無理は出来ないな」

道のコンディションもそうだが、突っ込みでムキになってると、オーバーランしやすい。まして今日は、冗談みたいに風が強く、さっきから何度も、コーナリング中に風で車体を起こされているのだ。楽しめる範囲で頑張ろうと気持ちを引き締め、BMWのテールを眺める。

見つめると飛ぶから、『眺める』のだ。

 

やはり、突っ込みは厳しい。

明らかに俺を上回る速度でアプローチするBMWは無視して、突っ込みは自分のペース。ビューエルはバンクさせなくても曲がりがよく、絶対速度もケーロクより遅い分、早め車体を立てて、早めにアクセルを開けられる。トルクを生かして、立ち上がり重視のコーナリング。

さすがに立ち上がりは、軽い単車が有利だ。

その上、ココはサーキットじゃなくて公道。不確定要素が多いから、例え安定感のある四輪でも、ベタ踏みバカ開けはできない。こっちはラインに余裕があっても、向こうは道幅いっぱいだからラインが限られるわけで。突っ込みで離れ、立ち上がりで追いつくを繰り返す。

まるでダンスを踊るような、楽しい時間が過ぎてゆく。

やがて前にクルマが詰まってきた。同時に、亀石の看板が見える。

「やー、楽しかったよ。ありがとね」

メットの中でBMWに礼を言うと、俺は亀石のパーキングに車体を滑り込ませた。

GOが来るのを待ちながら、タバコに火をつける。

「美しい景色を眺めるのもいいが、コレもやっぱり楽しいな」と改めて実感していると、しばらくしてGOがやってきた。亀石のレストランに入り、券売機そばにあるガラスケースを見ながら、「さーてナニを喰おうかなぁ」と吟味してると、GOがさっさと食券を買っている。

「お、決めるの早いな。GOは何にしたの?」

と覗き込むと。

GOGO定食。

「ぎゃははははっ! そりゃステキだ。俺もそれにしよう」

ゲラゲラ笑いながら食券を買い、レストランの中へ。

GOとしゃべりながらしばらく待っていると、やがてGOGO定食がやってきた。

ハンバーグ、エビフライ、魚のフライにヒレカツ。

要するに『お子様ランチ』だ。なんてGO向きの定食だろうつー話である。

「この後どうする? 俺はもう、ワインディングもキレイな景色もおなかいっぱいだ」

「それじゃ帰りますか。俺、ETCがついてないんで、小田厚がメンドウなんですよ」

「ああ、GOの好きなルートでいいよ」

伊豆スカから芦ノ湖スカイラインを走り、途中で裾野へ抜けるルートと決まったところで。

GOGO定食でいっぱいになったハラを抱えた二人は、駐車場にもどって愛機をまたぐ。ちょうど出てゆくビューエルに、アレは何だとGOが聞くので、「Rだね。XB12Rつー、カウルとセパハンのついたモデルだ」「やる気マンマン仕様ですか」「中身はそんなに変わらないんだけどね」

などとダベりながらメットをかぶる。

 

伊豆スカ後半(フツウに来ると前半)は、さすがにクルマの数が増えている。

時々パッシングしつつも、基本的には大人しくクルマに付いて走りながら、やがて伊豆スカが終わり十国峠、湯河原峠と抜けて、芦ノ湖スカイラインへ入る。するとGOが途中のビューポイントに単車を入れた。俺もその後ろに停めて、本日最後の富士山見物。

海ももちろん伊豆だろうが、俺的には、この絵こそ伊豆って感じだ。

芦スカをするすると走りぬけ、湖尻峠から裾野ICへ向かう県道へ入る。「結構、荒れてる道だ」と聞いていたから構えてたら、それほど悪い道でもなかった。あとでGOに聞いたら、前より整備されてキレイになったらしい。

そのせいもあってか、GOが珍しく道を間違えた。

裾野インターへの案内看板がなくなったので、コンビニに入ってリルート。

「もう、タイアないじゃん」

「そうですね。そろそろ交換しないと」

「つーかよ、ビッグオフのはずなのに、なんでタイアがショルダーから削れてんだよ。おかしいだろ」

「細いからですよ」

いいや違うね。エッジまで使ってフルバンクしてるからだね。

西伊豆スカで見たもん、俺。

 

リルートして、無事、東名高速に乗ったら、後は一気呵成。

とは言えGOも俺も、そんなには飛ばさない。昨晩はキャンプで、熟睡したとは言いがたいから、思ってるより疲れてることは間違いないのだ。だいたい、GOのBMが160スピードくれぇ、俺のユリもせいぜい200がリミットなんだし、ぶっ飛ばしても高が知れてる。

クルマのケツについて、淡々と距離を稼ぐコトに専念。

やがて東名名物の渋滞が始まった。GOがそのままクルマの後ろに付いたので、「今度は俺が引っ張って、ちったGOに楽させてやろう」とすり抜け始めたのだが、ヤツはもう行く気がなかったようだ。結局、そこではぐれてしまい、なんだかんだすっ飛ばし始めたところで。

本日のCrazy Marmaladeでっかいもん倶楽部は、流れ解散。

ゴキゲンな単車乗りたちと、色んなコンディション、色んな曲率のワインディングを踊るように走り倒し、ゲラゲラ笑える楽しい宴会をした、実に楽しい二日間だった。そら寒かったし、道も最高の状態とは言いがたかったかもしれないが、そんなものは関係ない。

単車をあやつるコトに没頭し、あるいは美しい景色を眺め、ダチと笑いあう。

それこそ最も俺の求めるものであり、俺の人生の重要な根幹なのだから。

 

NEKOさん、こいさん、カミナリ、GO。

楽しい時間をありがとう!

また走って、呑んで、笑える時間を!

つーか結局、メンドーになっちゃって温泉に入らなかったな。

 

index

inserted by FC2 system