The 104th big machine club

2011.06.11 第104回でっかいもん倶楽部 in 城里町

〜自由の旗の下で(前編)〜

 

さて、一月に伊豆、四月に大郷戸、五月に琵琶湖とやってきた山賊宴会。

今回はナオミが参加するということで、よしなしがトイレのある場所を選んでくれた。場所は茨城県東茨城郡、城里町にある道の駅『かつら』ウラに広がる、ステキな芝生公園だ。だが週末の天気予報がよろしくなくて、それが一抹の不安を感じさせる。

そして当日の午前中、も、バカじゃねぇのってくれぇの土砂降りんぐ。

「ありゃ、こらぁ今日は中止だなぁ」

現場についてから降ってきたならともかく、さすがに降ってる中でテント設営とかしたくない。きっとみんなもそうだろうと思って、仕事の合間にミクシィで「今日はダメっぽいねぇ」的につぶやいてると、どうやらそんなヘタレは俺だけだったようだ。

よしなし先生、「雨上がった! キャンプ決行!」とかつぶやき、いや、叫んでらっしゃる。

 

と、ろろちゃんから電話がかかってきた。

「かみさん、今日、どうする? よしなし先生はやる気マンマンだよ」

「見た見た。こりゃ、行かないなんて言ったら牡丹鍋にされちゃうねぇ」

つわけで参加確定。まあ、前日に準備してあるから、決行となって慌てることも無いんだが、いちおう相方には話を通しておこうと、仕事がハネてからその旨、ナオミさんに連絡してみると、

「あたし、いかなーい」

「ちょ、おまえが行くって言うから、トイレのある場所にしたんだぞ?」

「絶対、地面が濡れてるもん。雨降るもん」

ダメだこのヒキコモリ。電話越しにさえ、1mgたりとも出る気がないのが伝わってくる。説得をあきらめた俺は、「わかったこの裏切り者め。おまえには不幸が訪れるに違いないぞ」と呪いの言葉を吐いてから、ユリシーズを跨いで家に戻る。

振り分けバッグの中から、ナオミの荷物を引っ張り出すと、サイズが半分になった。

なので、どうしようか迷っていたコットンダック(キャンプイス)も積んで行くことにする。つーかナオミが行かないなら、テントの改造とか試したいことが一杯あったのだが、まあ、仕方ない。テントと細かい荷物、よしなしに貰ったコット(キャンプベッド)にイスも積んで。

午後二時ころ、意気揚々と出発した。

 

雨でワインディングは楽しくないだろうと、高速→国道の最短距離ルートをとる。

道としては単調だが、走ってるうちに雨が完全に上がったので、楽しく走ることが出来た。最初は120スピード(1/2時速)くらいから段々上がり、150〜60スピード前後でクルマを縫う。このあたりが楽なのは、マイル的にちょうどの速度で設定してんかな?

一時間くらいで高速を降りると、国道に沿って北上。

途中でスーパーマーケットらしき施設を見つけて、駐車場に滑り込む。

なんか100均とかばっかで、酒や食い物を売ってる場所がなさそうなので(実際は奥のほうにあったらしい)、とりあえず現地についてから買い出しに行けばいいやと、一服つけてから走り出す。

やがて、『道の駅かつら』の看板が見えてきた。

道の駅に入ってみると、ホントに普通の道の駅で、どうやらココじゃないようだ。周りを見渡してみると、奥の方に緑とワンボックスカーが数台、見え隠れする。なるほどあっちか、つーんでウラへ入り込んでゆけば、目の前に緑の芝生と細長い公園が広がった。

那珂川沿いに芝生が植わった、キレイな公園(空き地に近い)だ。

 

毎度毎度、よしなしはいいところを見つけてくるなぁ。

 

早速、荷物を降ろしていると。

コレだけきれいな場所だから、当たり前っちゃ当たり前なんだが、クルマが次から次へガンガンやってくる。こりゃいかん、周りをびっちり囲まれてしまうと、キャンパーの皆さんは山賊に隣接することになるわけで、それは彼らが可哀想だ。

なので、場所取りをすることにした。

バッグを点在させて、ある程度の場所を確保してから買出しへ行こうと……

走るまでも無く、キャンプ場所のすぐ裏がコンビニだった。

この段階で、スーパーへ買い出しに行って料理を作るという選択肢を放棄した、かみさん41歳。ツマミと酒を買い込んで、とっとと帰ってくると、イスやコットを組み立て始める。

そこへSL230に乗ってやってきた、やる気マンマンのよしなし先生。

俺は立ち上がると、よしなしを離れた場所へ誘導する。

ユリシーズとSLで挟み込み、eisukeさんやろろちゃんがテントを張るポイントを確保しようと言う算段だ。ところが、普段から俺にいじめられてるよしなしは、「ここへ入れ」と先導しても不審がって動こうとしない。もっと、『ヒトを信じる心』を持って欲しいね(あなたのせいです)。

「ダマシじゃねぇよ! 他にもキャンパーがいっぱい来っから、場所取りするんだよ!」

と説明すると、ようやく合点してSLを動かすよしなし。

テントを張って準備を始める。

 

俺の方はすでに、準備万端。

 

コンビニで買ってきたソバを食いだしちゃうくらい。

 

気持ちよく晴れ上がった空と、ギラギラ照りつける太陽。

この段階で完全に、テントを張る気がなくなったかみさん。今晩はコットだけで寝ることにした。夏のソロツーの時は、毎回、マットだけで野宿してるから、まるきし問題ない。むしろコットがあるぶん、いつもの野宿よりずっと楽だ。

と、よしなしがイスを引っ張り出して笑った。

「かみさん、コレがベビーダッグですよ」

「おぉ、例のコットンダックの弟分か! どれどれ、俺のと比べてみようぜ!」

単体で見ると今ひとつ判りづらいが、こうして比べるとサイズの差は歴然。

布がたるんでるのは、俺のイスが使い込まれてるからだが、ベビーダックの布の張り自体も、コットンダックより強めっぽい。座り比べてみると、ほんの少し背もたれが短くて幅が狭いだけなのだが、なるほど、よしなしの言うように『その差』が非常に大きい。

本来なら非常に使いやすく、充分以上の水準にあるイスだと思う。

ただし、コットンダックと比べてしまうと、身体を包み込むような安心感とか、背中までシッカリ支える安定感が足りなく感じてしまう。俺を含めたコットンダック使いは、いつの間にか飼いならされて、恐ろしく軟弱になっているようだ。もう、普通のイスには戻れない。

つーかイス語りすぎだ俺。

 

とりあえずの準備が出来たので、まずはビールでカンパイ。

のんびり流れる那珂川を眺めながら、気持ちのいい風に吹かれて酒を呑む。

 

「気持ちいいっすねぇ」

「ああ、気持ちいいなぁ。もうさ、時々この時間がないと、ストレスがたまるんだよな」

「ははは、確かに。まあ、先月もやってますけどね」

「へへへ、飽きねぇよなぁ」

 

よしなしと穏やかに酌み交わしていると、軽自動車がやってきた。

瞬間、俺とよしなしは大笑い。

「ぎゃはははははっ!」

eisukeさんが、巨体を軽自動車に詰め込んで、やってきたのだ。

「熊だ! 熊がクルマに乗ってる!」

「eisukeさん、どうしたんすかー!」

「いやぁ、嫁さんにクルマ乗って行かれちゃってさぁ」

eisukeさんがクルマを奥へ停めてテントを張り始めてるところへ、

ろろちゃんも登場。

 

「スーパーから意外と距離あるねぇ」

俺が休憩だけ入れたスーパーマーケットで、ろろちゃんは買出しも済ませてきたらしい。

 

こんな感じで、川沿いに細長い公園があり、真ん中にクルマの通り道がある。写真右の奥(公園の入り口付近)はもっと広がった芝生なんだが、さすがにデイキャンパーや散歩してる老夫婦なんかがいたので避けた。サワヤカな場所だけに、山賊は遠慮して使わないとね。

 

eisukeさんのテントは吊り下げ式。

思うにこのタイプのテントなら、外側だけ使って中にコットを入れれば、充分、参天の代わりになるんじゃなかろうか。値段も手ごろみたいだし、次回のテントはこのタイプにしようと画策している。まだ細かいことは全然、決めてないけど。

なんにせよ、キャンプの装備を考えたり調べるのは楽しいよね。

 

午前中アレだけ降ってたのに、すっかり晴れて気持ちのいい風が吹いている。

樹々の間からは、ちちちと鳥のさえずりまで聞こえてきたり。

 

よしなしは、こないだ300円で買った炭起こしを使って、炭火を起こす。

「あっと言う間に炭火が起きますねぇ。mioちゃんも、ざるなんか使わないで買えばいいのに」

そーゆーこと言ってると、mioちゃんの呪いにやられるぞ。ただでさえ、来れなくて怨んでんだから。ま、それはそうと、どうやらカンペキに炭火が起きたようじゃないか。ちょうどいいや、タバコに火をつけるから、よしなしちょっと火ぃ起こすのやめれ。

タバコをくわえ、炭火に近づくかみさん。

「熱ちっ! くっそ熱いなぁ……って、ああっ! やられた!」

 

ヒゲが燃えた。mioちゃんの呪いだろうか(ただのウカツです)。

バカやってるうちに、みんなの準備も着々と整う。

 

こっからは時系列で起きたことを、ためしに並列して書いてみよう。

eisukeさんがテント張ってる隣で、すでに酒を呑み始めたろろちゃん。

そう、ろろちゃんも俺に引きずられて、テントを張らない方向で行くらしい。銀マットを敷物にしてるところからして、このままマットで寝ようというんだろう。まあ、この季節なら、さすがに凍死することもないだろうし、せいぜい風邪ひく程度だろうからOKだよね。

俺は風邪ひかないけどね、馬鹿だから。

 

「ところでろろちゃん、横で火にかけてある鍋は、もしかして……」

「もちろん、ろろイタリアーナ作るんだよぉ。ポテチも持ってきてるよぉ」

まずはバターと白ワイン。

初めて『ろろイタリアーナ』の製造過程を見た時は、「こんなもん、なにがあっても喰うもんか」と思ったのだが、実際に喰ってみるとビックリするほど美味い。それをみんな知ってるので、今回はろろちゃんが何をしても、ニコニコと眺めてる。

同時刻。

俺のヒゲ数十本を奪った炭火に向かって、よしなしが新兵器ハンドブロアのハンドルを回す。するとみゅいーんと言うマヌケな音がして、あっという間にごぅごぅとハデな燃焼音が聞こえてきた。値段に比しての使えっぷりが半端ないこの装置は、後にeisukeさんの心も奪う。

 

ろろちゃんがエリンギを裂く横で、着々と『ろろイタリアーナ』が出来上がっている。バターを溶かした白ワインに、レモンソーセージを放り込み、ミートソースで味付け。エリンギは裂いたあと、網焼きして投入される。ポテトチップスも大量に投入される。

そして最後の仕上げが、テーブルの上にあるチーズ 。

ちょっとありえなくらい、大量にぶち込んで完成だ。

 

テントを張り終えたeisukeさんも、炭起こしで火を起こし始めた。

 

よしなしは仕込んできた自家製ベーコンを切り出す。

「しょっぱいだけの肉です」

なんつって謙遜してたが、普通に美味い。ただ、焼くときの炭火が強すぎて、スモークチップの香りよりも炭火の香りがついちゃったのは、少し残念だったか。せっかく美味しいンだから、とりあえず次回はも少し弱火で焼くようにしようか、よしなし先生。

 

さて、よしなしが自家製ベーコンを切ってるうちに、ろろイタリアーナは佳境に入った。

これが『ろろイタリアーナ』のハイライト、山盛りチーズ。

ゴールデン鍋とゴールデンおたまが奏(かな)で、ミートソースとチーズが織り成す愛のシンフォニー。

作ってる見た目はアレだが、コレが困ったことに、とっても美味い。

バターたっぷり乗せたホテルブレッドと一緒に食べれば、気分はアドリア海。

行ったことねぇから知らないけど、雰囲気的に。

あと、アドリア海にエリンギがあるのかも知らない。

 

と、触発されたわけでもないのだろうが、eisukeさんがクーラボックスを開け、

イナダとメバルを取り出す。めちゃめちゃ焼く気マンマン。

言っても、みんなが来る前に食ったソバを筆頭に、ろろイタリアーナまで押し込んで、俺の胃袋はすでに満杯。それに時刻は、まだ夕方五時くれぇ。なにも、今、あわてて喰うことはあるまい。あとでまた小腹が空いてきたら、いただくことにしようか。

「eisukeさん、まだもったいないッスよ。もちっとおなかが減ってから焼きましょう」

「そうかい? そんじゃ、そうしようか」

eisukeさんを何とか止めた矢先、こんだよしなしのベーコンが焼きあがる。

「どんどん喰っちゃってください」

「だーら、腹いっぱいなんだよ。まいいや。ヒトクチよこせ。もぐもぐ……おぉ、美味い!」

美味いけど苦しい。フォアグラ用の鴨みたくなってきた。

 

ゲラゲラ笑ってガツガツ喰いながら、ふと顔を上げると。

 

穏やかな川面(かわも)に優しい風が吹き、見るものの心を晴れ晴れと……

 

ああっ! ナニやってんすかeisukeさん!

 

 

 

 

 

隙をついてイナダを塩焼きにしてる。

「え〜喰えるでしょう?」

「ハラいっぱいって言ってるじゃないですかー! もー、しょーがないなぁ」

ま、焼いちゃったもんは仕方ない。喰いましょうか。

バッカみてぇに美味い。あっと言う前に骨だけになった。

 

やがて。

そろそろ酒が回ってきて、犯罪行為に手を染めるやつも出てくる。

そゆことしてるから、ラブホテルに監禁されんだぞ、よしなし。

 

よしなしの無防備な後ろ姿に笑ってると、脳の回線が繋がって思い出した。

「あ、わすれてた。俺、ポテチ持ってきたんだ」

「ろろイタリアーナに、あんなに入ってたのに、まだポテチ喰うの?」

「いや、これ美味いんだって」

スタバに勤める患者でマイミクのルージュがくれた、スターバックスポテチ。堅焼きでとても美味い。

「あ、ホントだ、美味いっすね」

「歯ごたえがいいねぇ」

ポテチをデザート代わりってのもアレだけど、これは確かに美味いんだよね。

 

……ってeisukeさん! アンタなにしてんだ!

 

 

 

 

 

 

 

「え? 肉だよ。食べるでしょ?」

このヒトの脳は、『ハラいっぱい』つー日本語を、どうしても理解できないようだ。

つーか今わかった。

酔っ払ってんだ、このヒト(なにを今さらです)。

美味いのは判ってても、胃袋のサイズがギリギリで、もはや入っていきそうにない。なので苦笑しながら一歩ひいて、あたりの景色を眺める。この日はこんな風に、喰うのと眺めるのの繰り返しだった。すると対岸で釣り人がひとり、のんびり釣り糸を垂れている。

釣りも楽しそうだよね。これ以上、趣味を増やしても困るだけだから、やらないけど。

時間は無限じゃねーのだ。

財布の中身も。

 

後編へ続く

 

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