The 105th big machine club
2011.06.26 第105回でっかいもん倶楽部 in 伊豆林道 〜ダート&ワインド(後編)〜
舗装林道から、ガレたダートに入り込み、ガシガシ進んでゆく。 やがて、「だいぶん登ってきたなぁ」と思ってると。
急に、視界が開けた。
道もフラットになる。
頂上付近(?)で一服。 「雲はまだまだ多いけど、青い部分が見えてきたね」 なんつってると、
見る見る晴れてくる。 もっともこの日は天気が安定しなくて、曇りと晴れの繰り返しだった。
意外と働いてくれる、リアフェンダ。背中とかシート上はほとんど汚れない。
タバコを吸いながら景色を眺めつつ、しばらくゴーとダベる。 「ユリシーズ、なかなか壊れませんねぇ。楽しみにしてるのに」 「なにをう! 鬼か! 人の単車が壊れるのを期待すんな!」 「だってそれが、『正しいマーマレの楽しみ方』でしょう?」 間違ってる。誰がなんと言おうと間違ってる。トラブルの時は、俺と一緒に哀しみなさい。 「でもまあ、アメ車ですからね。いずれ壊れてくれるでしょ」 イジでも書いてやんないからな、そんな記事。
俺もゴーも、そんなに長休みしないでいい方だから、テキトーに休んだら走り出す。 下ったり登ったりしつつ、「平均したら下ってる方が多いかなぁ」的な感じで走っていくと。
なんか広い場所に出た。
するとゴーがメットを取りながら、 「ココ、キャンプするのにいいんじゃないかなぁと思うんですよ」 「おお、確かに。ロケーションはかなりステキだな。ロードでもなんとか来れるだろうし」
「まあ、トイレとかは無いんですけどね」 ま、その辺は山賊にはカンケーないし、ロケーション的に、『普段、茨城には来られない人』たちも来られるわけだから、ココでやるのも楽しそうだ。こうしてドカっと開けてるところは、見た目より虫に悩まされることも少ないし。 いや、水が近いから、たくさん居るかも知らんけど、ホントのトコはわからん。
「(四輪も入れるから)壊れても、レッドバロンが来てくれますよ」 くそう、二日酔いでシンドいから、上手いコト言い返せねぇ。
つーかこの写真、BMWが胸張ってイバってて、ユリシーズがショボンとしてるように見えねぇ? 「おめーさぁ、こんくれぇの道で、フェンダなんか割るなよ、ダセえ」 「いや、あれ社外品で……に、日本じゃなかなかノーマルが手に入んなくて……」 「うるせぇ、だまれカス。あっち行けよ、短足がウツるだろ!」 「……本当なら、ボクの脚だってもっと長いんだけど……」 このとき言い返せなかった分、今、BMWをワルモノにしてみた。
さて、休憩したら、また走りだそう。と、舗装路に出たところで、ゴーが俺を振り返る。 「かみさん、お腹すいてません?」 「んにゃ、俺は大丈夫だけど」 (ち、こいつ二日酔いだったっけ)と思ったのだろう。ゴーは肩をすくめて、「メシ喰いに行きましょう」つわけで、こんだ舗装路をすっ飛ばして下り始める。隊長機は長い脚をゆっくりしなやかにストロークさせながら、アクセルの無駄なオンオフをせず、スムーズに峠を下ってゆく。 俺もマネしてエンジン回転数を抑え、速度を殺さないようにコーナリング。 ははっ、やっぱゴーのラインディングはキレイだなぁ。 二台のビッグオフ(?)は、静かな排気音を響かせて、山間部を駆け抜けた。
最初に行った店は、貸切で入れなかった。
なので、別の店の駐車場に愛機を滑り込ませる。
そば屋さんの店内も、やはり蒸し暑かった。
「かみさん、まだお酒抜けないんですか?」 「んー、いや、だいぶん良いんだけど、まだちっと残ってるかなぁ」 「口数、少ないですもんね」 「なはは……んで、ゴーはなんにする? 俺、湯葉そば」 「あ、俺も湯葉そばにします」 「そうなの? じゃあ俺はやめて、香味そばにしよう」
ゴーの頼んだ湯葉そばは、湯葉をめんつゆに混ぜ込んで喰う。
俺の香味そば。 夏らしくサッパリとした味わいだが、時期が悪かったかも。そばの香気が少ないので、香味野菜のフレーバーにカンペキ負けてる。新そばの時期に来たら……そのころは香味そばなんてヤラねぇか。ま、なんにせよ食欲のない時はそばがいいね。
ふたりでそばをすすりこんでいると。 店のおばさんが、別の席の客に『衝撃的な事実』を言ってるのが聞こえた。 「ああ、すみません。どうもクーラーが効かないと思ったら、暖房になってました」 殺す気か。 ゴーと顔を見合わせてクスクス笑う。 笑いながらそば喰って、つゆに蕎麦湯を入れて呑んだら、二日酔いの方はほぼ完治。とは言え、さっきまで暖房のかかってた店内に、長居するつもりは毛頭ない。それになにより、さすがにズレやスレがごまかせなくなってきたフェンダーを、どうにかしてやらなくちゃ。 つわけで食い終わったらさっさと席を立ち、愛機の元へ。 車載工具でフェンダーを外す。
これは、さっきヒモで縛ったのを外してるところ。
足回りスッキリ。 つーか、スッキリしすぎて、インナーチューブむき出しなのはちょっと怖い。
「とりあえず林道を探しに行って、見つからなかったら帰りましょう」 隊長の宣言にうなずいたら、二台そろって走りだす。アチコチのワインディングを走りながら、ゴーは教わった林道の入り口を見つけ出そうとするが、似たような景色が多いから、中々見つからない。途中まで入っちゃUターンを繰り返し、まるで秩父のケモみたいだ。 とは言え、つまらないわけじゃ、ちっともない。 なんたって関東屈指のワインディングゾーンを、あちこち走り倒してるのだ。しかも先導するのが隊長だから、ペース的にもめちゃめちゃノーストレス。むしろ下りで気ぃ抜いてると離されたり。ローリングってわけじゃないけど、降りてきた道をまた登ったりてのが、やけに楽しい。 道を探してるゴーには申し訳ないが、俺はもう、大ゴキゲンだった。
やがて、スカイラインだか県道だか忘れたけど、停まって休憩する。
相変わらず、山の上は霧が凄い。 休憩中に、さっきはずしたフェンダーのとこ、ブレーキホースをチェックすると。 「あぁ! 思いっきり擦れてんじゃん! あぶねー! フロントブレーキ効かなくなるとこだった」 「大丈夫ですよ。ここならレッカー入れますから。新幹線で帰ればいいじゃないですか」 「なにをう! だったら踊り子号がいい」 そして、駅まではキミに乗せてもらうけどね、ヤダつっても。
とりあえず、ブレーキホースが当たらないように養生してやる。 「タイラップ、もって来てないんですか?」 「リュックの方なら、わりと色んなもの積んでたんだけどなぁ」 「持ってた方がいいですよ、アメ車なんだから」 さっきは、「壊れるの楽しみにしてる」って言ってたくせに。
「だいぶ、ステップ擦っちゃうなぁ」 「GSも、バンク角が足らない」 まあ、ビッグオフだつってんだから、その辺は設計者も聞く耳もたんだろうが。
林道の入り口を探して、ワインディングを走り倒す。 霧だったりウエットだったりでも、隊長の速度は緩まないので、俺もタイアの手応えを確かめつつ、ある程度、アクセルを開けてゆく。アベレージの高い場所ならいざ知らず、このあたりは中くらいから狭目(せまめ)の峠道なので、GSやユリシーズには持って来いだ。 グリップの怪しいところが多いので、走り自体は激しくないスムーズな感じで。 それでもゴーペースだと、ウエットでステップ擦ったりするから、気は抜けないんだけど。 林道ダートもいいけど、峠ワインディングも楽しいなぁ。
山を下って街中に出ると、霧はすっかり晴れて、青空が顔を出す。 当然、いいだけ暑い。 と、何を思ったか隊長が、延々とスタンディングで乗り始めた。
「かみ、ビシっと写真撮っとけよ」 と、背中が語ってる気がしたので、あわててカメラを取り出し、走行撮影。 スタンディングでキレーにバンクしてく姿が、かつて見た、いや魅せつけられた、ST1100でのmotoのスタンドライドとかぶる。俺もチャレンジしてみたけど、やっぱちっとおっかないや。二三回やって、コケそうだからやめちゃった。
ちっちゃいの買ったら練習してみよう。
さて、林道は見つからなかったので、それじゃあスカイラインを走ろう。 やはりここまで来たら、走っておきたい伊豆スカ。二台で走り始めると、亀石まではさすがにクルマが少ない。時々いる四輪やクルーザも、穏やかに道を譲ってくれる。しかし、俺もゴーもそれほどバカ飛ばしはせず、気持ちのいいくらいのペースで穏やかに走る。 今、伊豆スカで事故っちゃ話にならないしね。 やがて、「ちょっとクルマが混んできたな」と思ったころ、亀石に到着。
すっかり晴れ上がった青空に、ガラガラのワインディング。 単車乗りにとっては、最高のロケーション、シチュエイションだ。 ゴーがトイレ行ってる間に、一服しながらミクシィに「伊豆スカ、ガラガラ」と書き込む。もっとも、亀石以南は普段でも比較的すいてるんだけど。戻ってきたゴーと、GSの足つきの話なんかをしながら、もう一本タバコを灰にしたら。 それじゃ、渋滞が酷くなるまえに、じわっと帰ろうか。
スカイラインを走り、稜線からわき道へそれ、またも濃くなってきたきりの中を抜けてゆく。 一瞬、ぽつぽつ来たりもしたが、おおむね順調に街中を抜けて、裾野インターから東名高速に乗っかった。高速をゴーと並んで100キロ巡航で走ってると、このまま帰ってしまうのが、ちょっともったいないような、美しい空が広がる。
でも、東名は渋滞するから、早く帰るのが得策だね。 いつの間にか、ポンコツの右足がずーんと重くなってきてる。なんだかんだ朝から、昼飯を食った以外は走りづめと言っていい状況だから、多分、思ってるよりも疲れてるんだろう。俺はこういうのが大好きだから、疲れてる感じはイッコもないけど。
晴天の中を走りぬけて、 PAで最後の休憩。 「トライアンフに乗ってる女の子は可愛い」だとか、「ゴーはバイクばっか乗ってるからあアチコチ悪くなるんだ。彼女を作って休日のバイクを控えればいいんじゃね?」とかバカ話をして笑ったら。本日のCrazy Mamaladeでっかいもん倶楽部は、無事に終了。 林道にワインディングに、一日中、お腹いっぱい走り倒した、楽しい休日だった。 「んじゃ、あとは流れ解散で」 「はい、それじゃ」 言葉にする時もしない時もあるけど、俺はこんな気楽な走りが、たまらなく好きだ。
大人数が集まって、ワイワイガヤガヤとテンション高くやるのは楽しい。でも、気の置けない連中と、こうしてふらっと一日中走るってのは、これまた、ホントに楽しいものだ。これからも、こんな時間を持てることを願いながら、俺は東名を走りだした。 音楽を聞きながら、のんびり走ってたゴーの姿が、いつの間にか見えなくなる。 「さてと、そんじゃ最後まで気を抜かずに帰ろうか」 重くなってきた右足をポンポンと軽く叩いて、ニヤっとひと笑いしたら。
増えてきたクルマの列に向かって、俺はアクセルを開けた。
夏が近づいてきたね。
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