The 108th big machine club

2011.09.17-18 第108回でっかいもん倶楽部 in 秩父

〜夏の終わり〜

 

mioちゃんの妹分、ピンキーの企画したキャンプに参加するべく。

午後の仕事がハネるなり、12Xをまたいで走り出す。

いつも通り16号は、バカみてぇに混んでる上、クソ暑い。少し楽をしようと常磐道に乗った瞬間、いきなり後悔する。常磐道名物の強風をすっかり忘れてたのだ。スクリーンを外した今の仕様は、タダでさえ高速域が苦手なのに。

120スピードくれぇでフラフラあおられながら外環に乗る。

ヘッドフォンから流れてくる曲の種類によって、速度や走り方を変えながら、外環をひらひらと駆け抜ける。ハードロックの時は軽快に、レゲェならのんびりと。ケーロク(GSX-R<K6>)はスピーディな曲がよかったけど、12Xだとミドルテンポがいい感じ。

ロングのときは、『1/6の夢旅人』が一番だけどね(`▽´)

 

高速を降りてからは、さすがに連休中だけあって、結構な混みぐあい。

「このセンターポールを立てたヤツとは、一度、じっくり話し合う必要があるな」

299号にいいだけ立てられたセンターポールをニラみつけてブーブー言いながら、国道140号へ出、そのまま買い出しポイント『ベルク』へ入った。すると入れ違いになった黄色い単車が、片手を上げる。昨日から現地入りしている、埼玉のワンマンアーミー、ろろちゃんだ。

現地が近いから、ろろちゃんは、そのまま行ってしまった。

ベルクの駐車場に入ってゆくと、ハダカの女の絵が描かれた下品なセローを発見。『エロー』と呼ばれるこの単車はもちろん、秩父タンクトップ委員会の会長、mioちゃんの愛機である。横に12Xを滑り込ませて中に入ったが、mioちゃんが見当たらないので自分の買い物を済ます。

酒と鶏を買い込んでオモテに出ると、mioちゃんと息子のチビmioが、エローに乗っかってた。

軽く冗談を言いあってから走り出し、河原に到着してみると。

昨日からソロキャンプしてたろろちゃんは、いつもよりヘリポート寄りの場所をチョイス。

「ろろちゃん、日焼けしてるねぇ」

「暑いよー! 昨日の夜は雨だし、寒かったし、退屈だし、もう最悪だっヽ(`Д´)ノ」

そんなアサッテな方向に切れられても。

 

テントやコットを組み立て終わったら、早速、ツマミ作りを始めよう。

持ってきたガソリンストーブ、オプティマスノヴァを引っ張り出し、ボトルに繋いでポンプで加圧していると……ぶしゅーっとボトルの口からガソリンがもれてきた。どうやらOリングの劣化のようだ。さすがにコレは使えないなぁと思ってると、ろろちゃんが笑いながら、

「男なら流木を拾ってこい!」

「う〜ん、めんどくさいなぁ……まあ、そうするしかないか」

つわけでガソリンストーブを仕舞い、河原でタキギひろいをする。

「俺のグリルはサイズ優先で小さいから、そんなに多くなくても大丈夫だろう」と、適当に拾ってくる。そのタキギを見たろろちゃん、チビmioの拾ってきたタキギを指差しながら、「ごらん、タキギ拾いひとつでも、できる人間と出来ない人間の差が出るんだよ」と笑う。

見ると確かに、チビの拾ってきたやつは形や太さがそろってる。

対して俺のは、太さも長さもバラバラ。

「おまけに、半生の木もあるじゃないか。かみさん、考えて拾ってこなくちゃ」

ふん、料理が出来れば問題ないのだ。

 

火をおこすと、ろろちゃんの懸念どおり、バカみてぇに煙り始める。

半生の薪(まき)が、もうもうと上げる煙をを見つつ、「かみさん、煙いよ」と責められても、「煙い方が虫が来ないから都合がいいんだ」などと負け惜しみを言いう。炎を上げ始めた小さな焚き火の上にコレも小型のフライパンを置いて、鶏皮をアブラ代わりに敷いたところで。

エンジン音とともに単車が現れた。

ユリシーズに乗ってTKさんがやって来たのだ。

早速、アイサツしてビューエル談義。TKさんのステアリングから『コツコツ音』がしてるのを聞いて、申し訳ない話だが、「ああ、苦労してんのは俺だけじゃねぇンだ」と、ちょっと胸が熱くなったり。ステムナット締めたら落ち着いた話をしたり、NEKOさんの話にもなった。

「そう言えば、NEKOさんって詳しい方でしたねぇ。今日は来られるんですか?」

「フリーダムなひとなんで、来ないと思ってた方がいいですよ」

「あはは、そうなんですか?」

「ま、来たらラッキーくらいに思っておきましょう、基本レアアイテムですから、あのヒト」

 

なんつってると、mio公が俺のフライパンを指して大声で叫ぶ。

「かみさん! 煙がすごいよ! なんか燃えてる!」

「おぉ、こりゃいかん! 鶏皮がこげちゃうじゃないか!」

ガソリンストーブと違って、自然の火は扱うのが難しい。まあ、そこが面白くもあるんだけど。

と、またもエンジン音。

こんだmioちゃんの同級生、KY君がやってきた。

セローに荷物を満載してるところを見ると、どうやら今日はテント泊のようだ。クルマの方が荷物もいっぱい積めるし、寝るところも面倒が無いはずなのに、わざわざ単車にテントや銀マットを積んでやってくるんだから、この男もたいがい、スキモノである。

俺は嬉しくなってニヤつきながら、KYくんを迎え入れた。

 

みんなが準備してる中、ひと足早く『ロロイタリアーナ』を仕込んだろろちゃん。

それはなんだい? 「かみはホームラン級のバカだ」ってディスってるのかい?

前日から連泊してるので、日焼けで顔が真っ赤だ。

もちろん、酒もガッツリ入ってるんだが。

 

そのうち、タキギの上に置いたフライパンから、いい香りがしてくる。

鶏皮から出た脂で、スナギモを炒めていたのだが、どうやら火が通ったようだ。早速、喰おうとして、『塩を忘れた』ことに気づく。「ま、誰か持ってんべ」と気軽に考え、「mioちゃん、塩かして」「持ってないです」「じゃあろろちゃん、塩かして」「忘れたんだ」……かみさんピンチ。

と、ろろちゃんが、「ハーブとかニンニクならあるよ」つーんで、とりあえず借りてみる。

ハーブが入ると……なんかゴミとホコリだらけみたいに見えるね。

ハーブとニンニクパウダーのたっぷり入ったスナギモは、そこそこ美味しかったのだが、いかんせん塩がないのは致命的。喰っても満足感がないと言うか、そもそも喰った気がしない。これは早急に対策が必要だと思った俺は、mioちゃんに向かって叫んだ。

「mioちゃん! ピンキーぁ遅れて来んだべ? 塩買ってきてって伝えて!」

「わかりました……もしもしピンキー? 今ドコ? あ、そう。それじゃあさ、来る時に……」

塩のほかにも色々と頼んで、ピンキーの到着を待つ。

ロロイタリアーナを仕込むろろちゃんと、ピンキーに電話してるmioちゃん。

 

塩味が足りない分を、買ってきたポテトチップで補いつつ、酒を呑んだくれる。

やがて陽が落ち始め、野宴らしい情景になってきた。

「NEKOさん、やっぱり来そうもないですねぇ」

「まあ、この時間で来ないなら来ないべ。なんか作ってくれるつーから楽しみだったけど」

「相変わらず、自由な人だなぁ」

みんなNEKOさんのフリーダムっぷりには慣れてるので、怒ったり不満をいうヤツは居ない。どうやらあとは、ピンキーとやよいちゃんくらいのようなので、彼らを待ちながらのんびりと喰って呑んで話す。つーかそんなことより俺はもう、塩が待ち遠しくて仕方ない。

「ピンキー早く来ねぇかなぁ……ってアイツまさか、1キロ入りの袋とか買ってこねぇよな?」

「いやぁ、たぶん大丈夫……だと思う……んですけど」

自信なさ気に答えるmioちゃん。

 

大量のタキギや食い物と共に大騒ぎする、いつもの山賊宴会と違い。

それぞれ好きなものをつまみながら、静かで穏やかな、まったりした時間をすごす。

おかげで写真左のKYくんや、右のTKさんと、色々話すことが出来た。

TK 「mio君、トライアル車を買わない?」

KY 「3万でいいってさ」

かみ 「お、俺が4万で買う!」

ろろ 「ダメ! 今日はナオミちゃんが居ないから、俺がかみさんを止めるよ」

mio 「わかった! それじゃ俺が3万で買って、かみさんに4万で売る!」

かみ 「なにが『わかった』んかは知らんが、それでいいぞ。で、名義変更はおまえがやれよな?」

mio 「あ、赤字じゃないですか」

KY 「つーかTKさん、バイク何台もってるんですか?」

TK 「動かないの入れたら8台かな」

一同 「ぎゃはははははっ!」

明かりといえば、せいぜい俺とろろちゃんの小さなランタンだけなので、雲が晴れてくると、空を覆うように星が輝きだす。あたりには虫の声が、『ジージー』ではなく、『リィリィ』と響き渡り、秩父はひと足早く秋に入ったんだと実感させられる。

バカテンションで騒ぐのもいいが、こんな時間もゆるやかに楽しい。

 

と。

やっぱり焚き火が欲しいと、例の親子が動き出す。

チビmioは前回の秩父野宴の記憶が残ってるのだろう。

「焚き火がしたい」としきりに言っていたのだが、mioちゃんに止められて不満気だった。んで、みんながまったりしてる中、独り焚き火の準備を始めだす。やがて根負けしたmioちゃんが手伝い始め、挙句の果てに、「焚き火やっていいか、かみさんに聞け」と言いやがる。

焚き火マイスターの俺も(要出典)、チビmioの情熱に負けた。

「そんじゃ、やんべか」

つわけでmio親子の組んだタキギに、ストーブのボトルからガソリンをぶっ掛け。

景気よく燃す。

下はサラなのに上だけ炎が出てるところから、燃料を使ってるコトが伺われるだろう。

チビmioが嬉しそうにしてる顔を見て、なんだかこっちまで嬉しくなってきた。

「チビmio! このでかい丸太を燃やすから、ヒマ見て小さいタキギを拾うぞ」

つーと、こっくりうなずいてタキギを見つけてくる、とても素直なチビmio。オヤジとは大違い。

なんだかんだ言っても、いざ炎が上がってみると、やっぱり楽しい気持になってくる。ろろちゃん、mioちゃん&チビmio、TKさん、KYくん、そして俺の男六人は、焚き火を囲んで酒を飲みながら、満足げな表情で炎を見つめ、思いついたように話したり、黙って好きなことをしたり。

俺も、たったひとつのコト以外は、満足して炎を見つめていた。

 

やがて。

そのたった一つの不満である、『塩』を持って、ピンキーがやってきた。

ふたつの影がクルマから、レジャーシートやクーラーボックスを降ろす姿を見て、当然、ピンキーとやよいちゃんだと思った俺は、ピンキーに「よう! 塩とかサンキュな?」つったあと、もうひとつの影に向かって、「おう! 久しぶり!」と叫んだ。

すると表情の見えない影は、こちらへ向かって丁寧にお辞儀をする。

あんだ、他人行儀だなと笑ってると、ピンキーがこちらへ来るなり

「今日、やよいちゃん来れないんだって!」

「は? んじゃ、今のシルエットはいったい誰だ?」

「呑んじゃったから、ママに送ってもらったの!」

俺、おまえのママに思いっきり、「おう!」とか言っちゃったんだけど?

 

山賊の(つーか俺の)無礼にも動じず、ピンキーママは「よろしく」と言い残して去っていった。

俺はちと恥ずかしい思いで肩をすくめると、気を取り直してピンキーの買ってきた荷物から、待望のお宝を取り出す。赤いキャップをかぶって、ガラスの胴体に『食卓塩』と書かれた、昭和的な匂いのプンプンするそれを、ワクワクしながら鶏肉に振り掛け……

「美味めぇっ! やっぱ塩だ! 塩って大事だねぇ、ろろちゃん!」

次回から、『何はなくとも塩だけは携帯しよう』と心に誓った。

「やよいちゃんも来れないし、キング(NEKOさん)も来れないんだってー! 残念ー!」

と、レジャーシートに転がってブーブー言ってるピンキーは、どうせ、も少し酒が入ればゴキゲンになるに決まってるので放っておき、ようやく手に入れた塩を振りまくったスナギモを喰いながら酒を呑む。別に買ってあった鶏もも肉は、ろろちゃんが自分のグリルで焼いてくれた。

「うわ、美味めえよ、ろろちゃん! ただの鶏もも肉なのに」

「なんだか高級品みたいに美味しいねぇ」

酒をじらされると呑んだときエライ美味いが、塩もそうだとは思わなかった。

 

「チビmio可愛いー!」

ピンキーはチビmioの相手をし、男たちはまったりと呑む。

と、じっとしてられないチビmioが、もぞもそ動き出した。今日は運動会だったくせに、まだ走り回るってんだから、さすがに子供の体力は無限だ。俺もつられてちょっと走ってみたら、10メータで脚が動かなくなった。かみは黙って衰える(哀しすぎます)。

 

するとチビmioに引きずられてガキに返ってたピンキーが、えらいものを引っ張り出した。

「チビmioー!花火やろうっ!」

ま、だだっ広い河原だけに危険はないだろうと、俺たちも一緒に花火を眺めて楽しむ。

ドラゴン的な花火が終わったら、こんだ手持ちの20連発。

ばしゅ! ばしゅ! っと飛んでゆく光弾に刺激された、かみさん41歳。

「ばっかチビmio! そうじゃねぇよ、オヤジに向けて撃て!」

「かみさん、ヨケーなこと言わないでくださいよ!」

「あーも、見てらんない! いいから貸してみ。この花火をだなぁ……」

「うわー! だめだ、渡すなーっ!」

俺が立ち上がってチビmioのそばまでゆくと、酔っ払ってるとは思えない速さですっ飛んできたmioちゃんが妨害する。俺が本当に、ヤツへ向けて花火を飛ばすとでも思ったのだろう。俺の良識ってモノをまったく信じてない、非常に失礼な行動だと言えよう。

ヤツとはいずれ、法廷で決着をつけるつもりだ。

 

花火も終わって、また、穏やかな時間が流れる。

やがて、日付の変わるころだったろうか。飲んでないTKさんが単車で帰宅し、ピンキーママもお迎えにやってくる。つーかこの辺になると、俺もたいがい酔っ払ってたので、前後の詳細とか時系列は、かなり怪しい。ま、いつものコトっちゃいつものコトだけんども。

ふたりが帰ってから、ろろちゃんやmioちゃん、KYくんとちょっと話して、やがておひらき。

アウターシェルだけのテント内に、コットごと移動したら。

あとはゆっくりと寝るだけ。

朧月(おぼろづき)が、夏の終わりの涼しい夜を照らしていた。

 

明けて翌朝。

朝方の冷え込みがウソみたいに暑くなってきたので、さすがに寝てられなくなる。

起き出してみると、ちょうどTKさんが、トライアルバイクで遊びに寄ってくれたところだった。ボンヤリした顔で周りを眺めてる俺に、ろろちゃんが、「mioちゃんとKYくんは撤収しちゃって、残ってるのはかみさんだけだよ」と苦笑する。

「えー? 今何時? ヤツラ何時に帰ったの?」

「7時かな。mioちゃんたちはもう、5時ころ帰ったよ」

確かに現場には、俺のモノしか残ってなかった。

「そんじゃ俺も帰ろう。今日はタカシが遊びに来るんだ。ろろちゃんも、ヒマならおいでよ」

「そーだねぇ。帰ってから出かける元気があったら、遊びに行くよ」

「おっ! TKさん、コレが例のトラ車ですか?」

「そう。ライトも切れてるしウインカーも点灯(つ)かないけどね」

「かみさん! 買っちゃダメだよ! ボクがナオミさんに怒られるんだから」

相当、欲しそうな顔をしてたんだろうね、俺。

 

やがてTKさんが、「それじゃまた!」と走り出し、ろろちゃんも、「コンビニに、コーヒーを飲みに行く」と走りだしたところで、本日の呑んじゃうもん倶楽部はつつがなく終了。なにかと足りないものは多かったが、その足りなさをも含めて楽しめた、大人っぽい穏やかな宴会だった。

や、まあ花火のくだりは、もちろんワイワイだったけど。

 

火を囲んだらバカ騒ぎばかりだったが、こういうのもまた楽しい。

そんなことに気づかされた、夏の終わりの宴(うたげ)だった。

そろそろ寒くなってくるけど、山賊宴会はもちろんオールシーズン。

次は誰と、どこで飲んだくれようかなぁ。

 

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