The 110th big machine club

2011.12.4 第110回でっかいもん倶楽部 in 房総

―irohaプレゼンツ―

 

irohaから、ツーリングの誘いがあった。

「房総ツーリング行きませんか?」

「お、いいねぇ。久しぶりに房総のワインディングか」

「こないだ電話で話した、タカシ君なんかも来てくれませんかねぇ?」

「来るんじゃねーか? あと、マルにも声かけてみるよ。遠いから来るかわかんねーけど」

 

マルとタカシに連絡を取とると、ふたりともOKの返事。そのあと前日の土曜に、「この雨じゃ、道がウエットなんじゃなかろうか」と、いったん延期になりけたのだが、「来週は行けるかわからん! 晴れてきたから、濡れてるとしても午前中だけだだろう」つー、マルの強力なプッシュによって決行。

となればもちろん、前日からわくわくで、あっという間に準備を整えるかみさん42歳。

翌朝も、目覚ましのはるか以前にぱっちり目を覚まし。

オモテに出てみれば、空は快晴、それほど寒くもない。

それじゃあ出発だ!

 

途中でガソリンを入れて、流れたり渋滞したりを繰り返す16号をすり抜ける。

穴川から高速に乗ったら、一気に市原ICまですっ飛ばそう!

……風、強すぎorz

強風に180スピード(1/2時速)でさえハンドルのフラつく12X。両脚で車体を締め上げ、ふらふらと落ち着かないハンドルと格闘しながら、160スピードくらいで市原ICを目指す。カウルにもぐれば、もう少しいけそうな気もするが、まあ、朝からそう頑張ることもないだろう。

市原を降りて、集合場所のコンビニへ。

時刻は8時半。

集合時間は、9時〜9時半だってのに、張り切りすぎ。

前夜、グーグルマップでおおよその見当をつけて出発したのだが、一時間てのはさすがに、多く見積もりすぎだったようだ。「すり抜けと高速で、時間を節約できたんだろうな」と思いながら一服してると、「ぶおうん!」と四発の音がして、タカシのR750<K1>がやってくる。

「かみさん、おはようございます」

「おはよー! 思ったほどは寒くないな……っておめ、えらい薄着じゃねぇか?」

「ペアスロのインナーがあるんで、そんなに寒くないですよ」

「俺なんざダウン着て、プロテクタつけて、さらにジャケット着てるのに」

タカシは優しいので、『歳だろそれ』とか言わなかったから、缶コーヒをおごったった。

吹きっさらしの駐車場で、バカ話や単車の話をしながら待ってると。

 

Z1000に乗ってirohaがやってくる。

「おはようございます!」

「おはよー! iroha、これがタカシだよ」

「はじめましてタカシ君、irohaです」

「あ、はじめましてタカシです」

ココで文章に書くとイッコも面白くないが、このやりとりが面白かった。

 

こんだirohaもくわえて三人で、それぞれの単車を眺めながら、タイアの話、メンテの話、サスペンションの話なんかをしつつ、最後のひとりマルゾーを待つ。アサイチで俺に『出発』とメールをよこしてたから、とりあえず寝坊はしてないはずなので、9時半ころにはやってくるだろう。

「お、メール来た。今、幕張だってよ」

「じゃ、あと2、30分……マルさんなら15分くらいですかね」

「どうかな。風強いし、寒いし、アイツへたれだし」

なんつって笑ってると、

マルのケーロクがやってきて、これで全員がそろった……と思ったらクソマル。

「12(ミリ)のオープン(エンドレンチ)持ってねぇ?」

「あるぞ、ほらよ。ドコ締めるんだ?」

チェーンアジャスタってわりとキモの部分だと思うよマルちゃん。

 

マルのアホさに笑ったら、それじゃひとつ走り出そうか。

みなが単車にまたがってエンジンをかける。

どひゅん! ぶおーっ! っと四発の音が響く中、俺の股下でだけ、どるるん! どっどっどっどっどっ! ステキなVツインサウンドが、優しいワルツを奏で……「かみ、なんだそのエンジン音。耕運機じゃねぇか。それか発電機だな」などと、マルが失礼なセリフを吐いた。

「iroha聞いてくれよ! クソマルのヤツ、俺のエンジン音を耕運機だって言いやがるんだぜ」

「……すいません、かみさん。ボクもマルさんと同意見です」

そんな役に立たない耳は捨てちまえ。

 

今回のツーリングはirohaプレゼンツ。

俺もタカシも(たぶんマルも)地図は持ってきているが、基本、irohaが先導してくれる。iroha、俺、タカシ、マルの順で国道を東行し、さあ、曲がり道の一発目は、大多喜街道の東を走る、コケと山汁バリバリの、狭い舗装林道チックなワインディング。

せまっ苦しくトリッキーな道を、軽快に先導するiroha。

久しぶりに走ってみて、やたら上手くなってるのにビックリした。このへんはしょっちゅう走りこんでるみたいだから当然、速度も速いのだが、それよりもバツグンの安定感と言うか、見ていてまったく怖さがない。思い切りがよくメリハリが利いた走りは、後ろを走ってて気持ちがいい。

「今、色んな乗り方を試しながら、走り込みしてるんですよ」

つー言葉が本当なのは、スムーズな走りを見れば一目瞭然だ。車体と下半身が安定しつつ、上半身が柔らかく自由なので、対向車や突然の障害物にも、充分な余裕を持って対処できている。「あいつ上手くなったなぁ」と感心しつつ、なんだか嬉しくなった俺は、irohaと並んでひらひら踊る。

一方、さすがにこういう道は少し苦手なSSのふたり。

ポジションから来る前方視界の悪さや、道の荒れっぷりに、いつのまにか差が開く。「なはは、マルもタカシも四苦八苦してるなぁ」と笑いつつ、こちらは狭くて荒れた道が大好物だから、股の下で車体を躍らせながらも、ニヤニヤが止まらない。

嬉しくてノリノリな俺は、時々、モタードチックに前乗りして脚を出してみたり。

 

狭いツイストが終わったところで、irohaが上総中野駅前へ入っていった。

到着するなり、マルが苦手な舗装林道にぶーぶー言う。

「イキナリ道が緑色じゃねぇか! ケツあ滑るし、タカシなんてハラんで飛びそうだったぞ」

「マジでいきなりヤルかと思いましたよ」

どうやらふたりとも楽しんだようである。

 

上総中野駅は小湊鉄道・いすみ鉄道の無人駅である。

いかにも、『田舎の無人駅』といった佇(たたず)まいの木造は、冬のカラっと晴れた青空のもとで見ると、寂しげでありながらも心癒される。単車を降りて駅舎を眺めてると、irohaがニコニコしながら、「ホームまで行ってみましょう」と誘ってきたので、一緒に中へ入ってみる。

穏やかな風景の中をのんびり走る線路。

取り立ててハデでも目を惹くわけでもないが、心の原風景にありそうな趣(おもむ)きだ。

向こう側のホームまで歩きながら振り返ると、

青空と木造の駅舎がやさしい。

反対ホームへ渡る踏切りに、カーブミラーが設置されていたので、写真を撮ってみた。

真ん中でカメラを構えてるハゲが俺で、頭をなでてるのがiroha。

アップで撮りゃよかった。

 

駅前に戻り、みんなで休憩しながらバカ話。

「iroha上手くなったなぁ。知らない道であのくらい走れりゃカンペキだな」

「ははは、ムリです。でも、前より走るのが楽しくなりました」

「タカシ、あの曲がりこんだ右、ヤバかったな」

「三、四回、ヤバい時がありましたよ」

12月だってのに停まってると上着を脱ぎたくなるほど暖かい晴天のもと、今走ってきた道や、これから行くところの話をしながら、ゲラゲラ笑ってるこんな時間の、なんと楽しいことか。バカ話がひと段落したところで、irohaが昼飯の話をする。

「いくつか候補を考えてきたんですけど、どれにします?」

ハンバーガー、高いけどむちゃくちゃ美味い寿司屋、ソコソコの値段でワリと美味しい寿司屋などと、候補を挙げてゆくのだが、いかんせん応える方が、

「なんでもいいです」

「俺もなんでもいいな。走ってられればカロリーメイトでもいい」

「コンビニメシでもいいんだけど……つーか、どの店がイチバン遠いんだ?」

「あんでおめーは遠いところへ行きたがるんだよ!」

てな状態なので、irohaの努力も空回りったらない。

「ああ、だめだ。この人たちとはゼッタイわかり合えない」

と嘆息したirohaに、爆笑する三人。結局みんな、食い物より道に興味があるので、この先のルートの話になった。こんどは大多喜街道の西側、県道177号を南下して、小湊の方へ抜け89号を……

「おい、マルゾー! おめ、イッコも聞いてねぇな。後ろついてきゃいいやとか思ってんべ?」

「いや、千切られて道に迷ったら、どうやって帰ろうか考えてる」

「ははは、大丈夫ですよマルさん。ココからは比較的、広くなりますから」

言いながら、こんだiroha、俺、マル、タカシの順で走りだす。

 

「この辺の道はなーんとなく、走った覚えがあるなぁ」

気持ちよくすっ飛ばしながら景色を眺めてると、信号待ちかなんかで停まった時、irohaがメットを開けて「かみさん、このへん写真撮ってましたよね」「おうよ」とうなずきつつ、ああ、そう言われてみれば、確かにそんな記憶もあるようなないような。

ま、いいや。この容量の少ない脳みそを補完するために、ツーレポ書いてるわけだし。

つわけで、先ほどよりはよほど走りやすい道を、irohaの走りを眺めながら駆けてゆく。Z1000と12Xのパフォーマンスには、それほど大きな差はないと思う。馬力で20ほど落ちるものの、そのぶん、トルクとホイールベースの短さでトントンってところだろう。そう思っていたのだが。

広い道に出ると、少し違いが出てきた。

乗り手の走り方つーかアプローチの違いでもあるんだろうけど、ツッコミからコーナリングで差が詰まり、立ち上がりから直線の伸びで少し離れる。「もっと広くて真っ直ぐが長い道へ出たら、もちっと離されそうだな」なんて笑いながら、irohaのケツを追って走る。

 

『悪魔の人たち』ほど速くはないが、このくらいのペースはストレスがなく楽しい。

今までだと、後ろを走ってる方が楽だったのだが、12Xに乗り換えてからは前が好きになった。自分のペースとリズムで走る方が気持いいからだ。しかしirohaの後ろは、多少、『走り方の差』はあるものの、速度の乗りが俺にちょうどよくて、実に気持ちよく走れた。

SSすっ飛ばしツーリングだと、とにかくすり抜けし続ける。

もちろんそれもキライじゃないが、irohaの先導だと延々とすり抜けはせず、広いところで無理なく抜いてはガバっとあけてすっ飛ばし、前が詰まると後ろを待ちながら流すというリズムなので、マルやタカシと少し離れても、すぐに追いついてくる。四台で走る時間がそこそこあって、これまた楽しい。

結構なハイペースとのんびりを織り交ぜながら。

道は小湊あたりの国道へ繋がった。

 

そこからしばらくは、クルマの後ろについてのんびりと走る。

俺やirohaはアップハンだからアレだが、マルとタカシはもしかしたら、少ししんどかったかもしれない。ほとんどすり抜けしないで走り、途中のセルフスタンドで給油。そこで俺を気遣ったのだろう、irohaが、「かみさん、もうすぐ渋滞を抜けますから」と笑った。

いやいや、俺、そんなにキチガイじゃねーっての。このくれぇはガマンできるよ。

苦笑しながら給油を終え、国道を走ってトンネルを抜けると、県道89号の入り口が見えてきた。

ここは比較的、中高速コーナーの多い道で、SSあたりだと気持ちよくすっ飛ばせる。と言うことはもちろん、12Xあたりだと少々頑張らなきゃならない速度域だ。クルマの列を抜け、目の前に広くて曲がった道が見えた瞬間、Z1000と12Xのエンジン音が高まった。

 

ゆるい右に、今までよりワンランク速い速度で突っ込んでゆくiroha。

俺もブレーキを軽くナメながら、12Xを一気に倒しこむ。ブーツのバンクセンサーが、ステップと一緒にガリガリ削れてゆく。アクセルオンと同時に、タイアの喰う感触が伝わってくるのが心地いい。リアタイアに充分トラクションをかけて、一気に立ち上がる。

フロントホイールが軽く浮かびあがり、接地とともに『くんっ』とハンドルを揺らす。

次の左へは、アクセルを抜いてエンブレだけを使いつつアプローチ。曲がり始めるのとほぼ同時に、アクセルをワイドオープン。どろろろろっ! っとマルいわく『耕運機サウンド』を響かせながら、irohaとの距離を一気に詰める。あ、やっぱ立ち上がりでちっと離れるなぁ。

高速コーナー立ち上がりで離れた分を、低速コーナーの突っ込みとコーナリングで取り返し。

けけけ、単車ってホントに楽しいなぁ。

 

ワインディングを堪能したところで、88号沿いの道の駅、三芳村『鄙の里』へ。

今年最後のツーリングを楽しもうというのだろう、道の駅にはたくさんの単車が停まっていた。

ならんでるスキマに四台を押し込んで、缶コーヒーでも買いにゆこうか。

「かみさん、あそこが候補のひとつ、ビンゴバーガーですよ」

「おぉ、ハンバーガーか。んじゃ昼飯、あっこでいいんじゃね? な、マル、タカシ?」

俺の言葉にふたりがうなずき、ここで昼食をとることになった。

 

ビンゴバーガーは、わりと有名なお店らしく、あとで調べたらレポがいっぱいあった。

注文が入ってから焼くから、多少時間はかかるものの、待つだけの価値はある。irohaとタカシがノーマルで、俺がベーコンバーガー、マルがアボガドバーガーだったかな? 俺以外はコーラを、俺はコーヒーをセットに頼んで、出来上がるのを待ちながらバカ話。

と、irohaが人ごみの中へ消え、しばらくするとモチを持って現れた。

「あんだ。モチけ?」

「あそこの老夫婦が喰ってるのが美味そうだったんで」

なにやら話しかけてると思ったら、「そのモチ、美味そうだね。どこで売ってた?」と聞き込んできたらしい。さすが『グルメツアラー(自称)』だけのことはある。しばらくすると、四人分のバーガーセットが出てきたので、それを持って芝生へゆき、車座に座る。

暖かいので上着を脱ぎ、みんなでハンバーガーにかぶりついた。

 

俺の喰ったベーコンバーガー。美味いし、でかいし、言うことなしだ。

 

晴天のもと、芝生に座ってランチしながらダベる。

「ニンジャ(マルのセカンドバイク)のマフラーでよ、カーカーの二本出しがあんだよ」

「あん? カーカーの二本出し? へぇ、そんなんあるんけ」

「84年だかの古いのがな。タカシと変わんねーべ、ははは」

「あん? タカシ? あれ、おめ、何年生まれだっけ?」

「あ、89年です」 (マル、絶句したまま倒れ伏す)

「すげぇよな。タカシが生まれたとき、おまえは、もうすでにバカだったんだぜ?」

「うるせー! おめーもじゃねーか!」

 

「お、iroha見れ! ディアベルだ。ドカティのクルーザだよ」

「あ、ホントだ。やっぱカッコいいすねぇ」

「なー? あと一年(発売が)早かったら、俺、ヤバかった。買ってるわ」

「おー、V‐MAXが通った」

「あれ、マル。今のVマの後ろにいたアール(GSX‐R)って油冷? 水冷?」

「ナナハンだったら水冷だろ、一年くらいしか売ってなかったやつ」

美味いバーガーを食いながら、バカ話をして笑って。

さて、そろそろ行きますか。

 

お次は今回のツーリング最大の山場と言える。

去年の四月に全通した、『安房(あわ)グリーンライン』だ。

中高速コーナーが多くアベレージスピードの高いワインディングとして、いろんな人のレポを読むたび気になってた道で、今回のツーリング中、マルとタカシのSSふたりが、最も楽しめる区間でもある。更に言えば、12Xと俺のコンビが半泣きになるだろう道でもある。

道の駅を出てちょっと南下し、九重あたりから安房グリーンラインへ乗る。

出鼻っから続く高速コーナーに心躍り、他のツーリングライダーがからんでくるのにも胸が躍る。速度域は一気に高まり、ストレートエンドで200前後。『SS使いの悪魔な人々』なら、おそらく250を越えてくるだろう高速レイアウトを、irohaと並んで駆け抜ける。

 

まだ痛んでない綺麗なアスファルトに、両輪を押し付けながらハーフバンク。

手拍子で走ってると、突然、牙をむくタイトなカーヴ。漫然と走れば気持ちがいいだろうけど、攻めるとなると歯ごたえのある道に、最近ココをホームにしてるirohaの先導で、思い切りよくツッコんでゆく。柔めにセットした脚が負けるより先に、空冷OHVが弱音を吐く。

150からの加速がまどろっこしい。

立ち上がりから直線で、irohaとの差が開く。タコメータとにらめっこしながら、その差が開かないようにキープし、低速コーナーの突っ込みで一気に詰める。知らない道なのでマージンは充分に取りつつも、取ったなりの全開に近い高速走行をするうち、アタマと身体が高揚してくる。

やるじゃねぇかiroha。やるじゃねぇかZ1000。やるじゃねぇかグリーンライン。

 

と、irohaがウインカーを出して、休憩スペースに入ってゆく。

「あんだここ、すげぇな。トップエンド180超えてたぞ」

「イチバン長いところで200いってましたね」

「面白いけど、おっさんには、おっかねーよ」

「ここ、いいっすねー!」

ドイツもコイツもニッコニコで、安房グリーンラインを褒める。

ビリビリとすっ飛ばして、休憩しながらバカ話。

何度やっても、20年以上やっても飽きることのない、最高の時間だ。

なんか珍しい感じの断層。地面が盛り上がって、削れて、自然ってすげぇな。

 

「タカシくん、もう一往復する?」

「え、いや、いいですよ」

「ホントは行きたいでしょ? 行こうよ」

「あ、はい!」

「おいさんは休む」

「おじさんも休む」

ヘタレ中年二人を置いて、若者たちは二本目を走りだした。

やる気マンマンのふたりとは対照的に、俺とマルはテキトーにそこらへ腰掛ける。

景色を眺めながら、久しぶりに色々と話した。まあ、長い付き合いのダチとふたり話してるわけで、ここで書くのもアレなくらい、プライベートな身内話だ。単車で曲がった道をすっ飛ばし、停まって一服しながら話す、要するに毎度の風景ってヤツ。

やがて、ふたりが帰ってくる。

その画を見ながら、おっさんふたりはにやりと笑う。

「へへ、なんかいいな」

「ああ、なんかいいな」

戻ってきたふたりの、走りの話やブラインドコーナーの先に停まってたクルマの話を聞き、色んなバイクの12年モデルの話で盛り上がり、それぞれの単車の話で騒ぎまくる。irohaのZ1000にインストールされた、SCプロジェクト製のマフラーを見ながら、タカシが無邪気に

「これ、アクラ(アクラポヴィッチ)ですよね?」

瞬間、irohaが叫び声を上げる。

「違うよ! タカシ君、キミまでボクをバカにするのかい!」

irohaのマフラーは見た目がアクラそっくりで、いつも「バッタモンだ」とバカにされてるのだ。

 

「タカシくん、いい子だと思ってたのに、ボクをバカにするんだね」

「あははは! いや、そんなコトないですけど」

「あームリねぇよ、どう見てもアクラだもん」

「かみさんまで! いいですか、これはSCプロジェクトってイタリアの有名な」

「ぎゃはははっ! 有名じゃねぇだろ」

「マルさん! いいですか、僕は決してアクラが買えないわけじゃないんです!」

コレが欲しかったんだよな? You Tubeで見て」

「そうです。いい音がするなぁと思って探したら、日本に代理店がなくて輸入したんですよ」

「まあ、確かにいい音するよな。後ろ走ってっとやかましいけど」

バカ話は尽きない。

 

「かみさん、このあとはコーヒーを飲んで帰ろうと思うんですけど」

「お、いいな。わざわざそう言うってコトぁ、缶じゃなくてショップに行くんだな?」

「海の見えるカフェがあるんですよ。いつも行くシャレたカフェなんです」

「かふぇえ? そら構わんが、大丈夫か? こんなガラの悪いのが行っても」

その画が見たいんですよ」

つわけで、iroha行きつけのカフェに向かって出発。

 

右手に海を見ながらまったりと並んで走る。

やがて、410号線沿いのカフェの駐車場へ到着した。

「iroha君、たいへんだ! なんかすげぇ可愛い名前だけど、ホント大丈夫かい?」

「う〜む、営業妨害かも知れませんねぇ」

笑いながら、irohaは建物の間を下りてゆく。

外階段を登った先、元はベランダらしきスペースが、どうやらカフェのようだ。

登りきって中を覗き込むと。

「おぉ、こらぁキレーじゃないの!」

「ね? いいですよね?」

カウンターにテーブルがふたつの小さな店は、目の前に外房の海が広がっている。

そこへ、ドカドカとブーツの音をさせて、妙な連中が上がってきたわけで。グレーレザーにジーンズの若者、上下真っ黒なレザーの若者、上下赤黒のレザーを着たおっさん、そして、革パンに軍用ジャケットを着たボウズのおっさん まて来ちゃったのである。

完璧な布陣だ。完全無欠のテロリスト

 

「なはは、この画が見たかったんですよ。やっぱ怪しいですねぇ」

ご満悦のirohaは、常連らしく店の人に挨拶をしている。

「ども、今日はバイク仲間と来ました」

そうそう、ちゃんと一般人だと伝えてくれたまえ。

警察呼ばれる前に。

 

レザーや軍服を脱いで、少しはマシになったら、それじゃコーヒーを頂こう。

俺以外の三人はアイスカフェオレ、俺はホットコーヒー。おなか壊すから。

と。

俺の横でマルが、カフェオレにガムシロップを入れながらブツブツ。「う〜ん、このくらいかなぁ。デブにならない量は」などと、『アメリカ人がフライドポテトを野菜だと言い張ってる』くらい、絶望的に無駄な抵抗をしている。哀しきメタボリック。

「今さらナニ言ってんだおめ。つーかよ、背中から見るとクスリあぶってるみたいに見えるぞ」

スプーンであぶって、ストローで鼻から吸う感じ。もしくは、風邪薬を分解してる感じ。

 

ストロベリーポットは、海を見ながら独りでボーッとするには最高のお店だと思うが、残念ながら今日は四人。比較的サワヤカな若者ふたりの醸(かも)す空気を、サワヤカさのカケラもないおっさんふたりがだいなしにしつつ、バカ話や昔話に興じる。

海を見ながら色んな話をして、コーヒーをゆっくりと楽しんだら。

「さて、そんじゃ陽が落ちる前に帰ろうか」

立ち上がってカフェをあとにすると、それぞれの単車にまたがる。

 

401号を北上し、途中、来た道を織り交ぜながら、最後のワインディングラン。

さすがに道が混んできたので、irohaも遠慮なくすり抜けにかかる。もっとも、クルマが多いから、『四台並んで』というわけにも行かず、俺とiroha、マルとタカシの組に自然と別れた。キビキビとすり抜けながらワインディングを舞うirohaの、楽しそうな背中が印象的だ。

「けけけ、最後まで楽しいじゃねーの」

とメットの中でニヤつきながら、つま先やステップをすりつつirohaの後を追う。

やがて高速道路の入り口が見えてきた。

鋸南保田から館山道に乗ったら、一車線の混んでる高速をクルマと一緒にゆっくりと。こんな時、アップハンでVツインの12Xはホントに楽だ。ミラーに写るマルが、タンクに肘を乗せて走ってるのを見ながら、「なはは、SSはかったるいだろうなぁ」と笑ったり。

 

君津を越えて二車線になったところで、俺は前走車を追い抜きついでに、すっ飛ばし始めた。

言っても12Xなんざこのメンツの中じゃ、高速道路は最もやれない子だから、「そのうちマルかタカシがぶち抜いていくだろう」と思ってたのだが、ふたりともビタっと後ろについたまま。俺とirohaの、『200ちょぼちょぼコンビ』は、タテに並んで風を切り裂いてゆく。

160を越えたあたりから怪しくなる挙動は、180で完全に、『ゆれてます』と言い切れる。

ひよひよとフレだすフロントに罵声を浴びせ、車体を股で強く挟み込んで挙動をごまかしつつアクセルを開けてゆく。ニーグリップつーより、ニーペンチだ。上半身をカウルにもぐりこませ、バタバタと風に踊る軍ジャケに身体を叩かれながら、トップエンド200でクルマを縫う。

と。

ふらふら必死な俺の横を、ハヤブサが一台、ばしゅんと抜いていった。

「くっそ、新型のCBRかR1000、買っちまうぞこのやろう!」(罵声になってません)

最後の高速が、イチバン体力を使った。

 

市原PAに入って、最後の休憩&ダベリング。

「あのハヤブサが行った瞬間、タカシが行くと思ったよ」

「行こうと思ったんですけど、もう、市原まで距離がなかったんで」

「かみさんのと俺のは、やっぱ200が限界ですね」

「だなぁ。マルとタカシなんざ、ミラーで見てたら超ぉ楽勝そうだったけど」

「あんくれぇがイチバン、楽で気持ちいいな」

「くっそ、てめ、ヨユーこきやがって」

「高速すっ飛ばす時は、やっぱレザーがいいな。バタついてしょうがなかったよ」

「つーかかみさん、軍服にボウズって、カンペキに右翼ですよねぇ」

「がはははっ! ホントだ。おめ、右翼がアメ車なんか乗ってんじゃねーよ」

「なにをう!」

「あははは!」

「しっかしよ、このメンツはホントいいな。なんたって、メーワクかけても気にならない

トラブルの多い単車に乗ってる俺にとっても、それはまさに、最近のイチバン大事な要素だったりする。マル筆頭にirohaやタカシ、フラ、ムラタ、おーがあたりなら、幾らでもメイワク掛け放題だから(間違ってます)、一緒に走りに行こうって気になるのだ。

なんつっても、息をするようにトラブルを起こすからね、俺と12Xは。

 

最後のバカ話をしていると、陽がゆっくりと傾いてくる。

「さて、それじゃ流れ解散で」

「今日はありがとうございました! タカシ君、よかったらまた走ろうね」

「はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」

「あーあ、帰り着くころには、真っ暗だろうなぁきっと」

立ち上がってお互いの顔を眺め、ニカッと笑ったところで。本日のCrazy Mamaladeでっかいもん倶楽部は、トラブルもなく無事に終了。それぞれ好きなタイミングで走り出し帰路についた。irohaプレゼンツと銘打った今回のツーリングも、熱く、楽しく、ステキな時間だった。

 

企画から先導までやってくれたiroha、お疲れ様。

コースも、速度も、食事も、笑いも、すべてカンペキなツーリングだったぜ。それにこれほどまで、『一緒に走って気持ちのいい乗り手』になってるとは思わなかった。すげぇ楽しい走りだったよ。これからの季節、房総を走る機会は多いだろうから、そん時はまた走ろうな!

タカシも、お疲れさん。ま、おめーはこのあと、『俺んちでいっぱい話した』からいいか(`▽´)

んで、マルちゃん。

 

 

 

 

 

ああ、そうか。楽しかったんだな? よかった、よかった。

 

さて、すっかりめっきり冬らしくなってきたけど、冬は空冷エンジンに優しい季節。

俺はもちろん、冬も走る。

次はどこへ行こうか。

 

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