The 113th big machine club
2012.05.19-20 第113回でっかいもん倶楽部 in ビーフライン ―知らず知らずの傲慢―
土曜の朝イチ、普段より一時間半ほど早く家を出て、職場へと向かう。 どーしても、どーしてもリアサスが気に入らなかったからだ。 「ロンツーのため、我慢して乗るんだ」と思ってたんだけど、『タクの店にノーマルシート預けてる』のを思い出したら、もうダメ。ディーラー試乗用のシートで、座面が広く余裕のある形状だから、ロングにはこれをつければケツの痛みは緩和される(はず)だ。 つわけで、朝からとっととリアサス交換。ホントに最後の、リアサス交換。 何度か交換して比較した結果、もう二度とS用のリアサスは入れないと決めた。 そこそこ使い込んでるけど、ほしいヒトがいるなら、取りにくればタダであげる。
サス交換のあとは真面目に仕事をして、終わってからシートを入れ替えてチェック。
左がいつものシートで、右が座面のひろいディーラー試乗用シート。 どうやらこれならロングでも大丈夫そうだ。 大げさに言えば、オフ車のシートからネイキッドのシートに交換したカンジ。 サスと違ってシート交換なら十秒で終わるし、ロングのときだけ取替えるコトにしよう。
シートのチェックが終わったら、おとなしく家に帰る。 タカシと宴会&ツーリングの約束があったからだ。 本を読みながら待ってると、午後2:30ころだったか、R750に乗ってタカシがやってくる。早速ビールで乾杯したら、そのあとズブロッカを呑みながらバカ話やまじめな話。タカシと呑むと、てめぇのクズっぷりを棚に上げて説教くさくなってしまうフシがあるので、気をつけながら呑んだ。 ま、そんでもアドバイスくさい話が多くなってしまったんだけど。
んで晩飯を食いに、電車でレブステーキへ。 松戸駅からタクシーに乗って、運転手さんにレブの宣伝をしつつ到着。 今回はふたりで『ライス抜きの450g&赤ワイン』をオーダ。 いつものバカ美味いさがりステーキに舌鼓を打ち、ワインで気持ちよく酔っ払う。 帰りは松戸駅まで歩き、コンビニでおやつを買って帰宅。 さらに呑んだくれ、酔っ払ってバカ話しながら火遊びしたり。 そんでも明日はツーリングなんで、ふたりとも比較的早めに就寝した。
明けて翌朝。 6時に起きると、タカシも起きていた。 コケないおまじないの意味もこめて膝とボディにプロテクタ付けたら、さあ、走ろうか。 昨日、後半ひかえたのと早寝したのが効いて、二日酔いもなく、朝から気持ちいい。 タカシも調子よさそうだ。
水戸街道へ出て、いつもの県道19号ルートで行こうと思ったら。 道ががらがらだったので、そのまま6号線を北上する。
土浦付近で降りそこなってUターンしつつ、無事、筑波山麓へ到着。 いつものコンビニで一服しつつ、ノリノリのドタマをクールダウン。 コケないためのおまじないみたいなもんだけど。
筑波をえっちらおっちら登ってゆき、本格的なワインディングに入った。 6〜7割で流しつつ、体重移動の具合を確認したり。 後ろのタカシに見えるよう、前の晩に話した走り方をちょっと大げさにしてやってみせる。とはいえ、そんな殊勝な行動が続いたためしのない、かみさん42歳。だんだん楽しくなってきちゃって、自然に速度が上がり始めた。自然つーか自分で上げたんだけど。 それでも前半は、時々タカシを待ったりしたんだが、やがて曲がりに集中。 初めて走ったときこそ、走りやすい道だなぁと思ったけど、日本全国あちこちのワインディングを走ってみると、やはりマルやゴーの言うように、筑波は狭くてトリッキーだ。走りにくいって程ではないけど、初見だったらリズムがつかみにくいかもね。 ま、トリッキーってコトは、ビューエル向きってコトでもあるんだけど。
観光やツーリングには少し早い、空いた道を気持ちよく走った終わりころ。 赤いポルシェに追いつく。するとポルシェが速度を上げ始めた。とたんに笑いがこみ上げてくる。ポルシェに続いてカーヴに入り、立ち上がりでマーク。それで気合が乗ったのか、ポルシェの速度はさらに上がる。とはいえ、クルマには狭い道だから、とんでもないペースではない。 「キリン知らないポルシェ乗りは、やたらバイクが突っかかってくるの不思議だろうな」 ヘルメットの中でニヤっとしながらつぶやき、あとを追う。彼はわりとスキモノだったみたいで、ツッコミがだんだん厳しくなってきた。こっちはツーリングの途中なんで、突っ込みは無理せず、コーナリングと立ち上がりで差をつめる。ポルシェの排気音が高くなる。 短い時間だったが、最後の方は、それなりの戦闘速度になってた。
頂上でポルシェとわかれ、俺らはそのままくだってゆく。 荒れたくだりを流しながら、時々、うしろむきの写真を撮ったり。 サスの動きを感じながら、「あーやっぱリアサスはこっちが好きだわ」と笑う。 タカシが少し離れたので、停まってカメラを構え、やってくるところをパチリ。 追いついてきたら、そのまま降りきって県道へ出よう。
県道41号線をビーフライン目指して北上。
と、工事現場に出くわした。 この画を見た瞬間、俺はシールドを開けてタカシを見る。 やつも当然、メットの中で笑ってる。 「ぎゃははは! いや、やんねーから! 何を期待してるか100パーわかってるけど」 やがて、信号の待ち時間が残り少なくなり。 「3、2、1、ゼロ、ゴーッ!」 そろ〜りと出発。タカシはメットの中でゼッタイ笑ってたはずだ。
国道50号を東へ折れて、途中のセルフで給油したら。 渋滞とまでは行かないが、混んでる道をクルマと一緒に走って、県道一号線で北へ折れ。 ビーフラインの始まりだ。 一年半ほど前の冬。カタシとふたりで走ろうとしたら、雪と凍結で通行止めになってて引き返すハメになったビーフラインだが、今日はもちろんバッチリ走れる。しかも春つーより初夏の日差しがアスファルトを灼(や)き、タイアのグリップを保証してくれる。 入りっぱなからスカンと曲がる愛機に気分は上々。 ダイナミックなレイアウトの広域農道を、気持ちよく駆け上がり、駆け下りる。
ツ−リングライダーに引っかかっても、無理に抜いたりはしない。 長いワインディングだから、そんなにカリカリやっても仕方ないし、いずれどこかで前に出られる。そんな風に心の余裕を持って走れたのは、ここんとこ長休みのたびに、『ソロで下道を延々と走るツーリング』ってのを重ねてきた賜物(たまもの)だろうか。 ビーフに入ってからは、筑波ほど曲率のタイトなカーヴが少ない。 それに直線は俺の方が遅いので、意識してアクセルをヌかなくても、あまりタカシを待たなくてすむ。ミラーに写る姿を見てると、初めて長く一緒に走った何年か前の竜神のころから比べて、格段に安定感が増しているのがわかり、なんだかうれしくなってしまう。 ま、そうえらそうに言うほど、俺だって速くも上手くもないんだけど。 そんな風に楽しんでたら、いつのまにか国道118号へ出ていた。
県北東部広域農道へ入る前のコンビニで休憩。 天気のよいワインディングを走ってきて、一服しながらダチと話す。 そんな楽しい時間を満喫しながら、写真をミクシィにアップしたりしt…… 「おぉう! ウッソだろう?」 赤丸の部分、茶色く変色してるのがわかるだろうか? ビューエルのメジャートラブルのひとつ、ライトメッキの劣化だ。 「ぎゃははは! タカシこれ見ろ! ライトのめっきがはげてる」 「あ、ホントだ。大丈夫なんですか?」 「大丈夫だ。つっても光量が減って、車検は通らないけどな。つーかよ、このまま行くと俺、ビューエルのメジャートラブルっつーメジャートラブル、ひととおり経験するハメになりそーだな。ほんっと、ビューエルさんはやってくれるよ。油断もスキもねぇ」 HIDにしてあるから発熱量も少ないし、大丈夫だろうとタカをくくってたんだが。 さすがビューエルさん、油断したら即、バッサリだもんなぁ。 こないだ、財布忘れたのをビューエルさんのせいにしたからだろうか?
広域農道を5キロほど走り、県道33号から北へ向かう。 ここから竜神吊橋まで15キロほどの区間は、普段よりもずっと空いてて走りやすかった。それも北に向かうにつれ、だんだん道がくねり始め、やがて幅も狭くなってくる。そして酷道と呼んでいいだろう、国道349号まで3キロほどの、国道461号線、舗装林道区間に突入。 ブラインドの多い林間の、ワインディングつーかせまっ苦しく荒れた舗装林道。 多少メンドーなこの道を、事故らないよう慎重に抜ければ、おまちかね。 国道461号線の東側、北茨城ビーフラインルートで、もっとも速度の乗るワインディングだ。でっかいおにぎりが売ってて、地元ライダーがよく集まる例のコンビニを横目にみながら、ナリさんも好きだと言ってたアベレージの高いツイストロードを、タカシとふたり走ってゆく。
さすがにこの手の道となれば、タカシもゴキゲンなペースですっ飛んでくる。 なので、こちらもほとんど気づかうことなく、思うままに走る。絶対速度こそSSには及ばないが、タイアとサスから伝わってくるロードインフォメーションと、コーナリングで感じる遠心力、車体のピッチング、すべてが楽しい。俺の乗ってきたすべてのバイクの中で、コイツがイチバン楽しい。 そんな幸せに陶然となりながら、現れる曲線を次々とトレースする。
調子に乗ってガンガン走り、ふとミラーを見るとタカシがいない。 「あ、離れちゃったかな?」 と思ってちょっとアクセルを抜くと、しかし、タカシはすぐに姿を見せる。それを見てニヤっと笑い、すぐさま、また加速する。タカシの上半身からチカラが抜けてるのがわかる。はは、あいつも楽しんで乗れてるんだなと実感できるのが、なんだかやけに嬉しい。 リズムよく走りながら、広域農道へ入る。 ここからは461より狭くなり、アップダウンも激しくなる。リアにトラクションのかかりやすい登りで、ぐいぐい曲がるのを楽しみ、コントロールが難しいぶんやり甲斐のある下りを楽しみ、身体中が踊りだしそうな喜びを感じながら、自然の中を駆けてゆく。 と。 青看板に『小山ダム』の文字が見えたので、右折してダムへ向かう。 別にそれほど見るべき景色があるわけでもないんだが、北茨城を走る時よく立ち寄るダムだ。 ここで一服しながら、キンキン言う空冷エンジンを冷ましつつ、タカシとバカ話に興じる。前にirohaと来たときの話や、相変わらず単車の話なんかをしながら、ダムを吹き抜ける心地よい風に吹かれる。そよそよと草木を揺らし、優しくほほを撫でながら、風が吹きぬけてゆく。 すっ飛ばしてるのに、恐怖感は微塵もなく。 ただただ、気持ちよくて自然に笑顔がこぼれる。
どうやらエンジンも冷えたようだし、それじゃあ、も少し走ろうか。 ダム横の道を下って広域農道へ戻り、そこからビーフライン北茨城ルートの最高到達地点、いつもの折り返し地点を目指して走り出す。大したものも喰わず、大したものも見ずに、曲がった道を走るだけ。なかなかつき合わせられる人はいないけど、俺のイチバン好きなツーリングだ。 地元のスキモノが集まる往復区間の始まり、自販機の横を抜けて登り始める。 途中で水が流れてたり、山菜取りだかなんだかの人たちもいたりするので、充分に余裕を持って安全マージンを取りながら、意識には道と単車、それに後ろを走るタカシがいるだけ。16の頃から乗り続け、不惑を過ぎても一向に飽きる気配のない、この乗り物にまたがって。 ただ、ひたすら曲がった道を走る。 やがて、イチバン眺めのいい、最高到達地点が見えた。 単車を停め、タカシとちょっと景色を眺める。 ここでUターンして、こんどは来た道を駆け下る。 折り返したという事実が、緊張の糸を切ったのだろうか。集中力が切れ、ちょっと散漫になってきたのを実感する。こういう時に事故りやすいんだ、気をつけなくちゃ。そうつぶやきながら、それでも単車が思うように曲がるのが、やたら嬉しい。 初めて、「ああ、俺は単車のジャマをしてない」と実感できた気がした。
下りきって、自販機の前で停まる。 地元の人らしきゼファー1100とS1000RRが居たので、挨拶をして単車を降り、コーヒーを飲みながら景色を眺めつつ、タカシとのんびりダベる。ずっと俺が先を走って、自分のペースで走らせてもらえたからだろうが、肉体的な疲労はほとんど感じない。 時刻もまだ午前中。 ゴー隊長なら、ここから500キロくらいは走るだろう。 ダベってるとタカシが、「かみさんを目標に」とかバカなことを言い出した。 ありがたいし嬉しいけれども、それは確実に目標をまちがってる。なので、「俺なんぞとっとと追い抜いて兄貴やもっと速い人、上手い人たちを目指せ」と、俺にしては珍しい的確なアドバイスをする。目標や目的は、高いところに置いた方が伸びるからね。 反面教師としての自信ならヤマモリだけど。
さて、時刻は早いけど、ガラガラだったぶんワインディングは充分楽しんだし、そろそろ帰ろうか。 「タカシ、どーすんべ? こっから戻るか」 「そっすね」 「下道でいいよな? こっから高速だと、逆に疲れるんだよ」 「俺も最近、あんまり高速を使わないんですよ」 つわけで、テキトーに休んだら、来た道を戻ろう。
帰りはペースを落とす。 直線はもう、120出てるか出てないか。 コーナリングだけ楽しんで、あとは無理をしない。 前が詰まっても無理な追い抜きはせず、信号待ちや行けるところで抜くだけ。 あと、俺が知ってる限りの(つってもほとんどないんだけど)、オマワリを見かけたポイントや、店を開いてるポイントに差し掛かったときは、大げさに速度をとしてタカシに教えた。いや、このルートって、普段からほとんどオマワリ見ることないんだけどね。 今回は、コレが唯一だった。
昼を過ぎて、さすがにクルマの姿を見かけるようになる。 一台や二台なら抜いて、それ以上のときは後ろでゆっくり。 そんな、ソロツーリングん時の走り方をしつつ、暇な時は景色を眺めたりしながら南下。 やがてビーフラインは終わり、国道50号に出たところで。 本日のCrazyMarmaladeでっかいもん倶楽部は、トラブルなく終了。 最近はロングとキャンプばっかりだったので、久しぶりに走りを堪能した、楽しい日帰りツーリングだった。よく知ってる慣れたルートだったので、ほとんど地図を見ることもなく、走ること、単車を操ることに専念できたのが、なんだかやけに新鮮だった。 タカシも、「今度は、マルさんやiroha兄ちゃんとも、また曲がりに行きましょう」と、ヤツの日記で書いていたから、どうやら楽しんだようだ。自分が楽しかったのと同じように、それもまた嬉しい。
ロングで延々と日本中を走るのは楽しい。 それに比べると、日帰りはどうしても色あせて感じていたのだが、それは例の、『脳内で勝手に変換して判った気になってた病』だったようだ。こうして実際に走ってみれば、距離が短くても、知らない道じゃなくても、やはり単車は楽しくて気持ちいい。 タカシは俺と走ったことで、「勉強になった」と言ってくれたが、どうやらそれは俺も同じだ。 経験してないことを、脳内で判った気になるのは好きじゃない。そんな風に思っていたはずなのに、気づけば俺自身が、「日帰りじゃたいして走れないし、たいがいのところは行ったしなぁ」なんて、脳内野郎になっていたことに、今回、改めて気づかされた。 世界は常に変化しているのだ。 わかってたはずなのに、いつの間にか忘れてたよ。 タカシ、ありがとな。
さて、来週は秩父でキャンプ。 知った気になってないで、また新鮮な気持ちで遊んでこよう。
|