The 114th big machine club
2012.06.23-24 第113回でっかいもん倶楽部 in 大郷戸 ―タイミング(後編)―
宴会場の全景。 やっぱし、真ん中に焚き火がないと、画的にすわりが悪い気がする。
酔っ払って大騒ぎしていたら、さすがに日ごろの疲れが出たようで。 俺の記憶は、このあたりでいったん途切れる。 幸せそうに寝オチする42歳。 その間にも、面白いことがあったらしいが、詳細は他の連中のところで。 ろろちゃんの聖火ランナーは、俺も見たかったなぁ。
ぶるっ。 自分の震えで目を覚ます。 すっかり陽が落ちて、あたりは暗くなり、肌寒ささえ感じるほどだ。 この時期に特有の、『気温や気圧の急激な変化』にやられながら、上着を着て立ち上がる。 行く先はもちろん、eisukeさんのマキボックスだ。
箱からマキを取り出して積み上げると、景気よく燃やし始める。 これこれ。 やっぱキャンプはコレがなくっちゃね。 火を囲んでバカ話をしながら、ダメ人間たちと酒を呑む。 初夏の夜空にはいつの間にか、少しだけど星が出ていた。それをながめてると、ストレスが俺の身体から溶け出して、闇の中へ流れ去ってゆく。焚き火を囲む野宴や 、星を眺めて眠る野宿ってのは、もはや、俺の人生の必須項目になっているようだ。
俺はこいつらが大好きだ。 仲間というには結束もなく、よく言えば独立独歩、悪く言えばまったくまとまりのない、だが、それゆえに、鬱陶しい依存や束縛のまったくない男たち。自分勝手で、好き勝手で、とにかく勝手で、おまけにいいかげんで、小さいことにこだわらない、気持ちのいい連中。 残りの人生は、できればこういう連中と過ごしてゆきたいものだ。
酔っ払ったタツヤは、アチコチに迷惑電話している。 いつもより口の悪いよしなしが、そんなタツヤに暴言を吐いている。 それを見てeisukeさんが、楽しそうに笑っている。 ろろちゃんは、いつものように天才的なツッコミやボケを展開する。
楽しく呑んでいると、いつの間にか夜遅い時間になっていた。 「もう、そろそろ寝ましょうよ」と、タツヤが言った瞬間。 「だったら、お前だけ寝ろ」と、全員が口をそろえて笑う。本当はタツヤもまだ、しゃべったり笑ったりしたいのだが、もう眠くて仕方ないようだ。それでもしばらくは頑張っていたが、やがてついに、「寝ます」と立ち上がり、自分のテントへ向かって歩いてゆく。 と、俺は『気になっていた疑問』を口にした。 「そのコット、お前のテントに入るのか?」 「……試してない」 「ぎゃはははっ! ぶっつけかよ」 ちょっと家で試してくりゃいいのに、なんでわざわざ現場で冒険するんだろう。 まあ、そんなところが面白いんだけど。
なんとかコットを搬入したタツヤが、テントのファスナーを閉じた瞬間。 我先にと集まってきた山賊たちは、大声で騒ぎ始める。
「タツヤ寝た? 寝たなら、アレをやろう!」(もちろんなんの企画もない) 「アレは何だ? 面白れぇなぁ」(闇以外なにもない) 「タツヤ寝ちゃってかわいそうだなぁ! 面白いのに」(タツヤがいないことを面白がってるんだが)
イケニエを囲んだ原住民のごとく騒いでいると、ファスナーが開いてタツヤが顔を出す。 「うるさい!」 「ぎゃははははははっ!」 酔っ払った山賊は、手が付けられない。
と。
ろろちゃんがタツヤのテントの前に立った。 「かわいそうだから、ボクが子守唄を歌ってあげよう」 そして次の瞬間。 「あ〜あ〜! あーああー!」 ジャングル大帝のテーマソングを歌いだした。
一瞬の間があり。 その場にいた全員が(おそらくテント内のタツヤも)、狂ったような大爆笑。 ここで冷静に読んでるヒトには伝わりづらいだろうが、あの酔っ払いっぷりに、あのタイミングで、真面目な顔をしたろろちゃんがオペラ歌手のようにまっすぐ立ち、低くシブい『いい声』で歌いだした姿を見れば、堪えられるヤツは存在しないだろう。 俺は涙まで流し、腹筋の痛みに耐えながら、笑い続けた。
笑って笑って笑い倒した夜は、こうしてにぎやかに過ぎていった。
明けて翌朝。 目を覚ますと、eisukeさんが帰るところだった。 あわててテントから這い出してみると、みんなほとんど撤収作業を終えている。 「おお、よかった。これで全員の顔が確認できた」 と笑いながら帰ってゆくeisukeさんに手を振って。 よしなしにもらった固形燃料で、朝のお茶を沸かす。 やがて、俺以外のみんなは、準備が整ったようだ。 タツヤが、ロケットスリーにまたがって帰り。
ガッツポーズを決めたろろちゃんも帰る。
最後によしなしを見送ったら。
俺は夜露に濡れたテントを乾かしながら、ゆっくりと撤収作業。
と。 蝶が一頭、ぶん投げてあったサングラスにとまる。
すでにジリジリと照り付ける太陽に灼(や)かれながら、小一時間かけて準備を終えたら。 寄り道しながら、ゆっくり帰ろう。 湖畔をのんびりと走りぬけ。
ガラガラの県道を気持ちよく駆ける。 「気分がいいから、筑波山あたりを流してから帰ろうか」 そう思って筑波山を登ってゆくと。 通行止めだった。 <ツール・ド・つくば/筑波山ヒルクライム大会>てのがあったらしい。 登れないんじゃ仕方ないので、そのまま来た道を戻って県道に乗り、柏を目指して走り出したところで、CrazyMarmaladeでっかいもん倶楽部は無事に終了。ソロキャンプのつもりが、期せずして山賊宴会になった、『嬉しい誤算』の一夜だった。 毎度の事ながら、楽しい連中とすごす楽しい時間は、俺の人生の清涼剤だ。
そしてコレを書いてる今、俺はもう、すでに次のキャンプへ行きたくて仕方ないのである。
近いうち、こんどこそソロで行ってこようかな。
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