The 31st big machine club
2007年11月13日 31st Crazy marmalade でっかいもん倶楽部 in 首都高 〜圧倒〜
「ま、一時間ちょい見ときゃ間違いなかろう」 午後10時過ぎころ、ハヤブサをまたいだ。 いつもなら6号線を南下して四つ木あたりから乗るんだが、この日は何も考えてなくて、普通に16号を走って柏インターから乗ってしまう。さすがにこの時間ともなると、常磐道はガラ空きだ。遠慮なくアクセルを開けてぶっ飛ばす。 丸一日働いた後なので、やたらと目が乾く。 走りながら、時々前が見づらくなる。 いかんなぁと思いながら、ヘルメットのシールドをいじってみたり、クリアのウインドシェード(サングラスみたいなもんだ)をつけたりはずしたり、いいポイントを探る。なんとか、マシなポイントが見つかったので、三郷から湾岸を経由して、芝浦に入った。 時刻は10時40分。 早すぎ。 いつも下道併用するところを、全線高速なんだから当たり前なんだけど。 つーか、どんだけワクワクしてんだ俺。
んで、キャスタにメールして『早すぎ!』と的確な返事をもらいつつ、タバコを吸ってぼーっとしていると。 どこかから、ヘリコプターのローター音が聞こえてきた。 あん? とそっちを見ると、白いM109R。銀星だ。まったく、バカな男である。
銀と一緒にコーヒーを飲みながら、ぼけっとみなを待つ。
やがて、キャスタが現れた。 キャスタの駐車した場所に移動して、バカ話をしていると、今度はGSX-R1000がやってくる。 どうやらキャスの知り合いらしい。もっとも、ヤツも初めて会う人だったんだけど。 PCによるコミュニケーションが発達した現在、良くある話だ。
なお、今回のレポではこのヒト以降、この日この場にやってきたすべての人を、あいまいに表現させてもらう。『ここに書くよ』って話をし忘れ、各人の了解をもらってないため、なんか弊害があっちゃマズいからつー予防措置。 ま、礼儀だよね。
そのうち、次々とSSやネイキッドがやってくる。 仲間同士の挨拶を傍観したあと、こっちも挨拶をして、しばらくダベる。 つってもほんの10分くらいかな? すぐに『走り出そう』という話になり、ルートの確認をし始める彼らを見て、俺は思わず微笑んでしまった。 何はともあれ、まず走る。気持ちのいい話だ。
とは言え、俺は首都高など、最近ようやく看板を見て走れるようになったばかり。 看板見ながら走れば、なんとか迷わずに目的地までイケるが、ルートだ道順だ言われても、地図がすっかり頭の中に入ってるわけじゃない。この時だって、キャスに今話した道がわかるか? と確認されて、『や、ちっとも』と答えざるを得ない状況だ。 なので、とりあえずケツについて走る。 『箱崎まではゆっくり行く』との言葉に気を抜いていたら、そこまでも結構いいペース。 一番後ろの銀は、あっという間に見えなくなった。
そして箱崎に到着し、そこからは彼らで言う『いつものペース』で走り出したわけだが。 や、速い、速い。 しばらくキャスタの後ろについて走ったのだが、そのうち段々苦しくなる。
やがてキャスがひとりを抜いたので、俺はその人の後ろについて走った。 その人のテールランプこそ、何とか視界にとどめて走れるものの、さらに前を行く連中など、あっという間に闇の中だ。前のヒトだけは見失うまい (見失ったら道がわからないから)と、直線でどうにか追いつき、コーナーを必死にへばりついて走る。 この段階で、いっぱいいっぱい。 次にどうなっているかちっともわからないし、高速道路だけに峠みたいなタイトなコーナーはないから、ひたすらアクセルを開け、コーナー手前で前の人を参考にしながらブレーキをかける。当然、減速しすぎることが多く、そのリカバリのために、直線でもっと頑張らなくちゃならない。 かなり、厳しい。
いわゆる新環状をまわり、B2へ出たところで車が多くなり、ほっと一息。 さすがにすりぬけが多くなれば、それほど苦労しなくてもついてゆける。 「たしか、ここからレインボーブリッジの方に行くんだよな。えっと、どこ入れば……あぁ!」 すっと左へ上がってゆくその人のテールを尻目に、ハヤブサのノーズは大井へ向かって一直線。ものの一周ではぐれた。ま、はぐれちゃったら仕方ないので、大井からぐるっと回って、ひとりさびしく芝浦へ入る。今日に限っては、ひとりで走っても意味がない。 それに、理由はもうひとつあった。 実はこの日、K君も参加表明していて、本当ならちょっとの遅れで来るはずだったのだが、彼も俺と同じく、首都高には詳しくない。さっきの俺とまったく同じ場所から、まったく同じに乗りはぐって、キッチリ大黒まで行っちゃってたらしい。 その旨のメールが入っていたので、K君を待って合流しようと考えたのだ。
しばらく待ってると、たぶん新環状を二周だか三周して、みなが戻ってきた。俺はそこで、いきなりはぐれたことを詫びる。ま、彼らは仲間同士で走ることが目的であるから、俺が居ようが居まいが何の痛痒もないだろうが、そこは礼儀だ。
ここで走ってきた連中の話を聞いたり、俺もバカ話に参加したりして、時を過ごす。 そのうち、遅れてた銀星も戻ってきた。 キャスの友人で、悪魔のように速い(俺はついていけないから見てはいないけど、キャスの話を聞く限りでは、とんでもなく速い)ヒトが、気さくに話題を振ってくれるので、乗り方の話や、VTXの話なんかをした。えらく男前のヒトだった。
ふと携帯を見ると、気づかない間にメールと着信があった。 PAはクルマの走行音で、着信音が聞こえづらいのだ。 開けてみるとK君で、『ガソリンがないので、いったん降りて給油します』とのこと。 まだもう少しかかりそうだが、最悪、俺が芝浦で待っててやればいい。
つわけで、もうしばらく話をする。
やがて、みなが『もう一度回ってから帰る』と話していると、キャスタが、 「俺は、彼ら(俺と銀星)と一緒にゆっくり走ります」 と言い出す。 『せっかく久しぶりに合えた仲間なのに、そりゃ悪いだろう』と思ったが、『せっかくですから』との言葉に、最終的には遠慮なく先導してもらうことにした。で、じゃぁ、出ようかと言うころになって、ようやっとK君も到着。最後に、みなに挨拶した後、キャスタの先導のもと四人で走り出す。
芝浦を出て、新環状を二周して解散しようという話になり、「今度はちっとでも付いていくぞ!」と決意も新たに、キャスタの後ろでアクセルを開ける。キャスのR1は下りのコーナーを、車を縫いながらえらいイキオイですっ飛んでゆく。俺も負けじと突っ込むが、膨らんで開け切れない。 今までは、高速道路で深くバンクさせることなんて、ほとんど経験したことがなかった。 だが、ここをヤツのペースについて走ると、嫌でもそうせざるを得ない。 なるほど、全開走行すれば膝を擦るというのも、もっともな話だと思いながら、新しい経験に嬉しくなって、チャレンジを重ねる。そして嬉しいのとは別に、 キャスタが時々待っててくれるのが、申し訳ないやら情けないやら。 こんなの、久々の気分だ。 それでも、二周目に入ると、そんなには待たせなくて済むようになってきた。や、キャスが本気じゃねーからだけど。それでも、だんだん恐怖と面白さの天秤がつり合ってくる。路面はガタガタ、道は相変わらずカイモクわからない。そのくせアベレージだけは高いから、とにかく怖さが先立ってた。 ところが、 「あ、ここは見たぞ。次は確か、左に深く曲がりこむんだよな?」 てな感じで、少しづつ余裕が出てくる。 楽しい。
二周目も終わりに近づき、B2からまたお台場線に乗ろうというところで。 今度こそ間違えないぞと思ってたら、キャスタが不意に『左へ行け』と合図を出す。『ありゃ、やっぱり間違えてたか。学習しねぇなぁ、俺』と、あわてて左へ入るってーと……うん、これ出口だ。今度は、曲がるの早すぎた。 が、もはや時すでに遅し。 なすがままに下道へ出ると、きょろきょろしながら入り口を探す。 ゆっくりとしたペースで、周りを見回しながら、高速入り口を探して走ってると。 いきなり後ろからでかい声が聞こえてきた。
もんすご聞きなれた、割れたスピーカーの声。そう、つまり。 「前のバイク、左へ寄って停まって下さい」 パトカーだ。 もちろん、何も悪いことはしてないので(わりとしてます)、素直に停車して、堂々と単車を降りた。すると寄ってきた初老の警察官ふたりが、『すいませんねー』と言いながら、持ち物検査を始める。どうやら、腰にぶら下げていたキーの束が、ナイフに見えたようだ。 ひととおり持ち物を見せたあと、今度は、かみくんお得意の職務質問タイム。 てきとーに受け答えをしながら、キャスタに『職務質問中(笑)』とメール。 そのうちやっと納得したのか、彼らは停めたことを詫びて去ってゆこうとした。
頭を下げるふたりに、俺は晴れ晴れとした笑顔で。 「写真撮らせて」 そりゃ、ヘンな顔するよな。
警察に道を聞いて、無事に高速に乗りなおし、芝浦へ向かう。 んで、芝浦に着くと、K君からメールがきてた。 「かみさん、本当にすいません。かみさんの降りたところから、僕も降りちゃいました」 ま、悪いのは俺なんだけどね。 芝浦で待つと返事して数分後、無事にK君と合流を果たした。コテンパンにされた俺たちは、それでもなんだか楽しくて、ニヤリと笑いあった後、柏を目指して走り出す。柏について俺の家で一杯ひっかける(主に俺が)ころには、心地よい疲れが、俺たち二人を包んだ。 てなわけで、第31回 crazy marmalade でっかいもん倶楽部は、これでおしまい。 てめぇのヘタさと遅さを知った、モノすげぇ有意義な一晩だった。
イイワケし始めれば幾らでも出てくるだろうけど、言い訳したって速くなれるわけじゃない。だったら、そのヒマに走った方が間違いないだろう。そんなコトより、コテンパンにされたってことは、イヤでもその先の世界が予感されるわけで、それがたまらなく嬉しい。 なんだかやけにワクワクとしてきて、我ながら可笑しいというか、嬉しいと言うか、そんな気分だ。 背徳感つーのかな、夜攻めるのは独特の雰囲気があって、変にテンションが上がる。 まるで夜の街にあこがれるガキの頃に戻ったみたいで、気恥ずかしいけど面白い。
夜の高速は距離感もつかみづらいし、怖いことも多い。 でも、それに見合うだけの魅惑の世界であることも、どうやら間違いないようだ。 こりゃ、またチャレンジしないとな。
とりあえず、道を覚えるところから。
|