The 50th big machine club

2008.04.20 第50回でっかいもん倶楽部 in 榛名 〜クルーザ☆クルーザ〜

 

ウチの掲示板で『前日に近所の橋の下でテント張ってる』と、なに言ってるんだろうこのキチガイ的な発言をしてた、俺並みにちょっと可哀想なダメ人間のNEKOさん。

相変わらずのアレなヒトっぷりだが、その書き込みを見て、豪雨と強風を心配したEisukeさんは、俺から連絡先を聞き出し、NEKOさんに連絡して、そのまま無事捕獲に成功。グレイ張りに吊り上げられたNEKOさんから『Eisukeさんの友人宅で宴会になった』という連絡が来た。

そんな宴会なら俺もものすげぇ参加したかったんだが、連絡をもらったときは、すでに柏は雨降り。そして俺も焼酎を引っ掛けてしまっていた。涙を呑んで強襲をあきらめたのだが、なんかすんごく損した気になったので、軽くヤケザケ。ベロベロになってベッドにもぐりこむ。

まぁ、どうせ明日はNEKOさんも二日酔いだろうしね。

 

あくる日の朝、家を8:30に出る。

約束の時間は駒寄に10:00だから、まあ楽勝だろう。そう思って柏から常磐道に乗ったら、うっわ、なんだこの風。結構な突風が吹いてて、車体が煽られる。怖いなぁと思いながら外環に乗り、さすがに強い風の中なので180くらいで流す。

最近は速度に慣れてきたようで、このくらいだと覆面を探しながら走れる余裕さえ出てきたのは、ちとうれしい。ま、残念ながら俺は四輪のことをビタイチ知らないので、車種での見当はつかないんだけど。

風に振られながら大泉から関越へ。

関越に乗ったら慣れたのか弱くなったのか、さっきより怖くないので、来週の練習がてら、開けられるところまで開けてみる。とは言え、まるきし風がないわけじゃないし、誰かとヤりあってないと、最高速アタックなんてなかなかやれるもんじゃない。俺の場合は、ね。

 

んで、その代わりつーのも変だけど、いつも5〜6速で走るところを、4速を多用して走ってみる。エンブレが効く分、ブレーキをほとんど使わなくなり、加速のピックアップがいい分、やたら車線変更。三車線を目一杯使って遊べるのが楽しい。

目の前にmoto君やrakを想定してぶん回し、食いしばった歯に気づいて『いかんいかん、リラックスだ』と独り言ちる。しょっちゅう後塵を拝してるから、俺の脳内で再現されるマルやmoto君、rakの後ろ姿ってのは、かなり正確なはずだ。ヤツラはやっぱり、速かった。

『脳内の相手と追いかけっこ。しかも完敗』とか、他人が聞いたら同情されるだろう、ちょっとかわいそうな遊びをしつつ、気づけば上里付近。

ガソリンを入れるかどうか迷ったが、その少し前にぶち抜いた赤いCBRかなんかが、ちょうどイイカンジで追いかけてきたので、そのまま突っ走る。速いけど、それをキープするのは苦手なようだ。車がいなくなると近づいてくるが、ポツポツ車がいて三車線使うような場面になると、明らかに遅れ始める。

赤城付近で完全にミラーから消して、だいぶん機嫌よく駒寄へ。

9:30だから、柏からジャスト一時間だった。

 

駒寄でNEKOさんにメールする。

んで、のんびり周りを見回していると、あれ? 駒寄ってPAだけじゃなく、ETC専用出入り口があるんだ? へぇ、知らなかったなぁと、ETCで入ってくる車を眺めていると、一台のでかい単車が、バーが開かなくて止まっている。

係員のおじさんとしばらく話したのち、その単車は一度バックして、ETC車載機の点検を始めた。

なるほど、ああいう事もあるのかと見ていたが、うん? あのライダー、知ってるぞ? すげぇよく知ってるぞ?

そう、最近ワルキューレを買ったNEKOさんだった。

 

しばらく点検してから、またゲートまで行くが。

 

 

開かない。

結局NEKOさんは、チケットをもらって入ってきた。EisukeさんもETCなのだが、やはり開かなくて難儀したそうで、ETC専用出入り口ってのは、まだ単車に対応してないのかね? そんなわけないよね。俺はまだ買わないからどうでもいいけどね。

 

PAでご挨拶すると、案の定、NEKOさんは俺と同じく、二日酔いでむくんだ顔をしていた。つーかNEKOさんと会ってるときの90%は、お互いに二日酔いだ。俺らどっちも、夜になるほど本調子になるタイプだからね(長生きできません)。

お下品なバックミラー。超、NEKOさんらしい。

 

イチバン元気なEisukeさんが、今日の天気やコースを説明してくれているのだが、俺とNEKOさんは、もう帰ろうかな的表情でぼーっとしている。まぁ、走り出しちゃえば元気になるんだけど。 んで、10:00過ぎまで待ってみたが、あとは誰も来なかったので、出発する。

eisukeさんのあと付け電源スイッチ。100円のスポイトで雨対策してあるのがポイント。

Eisukeさんは高速を当たり前の速度、いや、それよりは少し速いくらいの速度で走るのだが、ここんどこrakやgo!!!君と走ってたので、ずいぶん遅く感じる。まぁ、今日はそういう走りじゃなく、NEKOさんやEisukeさんとワインディングを楽しむ日だ。

エイプハンガーのワルキューレとVTX相手に高速ぶっ飛ばすのは反則だしね。

 

渋川伊香保を降りて、榛名湖に向かう。

榛名までは、しばらく街中を走った後、例の頭文字Dで有名な峠道だ。だが、観光シーズンの始まりだからか、けっこう車が走ってる。いろんな種類の単車も。たくさん走っていて、いかにもツーリングな感じが逆に新鮮だ。

さすがに街中を車と走るときは、NEKOさんのエイプハンガーが羨ましかった。

信号待ちとか、すんげぇ楽そう。

車と一緒に峠道をたらたら登り、榛名湖へ出、榛名湖から裏榛名と呼ばれるワインディングに入る。ワインディングになったらうれしくて、他のツーリングライダーの後ろを走るのが、我慢できなくなる。NEKOさんやEisukeさんの前に出て、ツーリングライダーを片っ端からぶち抜いて走り出した。

 

途中で長い直線が見えたので、一度停まって写真を撮る。

 

すると、追いついてきたNEKOさんが、構えたカメラの前に入っておどけ始めた。

つーか、何十台もいるツーリングライダーを、ワインディングで、しかもワルキューレでぶち抜いてきたのか、このヒト。相変わらずキチガイだなぁ。俺はうれしくなってヘルメットの中でニヤケてしまった。

 

さて、ふたたびNEKOさんとEisukeさんの後ろへつき、本格的にワインディングになってきたところで、ようやく裏榛名を観察する冷静さが出てきた。

ありゃ、意外と荒れてるなぁ。Zが『裏榛名走るときは、唯一SSが欲しくなる』言ってたから期待してたけど、雪解けしてすぐだからだろう、周りに砂も浮いてるし、ちょっと走りづらい。裏に入ったら車が極端に少なくなったのはいいけど、これじゃあんまり楽しめないかなぁ。

なんて思いながら、荒れた狭いワインディングを走っていると。

急に目の前が開ける。

休憩所みたいなところには単車がたくさん停まってて、まさに、走り屋が集まってるっぽい雰囲気だ。もっとも、日曜日の昼間に地元の走り屋はいないだろうから、これ全部、ツーリングライダーなのだろう。箱根や伊豆みたいに、アホほどいるわけじゃなく、でも、ココが走りやすい場所なんだろうと推測できるくらいには、単車が停まっている。

なるほど、ココからが本番なんだな。VTXとワルキューレの後ろについて、余裕を持ってコースを観察しながら下っていくと、アホみたいにフルバンクしながらNSRが上がってきた。

うっわ、地元かな? ツーリングかな? 速いつーかキチガイ沙汰だなありゃ。

速いのがいるんだと思うとうれしくなって、ワクワクしながら峠を下りきる。分かれ道のあるT字路でUターンして単車を停め、ガソリンが乏しくなってきたので、その旨Eisukeさんに伝えると『俺も』とのこと。

NEKOさんはまだ大丈夫だっつーので、NEKOさんを残してふたり、ガソリンを入れに榛名湖まで戻る。さぁ、登りのワインディングだ。いっくぞー!

 

登り車線は登坂車線のお陰で広く走りやすい。気持ちよく速度の乗る直線もあるので、何箇所かはストレートエンドで150〜200近くでそうな感じ。ステップを削り倒しながら走ってるEisukeさんには申し訳ないが、この道はもう、間違いなくSSとかメガスポーツの独壇場だ。

そんでもNEKOさんと走るときの俺の決め事って言うか、NEKOさんの影響なんだけど、直線はそこまで飛ばさずに、気持ちいい速度でコーナリングを楽しみながら走る。速いヤツラを追いかけるときとは違った、単車の操り方を確認するような作業が、また、楽しい。

さっきの単車が集まってるところまで一気に登り、Eisukeさんを待つ。

しばらくしてやってきたEisukeさんと一緒に、榛名湖までもどって給油。ウォンウォンとやかましい旧車會をかわしながらスタンドに入り、取って返してまた裏榛名へ向かっていると、途中の休憩所でNEKOさんが待っていた。そこで単車を停めて一服。

何時だろうと携帯を開くと、マルからメールが来てた。

『あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜あめふれ〜 き〜っ!』

恐ろしいことに、少しポツンときていたのだが、そんなことを教えてヤツを気持ちよくさせる言われはない。

ごっきげんな調子で、『榛名たーのーしーなー!』と写メを送りつけてやる。

すると、速攻で折り返しが来た。

『会社、せーつねーなぁー』

合掌。

仕事だの嫁さんだの子供だので走れないってのは、俺には想像つかないけど、悔しいもんだろうなぁ。仕事は、まぁ、しなくちゃまずいだろうから、こりゃ仕方ない。でも、家族に好きなことを止められるってのは、俺はいやだなぁ。

それとも仕方ないとあきらめきれるものなんだろうか。NEKOさんみたいに子供がでっかくなっちゃえば、多少は出やすいんだろうけど。ま、子供を持つ予定はないので、俺には一生わからないだろうけどね。

と、休憩所でEisukeさんがしゃがみこむ。

NEKOさんは初見だが、俺は見慣れた光景。バンク角の少ないVTXは、バンクセンサーから、場合によってはステップまでが消耗品だ。それを見越して、この変態はバンクセンサーを何個も持ってくるのである。アタマのワルい話だ。ま、俺もそうだったけど。

つーかさ、ベアリングだのスペアのバンクセンサーだの、やってる時は当然だと思ってたけど、こうやってクルーザから離れてその作業を見てみると、う〜ん、本気でバカだな。俺をキチガイ扱いしてたヒトの気持ちがすげぇよく解る。

 

NEKOさんのワルキューレ。

後ろを走ってるときから、おや? と思っていたのだが、こうして停まってるときに確認してみると、ワルキューレの最低地上高の高さって言うかバンク角の多さに驚く。VTXではガリガリと擦っちゃって楽しめない道でも、ワルキューレは余裕を持って走っている。

もちろん、それなりの速度域なんだけど、少なくともVTXのようにストレスが溜まるほどガリガリとはならない。細かい道なら、重量車なりにわりと厳しいところまで攻めてゆくと、これ以上は無理だなって速度域までバンクが足りなくなることはないみたいだから、充分楽しめそうだ。

ハイスピードな峠道だと、さすがにシンドイだろうけど。

ホンダも、GLの新型の1800エンジンで、このカタチのワルキューレ出せばいいのに。

ルーンなんてバカ高いのに曲がらない(高速のPAで前に出会ったルーンの乗り手が、バンク角がないって嘆いてた)スタイルカスタムマシンじゃなくて、ちゃんと走ってちゃんと気持ちのいい、このワルキューレの正常進化版が出たら、俺、買うかもしれない。

 

ここでようやく、『あ、景色写してない』と気づき、あわてて榛名湖を写真に収める。

 

それからダベってるうちに、NEKOさんがVTXに試乗することになった。またがった瞬間、

「ハンドル低いなぁ」

うん、NEKOさん。それはVTXがどうとかカンケーねぇです。単にあなたがエイプハンガー使いだからですよ。そこでダメ出しされたら、世界中にあなたの気に入るバイクはねーです。 とツッコむまもなく走り出すNEKOさん。

しばらくして帰ってくると。

「怖ぇー! 俺やっぱ、低いハンドルダメだわ」

だーかーらー!

 

足やフレームの硬さはいいけど、バンク角が足りないから、攻めたらストレスが溜まりそうってのがNEKOさんの意見。元VTX乗りの俺も、現VTX乗りのEisukeさんも、そこは確かにうなずくしかない。

ワルとVTXを色々比較しながら、ダベりは続く。

走る時間と同じくらい、こんな時間は楽しい。

普通この手の単車に乗る人間は、速さを否定というかあまり重きを置かないことが多いけど、このふたりは違う。ぶっ飛ばすし、300kgを超えるクルーザを振り回しながら、破綻する部分を四苦八苦して、あるいは楽しんで乗りこなし、クルーザだからなんて言い訳は一切しない。

逆に、『クルーザで攻めると、こんな風に楽しいんだよ』って引き出しを、たくさん持ってるのが気持ちいい。唯一、問題というかイカンなぁと思うのは、この二人と話してると、また、クルーザが欲しくなるってことか。

ハヤブサの速さにシビれているし、自分でもびっくりするくらい気に入ってる。

だからハヤブサを手放してってことは、少なくとも今はないだろうけど、でも、やっぱり俺、クルーザも好きみたいだ。アホみたいな巨体を、ねじ伏せるようにして(実際ねじ伏せられてるかはともかく)操ってる感を楽しみながら走るクルーザライド。

やっぱりこの道もいいねぇ。

 

やがて、肌寒くなってきた。

下界の気温は20度を超えていても、このあたりじゃ10度くらいになってしまうんだから当たり前だ。それじゃぁ、も少し走って飯を喰おうって話になる。とりあえずもう一度、裏榛名へ向かおう。

裏榛名に入って、今度は俺が先頭でしばらく走る。さすがにハヤブサの旋回性能はクルーザを凌駕するので、しばらく行くと単独行になった。荒れたワインディングを走りながら、さっきの気持ちいい道を目指す。

と、DRだかなんだか、モタードがいた。

言ってもこういう道なら、モタードやオフ車は強い。強引に抜いても、荒れた道で突っつかれるのがオチだろう。なので、しばらく後ろについて走りながら様子を見る。うん、そんなに速くないな。どうやら抜いたあと突っつかれることはなさそうだ。

驚かさないように、短い直線で一気に抜く。抜いたあとはちょっと気合を入れて荒れたワインディングを走り、モタードがミラーから消えたところで、ライダーの溜まる例の休憩所についた。そのまま休憩所をやり過ごし、アタックに入る。

くだりは一車線だけど、登り車線が広いので、視覚的には安心感が高い。ダラダラ走ると逆に怖いので、アクセルオンで回れるように、キッチリ加速。メリハリを意識して走る。こりゃ確かに、この道はハヤブサつーかSS向きだわ。

つま先擦ったり、ケツ落としたりしながら遊んでいると、右コーナーの入り口にヘルメットがぽつんと置いてある。あ、なんかあったな。と思いながらペースダウンして下ってゆくと、案の定、事故ってる。黒いハヤブサか何かが、ガードレールの下にもぐりこんでた。

くだりで突っ込みすぎて、握りゴケでもしたのだろうか。仲間かどうか走らないが、ずいぶんたくさんのヒトが集まって助けてたので、これなら俺は要らないだろうと、そのまま下ってゆく。裏榛名を下りきり、T字路で待っていると。

やがてワルキューレがやってきた。

NEKOさんはヘルメットを取るなり

「ハデに事故ってたねー。かみちゃんかと思ったよ! 下りきってココに来ていなかったら、速攻でUターンしようと思ってたんだ」

そりゃぁ、心配してもらってありがとうございま……

「来る間、思ったよ。おもしれェからココに居るなよーって。ぎゃはははははっ!」

鬼か。

さらにそのあとからやってきたEisukeさん。

「かみさん、今回のネタはずいぶんでかいなーって思ったよ」

ブルータス、おまえもか。

 

そのまましばらくダベってたのだが、どうもあんな事故を見たあと、同じコースを走るのは気分がよくない。なので地図を見て確認し、広域農道の文字に食いついた俺たちは、そのまま10kmはありそうな広域農道を目指した。

目指したつーか、目の前がその入り口だったんだけど。

 

走り出してすぐ、桜が満開〜ちょっと散り始めてる場所に出くわす。

 

単車を停めて写真を撮ってると、すぐにふたりが追いついてきた。

カメラを仕舞って走り出し、NEKOさんの後ろにつける。

相変わらずこのヒトは、単車を操るのが楽しくて仕方ないって言う、見てる方までうれしくなっちゃうような走り方をする。ちょっとケツ落としてみたり、リーンウィズで走ってみたり。四苦八苦してると言うよりは、次はこれを試そう、次はこうやって乗ってみようって、まるでガキがおもちゃを貰ってニコニコしながらいじり倒してるような印象だ。

ハヤブサの方が旋回性が高いのが、逆に悔しくなってくるほど、めちゃめちゃ楽しそう。

そしてもちろん、クルーザとしてはおかしなくらい速い。

バンクセンサーを削り捨てながら走るEisukeさんにも言えるけど、ぶっ飛ばすクルーザ乗りってのは、本当に走りを楽しんでる気がする。歳食ったからのんびり、危ないからゆっくり、なんてヒトたちには一生味わえない楽しさを心から味わい、本来なら早く走れ(ら)ない言い訳になりそうな『速さじゃない、楽しい走り』ってのを、しゃぶりつくすように味わってるんじゃないだろうか。

もちろん、ふたりとも散々すっ飛ばしてきて、その上で今の域にたどり着いたのだ。だから説得力があるし、心底楽しんでることがわかる。俺も今はとにかくぶっ飛ばし、やがてこの域に達したいものだ。

 

そんな風にNEKOさんの走りを眺めていると、途中でNEKOさんが速度を落として、前に行けとゼスチャーをする。なはは。突っつかれるの嫌いなんだ、やっぱ。このヒトも、ほんとガキだよなぁ。楽しいなぁ。ニヤつきは止まらない。

そのまま前に出て、今度は俺が先になって走りだした。

広域農道とは言え、裏榛名の広さとは比べるべくもない。ツイストはしてるものの、両脇にはまだ少し砂が残ってる。ただ、広域農道らしく、呆れるほど車が居ない。ほとんど貸切状態で、俺たちは気持ちよくワインディングを駆け抜けた。

榛名の南を走る道にぶつかったところで、左へ曲がってハヤブサを停める。ほどなく、NEKOさんがやってきて、さらにEisukeさんもやってきた。んでEisukeさん、そのまましゃがみこんで、またバンクセンサーの交換。ムダに手際がいいのが笑える。

 

休憩しながら軽くしゃべっていると、ネイキッドバイクが前を通り過ぎて行く。目の前のコーナーで砂にリアを取られて、ずるっと滑らせながら走ってゆく姿に、俺たちは顔を見合わせて爆笑。

「やっべー、あんなの見たら走れないよ。いや、逆に見といてよかったか」

「結構、イってましたね。怖ぇなぁ」

「じゃぁ、かみさん。なんかネタ作るために先頭走って」

俺はネタつくりマシンじゃねーです。

 

バンクセンサーを交換したEisukeさんとルートの確認をして、しばらくいって道がわからなくなったらEisukeさんと交代すると決まり、結局、俺が先頭で走り出す。や、もちろんネタは作らない。作るもんか。

途中で分かれ道が何度か出てきたので、大事をとってEisukeさんに前に出てもらい、俺、NEKOさんの順でワインディングを走る。Eisukeさんはガリガリステップを擦りながら、道路に白い引っかき傷を作って走っている。

これなら万が一離れても、引っかき傷を負っていけば道に迷わないね。と、なにそのヘンゼルとグレーテル的なことを思いつつ、またーり走っていると、突然、目の前のVTXから何かが飛んだ。そのまま次のコーナーを抜けたところで、Eisukeさんが単車を停めると、メットのバイザーをあげて苦笑しながら。

「ステップのハジが飛んじゃった」

今回のネタは、変態VTX乗りだったようだ。ステップの破片が他のバイクの事故の元になったら嫌だからと、Eisukeさんが戻ってる間、狭い道のコーナー出口で待ってるのも危ないってんで、俺とNEKOさんは少し上の開けたところまで戻る。

そこでダベりながら待ってると、程なく帰ってきたEisukeさん。

「ついにステップ飛んじゃった。今日はこれで打ち止めだねー」

バンクセンサーを取り付ける部分が、土台ごとすっ飛んでいるので、バンクセンサーナシで走ることになる。すると、次に逝くのはフレームってのがクルーザの宿命だ。もっとも、それでもこのヒトがおとなしく走るとは思えないんだけど。

広域農道から榛名の西麓をぐるりと回りこみ、榛名湖へ戻って飯を喰う。

湖畔のドライブインで、窓際に陣取る。

 

榛名湖は水深なみの長い藻が生えていて、沈んだら遺体は上がらないそうだ。Eisukeさんが教えてくれた。飯の前になんつー話をするんだ。地元のEisukeさんに色んな話を聞き、NEKOさんにワルキューレの話を聞いたり、旅好きのふたりの美味しいもの話を聞きながらすきっ腹を抱えていると、やがて注文した飯が出てくる。

 

わかさぎ丼。

わかさぎのフライにてんつゆみたいなのがかかってて、思ったより美味しかった。NEKOさんはソースカツ丼で、Eisukeさんはそばを喰ってた。もちろん大盛。

んで、メシを喰いながらも話は弾む。

神奈川のNEKOさんは、場所柄、ワインディングをすっ飛ばしてばかり来たけど、最近はヤバいところまでは攻め込まないとか、Eisukeさんも、最近は温泉とうまいメシが言いと感じてきたとか、わりと普通のツーリングライダーっぽい話をしてた。

まぁ、ついさっきまでワルキューレを振り回したり、VTXのステップ削り倒してた変態連中の言うことなので、話半分で聞いとくのが正解だろう。

途中でタバコを買いに出たら、ポツポツきはじめてた。もどってその旨を話して、それじゃぁちっと早いけど帰ろうかと言う話になる。ワインディングを走れなそうだとなったら、とっとと帰ろうって話になるような男たちの、いったいドコが落ち着いたんだって話だ、実際。

カメラを向けられると、いらんことをするNEKOさん。この辺の精神構造は、俺とウリ。

 

さて、帰ろうって話なんだが、途中で二箇所ほど寄る場所がある。

最初に榛名湖へ向かっている最中、街の案内所みたいなところを通ったときに、Eisukeさんが帰りに寄ろうと言っていた。毎年行なわれる、ロマンチック街道のスタンプラリー用の申し込みって言うか手引きみたいなのを貰おうというのだ。なので帰りがてら、案内所によってみた。

が、ちょっと時期が早すぎたようで、まだ用紙がないと言われる。

案内所を出てからEisukeさんが『かみさん、用紙配り始めたら送ろうか?』言ってるので、いや、取りに来ますよって言おうと思ったら、横からNEKOさんが『かみさんなんか、ほっとけば取りに来るよ』と鬼のように的確なツッコミをする。

言い当てられた俺は、苦笑するしかなかった。

 

んで、二箇所目。

来るときにNEKOさん、道端に立つ『たまねぎもろみ漬け』ののぼりを目ざとく見つけて『ゼッタイ旨いよアレ。むしろ今買ってそのまま帰ろう』とむちゃくちゃなことを言いながら大騒ぎしてたので、その店にも寄ろうという話になっていた。

Eisukeさんは、

「俺、地元なのに知らなかったよ。目ざといなぁ」

と笑っている。

店に入ってみると、ソソる漬物がたくさん並んでいた。

試食もあったので、俺とNEKOさんは早速試食。どれも旨かったのだが、特にNEKOさんが目をつけてた『たまねぎのもろみ漬け』は秀逸。試食した瞬間、NEKOさんは無言で目を丸くしたまま、ひたすら缶ビールのプルトップを開けるジェスチャーをしてた。

俺も美味さに驚いたまま、NEKOさんのしぐさに、ブンブンとうなずいていた。

やべぇ、超、ビール呑みてぇっ!

 

それぞれ気に入った漬物を買い込んだら、あとは高速の入り口までのんびり走ろう。

途中の信号待ちで『やべぇス。たまねぎの味が口の中に残って、超ビール呑みてぇス』つったら、Eisukeさんは苦笑い。NEKOさんはもちろん同意して、笑いながら俺と似たようなことを叫んでた。つーかこのヒト、俺の生き別れた兄なんじゃないだろうか?

渋川伊香保インターの入り口付近で単車を停め、最後にちょっと話をする。

俺は高速で帰るが、EisukeさんとNEKOさんは下道で帰るからだ。

「NEKOさん、早く帰ってたまねぎをつまみにビール飲むことしか考えてないでしょ?」

「なんで解るんだよー」

「俺もだから」

大笑いしたら、ヘルメットをかぶって、午後三時過ぎ。

久しぶりにクルーザ乗りと走った第50回でっかいもん倶楽部は、最後こそちょっと雨に切られた感があるが、それでも充分に楽しい笑顔と共に終わりを告げる。気持ちのいい、楽しいワインディング。俺よっか歳上なのに、ガンガン逝きまくる最高の変態単車乗り。

そろったシチュエイションそのままの、いや、それ以上に楽しい走りとダベりだった。

 

クルーザに乗るライダーは一杯いる。今日も山ほど見た。

だが、『クルーザ乗り』って呼びたくなる男は、そうはいない。『クルーザ使い』ともなればなおさらだ。VTXのステップを削り倒しながら走るEisukeさんや、クソでかいワルキューレをひょいひょいと走らせる、いや、舞わせるNEKOさんの背中を思い出しながら。

「やべぇな。やっぱクルーザもいいな」

俺は半笑いでつぶやくと、関越道をぶっ飛ばし始めた。

 

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