The 53rd big machine club

2008.05.17 第53回でっかいもん倶楽部 in 首都高 〜最高の併走感〜

 

午後10:30ぐらいだったろうか、準備をして隼をまたぐ。

今日はポンちゃんやじゅん君、AGLA13と走ろうと約束していた。前日の夜つーかむしろ今朝2時間しか寝てないのが、逆にダメなハイテンションを呼んだようで、かなり上機嫌で国道6号を走る。途中でガソリンを入れたら、四つ木から 堀切抜けて6号三郷線に入り一路C1へ。

三郷線を走りながら『あ、今日は芝浦出口じゃねーじゃん』と思い出し、急遽、針路を変更。

箱崎で深川線に入り、湾岸を抜けレインボー越えて芝浦PAへ到着すると。

案の定、誰もいやしない。

んで、とりあえずポンちゃんにメールして一服していると、PAの建物の方から男がふたり歩いてくる。コッチをじーっと見てるので、もしかしたら今日一緒に走るヤツか、それとも金曜の夜だけに、なにやら楽しいナックル系のイベントが勃発かと思っていたら。

ジュンタロー君(北茨城ツーリングのときのJ君)と、彼の友人ガンマ君だった。

「髪形が違ってメガネかけてたから、最初誰だかわかりませんでしたよー」

そう。昨日、コンタクトのトラブルで気持ちよく走れなかったのが、あまりにも悔しかったので、今回はメガネをしてきたのだ。昨日寝てないから、コンタクトが目の中にまともに収まってくれないって理由もある。どっちにしろ、コンタクト云々は、イイワケ臭いから言いたくない。

男は結果。走ってナンボだ。

 

ガンマ君のガンマが、俺が遠い昔に乗ってた91年型だったので、懐かしいなぁと見ながら話していると、PA入り口の方から凶悪な排気音が聞こえてくる。もちろん、見るまでもなく、ポンちゃんのGSX-R750と、じゅん君のGSX-R750だ。 変態は、同じ単車をチョイスする(季語:変態)。

マシンはどっちも悪い子だけど、前の白い方が特に悪い子。むしろ最凶に悪い子。んで、左からじゅん君、ポンちゃん、ジュンタロー君、ガンマ君。ガンマ君とは、今回あんまり話せなったから、次回会えたときは、もっと色々話したいもんだね。

金曜の夜だけに車がやたら停まってて、イッコも駐車する場所がなかったので、空くまでの間、ポンちゃんとじゅん君は上の写真のように、俺らが停めた場所の近くに単車を停めた。早速、駆け寄るくらいのイキオイで近寄り、ご挨拶。

「うい〜っす! 久しぶり〜!」

じゅん君は俺のアタマを見て、ちょっとびっくりしてたが、すぐにっこり笑う。相変わらず、優しいはにかみの笑顔だねぇ。この色男っぷりと甘い微笑みなら、笑顔一発で女の子落とせるだろう。うらやましい限りだ。や、俺は俺の顔気に入ってるから取り替えたくはないけど。

じゅん君は俺の知り合いの中じゃ、MIYAちゃんと双璧をなす色男である。rakも色男だとは思うが、あの男の場合、中身が強烈過ぎて外見の色男っぷりに勝っちゃってるから、正しい色男とは言えないのだ(余計なこと言うとホモ疑惑が持ち上がるのでやめましょう)。

 

そしてこっちは確実に俺と同じ側、カッコいいとか色男とかより、怖いとかヤバイとか言われ慣れてる系のポンちゃん。目がくりっとしてて笑うと可愛いんだけど、眉をひそめるとカタギ臭が一瞬で消える。ナリさんと俺と三人で、前科モノ倶楽部とか作れそうなイキオイ 。

さて、あとひとりAGLA13(本人の希望により、今日から呼び捨て)が来るはずなのだが、昨日、イチバンに来てた彼らしくもなく、姿が見えない。メールしてみると、『今、仕事から帰ってきたので、行くのは24時ころになります』とのこと。

それじゃ走るかつー話なのだが、せっかく久しぶりに会えたから、も少し話してたいなぁと思いながら、じゅん君に『24時ころになるって、どうする?』聞くと、『30分くらいなら、話してればたっちゃいますね』つー素敵な返事が返ってきたので、このまましばらく駄弁ることにする。

 

駐車場が空いたのを見計らって、ポンちゃんとじゅん君の単車をこちらへ並べ、そのままダベリング大会。途中、様子のおかしいクルマがやってきたのを見学しながら、 乗ってきたドライバーのファッションセンスについて、ファッショナブルとはもっとも無縁な俺とポンちゃんが苦言を呈する。

 

様子のおかしいクルマ。

つーか、とりあえずキメてるのに、軍手はねーよ軍手は。俺のグローブ10万で売ってやりゃよかった。てな感じで、じゅん君の昔の話や、ポンちゃんの話を聞き、ジュンタロー君やガンマ君と話しこんでいると、24時ちょっと前、AGLA13がやってきた。

GSX-R1000(K8)は、やっぱカッコいいなぁと眺めていると、ポンちゃんがゲタゲタと笑い出す。

何事かとそっちを見れば

「全部スズキじゃん! 変態の集まりだ」

変態の自覚はあるらしい。安心した。つーか俺が隼、ポンちゃんとじゅん君とジュンタロー君がGSX-R750で、AGLA13がGSX-R1000。そんでガンマ君がRGV250γと全員スズキな上、でかいのはみんなGSXだつーんだから、確かに変態の集まりといわれても仕方ないね、実際。

 

それからまた、少し話したあと、それじゃ走ろうか。

「ポンちゃん、コースは?」

「C1回ってから9号行こう」

ポンちゃん、俺、じゅん君、AGLA13、ジュンタロー君、ガンマ君の順番で走りだす。芝浦を出てすぐ、昨日ハンドルすっ飛ばされてコケかけた下りの右コーナーを、今日は気をつけながら少し内側のラインで抜けると、ポンちゃんが加速しつつ、C1のカンバンを指差す。

うなずいて答えたとたん、ポンちゃんのGSX-Rが、あ゛あぁぁぁぁぁぁぁっ! っと言う強烈なエグゾーストノートを響かせはじめた。『ははぁ、来るぞ』と思ってると案の定、フロントタイアをカチ上げ、単車をサオ立ちさせながら、GSX-Rがゴキゲンにすっ飛んでゆく。

「フロントを接地させてると死んじゃうのかな、あの男は?」

つぶやいて苦笑しながらポンちゃんの後に続き、すり抜けをはじめたのだが。

 

激烈。

ポンちゃんのすり抜けは、この二文字だ。

 

速さに関しては、俺はついていけないから判断のしようがないけど、確実に言えるのは、ポンちゃんは俺がてんてこ舞いになってテンパる速度域で、遊びながら走ってるって事。ウイリー(フロントアップじゃねーぞ? 延々と上げてるのだ)は当たり前。 むしろ呼吸。

わざと難しい方から抜いたり、明らかに余計なことをしながら走っている。

独特のリーンアウトスタイルで、アップハンをつけたGSX-R750を250か原付みたいに振り回すその姿は、でたらめで、めちゃくちゃで、しかしこれがまたカッコいい。クセなのだろう、左足をプラプラさせながら、ひらひらっと抜けていく姿と、メータの刻む速度のつじつまが合ってないのだ。

rakのタイトでシャープな走りも美しくて好きだが、ポンちゃんの『や、駐車場遊びしてんじゃねーんだから』みたいな、でたらめで鬼っ速の走りには、もう、カンペキにヤられてしまった。ものすげぇ楽しんで走ってる背中は、 スキモノが見たら惚れるよ、マジ。

 

二度ほど離されて、待っててもらったので、後ろのじゅん君を手振りで前に出す。 とたんに咆哮をあげて加速する、じゅん君のGSX-R。俺は、後ろについたAGLA13と一緒に、キチガイ沙汰のGSX-R750二台を必死で追いかける。この段階で、もう、俺的にはいっぱいいっぱいだ。

すり抜けは先頭が圧倒的に危険である。

rakとか一部の変態を除いて、普通は後ろから行く方が楽なんだが、ポンちゃんのタイミングで行くには、かなり車間をつめなければならない。じゅん君はポンちゃんの後ろにぴたりとついて、峻烈なタイミングで直線だろうがコーナーだろうが、ズバズバと車を抜いてゆく。

タダでさえウデが劣り常に離され気味の俺は、同じタイミングでは行けないので、余計に置いて行かれる。短い直線で距離を詰めても、次のコーナーに飛び込むと、するっと先に行かれてしまう。かなり離されると、ポンちゃんとじゅん君が待っててくれる。

何とか追いつくと、とたんに白いGSX-Rはフロントを持ち上げて、車の列に飛び込んでゆく。

時々ミラーを見ると、コーナリングでAGLA13がついてきてるので、こりゃいかんと直線だけはガバ開けして 、彼の邪魔をしないようにする。どうしても突っつかれたら譲ろうと思っていたが、AGLA13は俺の後ろを動かなかった。

 

前に喰らいつく……つもりが、なかなか喰らいつけない。

ビリビリと集中しながら走っているうちに、C1内回りを二周した。そこから今度は新環状へ向かう。箱崎の右コーナーから左へ曲がって9号深川線へ入るところで、ほっとした瞬間、どばっと汗が噴き出した。だが、二台のGSX-Rの速度は緩まない。

車が少ない分、アベレージスピードが上がるぞ、と気合を入れてアクセルを開ける。

もちろん、その予想通り、速度がガンガン上がり始めた。C1の速度域から新環状の高速域へ、精神的にシフトしきれないうちに、どかっと離される。これが逆に良かったようだ。後ろのAGLA13と一緒に、ポンちゃんたちに引きずられないで走れるようになった。

もうだいぶん慣れた9号だから、ある程度の突っ込む速度はわかってる。

二つ目くらいのコーナーで自分を取り戻し、そこからはなんとかテールランプを見失わないくらいの速度で走れた。いや、もちろんついて行ったとかじゃない。かろうじてふたりの 位置が認識できるって程度だ。だが、余裕が出てきた分、さっきのシビれる楽しさとは違う、ウキウキがこみ上げてくる。

相変わらずコーナーでは、AGLA13のGSX-R1000に追いつかれてしまうが、隼の太いトルクとギャップに乗ってもあまり振られない安定感のお陰で、立ち上がりから直線では、どうやら幾分、こちらに分があるかな?

 

仲良く走る(後で聞いたら、じゅん君は結構いじめられてたみたいだが)二台のテールランプに導かれながら、ねっとりと暗い夜の中を切り裂いて走る感覚は、なかなか、筆舌にしがたい。後ろには共犯者たるAGLA13がいて、そんな併走感がまた、たまらなく楽しい。

AGLA13を引き離そうとか、前の二人に追いつこうとか、最初こそ考えてたそんな気持ちも、あきらめたというよりは自然に霧散してゆく感じ。こんな気持ちのいい夜に、俺がイチバン楽しいことを、こんなすげぇヤツラと一緒にやれるのだ。しゃぶりつくして楽しまなくちゃ、もったいない。

俺はrakがいつも言ってる

「ある程度一緒に走れる速さは要りますけど、基本的に速いとか遅いとか関係ないんです」

と言うセリフの、本当の意味がわかった気がした。遅い俺を気遣ってくれているのかと思ってたが(そういう面もないわけじゃないだろうが)追いつけなくても、チギれなくても、そんなことよりずっと高いところに、ヒトと走る楽しさってのがあるんだっていう事を、心から実感できた。

 

人生は航海だ。

コラムに書いたことがあるが、俺はいつもそう思ってる。

自分の船でひとり漕ぎ出して、嵐を越えたり凪に苦しんだり、風や太陽を愛しく感じたりしながら、自分のペースで進んでゆくものだ。他の船と併走することもある。すれ違ったり、交差したり、時にはぶつかることもある。そうしてやっぱり、基本的にはひとりで航海してゆくのだ。

ひとりで立って生きてゆくからこそ、同じくひとりで進むものが横を併走していれば、その存在は喜びになる。もちろん、いつまでも併走するばかりじゃない。すぐにどこかへ行ってしまう者もいれば、長く併走する者もいる。だんだんと離れてゆく者もいれば、水平線の彼方から近づいてくる者もいる。

だから出会えた一瞬、併走するわずかな時を、お互いに寄りかかったり引っ張り合ったりといった気持ちの悪い干渉なしに、ただ、時々汽笛を鳴らして存在を確かめ合いながら、『へへっ、アイツも頑張ってるな』とニヤリ笑って、また進んでゆけるのだ。

話が盛大にずれたな。

つまり昨日の夜、俺はそんな併走する楽しさを感じたのだ。

もちろん単車乗りだから、俺のが速いとか、いずれあいつを負かしてやろうとか、そういう気持ちだって持ってるだろう。でも、共犯と言うには清々しい、同じ空間を同じ (ような)速度で駆け抜ける者だけが共有する、その『併走感』が、みんな、イチバン気持ちいいんじゃねーかな?

少なくとも俺は、そう感じる。

 

レインボーブリッジを抜け、芝浦PAに戻ってきた。

俺はもう、すっからかんだ。

距離や時間的には短いのだが、内回り二周と新環状一周の間、一瞬たりとも気を抜けない、シビれるような走り方をしたのだ。前の二人はともかく、少なくとも俺とAGLA13は、確実に自分のキャパを越えるペースで走れた。

PAについた瞬間、ふたりともどっぱり汗をかき、顔が上気していたのが、その何よりの証拠だ。怖かったし、厳しかったけど、それ以上に、いや、その何倍も楽しい。爽快感は、風呂上り以上だ。ぬるぬると過ぎてゆく日常にふやかされた精神を、サッパリと洗い流した感覚だ。

違うものを流してサッパリしてるポンちゃん。久しぶりの衝撃の瞬間スクープ。

 

「いやー、ジジイには二周が限界だよ」

と、俺より年下のポンちゃんがニコニコしながら言う。

当然、もっとジジイの俺など、くたくたのゾウキンなのだが、走ってる間に、ポンちゃんも楽しんでることを確信していた俺は、にっこりと笑い返す。いやまぁ、この男はたいがいキチガイだから、こういう楽しさだけじゃなく、じゅん君をいじめた(鍛えた?)楽しさも多分にあったんだろうが。

もっとも、そのじゅん君もさっぱりと笑ってるんだから、この男たちは本当に気持ちがいい。

俺はもう、うれしくて楽しくて、バカみたいにテンションが跳ね上がってしまっている。

と、ポンちゃん。

「帰り、マーちゃんのトコ、寄ってく?」

「いいねぇ。あ、でもさ、せっかくだからナリさんトコ行ってみよう。ナリさん、すげぇ来たがってたし」

ポンちゃんの言葉に俺がそう返すと、『OK、行こう』と速攻で返事。見事なほどに、迷いがない。

「ポンちゃん、ナリさんの店、行ったことある?」

「ない。かみさんは?」

「ないよ」

どっちも知らないのに、なに即決してるんだって話だ。

 

一瞬、寝てるかなーと思ったあと、寝てるわけねーよと思い返して、rakにメール。

ナリさんトコへの行きかたを聞く。しばらくして『教えづらいんですよー』という返事とともに、ナリさんトコの住所が送られてきた。AGLA13の携帯でだいたいの場所を調べ、ポンちゃんの携帯で広域の地図を出す。で、地図を眺めて三人で固まってしまう。

俺とポンちゃんは千葉、AGLA13は埼玉なので、あまり道に詳しくない。いや、千葉だろうが埼玉だろうが詳しいヤツもいるかもしれないけど、俺たち三人は詳しくないのだ。なのでじゅん君に地図を見てもらい、そこまで案内してもらうことになった。

「よろしくお願いします! 勉強させていただきます!」

全員が頭を下げて唱和する。

さっき環状や新環状を走りだす前に、ポンちゃんがじゅん君に向かって冗談で言い出したこのセリフは、いつの間にか無駄に乱用されるようになっていた。じゅん君は『時速20キロで行きます っ!』と苦笑しながら叫ぶ。誰かが先頭を走るとき、その後ろを走る人間は、このセリフを吐かなくてはならないローカルルール。

それが、この瞬間に成立したのだ。

 

じゅん君を先頭に、いったん首都高を降りる。ナリさんトコまでの道のりは、当然ながら詳しく覚えてない。じゅん君の後ろにくっついていっただけだからね。まぁ、なんとなく行き方は教わったので、次はひとりで行ける……かもしれない。や、無理かな。

んで、迷うたびにポンちゃんが、タクシーの運ちゃんや近所の住人に、場所を確認してくれる。それを待ってる間にじゅん君と、なんでじゅん君がジュンタロー君の面倒を見てるのかといった話や、ちょうど今ウチの掲示板で旬の話題、『危険と言うものの捉え方』についても話した。

バカ話では見られない、真面目で真摯なじゅん君の姿勢に、俺は内心、舌を巻く。

この男も、奥が深そうだ。一緒に飲んだら、きっと面白れぇだろうな。

 

ようやく目的地、ナリさんのお店『しんのす』を見つけ出した。

が、思いっきり閉まってる。

もちろんナリさんは不在。

後で聞いたらナリさん、俺らが集まってるのを知ってて、仕事中から気になって仕方なかったらしい。昨日、顔出したにもかかわらず、居ても立ってもいられなくて、仕事ハネるなり芝浦へ向かって飛び出してしまったと言うのだ。ちょうどすれ違いだったわけ。

サプライズなんてしないで、早めに連絡しておけばよかった。ナリさん、ごめんね。

 

「ナリさんも居ないし、んじゃ、マーちゃんトコ行こうか?」

ポンちゃんの言葉に、俺が『是非』と大きくうなずいたのが、午前1:30過ぎだった。

昨日もロクに寝てない俺は、もう、半分キチガイみたいなテンションになっていたからともかく、他のみんなはそれぞれの予定がある。じゅん君に道を先導してもらって首都高へ。入り口で、高速に乗らないじゅん君、ジュンタロー君、ガンマ君と別れた後は、ポンちゃんの後ろに続いて、首都高を抜ける。

さっきほどはすっ飛ばさないものの、俺とAGLA13には充分なハイペースで首都高をすり抜け、箱崎から6号線に入った。んで、7号との分岐でAGLA13と別れ、ポンちゃんと俺は京葉道路に入る。クネクネとした首都高から、京葉道路に入った瞬間、ポンちゃんがフロントをサオ立ちさせながら加速。

俺はすり抜けが得意だと思ってた。首都高走り出してからも、すり抜けだけはそこそこの速さで走れてたと思う。ましてC1みたいな狭いクネクネならまだしも、道幅の広い直線の高速だ。幾らなんでも、さっきほどは離されないだろうと思っていたのだが。

大アマ。むしろ激アマ。

暗い京葉道路には、ちらほらとクルマが走ってたのだが、『あれ? ポンちゃんの目にはクルマ映ってないのかな?』と思うくらい、ヤツの速度は落ちない。ちょっとブレーキ をなめるだけで、見る見る離されてゆく。思わず『俺、開けれてないのか?』とメータを見る。

や、開けてるって。明るいときよりは遅いけど、とんでもなく遅いわけじゃないじゃん。

だけど、ポンちゃんは消えてゆく。

シビれた。

1mgもイイワケできないステージで、完膚なきまでに消された。

もちろん、悔しいとか思うより先に、自然と顔がにやけて、ヘルメットの中でゲタゲタと笑ってしまう。ほんと、世の中にはすげぇヤツがゴロゴロ居るんだな。そんなヤツと一緒に(置いていかれているけど)走れるなんて、俺は本当に幸せだな、つー笑いだ。

 

マーちゃんトコまでは、あっという間だった。距離的にってことじゃなく、時間的に。

マーちゃんトコに入る30メータくらい手前でエンジンを切り、惰性で到着。単車を停めた場所にあった販売機で、ポンちゃんに缶コーヒーをおごってもらい、30メータより遠くからでも聞こえたのだろう 、エンジン音を聞いて出てきたマーちゃんに、手を上げて挨拶。マーちゃんニヤニヤしながら

「一台の音じゃねーと思ったんだよ」

まだ仕事の途中のマーちゃんと三人で、コーヒーを飲みながら話をした。

最初はポンちゃんとマーちゃんが話してるのを聞いてたのだが、そのうち彼らの昔の話になると、俺はもう、気が狂ったみたいに腹を抱えっぱなし。キチガイみたいなツーリングの話。気持ちいいほどバカな、まだ見ぬ連中の話。50〜125ccのスクーターででかい単車をぶっちぎる話。

さらに、マーちゃんが編集した、この間のツーリングのハプニング動画を見せてもらうに至っては、さっき近所に気を使ってエンジン切って空走した意味がわからないってくらい、ゲラゲラと大笑いしてしまう。いくら話しても、聞いても、ちっとも飽きないし尽きることがない。

と、ポンちゃんが俺の顔を見て言った。

「かみさん、時間は?」

え? と時計を見ると、ああ、もう3:00過ぎか。

「そろそろ帰るよ」

言ったあとも延々と、『おめーのそろそろってのは何時間だ』てなイキオイで話しこみ、気づけば外には、チチチッと鳥の鳴き声。薄明るくなってきたオモテを見て、ポンちゃんがちょっと心配そうに 『かみさん、もう4:00過ぎてるよ?』と言ってくれる。

「うわ、俺、明日仕事だよ」

 

と叫び声を上げたところで、本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は、『いっそ仕事サボって、こいつらと遊びてぇなぁ』って気持ちを全力で押さえつけながら、その幕を引く時間になった。今回もまた、ステキに楽しい時間だった。

ストイックとか真面目とか、クスリにしたくても持ち合わせがない、最高にバカで気持ちのいい男たちと別れた後、前が見づらくなるほどの朝霧に包まれながら、俺はご機嫌にテンションを上げたまま、ひとり柏への道のりを急いだ。

 

ポンちゃん、マーちゃん、じゅん君、AGLA13、ジュンタロー君、ガンマ君。

すげぇ楽しかったっ!

また遊ぼうぜっ!

 

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