The 58th big machine club

2008.09.09 第58回でっかいもん倶楽部 in 首都高

〜雰囲気組〜

 

事故ってからこっち、ようやく夜の散歩に行く時間が取れた。

いや、時間的な余裕はもちろん、その前にもあったんだが、いろいろあって二ヶ月もあいてしまった。久しぶりだからワクワクする反面、多少の不安もある。速度的な恐怖や、事故るかも知れない恐怖 、それに「ビビって速く走れないんじゃないか」って不安に ドキドキしながら。

のんびりと準備を始める。

財布に、お守りを入れた。

神様にすがっても同僚だけに助けてくれないが、これはダチが俺のために買ってくれたお守りだから、神様は関係なく事故防止の効果がある。もっとも、そのためには俺自身が俺を守る努力をしなくてはならないのだが。まぁ、この段階でちょっとビビりが入ってるのは、一目瞭然。

取り繕っても仕方ないから正直に言うが、俺は怖かった。

だからプロテクターもフル装備して、お守りまで装備したのだ。だが、それと同じくらいワクワクする気持ちも本当だ。悩んだり迷ったりしたら、とりあえず動く方を選択する。それが俺のやり方だから、怖さを抑えワクワクに目を向けて、9:30ごろだろうか、家を後にする。

 

「時間的に早いから、C1は混んでるだろう」

そう思って9号から湾岸を回って芝浦を通り過ぎ、また9号周りを一周して芝へ。

それでも約束の時間には少し早く、誰も来ていない。

待ってればAGLA13がやってくるはずだと、タバコを一服つける。今回、AGLA13には内緒で、ポンちゃんに声をかけてあった。ポンちゃんは速いから、俺とかAGLA13はケツにつくと限界を超えてしまう場合がある。だから、AGLA13にはあらかじめ

「ポンちゃんくると限界超えちゃうから、呼ばないでおこうな?」

と言ってあった。

だが、今回はリハビリだ。リハビリには痛くない方法と痛い方法があって、やりすぎさえしなければ痛い方が早く治る。もちろん、その代わりに副作用と言うか、かえって悪くしてしまうこともある。その辺は術者の経験や腕なんだが、俺はどっちかというと早く治る方法が好きだ。

なので、荒療治にはもってこいのポンちゃんに、「申し訳ないが引っ張ってもらおう」と画策していたのである。もちろん、タイミングが合えばの話なのだが、ここんとこタイミングの悪かった俺らには珍しく、 「ポンちゃんもこれる」という話になった。あとは、ナリさんや、じゅんくん、なっこ妹にもメール。

mixiにも書いて、『誰かが釣れるのを待つ』仕掛けも忘れずに。

 

やがて、AGLA13がやってきた。

律儀に、こないだ俺があげたiconのジャケットを着てきた。

俺も自分で塗った同じジャケットを着てるから、まるでダメな兄弟だ。あー、うるせーうるせー! 「おめーが15のころ間違って作ってれば、息子の年齢じゃねーか。なに兄弟なんて若ぶってんだ」とか余計な突っ込みは却下だ、却下。俺は傷つきやすいんだぞ。

 

AGLA13とくっちゃべりながら待ってると、なっこ妹がやってくる。

「おや? 一緒に、見たことないGSF1200が来てるな」

なっこちゃんの友達アキンボ君は、若さあふれるオトコマエ。しゃがんでる子ね。

と、PAの入り口から爆音が。

「お、きたきた……ってあれ? ポンちゃん、単車の色塗り替え……ぎゃはははははっ!

ポンちゃんが到着。もちろん、いつものR750はいつもの白。

んじゃ、なにに爆笑したのかと言えば。

 

 

 

 

 

ちょ、ツナギ!

「なに、やる気満々なんだよ! やめてー! ただでさえ速いんだから」

「違うよ、ツナギがキツくてさ。やせるために着てるんだよ」

いろいろと突っ込みどころ満載のセリフを吐きながら、ポンちゃんがメットを取ると、いつもの人懐っこい笑顔がそこにあった。これでとりあえずはそろったかな。ナリさんとじゅん君からは返事がないから、たぶん来られないんだろう。んじゃま、久しぶりだし、まずは少しダベろうか。

 

二ヶ月ぶりの芝浦は、相変わらずちょっと淫靡な、ゾクゾクする雰囲気がある。

殺伐としてるわけじゃなく、かといってまったく緊張感がないわけでもない。なんとも表現しづらい、独特の雰囲気だ。この空気を吸っただけでも、ここに来た甲斐がある。初めて会うアキンボ君、久しぶりのポンちゃん、ちょっと久しぶりのなっこちゃん、しょっちゅう会ってるAGLA13。

みんなと単車を囲んでしゃべる、この空間のなんとも気持ち良いこと。

しばらくバカ話や単車の話をして、それじゃぁ、走ろうか。「PAの情報では内回り渋滞してるから、外回りを回ってそのまま9号で良い?」ポンちゃんに聞くと、「外回り一周回ってから行こう」とのこと。「了解ー! んじゃ、先頭よろしくね」「俺が?」 「あたりまえじゃん」掛け合いしたら出発だ。

 

ポンちゃん先頭に、アキンボ君、AGLA13、俺、なっこちゃんの順で走り出す。

「ありゃ、結構クルマがいるなぁ」

芝浦を出て最初のゆるい右コーナーで、すでにAGLA13の前にクルマを一台はさむことになった。「こりゃ、すり抜けが多いかもしれないな」と思いながら、AGLA13のテールにくっついて走る。うん、すり抜けはやっぱり、それほど怖くない。これなら行けるか? なんて思ってると……

「あれ、速いな。ついてくのえれぇシンドいぞ? 何キロだよ?」

メータを見ると、それほどのことはない。いや、充分、十二分に速いけど、見たこともないようなペースじゃない。ってことは、俺が遅いわけだ……当たり前だ。全然、開けられてない。置いてかれそうになるから、がーっと加速するのだが、レッドはるか手前で無意識にシフトアップしてる。

「いやいや、全然回せてねーから。シフトアップする意味がわからん」

自分で突っ込みを入れながら、シフトをけり落として改めて加速。そのあいだに開いた差をつめようとすると、クルマの多さがアダになる。トラックの並びがずれるのを待って再加速し始めたときは、AGLA13のテールさえ、すでにかなり遠い。彼らにこれだけ離されたら、もう、追いつくのは無理だ。

「情けねぇなぁ……」

 

仕方なく看板を見て道を確かめながら、ひとりさびしくソロツーリング。

モチベーションが一気に下がり、行けるなと思ったところでも緩めてしまう。途中、ちょっと渋滞してるところでなっこちゃんに追いつかれ、少しやる気を取り戻した。いや、なっこちゃんが遅い 言ってんじゃなくて、彼女は今日「今日は調子が出ないんで、攻めません」言ってたのだ。

なのに、さすがに追いつかれちゃイカンだろ。

気合を入れなおしてすっ飛ばすも、当然、前の姿なんぞまったく見えず。そのまま外回りを一周して9号に入る。左右から入れる9号入り口の、左側から入ろうとしてギャップで軽く飛ばされ、ちょっとヒヤリ。これ以降も、ハヤブサの時は感じなかったギャップや挙動に、ちょくちょく肝を冷やす。

さっきひとりで走ったときと同じラインを走れない、首都高ならではの出来事だ。

 

だが、そのうち俺は気づき始めた。

「ギャップだのラインだの関係なく、俺、純粋に遅いぞ。なんだろう? R1000の方がハヤブサよりも全然イケるはずなのに。ヤバ、と思ってもあわてずにブレーキ抜いてやれば、それだけで勝手に曲がってくれるんだから、怖くはないハズなんだけどなぁ」

そう、曲がること自体は怖くない。

怖いのは、この速度か? 抜けかける気合を奮い起こして、直線でガバっと開けると、メータの数字が面白いように跳ね上がる。そして高速コーナーへのアプローチでアクセルを抜くと、面白いように、速度が落ちる。いや、ちっとも面白くないんだが。 じゃぁとパーシャルで入ってみるのだが、なんだかギクシャクして怖い。

同じく高速コーナーを回ってるときも、やけにギクシャクする。

 

そう、わかる人はわかっただろう。

俺の信じられないほどのへたくそ加減が。何のことはない、今まで峠程度の速度域では必要のなかった高回転を使い始めた瞬間、俺のアクセルワークの下手さが浮き彫りになっただけなのだ。

ハヤブサなら(R1000よりは)まったりした挙動だけにごまかせてたものが、R1000の、それもイチバン真骨頂である回転域でのクイックなレスポンスはごまかせないのである。ちょっとビビった数ミリの戻しで車速がぐんと落ちるから、回転をキープしなければならないのに、それが出来ない。

「今まで俺は、ハヤブサに助けられてたんだ。なにが、『AGLA13、こんな速くて曲がるバイク乗ってたんなら、そんな上手くねーんじゃねーの?』だ! 単車に乗っけられてたのは、かみ、てめぇの方じゃねーか。思い上がりもはなはだしいってんだ!  AGLA13に謝らなきゃななぁ……」

ホント、ド恥ずかしい。

 

ほうほうの体で戻ってみると、先に行った連中は、すでに歓談していた。

「だいぶん差がついちゃったなぁ」

しょんぼりしながら戻ってゆき、しばらくみんなの話を聞く。つっても、おしゃべりかみさんだから、黙ってたのは数十秒なんだけれども。AGLA13やポンちゃんの話で、アキ君も速いつーか変態スズキ乗りだってことがわかった。俺は彼の走りをまったく見れてないから、話だけでさびしかった。

やがてなっこちゃんも帰って来て、みんなでまたダベる。

と。

オンオンという排気音とともに、赤いR1がやってきた。

のりさんだ。

最初にみんなを待ってるとき、mixiの日記にのりさんのコメントがついてたので、そのレスの最後に、ここに居る旨を書いておいたのだが、『見事に釣れた』わけだ。長い足でR1をまたぎ越えて、のりさんがメットを取る。やさしい穏やかないつもの笑みに、へこんでた気持ちが癒される。

や、ホモじゃねーてばよ。

 

のりさんを加えてダベリング大会。

これが普通の集まりだったら、なんとなく俺とポンちゃん、のりさんのおっさん組(失礼です)と、AGLA13、アキ君、なっこちゃんの若者組、てな感じに分かれても良いはずなんだけど、もちろん、そういう組み合わせの時もあったけど、基本的には完全にスクランブル

俺とアキ君が話してる横で、なっこちゃんとのりさんが、ポンちゃんとAGLA13がそれぞれ話してたり。かと思えばみんなで車座になって話しこんだり。歳も何も関係な く、バカ話してげらげらと笑える。単車ってのは本当にすげぇツールだよね。や、充分わかってたことだけど、でも、改めて思うよ。

そんでも、おっさん話が行き過ぎると、若者組はポカンとしてたりすることもあるんだけど。

 

そのうちポンちゃんが、「あちー」と叫びながら、ツナギの前をはだけた。

って、ポンちゃん?

どこまではだける気?

 

 

 

 

 

無論、すべてだ。

ポンちゃんは、『半端なことはしない』のだ。

いきなりアンダーだけになったポンちゃんに、みんな大爆笑。ツナギといい、これといい『今日のMVP』は間違いなくポンちゃんだ。アキ君もかなりカマしてくれてたんだが、残念ながら相手が悪かった。ポンちゃん居なかったら、完全に圧勝だったんだけどね(そんな勝ち負けこそ、いりません)。

笑い、しゃべり、また笑い、時間がゆるりと流れてゆく。

 

と、またも爆音が。

誰だろうと見てると、寄ってきたR750に乗ってたのはtomohiro君だ。久しぶりと挨拶するまもなく、ポンちゃんとちょっと話をしたtomohiro君は、メットも取らないまま、走り出してしまう。俺を中心に流れるよどんだ空気に、「あ、こいつら走らねぇな」と感づいたのかもしれない。

ほどなくトイレに行ってて帰ってきたアキ君が「ちょっと走ってきます」と単車をまたぐ。

やっぱり彼には足りなかったか。話を聞いたら、めちゃめちゃ走る男だもんなぁと思いながら、AGLA13に「行ってくれば?」と促してみると、「ポンさんについてくと、一周でスッカラカンです」と笑う。でも、余裕はありそうだったから、俺を気遣ってくれたのかもしれない。違うかもしれない。

とまぁ、相変わらず楽しい空気の中で、俺はへこんだ気持ちを癒されて、楽しくバカ話できた。

キャスタがよく自分は雰囲気組ですと言ってたが、俺は違った意味での雰囲気組だ。ここの空気に触れて、彼らとここに居られるだけで楽しい。もちろん速い連中と同じくらいに走れれば、もっともっと楽しいだろうけど、それに伴うリスクを考えれば、そこまでの道を急ぐ気にはなれない。

自分のへたくそさを痛いほど実感した今となっては、なおさらだ。

 

「そろそろ帰ります」

のりさんの言葉で、本日のcrazy marmalade でっかいもん倶楽部も、そろそろお開きの時間だ。走った時間は短かったけれど、久しぶりにみんなに会えて、久しぶりシビれて、久しぶりにここの空気を吸えた、ステキな時間だった。そして自分の下手さを知り、考えさせられた夜だった。

みんな、今日は楽しかったよ。

ワクワクするような時間をありがとう。

またきっと、ここでもほかの場所でも、一緒に走ってバカ話しよう!

 

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