The 63rd big machine club

2008.10.05 第63回でっかいもん倶楽部 in 奥多摩〜道志

〜Can't stop laughing〜

 

R1000でのラストツーリングってことで、わりと気軽に声をかけた今回のツーリング。

フタを開けてみれば総勢11人と言う、かなりの大所帯になっていた。とは言え、名乗りを上げたのはドイツもこいつもオランダも、一筋縄ではいかないキチガイSS乗りばかり。たとえ大所帯だろうが、何をどう間違ってもかったるい走りになどならないメンツだ。

俺はウキウキしながら6:30ごろ家を出ると、C2が通行止めなのでC1から中央道を目指す。

意外とすいてて気持ち良いので、AGLA13のマネして「C1、一周回っちゃおうかなぁ」とも思ったが、今日はメンツがメンツだけに体力を温存しておく方が良いだろうと、おとなしくそのまま中央道へ。一路、石川PAを目指す。道が全体的にすいてたので、あっというまに到着。

mixiに「いっちば〜ん」とかアホな日記を書いてると、ジュンタローがやってくる。

ボロボロのR750に乗るジュンタローとは、北茨城の高速ツーリング以来だ。前回は、仕事終わりをrakに拉致られて、『スウェットにパーカー』という田舎のヤンキー的な格好で来てたが、今回はどうやら普通っぽい。そこで軽くダベってると、ほどなくGO!!!君もやってきた。

ジュンタローとGO!!!君。

んで、おはようの挨拶もそこそこに、GO!!!君が何かを取り出す。

 

ちょ、ブレーキパッド!

「今から交換するのかよ! なにそのやる気満々」

「もう、パッドがないんですよ」

パッドのあたりが出るまでにぶっちぎってやろうと心に決めて、作業を手伝う。

はずしたパッドピンが汚れてるのが、どうにも気になって仕方ないので、ジーパンのすそで汚れをぬぐってGO!!!君に渡す。その瞬間、変な話だが「あ……俺、今日は調子良いかも」と思った。こういう唐突な勘てのは結構当たるので、調子に乗りすぎないよう心を引き締めながらも、ちょっと期待。

 

GO!!!君がパッドを交換し終えるころ、

のりさんが到着。「起きれれば」、なんて言ってたので「こないかなぁ」と思ってたのだが、来てくれた。

当然、俺のテンションは、またひとつシフトアップ。

 

すると。

ナリさん、AGLA13と、続々やってくるダメ人間たち。

 

今日は普通の格好のジュンタロー。これならヤンキーとか言われないね。

みんなでダベってると、じゅん君改めじゅんが、R750の悪っるいサウンドを響かせて登場。俺らが溜まってる所をいっそ華麗に通り過ぎ、離れた場所に単車を停めた。

「あいつ、ホント周り見てないなぁ」

と、GO!!!君やのりさんが苦笑する中、俺が迎えに行くと、じゅんはニコニコと手を振った。

「おはよー! なんでそっち行っちゃうんだよー」

「かみさ〜ん、俺、ずっと待ってたんですよぉ」

「は?」

「誰か来ないかなーって、70くらいで巡航しながら、後ろ見ぃ見ぃゆっくり走ったり、隠れて停まって誰かが来るのを待ってたんです。だけど、あんまり誰も来ないんで、もういいやってあきらめて来ちゃいました。くそー、待ち伏せ失敗したー!」

まぁ、100年待っても誰も来ないけどね、君が一番最後なんだから。

 

じゅんの『待ち伏せ失敗』にみんなで笑ってると、GO!!!君の携帯にメールが入る。

「ははっ! Caruma君、今起きたそうです」

「ぎゃはははははっ!」

もはやCaruma君のデフォルトだ。

やがて時間になったので、遅れてやってくる『廃人ミサイル』改め『人間ミサイル』君、この文章では面倒だからミサイル君に略す、を捕獲するために、じゅんを残して出発する。出口まですぐだから、さすがに比較的おとなしく走って出口を出、第二集合場所へ。

第二集合場所となる道の駅では、じゅれいさんとうさぎちゃんが待っていた。

左から、うさぎちゃん、のりさん、AGLA13、ナリさん、ジュンタロー、GO!!!君。

雨の心配も杞憂に終わり、クソ暑いくらいの上天気。

 

なにやら遠くを指差すじゅれいさん。

事故の怪我がまだ癒えてなくて、足を軽く引きずり気味にしてたのが気になって仕方ない、これでも一応、治療家のかみさん38歳。「あとでヒマ見て、治療させてもらおう」と決心する。んで、初見の人同士は自己紹介したり、みんなでバカ話しながら、じゅんとミサイル君を待つ。

「じゅん、周り見ないから、この場所スルーして行っちゃうんじゃないかな」

なんて笑ってた、まさにその時。

爆音を響かせてやってくるGSX-R750&1000のすがた。国道を右折したので、「おぉ、良かった。さすがに気づいたか」と思いきや、まるっきり減速するそぶりを見せないじゅんとミサイル君。広がる緊張と、高まる期待。

 

 

 

ふぉおおおおおおおおおおおおん……

 

「ぎゃははははははははっ!」

そのまま裏道に姿を消すじゅん&ミサイル君。背中に浴びせられる爆笑。

あまりのタイミングと、予想、いやむしろ期待通りの行動に全員が笑い転げていると、ぐるりまわって国道から出てきたじゅんが、ようやくこちらに気づいて手を振りながら通り過ぎる。中央分離帯があるので、その場でUターンできないのだ。

ひとつ先でUターンし、戻ってきて右折待ちしているところを激写。

 

照れ笑いしながらやってきたじゅんとミサイル君を迎えたら、さぁ、出発しようか。

GO!!!君が先導してくれるものだと思ってたら、どうやらGO!!!君、事前に「じゅん、今日は君が先導しなさい」と指令を与えていたようで、とりあえず奥多摩までをじゅれいさんに先導してもらって、その先はじゅんが先導と言う段取りになったらしい。

じゅれいさん先導に、うさぎちゃん、俺、ナリさんと千鳥で走り出す。

さすがに10台もいる上に、国道こそ広いもののその先は狭い道が多いので、あまり強引、劇的なすり抜けはせず、普通のツーリングみたいに走ってゆく。そのうち車が少なくなれば、自然に速度が上がってくるのは判ってるから、イライラしないで走れるのがいいね。

 

と。

サマーランドを過ぎてすぐだったろうか、見通しのいい十字路で単車が横になっていた。

当然のように停まるじゅれいさんの後ろ姿に、ヘルメットの中でにやっとしながら、同じく単車を寄せて停まる。俺がR1000を降りたときには、すでに何人かが単車に近寄って起こしてる。当然と 言えば当然かもしれないが、こういうのをさらっと出来る連中は気持ちいい。

「かみ!」

呼ばれて振り向くと、ナリさんがゼスチャをしながら

「写真、撮れよ!」

苦笑しながらカメラを取り出して、写真を撮った。

それから事故車を横によける。

すでに救急車は呼んであると言うし、当事者だけじゃなく何人かいるようなので、停まってるだけで邪魔になる我々は、そのまま出発する。コケた単車乗りには悪いが、 この事件がある意味、程よい緊張となってみなの気を引き締めたんじゃないだろうか。

 

やがて道が空き始める。

ガソリンを入れて戻ったじゅんが、そのまま俺の前に入り、同時にうさぎちゃんが道を譲ってくれた。当然、徐々にペースが上がり始める。いくつ目だかの左コーナーで、じゅれいさんが 「スッ」とすげぇ綺麗に曲り、それが合図になったかのように一気にペースが上がる。

じゅんがぴたりとじゅれいさんに付け、その後ろに俺、ナリさんと続く。

なお、これから先、俺は後ろを見る余裕がほとんどなかったので、『誰が誰の前にいたか』という位置情報を、まるきし知らない。なので、描写に正確さを欠くことはご了承いただきたい。つーか俺に正確さを期待しちゃダメだ。

俺は歴史を記録しない。

歴史を作るのだ(いいから正確に記録しましょう)。

 

じゅれいさんやじゅんを見ながら走ってると、軽く違和感を覚える。

ナンだろうなぁと思いながら走り続け、やがて抱いた違和感の正体に気づいた。

「あ、そうか。じゅれいさん、足を怪我してるんだったっけ」

『 右と左で明らかに違うコーナリング』が違和感の正体だったようだ。つーか、ついさっき足を引きずってるじゅれいさんを見て「あとでスキを見て治療しよう」とか思ってたくせに、走り出したら忘れてしまう『俺の脳みその薄味っぷり』に、むしろ乾杯したいところ。

かなりアレなペースにもかかわらず充分に余裕のある、不安感のカケラもないじゅれいさんとじゅんの走りに気持ちよく引っ張られて、俺もペースをあげてゆく。怖さはなく、楽しさと気持ちよさだけを感じる。 『石川PAでの勘』は間違ってなかった。

俺は今日、乗れている。

実はR1000最後の走りってことで、この後、俺のR1000を引き取るコトになってるrakには悪いが、転倒さえある程度覚悟して、『俺のもてるギリギリまで詰めて』走ろうと思っていた。じゅれいさん、じゅん、ナリさん、のりさん、GO!!!君、 みんなにドコまで通用するのか感じたかったのだ。

前日、rakにだけはそれを告げて、わりと覚悟を決めて臨んでいた。

ま、この辺の連中なら、俺がコケても避けてくれるだろうしね。

だから、最初から前に出て「後ろに突っつかれたら譲っていこう。で、最終的にどの位置で走れるか、だな」と、スカスカ方式の位置取りを考えていた。もちろん簡単に譲る気はない。撃墜されて星になったマルとpoitaさんのためにも(ふたりとも健在ですし、星ってガラじゃありません)。

 

じゅれいさんがペースを落として、手のひらをこちらに向け「行くな」の合図。

するとほどなく、モノトーンのワンボックスを停めて、無線機やイスを用意した怪しげな人たちが、なにやら作業をしている場面に出くわす。何台か単車がとまって、赤とか青のカラフルな書類に書き込みをしていたので、なんかのキャンペーンだったのかもしれない。

キャンペーンの横を抜け、しばらく行くとまたペースが上がる。

数珠つなぎの車をかわしつつ、えっちらおっちら上ってゆくと、いつの間にか都民の森まで来ていた。ここで休憩かと思っていたら、じゅれいさんはそのまま加速して走ってゆく。ここまでクルマをよけるストレスが溜まってたので、単純にうれしい。

ヘルメットの中でニヤリと笑い、身体に無駄な力が入ってないこと、いい意味で緊張してることを確認する。それから気合を入れなおし、すでに加速しはじめているじゅれいさんとじゅんを追って、俺はイキオイよくアクセルを開けた。

足の怪我が治ってなく、本調子じゃないとは言え、じゅれいさんは速い。

それはスカスカの時から判っていたし、さらにここは、『じゅれいさんのホーム』とも言える場所だから、とにかく『チギられない』のが目標。そしてその後ろ、俺の目の前にいるのは『あの』じゅんだ。スカスカの時は絡めなかったとは言え、rakとポンちゃんが鍛えた変態だ。

高速では何度か走りを見たけど、峠で後ろから見るのはほぼ初めてだったので、俺は興味深くじゅんの背中を追う。先の見えないコーナーをリーンアウトで走るところは、ポンちゃんの姿を髣髴(ほうふつ) とさせる。リアを振り出すようにして、スパっと曲る姿に改めて確認させられる。

この男は速い。

これに付いて行けるなら、俺も捨てたもんじゃないだろう。がんばれ、俺。

 

中低速コーナの続く奥多摩周遊道路を、じゅれいさんとじゅんに引っ張られながら、ご機嫌なペースで走りぬける。足の怪我のせいだろう、右コーナーで少し苦労するじゅれいさんを、じゅんが淡々と追い詰める。すると、今度はじゅれいさんが左高速コーナーで引き離しにかかったり。

も、見てるだけで楽しくてしょうがない。

そして、このふたりのじゃれあいを、『後ろから見られる』という事実にも感動した。

前を行くのはR1000とR750だから、マルやpoitaさんの時と違って、比較しやすいし、判りやすい。うん、俺も速くなってるじゃん。この先もっとペースが上がってきたらわからないけど、今のところ付いて行けてるじゃん。 つーかなにより楽しいじゃん!

時々ちょっと離されつつも、なんとか見失わずに後ろにつけて走る。

一度だけミラーを見たら、ナリさんとの距離が少し離れてたので、心の中で「よしっ」をやってから、また前方に目を戻すと、いかんいかん、このわずかな瞬間に、少し離されてるじゃないか。

先頭を走るじゅれいさんは、当然、その分のマージンを取らなきゃならないので、直線でガバッと開ければ、少し離されても何とか追いつける。「先頭、きついだろうなぁ」と思いつつ、すべての面で『俺の思う以上に応えてくれる』R1000に感謝しつつ、俺は悦楽の時間をすごした。

 

途中でまたキャンペーンやってたので速度を落としたりしながら、最終的にはじゅれいさん、じゅん、俺、ナリさん、のりさん、GO!!!君、AGLA13とほとんど数珠繋ぎで休憩所へ入る。Uターンするのかと思ったが、じゅれいさん、さすがに脚が痛いようで、ここで休憩。

ちょっと開いて、ジュンタロー、ミサイル君がやってくる。さて、キャンペーンも多いみたいだし、それじゃあここで、Caruma君を待つことにしよう。その旨を、都民の森で待ってるうさぎちゃんに伝え、Caruma君にもメールを入れて、俺たちはダベリングタイムに入った。

 

『ガラの悪い、デカい悪党ふたり組』と言われても仕方ないと思うのは、俺だけじゃないはずだ。

 

ところが、しばらく待ってもうさぎちゃんがやってこない。

そのうち、水色のR1がやってくる。奥多摩最速として有名なHさんだ。

じゅれいさんと友人らしく、じゅれいさんは足を引きずりながらHさんに近寄って行って、仲良く話しこんでいた。そこでHさんに、「うさぎちゃんも同じくらいに出た」と聞き、心配になったじゅれいさんが迎えに出ると、入れ違いにうさぎちゃん到着。

「じゅれいさんに会った?」

「すれ違ったの判りました」

なんて話してるとじゅれいさんが帰ってくる。そこで事情聴取が行なわれ判明した事実は。

「Hさんが、うさぎが『同じくらいの時間に出た』って言ってたから」

「きゃはははっ! 全然同じ時間じゃないよー!」

Hさんの勘違いだったようで、一安心。

 

と。

突然、ナリさんが俺の肩を抱く。

なんだ? と思うまもなく声を潜めて。

「かみ……アレを写真に撮れ」

横で笑ってるAGLA13の顔をいぶかしく見ながら、指差された方へ視線を向けると、GO!!!君がじゅんと話しているところだ。「アレがどうしたんだ?」と聞き返そうとしたところで、ようやく俺にもナリさんの言わんとしていることが判った。なるほど、これは確かに『俺の仕事』だ。

「イエッサー! お任せください! ∠( ̄∧ ̄)ビシッ」

ナリさんに敬礼をすると、スピードグラファーかみは、GO!!!君の隙を突いて激写する。

 

 

 

 

 

 

オープン・ザ・セサミ!

撮り終わって、ナリさんたちとゲラゲラ笑ってると、GO!!!君が異変に気づく。

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもないよ」

「ウソだー! かみさんがそんな風に笑ってるときは、絶対なんかある!」

なかなか鋭いな、君。

疑惑の視線を俺やナリさんに向けながら、GO!!!君はほとんど無意識にファスナーを引き上げる。とたんにわきあがる大爆笑。GO!!!君ひとり きょとんとした顔をしてるところに、AGLA13がヒトコト「続きはWEBで」と笑う。わけのわからないGO!!!君は、腑に落ちない顔のままうなずいた。

ま、『こういうワケ』だったのだよ(^0^)v。

 

左から、ミサイル君、のりさん、ジュンタロー、なりさん、じゅん、GO!!!君、AGLA13。

ダベりも楽しいが、そろそろ俺の出番だ。

「じゅれいさん、そのズボンって、すそ上がります?」

言いながらじゅれいさんのツナギのすそをまくって足を出し、早速、押し売り的治療に入る。前脛骨筋が異常に張ってるのは、目算どおり。長いこと安静のみでリハビリ的な治療を受けてないようなので、関節も固まってるし足の甲まで浮腫(むく)みと張りが出てるのを確認 。

あとは得意技、じゅれいさんが悶絶するのもフルシカトで、ガッチリとほぐす。

痛みにのたうつじゅれいさんの横で、うさぎちゃんが大爆笑。鬼だ。

 

治療してると、俺の携帯が鳴った。 液晶には非通知の文字。

この瞬間、今日はノリノリのかみさん、一瞬で思い当たる。

「rakだな」

笑いながら出てみれば、やっぱりrakだった。昨日からもう、今日のツーリングが気になって仕方ないのだろう。その気持ちは充分よくわかるので、思いっきり盛大に「楽しいぞー」と言っておいた。それからじゅんに電話を代わり、俺はそのまま治療の続きをやって終わらせる。

と、今度はじゅんの携帯が鳴った。

「あ、キャスタ君だ。かみさん、捕まったことにしましょう」

『クチから出る言葉の80%がホラ』と言うじゅんらしい提案に、俺ももちろんノリノリ。電話に出たじゅんは、しばらく当たり障りない話をしてから、声のトーンを変えて本題に入る。

「かみさんがさ、キップ切られちゃったんだよ。いま、代わるね」

じゅんから電話を受け取ると、ものすげぇ沈んだ声で。

「……もしもし……」

「もしもし? かみさんですか?」

「……そうだよ……はぁ」

「どうしたんですか?」

「うん? いや……まぁ……」

「大丈夫ですか?」

ここで俺は耐え切れなくなり、爆笑してしまった。

「ぎゃはははははっ! 大丈夫だよ、キャス。ウソだから。捕まってないよ」

「……みんな居るんですか? じゅれいさんも?」

「居るよ」

じゅれいさんに電話を代わると、じゅれいさん真面目な顔のまま。

「え? かみさんって、今、コケたかみさん? もう元気だけど、さっきまですげぇ落ち込んでたよ」

キャスタへの情報が、めちゃめちゃに錯綜するのをハタで聞いてた俺たちは、腹を抱えて大爆笑。どいつもこいつも、ひでぇヤツばかりだ。楽しくて楽しくて、ゲラゲラと笑い、ゲラゲラ笑う連中の顔を見て、また楽しくなって笑う。俺らの居る あたりは、軽く狂気を帯びてきた。

じゅんが俺の顔を見て、

「キャスタ君、rakさんと話してたらしいんですよ。情報が日本からrakさんに行って、rakさんからオーストラリアを渡って、また日本に戻ってきてるんですね。すげぇワールドワイドだなー!」

言葉にするとなんでもないセリフなんだが、あの瞬間にあの場所で聞くと、大笑いしてしまう。あの空気には、すべてを楽しくさせる何かがあるのだ。これが、どうにも俺が『この連中とのツーリング』を外すことのできない理由のひとつだ。

 

いじめは、まだ現れないCaruma君にも及ぶ。

「Caruma君、このまま来ちゃったら、取り締まりやってるの気づかないんじゃ?」

誰かが言い出すと、じゅんがすかさず。

「それじゃぁ、都民の森に着いたところで電話しますよ。『あと五分だ』って」

なにそのサスペンス。

それはもちろん冗談なんだけど、ひとしきり笑ったあと、『結局みんな忘れてて誰も連絡入れない』のが、鬼つーかダメ人間つーか連中のクオリティ。ただひとり、本気で心配したじゅれいさんが「いや、ちゃんと連絡入れてあげようよ」つったのが、彼の優しさを物語る。

結局、反対方向から来たから、ナニゴトもなかったんだけど。

じゅんが、「ミサイルがジュースゴチで、Carumaがメシゴチだな」つってると。

Caruma君がR600に乗ってやってくる。これでようやくフルメンバーになった。Caruma君をひとしきりからかってから、じゅれいさんとじゅん、GO!!!君がコースを検討する。俺とかナリさん、AGLA13にうさぎちゃん、ミサイル君にCaruma君など、他のメンツはお客さんだ。

結局、じゅんが先導して引っ張っていくことになった。

 

じゅれいさんが最後尾についたので、俺はじゅんの後ろについて気合を入れなおす。

さぁ、出発だ。

こないだ奥多摩から柳沢峠に向けて走った時のGO!!!君もアレだったが、じゅんはそれ以上に変態なことがわかっている。どうせすっ飛ばすに決まってるので、とにかく 『いつでもスクランブル発進できる用意』を整えて、虎視眈々と後ろを走っていると……ほらきた。

先導と言うには明らかに様子のおかしい速度で、じゅんがすっ飛ばし始める。

離されたら速攻で終わるから、俺は必死に後ろへ喰らいつく。対向車を避けるためのマージンを充分に取りながら、それでもとんでもない速度で曲ってゆくじゅんの背中に軽く惚れそうになりつつ、そのマージンのオカゲで何とか喰らいついてゆける。

「こりゃ、気を抜いたら速攻で終わるぞ。何が何でも喰らいつけ!」

自分を叱咤しながら、持てる力を総動員して走る。じゅんの背中を見ながら走るとタイミングが狂うので、きちんと自分で道を確認しつつ、じゅんを『前を行く乗り手ではなく、路面状況と同じ、情報の一部』として見ながら走る。とにかく、ひたすら走る、走る、走る。

と、やがて道が登りだした。

狭苦しい、タイトで荒れたタフな峠道だ。

どっちかって言うとこの手の道が嫌いじゃない俺は、さっきより余裕を持って走れた。

 

駆け上がった頂上で、じゅんが単車を停める。

「風景も少しは見ておいたほうが、と思いまして」

 

なるほど、今日は曇りでガスっているが、晴れていればもっと綺麗だっただろう。

 

少し遅れたうさぎちゃんと、最後尾のじゅれいさんも追いつき、ここでまた少し休憩。

 

また、『おっかないふたり』が並んでいたので、「ガラ悪りぃなぁ」と笑うと、ナリさんとのりさんは後ろを振り返り、Caruma君を指差して、「あぁ、あいつな。ホント、ガラ悪いよな」と、眉をひそめ ながらウインクする。突っ込む気も失せて苦笑してると、

「きゃはははっ!」

うさぎちゃんがそのCaruma君を見て笑い出す。

「すごい、きょとんとしてる」

見れば、自分の名前を呼ばれたCaruma君が、「何事だ?」とこっちを見てる。

それにまた、みんなで大笑い。

 

じゅれいさん、じゅん、GO!!!君の三人でコースの段取り。

他の連中は俺も含めて、まるで他人事のように遠くを見ていた。ダメ人間ばっかりだ。んで結局、ここから延々と山を下るワインディングを走って、ふもとのどこかで昼飯にしようという話になる。そうと決まれば、さて、下りますか。

 

道幅の狭いタイトな下りを、案の定、じゅんはひどいペースで下ってゆく。

しかし、俺もR1000に乗って以来、こういう下りが苦手じゃないので、マージンを取りつつも結構速く走ることが出来た。ギャップと呼ぶにはギャップに申し訳ない的な荒れた道を、軽くキチガイ沙汰のペースで下り 、 せまっ苦しいところを抜け道が開けたところで。

アベレージスピードが一気に上がった。

「かぁーっ! 速ぇなぁ、クソっ!」

熱くならないようにと自分に言い聞かせ、右手をアクセルコントロールに専念させながら、シャカリキにじゅんを追う。すると突然、道路が一面、真っ白くなり、タイアの手応えがおかしくなった。もしやとじゅんのリアタイアを見れば、「なにその煙幕」的に煙が上がってる。

採石場のそばなんかで、『細かいパウダーみたいな砂』が浮いてる場合があるだろう?

つまり、アレだ。

「こりゃヤバい」

と一瞬アクセルを抜きかけ、 「いや、じゅんがイケるんだから俺もイケる」とドタマの悪い結論を出した俺は、もう一度アクセルをひねった。ここで引くんじゃ、何のためにrakに「壊すかも」宣言したのかワケが判らなくなる。今日は行こうと決めたのだ。しかも、今日は乗れているのだ。

ここで行かなきゃ、一生イケないだろう。

パウダーの上を探りながら、それでも開けられるだけ開けてじゅんについてゆくと、道はパウダーのままトンネルに入って暗くなる。経年劣化した俺の眼球は、光量の変化についてゆけない。だが、幸いそれほど長いトンネルじゃないので、じゅんのテールと先の明かりを頼りに走る。

トンネルを抜け、めまぐるしくRを変えるコーナーに四苦八苦しながら、それでもじゅんについていけるのが単純にうれしい。少し余裕が出てきて、『タイトコーナーの立ち上がりでは、トルクのある分 だけ俺の方が苦しくない』ってコトにも気づく。気が楽になり力が抜け、もっと曲れる。

乗れてるときの、『いい方向への循環』が出来上がった。

 

先が分かれ道になったところで、じゅんが単車を停めた。

ヘルメットを取ると、ヤツはオトコマエな顔をにっこりと微笑ませて

「う〜ん、変態どもは、なかなか消せないなぁ」

「つーか、なんだよあの砂! 怖ぇっつの」

すかさずナリさん

「かみ、ついてったおまえが言うな」

笑ってると、じゅんがニヤニヤしながら言った。

「くそー! かみさん、消せなかった。トラップしかけて消してやろうと思ったのに」

 

瞬間。

 

鳥肌が立った。

あのじゅんが、もちろんホンキで走ったんじゃないにしても、「このくらいなら消せるだろう」と思いながら走り、その結果、「消そうとして消せなかった」と言った。この事実の持つ意味が、全身を総毛立たせる。それから数瞬ののち、俺の心にじわじわと喜びが広がった。

 

よしっ!

ナリさんの、「なんであんなトコで開けるんだよ」とか、のりさんの、「アレ行くのは変態でしょ」といったセリフの一つ一つが、俺への最高の報酬だ。うん、『度し難いバカさ』だということは、もちろん判ってる。誰に言われるまでもなく、俺自身、反吐が出るほど判ってる。

ただの蛮行だ。

だけど、俺にとってはそれでいいのだ。タイムでもテクニックでもないし、形のあるものじゃないけれど、それでも俺はうれしくて、なにより『俺の心が納得する』のだ。公道でそれをすることはバカで、メイワクで、危ない。それはもう、誰がなんと言おうと間違いない事実だ。

だが、それ でも俺は幸せなのだ。

スピードや世界観に酔っ払って言うのではなく。

よりタチの悪いことに、俺は確信犯で、シラフのまま言うのだ。これがハタからみてカッコよくもなんともないこと。むしろ嫌悪を感じさせる蛮行であること。何も手に入れられないのに、失うものだけは ゴマンとあること。そのすべてを『徹底的に理解した上で』言うのだ。

背徳行為の自覚はあり、事実から逃げる気もない。

ただ、それだけの話だ。

話がそれた。

 

みんなでバカ話をしながら、うさぎちゃんやじゅれいさんを待っていると、ナリさんが突然、川を眺めながら、「見ろよ、かみ。いい景色だなぁ?」と、『あんたはドコの石原裕次郎だ』的につぶやく。思わず吹き出した俺は、すかさずまぜっかえした。

「ホント、ベロ引っこ抜きますよ?」

「今日は俺、景色を見に来たんだよ。ほら、似合うだろ? 写真撮ってくれよ」

判断は、読者にゆだねることにしよう。

 

休憩した場所からすぐのところにあるスーパーの駐車場に、単車を並べて停める。

と、ナリさんが突然、「記念写真を撮ろう」と言い出した。一番似合わないヒトから出た、一番似合わないセリフにみんなで笑いながら、ワルノリ軍団は次々に好き勝手なことを口走る。

「R1000のお別れツーリングなんだから、R1000を囲もう!」

「じゃ、私が撮りましょうか」

「だめだめ! うさぎさん居ないと華がなくなっちゃう! ジュンタロー! おまえが撮れ」

「ひでぇ! じゅんさん鬼だ」

というわけで。

 

 

 

カシャッ!

結局、じゅんが一枚、撮ってくれる。

後列左から、ナリさん、GO!!!君、のりさん、うさぎちゃん、じゅれいさん、AGLA13。前列左から、ミサイル君、Caruma君、俺、ジュンタロー。モザイクかけるのがもったいないくらい、みんな最高の笑顔だ。とりあえず、俺のゴキゲンっぷりから想像してみてくれ。

 

さらに、うさぎちゃんが一枚。ま、確かに華はないか。

もちろん、こっちもみな、めちゃめちゃ楽しそうに笑ってる。

「だれか、mixiにアップできる人いない? rakさんに見せよう」

「こんな写真見たら、あいつ、すっ飛んで帰ってくるな」

「もう、荷造りしてるかも」

「じゃぁ、帰ってきたら冷たくしよう。もう寒いからツーリング行かない、とか」

「ぎゃははははっ! ひでぇ」

ひとしきり笑ったあとは、スーパーに行って昼飯を買い込む。

ツナギだの革ジャンだの、およそ昼下がりのスーパーとは一線を画すメンツが、ゲラゲラ笑いながら弁当やジュースを買い込む姿も、これはこれで情緒がある……ような気がするようなしないよう な。ま、当人たちが自覚してて、そのアンバランスを楽しんでるってのはいいね。

 

弁当を買って集まるのを待ってると、スーパーの店長だか関係者らしき人がやってきた。

「このバイクって、大きいのはなんシーシーあるの?」

すかさずナリさんが「2300シーシーですよ」と答える。ロケットIIIは居ないはずなんだけどね。

「そ、そんなデカいのかい? そんなバイクがあるの?」 と目を丸くしてるおじさんに、じゅんが満面の笑みをたたえながら、 「ありますよ。日本でも日野のエンジン積んだヤツは大きいです」とか、平気な顔で大ウソをつく。つーかそのバイク、俺が欲しいかもしれない。

なんつってると、おじさん、じゅんのR750を見つけて

「あぁ、これはナナハンだね」

ほら吹き男爵が、間髪入れずに

「いや、750馬力です」

と容赦ない。つーか、さんざんそんなコト言っといて「駐車場、お借りしますね」とか、いけしゃぁしゃぁと、どのクチが言ってるんだって話だ。おじさん、そろそろおかしいと思ったのか、あんまりビックリしちゃったのか、「それじゃぁ」とヒトコト残し、そそくさと立ち去ってしまった。

やがてみんなが集まったので、車座になって昼食。

まるでピクニックだ。

評判の店や、変わった名物ではないけど、俺にとってはその何倍もウマい昼食である。

 

喰い終わって一服しながら駄弁るも、なにやら先ほどより会話が弾まない。

なぜって簡単な話だ。

ドイツもこいつもオランダも、お腹いっぱいになったら眠くなったのだ。まるっきりタダのガキである。そんな中でもじゅれいさんが、何の琴線に触れちゃったんだかミサイル君に突っ込みを入れまくって 、みんなを笑わせる。話のもってき方がうまいのは、機転がきく証左だ。

ミサイル君が苦笑いしてるところで、さて、それじゃぁそろそろ走り出そうかと腰を上げる。

「かみさん、ボクはここでお先に上がらせてもらいます」

用事で途中離脱となるのりさんの言葉に、ナリさんがすかさず

「俺も疲れたから帰ろうかなぁ」

「まーた、なに言ってるんですか」

「いや、もうヘロヘロだよー」

「まぁ、今日は休憩が少なかったですからね」

確かに奥多摩で長い休みを取った以外は、この昼食も三十分前後だし、相対的には走りづめと言っていいだろう。ナリさんが音(ね)を上げるのも判る気がする。もっとも俺の方は 、『走りの調子がいい』もんだから、身体の疲れなんぞドコ吹く風な状態だ。

 

「さて、ここからも峠を走ります」

と言うじゅんの言葉に、気合を入れて走り出し、峠の入り口を登るのだが……もね、走り出してしばらくしたら、すぐにわかったよ。ああ、じゅんは俺たちを殺す気なんだなって。道に迷ってってならともかく、 『確信犯で林道に連れて来る』ってんだから、悪魔もここに極まれりだ。

確実にrakの影響つーか、教育の賜物(たまもの)だろう。

かろうじて『舗装はされてる』ってだけの、さっきの下りさえ可愛らしく思えるほどガレた狭い道が、冗談みたいにUターンチックなブラインドコーナーを形成し つつ、俺たちを出迎える。落石、落ち葉、ドロ、砂、山汁。なんでもありの道は、ランツァで来たら面白そうだ。

ここでもリーンアウトで前方を確認しながら、アホみたいな速度で走ってゆくじゅん。

俺もこの手の道は、クルーザで好んで走ってたくらいだから嫌いじゃないし、むしろ、わりと得意な方だから楽しんでは走れるのだが、言っても相手はじゅんだ。 こういうところもrakに鍛えられてる上に、本人も嫌いじゃないようで、走り方に澱(よど)みがない。

この手の道の常套手段を心得ていて、エンジン音がさっきよりだいぶん低い。

トルクで走り始めたじゅんの排気音を聞き取って、俺は冷静になった。

すると、 「たぶん、嫌いな人は嫌な道だろうなぁ」 と、人のことを心配する余裕も出てくる。こうなれば もう、よっぽどボケっとしてない限り、対向車を避けられなかったり、オーバースピードですっ転んだりはしないだろう。

やべぇ、なんだよ。めっちゃめちゃ楽しいじゃねーか。

いいぞ、じゅん! もう、ずっと走ってようぜ!

と、ホモ疑惑が起こりそうなセリフをヘルメットの中で吐きながら、後ろから来るGO!!!君だったか? ミラーに写る誰かのライトを視界の隅に収めつつ、タフでハードな峠道を延々と走る。やがて視界が急に開け、 T字路にぶち当たって峠は終わった。

「んだよ、ココっ! 林道じゃん! 超ぉおもしれぇ」

シンドい道でわりとげっそりしてるナリさんたちを尻目に、俺はそう叫んでゲラゲラ笑う。

じゅんが、ニヤっと笑った。

ここでまた、じゅんとじゅれいさんが相談して、このまま道志みちへ向かうことに決定する。

 

混んでる街中をじゅれいさんを先頭に千鳥で走っていると、ぽつん、と来た。

「うっわ、カンベンしてくれよ」

叫んで天を仰ぐ。そのまま土砂降っては来なかったが、予報では何とか持つはずだった天気が崩れたことに、ちょっと心を折られ「きっと、のりさんの呪いだ」と決め付ける。 やがて、青カンバンに県道の表示と一緒に『道志』と書かれてるのを見て、次のステージが来たことを知った。

じゅれいさんとうさぎちゃんのホーム(?)である、道志みちだ。

じゅれいさん、じゅん、俺、GO!!!君、ナリさん、AGLA13、ジュンタロー、ミサイル君、Caruma君、うさぎちゃんの順番で、その道志みちを走りだす。目指すは『道の駅どうし』だ。あとで聞いた話では、この 時の『みんなが連なって走る姿』が、後ろから見るとかなりの見ものだったらしい。

が、こっちにそんな余裕はない。

先頭のじゅれいさんが安全マージンの分で、じゅんに突っつかれている。俺がじゅんにベタ付けだとしたら、じゅんはじゅれいさんに半分カマ掘ってる状態だ。実際、一度じゅれいさんの横っ腹に突っ込みかけて「あ、逝った!」と思ったが、さすがにじゅん、立て直して事なきを得た。

 

道志みちは、それほど広くないものの、走りやすく気持ちのいいワインディングだ。

そこをとんでもない速度で、しかもめちゃめちゃ安定して抜けてゆくじゅれいさん。そのケツにぴたりとつけるじゅん。「じゅんがコケたら、踏むかもな」と思いながら、それでも寄せて行く バカな俺。もちろん俺の後ろにもキチガイは続き、風を巻き上げながら道志みちを駆け抜ける。

もんのすげぇ気持ちがいい。

『 今この瞬間、ここでこの連中と、こんな風に走れる喜び』に、疲れもすっ飛んでゆく。

曲って、曲って、曲りつくしたら、あっという間に道志みちも終わりだ。

道の駅に入ってものの数分、いや、数十秒だろうか。うさぎちゃんが追いついてきた。

「お待たせしちゃいまして」

うん、これっぱかしも待ってねーから。

カワイイ顔してこの子は真性のキチガイだ。今日、一緒に走った全員が保証するだろう。

 

ココで休憩しがてら少しダベろうかなんて言ってる矢先に、ぽつぽつと降ってくる

「あぁ、降って来ちゃいましたね。このまま戻って、高速のっちゃいましょうか」

と言うじゅんの言葉に、ナリさんが目をむき出して

「も、もう走るの? も少し休もうよ」と哀願。思わず大笑いしてしまった。

それならと、うさぎちゃんが先に出る。

先行逃げ切りを決めるつもりのようだ。

結局、滞在時間ものの数分で道の駅を出ると、またもワインディングを走り出す。

しかし、さすがにこのあたりはクルマが多い。道が曲がりくねっている分、かわすのにかなり苦労する。じゅれいさんがよどみなく抜き去り、じゅんがぴたりと影のように後ろへつく。俺は三台目だから、じゅれいさんが行けるタイミングでも行けない時があり、少し遅れそうになる。

もっとも、混んでるからすぐに詰まるわけで、追いつくのもそんなに苦じゃない。

しばらくすっ飛ばしてるうち、『ツーリングライダーの行列と、渋滞するクルマ』のコンボに引っかかった。その列の中にうさぎちゃんがいたので、片手を上げて挨拶しながら抜いてゆく。 「それにしても、うさぎちゃん、結構先まで来てたんだなぁ」と、単純に感心した。

あとでじゅんと電話したとき、ふたりの一致した意見は、

『うさぎ、恐るべし』

 

車の列を抜けてゆくうちに、ガソリンスタンドが見えてきた。

じゅれいさんが入ったので、そのまま俺とじゅんも入る。

ガソリンを入れているうちに、みんな次々と追いついてきた。じゅれいさんとうさぎちゃんは、ココでお別れだ。楽しい時間をすごせたこと、先導してもらったこと、思いを馳せれば自然に口をついて出てくるのは、 「お疲れ様でした。ありがとうございました」のセリフと。

そしてもちろん、「また、走りましょう!」だ。

一日中、フトコロで遊ばせてくれた山にも感謝。

 

うさぎちゃん。普通に朝錬とか行っちゃうキチガイ娘。今日はありがとう&お疲れ様でした。

 

じゅれいさん、次は俺んちで宴会やろうねっ!

ガソリンを入れた残りのメンツは、『じゅん、俺、ナリさん、AGLA13』と、『GO!!!君、ジュンタロー、ミサイル君、Caruma君』に自然と離れるカタチで、中央道に向けて走る。後でミサイル君に聞いたら、ここでCaruma君が華麗なジャックナイフを披露したらしい。

コケたり事故ったりしなくてよかった。

ミサイル君に突っ込んでく姿は、正直、ちょっと見たかったけど(明日は我が身です)。

 

中央道に乗り、チケットを仕舞う。

俺が「飛ばさないから」と何度も言ってるのに、ナリさんは全然信じてくれなくて、挙句の果てに、「それじゃさ、200同盟つくろうよ」などと、『それはあなたには絶対無理です』的提案をする。もちろん、高速大好きなじゅんとAGLA13は、黙っててもやる気オーラ満々。

「う〜ん、R1000最後の走りだし、ちょっとだけ頑張るかな」

と思って走り出し、本線に合流した瞬間、俺はメットの中で歓声をあげた。

「やっりー! 大渋滞っ! これなら飛ばさなくて済むぞー!」

せっかく峠を気持ちよく走りきったのに、高速でへこまされて水をさされるだろうと予測していた俺にとっては、まさに恵みの渋滞だ。横を抜けてゆくじゅんの背中から、みるみる気合が抜けてゆくのが判る。俺は意気揚々と、渋滞の中を走りだした。

と。

ばびゅん!

AGLA13が、俺をぶち抜いてすっ飛んでゆく。

「よし、いいぞ、AGLA13。じゅんを突っついて最後の力を絞りつくさせるんだっ!」

無責任なことをわめきながら笑いつつ、こちらは180くらいでらく〜にすり抜けていると、あっという間に石川 PAに到着。駐車場に単車を並べていると、GO!!!君、ジュンタロー、ミサイル君、Caruma君がやってきた。

そこで先ほどの、『Caruma君ジャックナイフ事件』の顛末を聞き、みなで馬鹿笑い。

あまりに楽しかったツーリングの余韻に、なかなか帰り難(がた)い。

単車を囲んでだらだらダベりながら、共有した時間に思いを馳せる。自然に笑いがこみ上げ、笑顔でバカ話をしては、また笑う。結局、一時間近くダベっていただろうか。雨がポツリと来たのを潮に、それじゃぁ帰りますかと腰を上げたら。

本日のcrazy marmaladeでっかいもん倶楽部は、Caruma君の、「このメンツで走ると、ホント楽しい」と言うセリフに、なんだか誇らしい気持ちになりつつ 、無事に終りの時を迎える。みんなで「帰りはゆっくり走ろう」なんていつもの出来もしない決心をし、最後まで笑いながら走り出し。

前に赤灯が見えた瞬間、フロントをぽんぽん上げ始めるダメ人間たちにまた笑い。

 

延々と笑いながら過ごせた、本当に、本当に、本当にステキな一日をかみ締めながら、俺はのんびりと高速を走った。帰って風呂に入ったら、すぐにやって来るだろうAGLA13と一杯やりながら、も一度、今日の話で笑いあえるのを 、心の底から楽しみにして。

みんなありがとう。

また一緒に走ろうぜっ!

 

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