The 64th big machine club

2008.10.12 第64回でっかいもん倶楽部 in 北茨城

〜あるいはハヤブサのファーストインプレ〜

 

朝から「呑みたい」とシブるmioちゃんを引きずって表に出る。

よしなし、mioちゃん、デコ、フラナガン、板乗り、俺の六人で、ビーフラインへツーリングに行くのだ。つーかここで飲み始めちゃったら、夕方、大宴会が始まったころになって確実に大切な何かを失うことは間違いない。楽しい経験とか、あるいは人間の尊厳とか。

サクっと走り出し、16号に乗る手前で、いきなりデコがUターン。

財布でも忘れたかと思ったら、案の定だった。ここで俺は早くも、「ああ、俺は間違いなく、このまま車と一緒には走れない」と気づき、よしなしに「俺はすり抜けするわ」と宣言。自動的にすり抜けしない組の先導を、茨城が地元のよしなしに任せることになる。

「他にすり抜けしそうなのは、フラ公と、板乗りか」

思った俺はそれを本人たちに確認し、デコが帰ってくるのを待って、再び出発。

 

16号に乗ったところから、いつも通りすり抜けて走ると、フラや板乗りとちょっと離れる。

なのでアクセルを抜いて、ミラーを見ながら調整しつつ、柏インターへ。とりあえず守谷で給油という話になってたので、ここから守谷まで数十キロのフリーランだ。そんなに引っ張らずに、小気味よくシフトアップし、180〜200くらいで流す。ハヤブサにはちょうど楽々な速度だ。

相変わらずダメ人間のフラがぴったりついてくるのに笑いながら、あっという間に守谷へ到着。

ほどなく、みんなもやってきて、ここでガスの怪しいフラが給油してるあいだ、ダベる。

 

後で聞いたら、この時点で板乗りは「あの馬鹿どもについてゆくのはやめよう」と誓ってたらしい。

 

デコマルキューRと、よしなしベンベ、板乗りR1000。

 

そして俺の、美しきパールホワイト・ファイティングファルコン。

 

mioちゃんの愛機、E-RocketIII(エロケットスリー)は細部まで、とにかく造詣がエロい。

 

「天気がよくて気持ち良いから、のんびり走ろう」と思ってると、後ろからフラが突っつくので仕方なくアクセルを開ける、かわいそうな俺。右肩が内側に入ってるのは、前愛機マットブラック・ボロブサと決別したときの悲しい思い出の残滓。要は鎖骨の骨折をきちんと固定してなかっただけ。

 

晴天の元、単車で走ってダチとダベれば、それだけで幸せなんだから、俺のドタマってのも相当にお安く出来てるたぁ思う。のだが、自然に表情がゆるみ、気持ちも高揚してくるのはどうしようもないわけで、さて、休憩が済んだら次は友部まで走ろうか。

すると、板乗りが「かみさん、俺はよしなしさんたちと行きます」と宣言。

酒も走りも無理強いしないのが俺の方針なので、了解と快諾して、これでバカグループは俺とフラナガンだけ。ま、ちょうど良いから、この際、思いっきりフラをいじめることとしよう。いや、もちろん高速じゃなくて、峠の曲がり道で、ね。いじめるって約束しちゃったし。

 

フラのV-MAXがいくらよく出来てるとは言え、高速でハヤブサとやりあうってのは荷が重い。

それは俺もフラもわかっているから、出る前からハンディをつけようと話していた。ホンキでどっちが速いかやりあうのなら『ハンディ』なんて、もちろん必要ない。V-MAXを選んだのはフラ自身なのだ。だが、俺とフラは速さを競いたいのじゃなくて『楽しくやりあいたい』のだ。

悔しさに歯噛みしながら「くそー! 負けたっ!」と叫ぶのじゃなく、相手の速さ、あるいは上手さ、あるいは機転を賞賛しつつ、にやりと笑って「くそー! やるなぁ」とつぶやきたいのだ。だから、高速でハヤブサに枷(かせ)をかけ、6000rpm縛りで走ることにする。

それでもトップで180は出るのだから、すり抜けながらのハイウェイランには充分だ。

その予想通り、フラのV-MAXはヤツのメータ読み240、こっちのメータで220くらいをトップエンドに、ガンガンすり抜けて追ってくる。最高速で差がないか、多少こっちが不利な状況だが、すり抜けのしやすさと強力な足で勝るので、結果としてはちょうど楽しめるくらい。

すり抜けで少し離し、開けた区間で追いつかれるという、『本来とは逆の展開』がまた楽しい。

友部ジャンクションまでのあいだ、俺(と、たぶんフラも)メットの中でゲタゲタ笑いながら走った。ジャンクションから北関東道に乗り、友部出口までの短い区間に入る。さっきまでの渋滞が嘘のように、ほぼまるっきりフリー区間となった。さて、ここからは、ハヤブサにも全開をくれてやろう。

本線と合流しながら、俺は6000縛りを解く。

 

8000を越え、9000、10000と回転が上がるにつれ、冗談みたいにメータの針が跳ね上がる。

茨城の高速ってのは基本的に風が強いことが多いんだが、北関東道のこの辺りもご他聞にもれずアホみたいに風が強い。それでもハヤブサはド安定したまま、ぐいぐいと加速してゆく。メータが250を越えても、今までのような不安感がない。270くらいから、少し緊張を強いられるか。

やがてメータが280を越え、さすがにサスの動きが強く感じられる。

一度車線変更してくるクルマを避けるのに、身体をカウルから出して減速したが、その瞬間、ものすごい風圧に身体をたたかれ、自分が今、とんでもない速度域に居ることを実感させられる。しかし、それでも恐怖感は薄い。カウルにもぐりこめば、すべてが何事もなかったかのようにキャンセル。

コレだけは、さすがのR1000にも望めないものだ。

フラはあっという間に視界から消え、楽しむまもなく友部の出口にたどり着く。

 

フラとふたりで「楽しいなぁ」とバカ話をしてると、しばらくして皆が追いついてきた。

ここから下道で、国道から県道一号線を北上し、ビーフラインを目指す。

 

ハイスピードグループ。でも、板乗りはあんまり飛ばさない。

 

ハイパークルーザーグループ。どっちもエロいスタイルだ。グラマラスとも言う。

 

ポンコツグループ。かけた金と愛情は、この二台が一番多いかな。

 

途中で給油したら、県道一号線を北上し、ビーフラインに入る。

いつもの減速帯の多い区間を軽く流しながら、ハヤブサの曲がり具合を確認しつつ走ると、思ったほど違和感がないことに気づく。もちろん、旧型とも違うし、R1000とも違うのだが、上手く言えないんだけどそのどっちとも似てる感じなのだ。特に中高速コーナーが似てる。

低速の倒しこみや初期旋回は、R1000とは比べるべくもないが、旧型よりは明らかに速い。

アクセルオンで曲がってゆく感じも、R1000を知った今となっては驚愕するほどではないが、しかし充分に気持ち良い。旧型より全体にマイルドになっているので、一瞬、かったるくなったかと感じるのだが、脱出するときにそれが勘違いだとわかる。とにかくド安定。

間違ってもじゃじゃ馬ではないし、明らかに穏やかに調教されているのだが、だからといって退屈なのかと言われるとそうではなく。むしろへんな挙動がなくて、ギャップに乗ってもスムーズなので、安心してやりたいようにやれる。時々、重いのを忘れてR1000みたいに突っ込んでしまうほどだ。

少なくとも、この程度の速度ならただただ、楽しい。

 

楽しんでるうちに次の集合地点の、道の駅チックな場所に到着。

フラと掛け合い漫才しながら遊んでいると、やがてみんながやってくる。

 

ここで軽食を取りながら、この先の予定を決める。

デコの「せっかく山口から出てきたので観光したい」との申し出を考慮して、ゆったり観光組と曲がり道特捜隊に分かれることとなった。観光組をよしなしが率い、曲がり道部隊はもちろん俺とフラ公。この道の駅で別れてそれぞれ走り、あとで適当に合流するか俺んちで合流という段取り。

となれば、ひとつやっておくことがある。

首都高組のみんなに「タイアの空気圧は純正より抜いておいた方が良い」と教わっていたので、もって来たゲージで量りながら空気を抜く。フロント2.4、リア2.6くらいだったかな。もちっと抜いても良いのかもしれないけど、タイアが完全に冷えてるわけじゃないので、このくらいで様子見。

すると。

フラもガソリン添加剤をドーピングし始めた。けけけ、やる気マンマンじゃん。

 

休憩を終えて、俺とフラはみんなに手を上げると、ふたりでワインディングに向かう。

それから観光組の方では、こんなことや。

 

こんなことがあったらしいが、それはmioちゃん、デコ、よしなし、板乗りの方のレポで。

 

さて、勝手知ったるビーフラインを走り出す、俺とフラナガンだが。

フラとふたりになった段階で、何度も一緒に走ったことのある俺には、だいたいの航続ペースが読めていた。速度的な話というよりも、「フラとだったら、だいたいあの当たりまでいけそうだな」と言った感じの読みである。時間とクルマの様子を考慮に入れても、北茨城まで余裕で行けるだろう。

むしろ読めないのは、自分とハヤブサのコンビがどのくらい行けるかだ。

なので、いつもフラを引っ張るときより、少しペースを上げて走ってみた。直線でフラを待ちつつ、曲がりだしたら気合を入れて走るって言う基本構想は変わらないが、そのコーナリング部分のペースが速いのか遅いのかつかめないので、マージンを取ってみたのだ。

後でフラに聞いた話では、やはり、実感してるより実際の速度の方が、若干速いようだ。

 

新しい相棒とのランデブーを楽しみながら、曲がった道をガシガシと攻めてゆく。

かくんと曲がるR1000のような鋭さはないものの、安定してる分コーナリングスピード自体は結構速いみたいだ。しかし、それがあんまり実感できない。ラインの選択も、R1000ほど選択肢に富んでいるわけじゃなく、内側に突っ込んで強引に曲げるのはちょっとしんどい。

曲がらないわけじゃないが、重さを実感させられて、車体が大きく感じられる。

外、内とセオリーどおり進入すれば、それほど苦労も恐怖もなく、すすすっと寝てゆく。もちろん、R1000ようにクイックには寝ないが旧型よりは速く寝るので、早めにアクセルが開けられる。アクセルオンでぐいっと内側に入る感じが、旧型より強くR1000よりは弱いか。

足がよく動く感じは、三台の中で一番感じられるかも(ノーマルセッティングの場合)。

 

ビーフラインを走り終え、県北東部広域農道を目指す。

途中からフラを引っ張るよりもハヤブサを操るのが楽しくて仕方なく、とにかく曲がってる道が楽しい。29、33と県道をつないで北上し、道の駅さとみで休憩。ジュースを飲んでトイレを済ましたら、さて、まだまだ曲がっていくぞ。「行きましょう! かみさんっ!」がはは。フラは良いねぇ。

国道349から、こっちに来たらおなじみのコンビニの横を抜け、国道461へ入る。

ここは空いてれば非常に気持ちの良いワインディングで、ナリさんもお気に入りのコースだ。すっ飛ばしたり、フラを待って直線でアクセルを抜いたりしながら、好天の元、楽しんでハヤブサを走らせる。自分のペースで走れるから、アベレージそのものは少し低いものの、余裕があって楽しい。

とは言え、こいつと仲良くなるために走ってるんだから、そうそうのんびりとは走れない。

その辺の加減をしながら走るのがまた楽しく、ついつい停まらずにどこまでも走ってしまう。461の途中から、おなじみ広域農道に入る。クルマがまったくいなくなり、道が節操なく曲がり始めた。カーヴを気持ちよく攻め、トルクを生かして直線を立ち上がる。気持ちいい!

 

広域農道の途中で、ふと、勘がひらめいた。

「こっちに行けばいつもの道だが、こっちも、ソソる曲がり方してるじゃん」

勘つーかイキオイだ。だが、コレがまた結果オーライ。入った道はさらに節操なくグネグネと曲がり、途中で俺とフラが好きな、荒れた林道チックな道になってゆく。普通のツーリングなら失敗かもしれないが、俺とフラはこういうタフな道が嫌いじゃないつーか好きなので問題ない。

むしろフラなんかは、このとき「よし、これで差がつめられる」と思ったらしい。後で聞いたんだけど。

暗い林の中、舗装林道みたいな道を、対向に充分注意しながら走る。急に広くなったり狭くなったり、センターラインも出たり消えたり、道はまるで俺たちをからかうように千変万化する。「このタフな感じがたまらんなぁ」とメットの中でつぶやきながら、ハヤブサの車体と格闘する。

こっちは意外だったんだけど、ハヤブサ、こんな道でもイケた。

無論、R1000のように飛び込んでから何とかしようとしても間に合わないけれど、ある程度予測と準備をして突っ込んでゆくなら、タフな荒道でも充分に走ることが出来る。よく動くサスとそれなりに重い車体が、ギャップやスライド時の安定感の方に働いてくれるので、思ったより走りやすい。

結局、ほとんど休憩を取らないまま、延々とワインディングを走り倒した。

開けた道で休憩がてら、タバコを一本。この瞬間が、たまらなく気持ち良い。

地図で場所を確認し、時間を見計らって計画を立てる。結局、もう一回国道に戻って、また461を攻めてから、高速に乗って帰ろうと言う段取りになった。陽はまだ高いが、バカペースについてきたフラのひざが笑い始めているし、俺もテンションが上がってるだけで身体の方はいささか疲れてる。

ここらが潮時だろう。

国道に出て南下し、もう一度、461のコンビニを曲がったら、今度は容赦なくすっ飛ばし始める。

クルマの列をぶち抜き、きっちりと直線を開け、その分厳しくなるコーナリングに奇声を上げて喜びながら、俺はハヤブサと駆け回る。右のステップを擦って、さすがに少し冷静になり、それでも速度は緩めない。速いぞこいつ。すごく優しいけれど、とんでもなく速いじゃないか。

うれしくてうれしくて、ワインディングが終わったとき、なんだか物足りなさでいっぱいだった。

 

高速に乗ったら、のんびり帰ろうか。

180前後で流しながら、時々絡んでくる単車がいると、ちょっとだけアクセルを開けたりして。フラもV-MAXのシールドにもぐりこんで、かなりのペースですっ飛ばしてくる。面白いので、どこまでいけるか様子を見ながらアクセルを開けたら、ハヤブサのメータ読みで230〜40くらいで巡航してた。

フラのメータでたぶん、260くらいまで行ってたんじゃないかな?

守谷で最後の休憩を入れたら、さて、後は柏まで一気に帰ろう。今晩はキチガイどもが10人以上も集まる宴会があるんだ。ワインディングを走って走って走り倒して、帰ったらキチガイ単車乗りどもと宴会だなんて、こんなに幸せな話もなかなかないぜ、実際。

「フラよぉ、楽しかったな。でもさ、これからもっと楽しいぜ。なんたって今日の走りをつまみに呑めるんだから。つーかむしろ、酒のつまみにするために今日走ったようなもんだからな」

「かみさんと単車の話をしながら酔っ払うと、終わりがないですからね」

結果的には、走りの話なんかできたもんじゃなかったんだが、それもまた楽しい。

 

俺とフラはmioちゃんの恨めしそうな顔を想像しながら、柏に向かってアクセルを開けた。

 

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