The 65th big machine club
2008.10.21 第65回でっかいもん倶楽部 in 赤城 〜決戦! 赤城山〜
こないだR1000でコテンパンにしてやったマルゾーが、ハヤブサにリベンジすると言ってきた。 R1000に負けてハヤブサに仕返しするって段階で、江戸の敵を長崎だって話もあるが、まぁ、そういうことなら、だいぶんハヤブサに慣れてきた俺としても異存はない。つわけで仕事がハネるやいなや整骨院を飛び出し、三郷西から外環に乗って、関越自動車道の駒寄PAを目指す。
外環、関越とも風が少し強かったが、こちらはハヤブサだ。R1000のときと比べれば、体感で二倍くらいの楽さ加減で、悠々と巡航できる。さすがは最強のオールラウンダー。クルージング能力は、やはり半端じゃない。7000rpmも回ってれば200オーバーでの巡航も鼻歌まじりだ。 が、気合の乗っちゃってる俺は、うれしくてうれしくて、悠々とクルージングなんてする気分じゃない。ィヤッホーとバカみたいにすっ飛ばす。最初こそ240くらいでも少し力が入ってしまったが、段々目が慣れてくるにしたがって速度も上がり、駒寄の手前でマルに追いついたときは270くらい。 いったんアクセルを抜いてマルが反応してくるのを待ち、改めて加速。こんどはひとりじゃないので、さっきよりさらに気合が入る。ガンガンすっ飛ばしてマルをガッチリ引き離し、意気揚々と、むしろ威風堂々と駒寄へ入る。
駒寄PAにて。連邦の白い新型VS赤い彗星。 「くそー、さすがに速いな。つーか目がついていかねーよ」 「ああ、俺も走り出してすぐは目がついていかなかった。お互い、衰えてるねぇ、マルちゃん」
ダベりながら便所や一服を済ませ、赤城出口へ向けてゆっくりと流す。 んで、赤城出口から山へ向かうのだが、言っても俺とマルだ。
案の定、道に迷う。だが、迷って入った道もなかなか楽しくくねってて、俺とマルはもちろん笑顔だ。ケタケタ笑いが絶えず「たのしいなぁ、かみ」「たのしいなぁ、マル」とバカみたいに上機嫌。結構いいペースで走ると、天気もまあまで気分がいい。やがてようやく道を見つけ、赤城山北面へ。
懐かしいこの風景を見た瞬間、さらにテンションの上がる俺。 「あぁ、家に帰ってきた。ただいまっ!」 「ははは、ばーか。でもよ、峠はいいなぁ、かみ」 「ああ、いいな」 つわけで、一服したら。まずは一本、走ろうか。
最初の右コーナーを抜けたところで、マルのブラックバードのエンジン音が高まる。 一本目だから100%ではないにしろ、結構なペースだ。コーナリングで多少おくれを取りつつも、立ち上がりの加速がダンチなので、頑張れば付いてゆける。よし、コレなら離されないぞ。おっとっと、調子に乗って突っ込みすぎるな。R1000じゃねーんだから。 気持ちの良いハイテンションで、マルと一緒に道路へ弧を描く。 「う〜ん、なんだろう。足がイマイチ頼りない気がする。リアサスかなぁ」 R1000で攻めてたときに比べて、イマイチ手ごたえがないというか、まだ乗れてない感じがある。こないだの北茨城くらいのペースなら、それでもごまかして走れちゃうのだが、さすがにこのペースになるとごまかしが効かない。リアが逃げるような頼りない感じのまま、それでも何とか付いてゆく。
北面Uターン場所にて。異常にゴキゲンなかみさん38歳。 一服しながら、なんとなく気に入らないリアを眺めてみると、ああ、犯人はコレだ。
わかりづれぇか。
矢印の部分が、一番わかりやすいかなぁ。
拡大するとこんな感じ。 タイアが端っこまで溶けちゃって、消しゴムのカスどころかパターンの端っこが削れて取れている部分がある。マルのパイロットパワーは、一本目の段階では大してイカれてなかったから、単純にこのタイアの限界なんだろう。もちろん、こういう風に使うタイアじゃないから仕方ない。 「マルー! これだ。コレでリアがおかしかったんだ。ツーリングタイアじゃ、やっぱダメだな」 「早いトコパイロットパワー買えよ」 「そーだなぁ。こんなんじゃ怖いもんなぁ」
一服し、観光バスをやり過ごしながらダベったら、さて、下ろうか。 今度は俺が前になって走り出した。ところが、コレは確実にハヤブサのせいじゃなくて俺が悪いんだけど、R1000のときのように突っ込むもんだから、くだりがオーバースピードになる。最初の一二回で「あ、ヤバイ」と思った俺は、少し慎重に下り始めた。 が。 それを見逃すマルじゃない。後ろにベタ付けしてガンガンあおってくる。 ま、さすがに抜きにかかるのは無理だろうが、ちょっとちんたら曲がってると、ブラバのノーズをハヤブサのケツ半分くらいまで突っ込んでくる。そうなりゃ、こっちも怖いなんて言ってられない。少し勾配のゆるくなったあたりから、ハヤブサの旋回性を生かしてマルを引き離しにかかる。 マシンの差で旋回がいいぶんは、腕の差で相殺されるものの、立ち上がりのトルクの差はいかんともしがたいようで、直線に入るとマルを引き離すことが出来る。しかし、くだりは腕の差が出やすい。コーナリングでじりじりと詰められ、どっかん立ち上がりで引き離す。 そんなことをやってるうちに、あっという間に下りきってしまった。
下では休憩せず、そのまま俺が前になってUターンし、登ってゆく。 ここで前を行くリスクとプレッシャーが俺を襲った。やはり峠で前を走るのは大変だ。rakとか一部の変態を除いて、普通は前をゆく方がいろいろと制約があり、厳しい。それでも登りだから、立ち上がり加速の差がさらに出て、直線だけはマルを置いてゆける。 しかし、道が曲がり始めると、とたんにミラーにブラックバードのライトがちらちら。 「くっそー! やっぱ前だと厳しいなぁ」 なんつって頑張ってたら、うにん、ずるん、とタイアが滑り出した。フロントの手ごたえがおかしくなってきたので、それじゃぁとブレーキングでリアを多めに当てだしたら、ずりずりとケツを振る。何度かセンターを割ったり、オーバーランした。そのたびに後ろで光るマルのライト。 「ぐっぞー! ギビジー!」 全身から汗を吹き出しつつ、ヘロヘロになって上に到着。
「マルゾー! 前はキッツいわ。おめ、やっぱすげぇなぁ」
ちょっとほめると、これだ。 普段ならこの辺でまったりモードに入るマルも、今日はなんだか気合が乗っているようで、そのままもう一回下ることになった。俺のタイアは、もうデロデロだ。パターンが欠け、リアはふちまで使いきり、ステップもガリガリ削って、普段なら「おー、俺かっこいいー!」とかバカを言ってる状態。 だが、この時はもう、いうこと聞かない足が気に食わなくて、ちょっとイラっとしてた。 俺が、そんなデロデロのタイアの写真を撮ってないってコトからも、その片鱗がうかがえるだろう。
さて、それでもマルゾーに喰らい付き、あわよくば突っついてやろうとモチベーションだけは高く。 しかし、マルゾーはやっぱり速くて、ひとコーナーごとにじりじりと差が開く。四つ五つ越えたときには、コーナーの入口と出口くらいの差がついてしまった。だが、今までと違うのは、立ち上がりなら何とか追いつけるだけの性能差があるってこと。 「まだまだ、あきらめねーっつーんだ! ナメんな、くそマル!」 さらに気合を入れて下りだした、三つ目くらいのコーナーだったろうか。長い直線のあとの左コーナーへのアプローチで、フロントタイアがうにゅにゅっと手ごたえをなくす。だが、減速はあらかた終わってたので、ちょっと漫画みたいに「こなくそ!」とか叫びながら、ブレーキをリリースしてカットイン。 寝かしこみ、出口が見える少し前、ちょっと早めにアクセルをグイっと開けた。 R1000よりもハンドルが遠いのに、似たような姿勢で乗っていたのも、ひとつ要因かもしれない。はたまた、くだりで前に荷重がかかってたからかもしれない。とにかく、いつものように早めに開けるには、リアタイアのトラクションが少々足りなかったようだ。 アクセルオンと同時に、ずずずっと滑り出すリアタイア。 「やべっ」 反射的に車体を起こせば、当然、外へ膨らんでゆくハヤブサ。 「くそ、くそ、くそ!」 ブレーキングしながら車体を内側に持ってゆくのは、至難の業だ。それこそ、首都高くらい車線の幅があればどうにかなったかも知れないが、ここは狭い峠道。なすすべもなく山側の壁に向かってすっ飛んでゆくハヤブサに、俺が出来ることといったら、少しでも減速してエネルギーを殺すことだけ。 やがて。
がががっ!
ハヤブサは、山側のコンクリートの壁に、右の顔をこすり付けて停まった。
車体は、草の茂った側溝みたいなところにハマっている。ひん曲がったカウルがちょうどキルスイッチにぶつかるので、ハンドルを左に切るとエンジンが止まるという親切設計に生まれ変わったハヤブサを、だましだまし、まるでケモライドのように草の上を半クラで走らせながら。 なんとか、脱出に成功。 ヘロヘロと走り始めると、さすがに不審に思ったマルが、ちょうどあがってくるところだった。
とりあえず、そのまま下まで降りつつ、車体の不具合を確認する。 まぁ、出来る限り速度は殺したし、ヒットしたのも右顔面だけだから、走りそのものには影響ない。俺の後ろからものすげぇ楽しげなオーラをかもし出してついてくる、赤いブラックバードのことは考えないようにして、軽く流しながら下の休憩所まで到着。 そして、もちろん。
よしっ!
よしじゃない。 とりあえず、手直しできるところは手直しして。
すこし、復活。でもステーが折れてミラーがぷらぷらなので、いつ落っこちてもおかしくない。 マルは「くそー! この登りで、完全に消してやろうと思ってたのになぁ」とか言ってたが、さすがにこの状態でもう一本戦うガッツの持ち合わせはない。つーかガッツより先にタイアがもう、どうにもならない状態だから、本日のcrazy marmalade でっかいもん倶楽部は、ここでお開きだ。 少々不完全燃焼気味のマルの後ろについて、赤城インターまで戻り、PAで飯を食う。
なに『やり遂げた』みたいな顔してんだ、くそマル!
そばとモツ煮の定食を喰いながら、マルゾーにいいように言われつつも、今日は言い返せない。 「おめーはまったく、あんでそうポコジャカポコジャカこけんだ。へたくそ」 「うー、だってよー、タイアがよー」 「手ごたえがおかしかったら、そこでやめるだろう普通。あんでそこでイクんだよおめーは!」 「うー」 「ちったぁ、引くことを覚えろ」 それができるなら、今頃こんな風に生きてねーよ、マルちゃん。
レストランを出て、タバコを吸いながら、ミラーが落っこちないように算段する。
マルにもらった変な金具と、ウォレットロープで応急処置。 また、今日に限ってガムテも針金も、何にも持ってきてないんだよなぁ。
もう一本タバコを吸いながら、マルゾーと最後に少しダベリングしたら。 ミラーが心配なので100ペースで帰る予定の俺は、マルゾーに別れを告げて、暗くなった関越をゆっくりと走り出した。のだが、そこはそれ。言っても俺だから。やっぱりかったるくなっちゃって、様子を見ながらちょっとづつ速度を上げ、クソ渋滞してきた関越を、結局、180オーバーですっ飛ばす。 外環道に入ると、道はさらに混雑してきたが、走ってるうちに楽しくなっちゃって、壁にハヤブサをこすりつけたことなどすっかり忘れて、ガシガシすり抜ける。たまに、右のミラーを確認しようとして、「ああ、そう言えばぷらぷらなんだっけ」と思い出すような始末。
と、川口を過ぎたあたりで、二台のバイクが前をふさぐ。 俺が近寄ってゆくと、なにやらあわててウインカーを出し、左へ寄った。「そんなにあわてなくても、勝手に抜くのになぁ」と思った瞬間、後ろからバシバシとパッシングを喰らう。「何だこのヤロウ」と右のミラーを見ても後ろは見えない。右によって左のミラーで見ると……あぁ、なんか赤いや。 「あー! もー! めんどくせーなー! 俺は今日、ハートブレイカーなんだぞ!」 後ろの街宣車にはビタイチ関係ない文句をぼやきながら、もう、ミラーとかどうでもよくなった俺は。
深呼吸してから、思いっきりアクセルを開けた。
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