The 66th big machine club

2008.11.02 第66回でっかいもん倶楽部 in 北茨城

〜バイバイ、またね〜

 

ここでもわりとおなじみ、俺の妹分なっこが、諸事情により一時単車を降りることになった。

となれば、ラストツーリングをしようって話になるのは当然の流れで、いつもの連中に声をかけ、毎度変わり映えのないコースだがなっこの走ったことがない、そして走る機会も少ないだろうビーフラインから北茨城へ行こうと言う運びになる。しかし、そこで黙ってないのが自称ツアラー の彼。

そう、GO!!!君だ。

前日、俺の家に集まり宴会をやって、次の日ツーリングに行くというコレもわりと最近のパターンなわけだが、午前中、俺の整骨院に来て治療をしていったGO!!!君は、一度マーちゃんのトコへ行ってR1のマスターシリンダーを交換したあと、夕方、俺の家にやってくるなり、地図を眺める。

「かみさん、ここによさそうな道がありますよ」

地図を見てみると確かに、ビーフラインから北茨城の広域農道へ行くときに通る国道が、さらに北側へ行くと『結構なくねり具合』になっている。「なるほど、コレは面白そうだ 」と俺も二つ返事でうなずいたが、広域農道へ向かう国道461も捨てがたい。するとGO!!!君、

「県道60号を走って日立へ出て、461で戻ってきてから、このコースを走りましょう」

全行程で軽く500を越えるツーリングプランを、こともなげに立てた。

とは言え俺も知らないワインディングは走ってみたいし、いつものワインディングも走りたいので、この『欲張りプラン』にはもろ手を挙げて賛成。ラストツーリングと銘打つからには、ちっとぐらい シンドくても、徹底的に走り倒したほうが良いだろう。つわけで、主役の知らぬ間に、ステキプラン決定。

 

そのうちAGLA13がやってきて、バカ話してるうちに。

埼玉のカート場からぶっとばしてきたCaruma君も合流。

雪崩式に宴会が始まり、腹をすかしてる連中はN製カレーを食ったり、俺はいつもどおりガンガン酒を呑む。途中で久しぶりに日本酒へ切り替え、単車の話、真面目な話、そしてもちろんバカ話をしながら、楽しく飲んだくれていると。

仕事を終えたなっこもやってきた。

なっこはNとなにやらまじめに話してるから、何の話してるかと思ったら、Nの信条「めんつゆ最強説」を聞かされていたらしい。や、まぁ、もちろんまじめな話しもしたんだろうけど。一方Caruma君はAGLA13に仕事についての話をしてた。彼の仕事ってことじゃなくて、仕事への姿勢の話。

バカ宴会ばっかりしてる印象のウチでもたまにある現象で、先達が後進に対してすごく貴重な話を惜しげもなく話してくれるという場面 だ。仕事なんて関係ない、単車が好きなだけで集まってる、いわばみんな平等な状態だから、そこに一切の悪意や打算がない。

こういうのを見るたびに、俺はなんだかうれしくなる。

もちろん、聞いてる若い方にはぴんと来ないことも多いだろうけど、それでもいつか彼らがここで聞いた話を思い出して、苦境を乗り越えることが出来たり、何かの参考になったりしたら、それはステキなことじゃないだろうか。明日ツーリングだってのに、夜遅くまで飲んだくれ、楽しい時間が続いた。

飲まないGO!!!君が帰るのを潮に、みんな寝床へ向かう。明日は走るぞー!

 

あけて、翌11月2日の朝。

相も変わらず絶好調に二日酔いの俺が目を覚ますと、なっこはすでに起きて漫画を読んでいた。んでコーヒー呑みながらダベってると、Caruma君やAGLA13ものそのそと起きてくる。みんな朝には強くないようで、まったりと朝を過ごしていると、携帯にメールが入った。GO!!!君だ。

「いかないの?」

ちょ、やっぱりヤツはやる気マンマンだ。すると、同じく携帯を見てたなっこが爆笑する。

「かみさん、若が守谷に来てるみたいなんで、先に出ますね」

俺も思わず大笑い。

準備をして降りてみると、肌寒い朝の空気の中でGO!!!君が待っていた。

Caruma君、AGLA13も降りてきて、それじゃあ柏から常磐道に乗って、守谷まで行こうか。16号をすり抜け、柏インターに乗ったら、このメンツだ。嫌でも巡航速度が上がる。アホみたいにすっ飛ばして、あっという間に守谷へ到着。

連休の朝、PAはバカみたいに混んでいた。

ゆっくり走りながらなっこと若君を見つけて、そこでハヤブサを停める。

「おはよ〜! つーか何時からいるんだよ!」

「みんな遅いよ〜! 何時間待たせるんだよー」

なっこに8:30集合と言われてたにもかかわらず、勝手に一時間以上(?)早く来て、メシ喰ったりしながらみんなを待ってたって言うんだから、この男もたいがいイカれてる。俺らは楽しくてゲタゲタ笑いながら、ここで若君を交えてだべったり、この先のコースを確認したりした。

ま、正確にはGO!!!君がみんなに説明してた。

女子便所の長蛇の列。なっこは心が折れてトイレをあきらめた。

 

「飛ばす人はかみさんと、ゆっくりの人は僕と行きましょう」

いつものように『ゆっくりという日本語の意味』を理解してないGO!!!君がそう言って、一応、二組に分かれて走り出す。俺組は俺とAGLA13だけだけど。R1000の 時は高速でAGLA13に置いていかれてばかりの俺だったが、ハヤブサはまさにこういうステージが大得意なわけで。

「さて、AGLA13のR1000と、どこまでやれるかなぁ」

俺はワクワクしながらアクセルを開けた。

こないだマルと走ったときに、高速での戦闘力の高さは知っていたが、何しろ相手はAGLA13だ。会うたびに速く、上手くなるこの若者は「AGLA13、おめ、よく299とか出せるな」という俺の言葉に「アクセル止まるまで全開して、三つ数えたら出ますよ」飄々(ひょうひょう)と答えるツワモノだ。

案の定、走り出してしばらく俺のケツに着いていたが、俺が先に行けと合図すると、とたんに快音を響かせてすっ飛んでゆく。先に行かせて楽をしようという、かみさんもうすぐ39歳の浅知恵なんだが、それでぶっちぎられたらイイワケもクソもない。前に出たAGLA13と、サンデードライバーでごった返す高速の状況を均等に見ながら、俺も気合を入れてすっ飛ばす。

今までだと、同じマシンだけに離されたらそれで終わってしまうことが多かったのだが、さすがに300ccの余裕は大きいようで、ほぼ全域で明らかに加速が上回っている。流れを読み違えたり、クルマの車線変更のタイミングなんかで離される事があっても、そこから追いつくことが出来るのだ。

何度か追いすがると、今度はAGLA13が俺に先へ行けと促す。

もちろん大人のかみさんは、そんな甘言には乗らない。ハイペースを作るのと、ハイペースについてゆくのでは、疲労度に格段の差が出るのだ。そしてマシンはともかく身体に関しては、俺の方がAGLA13より15年も旧型なのだ。悪いが楽をさせてもらうぜ、AGLA13。

 

そんなこんなで、楽しく絡み合いながら友部ジャンクションで北関東道へ。

ふたりともアツくなってて青カンバン見落とし、とりあえず右へ入ったものの、こっちで良いんだっけ? と確認しあいながら、しばらくゆっくり進む。ま、すぐに思い出してこっちで良いんだと確信した俺は、そこから徐々に速度を上げる。珍しくいつもよりは クルマが居るが、それでもさっきに比べればガラガラと言っていい北関東道を、俺としては全開に近い速度で走る。

中間加速で離れてゆくR1000の姿は、すり抜けるときに速度を落とすと、すぐに迫ってくる。

そんな速度だから友部インターはあっという間にやってきて、俺はしぶしぶ速度を落とした。金を払って左に出、ハヤブサを停めてヘルメットを取る。AGLA13とふたり後続を待ちながら、タバコに火をつけて一本吸ったか吸い終わらないうちに、『ゆっくり組』がやってきた。なにがゆっくりだ。

Caruma君がメットをとりながら

「GO!!!さん、160上限って言いましたよね? アレは上限じゃなくて巡航ですよ」

ま、ついてきてる段階でCaruma君に何も言う権利はないのだが。

 

「さ、行きますよ」

ほとんど休憩も取らずに、すぐ走り出すGO!!!隊長。

俺たちも苦笑しながらその後に続く。隊長は「今度ツアラーって言ったら、口をひねり上げてやろう」と俺に決心させるくらい、イエローをまたぎながらガンガン進んでゆく。ま、言ってみればいつものペースなのだが、アサイチだからか、みんなちょっと調子が悪い。

若君が右折車にストッピーを見せたり、Caruma君が茨城のドライバーの強靭な精神力を思い知らされたり、極めつけはなっこが俺にカマ掘ったり。イエローまたぎで走ってたら、イキナリ後ろからコツンとやられて、なんだ? と思ったらなっこが手を上げて謝ってた。

対向車が見えなかったようだ。

ま、AGLA13がやったんなら、その後ずっとケツにくっついて、10回くらいカマ掘ってやるところだが、なっこじゃいじめるのも可哀想だ。俺は肩をすくめて苦笑すると、「ちょっとみんなおかしいから、気をつけないとな」と思いながら走る。

後で聞いたらAGLA13も同じ意見だったから、この時は逢魔刻だったんだろう。朝だけど。

それからビーフ手前のスタンドで俺とGO!!!君が給油し、そのままビーフラインを走り出した。笠間のあたりはまだ減速帯が多い上に、高速ぶっ飛ばしてきたから心配ないとは思うがタイアの皮むきが微妙だ。なのでマージンを取ってそこそこで走る。

やがて、最初の休憩場所に決めていた、道の駅に到着した。

やってきたCaruma君が、「俺、バイクが空を飛ぶのを見た」と笑う。

笑ってる段階でとりあえず誰かがコケたわけじゃないのが見当がついたが、さて、それじゃあ何の話だろうと思っていると、Caruma君に質(ただ)すまもなく、のろのろと走ってきたなっこ@CBR600RRが「パンクしました〜」と叫んでいる。見てみれば

おぉ、確かにベコベコだ。

何があったのかと状況を見守る一同に、Caruma君が説明する。

「なんでもないコーナーでなっこちゃんがイキナリ、キャッツアイに向かって走ってって、ジャンプした」

つまりコーナリング中にキャッツアイに乗り上げたわけだが、特に曲がりきれなくてとか、膨らんでいったわけじゃなく、Caruma君が見てる前で突然、内側のキャッツアイに向かって走っていったと言うのだ。どういう状況なのかなっこに聞いてみても、本人も首をかしげている。

ま、とにかく怪我はなかったようなので、安心していると、誰かが大声を上げた!

「パンクじゃねーよ!」

確かに、パンクって程度のキズじゃない。リム、めくれちゃってるじゃん。よく無事だったな。

 

とりあえず休憩しつつ、対策を考える。

最悪、単車はこの辺においてタンデムってことになるんだが、その段階で候補はGO!!!君のフェザーか、俺のハヤブサしかない。あとの連中にはタンデムシートがついてないのだ。タンデムになるなら、なっこを乗っけて俺は帰ろうと思い、そうクチにした。するとGO!!!隊長は「帰る?」とニヤリ。

こいつ、タンデムのまま俺を500km走らせる気だ。

俺の背中に、冷たい汗が流れた。GO!!!君、自分もタンデム出来るってことは、最初から考慮してないに違いない。恐るべし、隊長。とりあえず話題をそらそうと、今日はみんなおかしいから気をつけようって話しをしてるうちに、ふとさっきのことを思い出した。

「あ、そうだ! おい、警察呼んでくれ、警察!」

なっこのカマ掘りでついた傷跡をさしながら叫ぶ俺に、みな苦笑。

ついでに、なっこに「キャッツアイ」と言うムダに色っぽいあだ名が進呈される。

 

が、いつまでも笑ってダベってるわけにはゆかない。

GO!!!君にこの辺のスタンドの位置を聞き、とりあえずそこまで行くことにする。時速10〜20kmくらいでそろそろ走るなっこの後ろで俺がハザードを焚き、他の連中は先にスタンドへ行く。幸い、スタンドは道の駅からすぐ近くにあったのだが、小さいスタンドなので 修理は無理そうだ。

すると、スタンドのおじさんが「近くに車のタイヤ屋がある」と言う。

なので、スタンドで空気を4kgほど入れて、そこまで走る。

 

店は1kmほど走った先にあった。

そこで店の人に相談してみると、気のよさそうなおじさんたちはナニゴトかを決心したようだ。

 

ちょ、あんたその手に持ってるのは……

 

ハンマー! プラでも木でもない、まごうことなき鉄のハンマーで一撃、二撃。

つーか ホントにイッたよ、この人。

 

ついでにこっちも、ガンガンガン! ディスク曲げたらどうする気なんだろうね。

ものすげぇ荒技にみんなで大笑いする。それでも、最終的にはエアが漏らないくらいまで修復しちゃったんだから、たいしたもんだ。ものすげぇ俺 好みのアメリカンな応急処置をしてもらい、『とりあえず走れる』ようにはなった。 だが、このまま走り続けるのはもちろん危険だ。

みんなで考えて、最終的には若君の「どこかでタイアを買って交換したほうがいい」と言う意見に落ち着く。ビーフラインを戻って笠間市内へ行けばバイク屋があると言うので、そこまで戻ることに した。ついでに今度は、なっこに「ハンマーホイール」と言う、ムダに勇ましいあだ名がついた。

 

ビーフを戻って50号を東へ行くと、わりと大きなバイク屋さんがあった。

そこでなっこのRRを見せると店の人もびっくりしてたが、とりあえずタイア交換は出来るだろうと言うので、お願いする。ところがこの店、大きくてたくさん単車が置いてるのだが、そういう店のわりにはタイアのラインナップがすばらしく、なっこの「一番安いの」と言うオーダーが空を切る

平たく言うと、ハイグリップタイアしかない。

18000円と言う手痛い出費に頭を抱えるなっこをよそに、俺たちは店のバイクを見て回った。

Caruma君の後ろには、なんとヨシムラチューンのハヤブサ『X-1』が置いてある。

お値段、300万円ナリ。

 

写真嫌いの若君も、思わず一枚。

 

左からなっこのCBR600RR、他の客の単車、GO!!!隊長のフェザー、そして若君のGSX-R750。

 

俺のボロブサ、AGLA13のGSX-R1000、Caruma君のGSX-R600。

 

タイア交換の間、のんびりとダベる。

ツーリングは中断され、時間もそろそろ昼になろうと言うのだが、もちろん、だれひとり文句も不平もない。逆になっこも「サーセン」とわびつつも、必要以上に恐縮したりしない。今回たまたまなっこだっただけで、ここにいる誰でもやる可能性はあるのだ。俺なんかその筆頭だしな。ほっとけ。

気持ちの良い連中と、気持ちのいいバカ話をしていると、タイア交換が終わる。

なんか普通にバランス取りも出来てたみたい。すばらしいハンマーワークと言えるだろう。

「ついでにメシ喰いましょうか」

「おぉ、普通のツーリングみたいだ」

普段のこのメンツならありえない状況を、全員が楽しんでる。ドイツもこいつもオランダも、起きてしまったことをグダグダ言う暇に、その状況を楽しんでしまうのだ。俺は走っている間は カンペキに忘れていた『猛烈な二日酔い』にさいなまれながらも、思わずにやりと笑ってしまった。

 

混んでる店内でしばし待った後、座敷席に通され、そこでまたもバカ話。

客が多くてオーダーしたものがなかなかやってこないのだが、それに文句を言う暇さえない。ここでは単車の話よりも、若君が言い出した国際的問題から端を発して、天皇家の話にまで発展した。その合間にCaruma君や俺が経験したバカ話も混じり、若君の過激な発言に笑ったりしつつ。

楽しい時間が過ぎてゆく。

やがて、注文した品物がやってきた。

かも汁そばの『横綱盛り』。二日酔いには殺人的なデカさ。奥にあるのがGO!!!君とCaruma君の注文した、同じものの『大関盛り』だそうだ。AGLA13のざるそばが普通盛りで、それでも結構な量だったので、コレは完全に戦略ミス。俺を筆頭にみんな、ふうふう言いながら大量のそばを食った。

丼モノを喰った若君だけは、『さらにパフェを頼む』と言うツワモノぶりを発揮してたが。

 

店を出て、隊長を先頭に走り出す。

ビーフ入り口とは逆の水戸方面に走り出す隊長に付き従いながら、珍しくのんびりと走る面々。

そう、食ったそばが口から出そうなのだ。

「それにしても、ずいぶん東に走るな。どういうルートでビーフに戻るんだろう?」

思いながら走ってると、突然ハザードを焚いて道端に止まる隊長。まさかと思って近づいてゆくと、

「僕、逆に来てますかね?」

ちょ、ただ単純に道を間違ってたのか、と苦笑しながら「うん、逆だね」と答えると、周りのみんなも「逆ですね」その言葉に、思わず「言って下さいよ〜」と叫ぶGO!!!君。当然こちらは「別ルートで行くのかと思った」「俺も、ビーフラインは飽きたから違うルートでいくと思った」と答える。

みんな、あなたに全幅の信頼を置いてるのですよ、GO!!!隊長。ヒト任せとも言うけど。

 

このあとも何度かUターンしたりはあったが、それでも県道をつないでビーフラインへ戻る。

時間はすでに午後1:30過ぎだ。だが我々の隊長は鋼鉄の男だ。『適当に走って終わり』なんてぬるいプランは決して立てない。ちょっと時間は短いけど、当然のごとく予定通りのルートを取る。つまりここから、最終的には『福島まで行く』ことになるのだ。軽く気が遠くなる。

もっとも、ワインディングに入ってしまえば、全員、スキモノだ。

隊長、AGLA13、俺、若君、なっこ、Caruma君の順番で(もちろん、時々前後はするが)ビーフから県道、国道とつないで、当初の予定通り60号を右折。元々は「いつも走ってるワインディングをスルーしちゃうのはもったいない」から組み込んだだけの寄り道ルートなんだが、隊長は律儀に予定をすべて消化してゆく心積もりのようだ。

道に詳しくない他の連中はともかく、道がわかってる俺はこの段階で『隊長のホンキ』を知った。

センターラインが時々しか拝めない、せまっ苦しいタフなワインディングを一列になってすっ飛ばしてゆく。今日は連休中ということもあり、ビーフにしろこの辺にしろ、いつもでは考えられないくらいクルマが多い。それをパスする必要があり、必然的に隊列は延びきって寸断されてゆく。

並びの関係から、おおよその行程を隊長、AGLA13、俺のリッターチームと、若君、なっこ、Caruma君のミドルチームに分かれて走る感じになってしまった。クルマがいなければ、きれいに並んで気持ちのいいスネークランが出来ただろうから、それは少し残念だったかな。

 

60号から日立へ出て、国道461をまた西へ戻る。

クルマが邪魔臭いが、それでも楽しくワインディングを走って、休憩場所の物産販売所に到着。

時間的には、さすがに全行程を行くのは厳しいだろうなぁと思っていると、GO!!!隊長が本来の意味でも、ネタ的にも今日の主役であるなっこに、『このまま帰るか?』『予定通り行くか』『今の道を戻るか』など幾つかのプランを提示して選ばせた。

「行きます!」

なっこの元気な答えによって、『行けるところまで行く』と言う、実に『らしい』予定が立つ。もちろん、答えを聞いた隊長がニヤリとほくそ笑んだことは言うまでもない。隊長的には、なっこのラストランというよりも、「あの道、走ったことがないから走ってみたい」てんだろうと邪推してみたり。

トイレや一服を済ませた俺たちは、GO!!!隊長の後ろに着いて走り出した。

 

走り出して程なく、そこそこ広かった国道が見る見る細くなってゆく。

せまっ苦しい民家の中を通り抜け、349が118号とつながるところで一瞬道を間違えるも、すぐにリカバリして突き進む隊長。阿武隈高地を縦断するこの道には、ツーリングマップルにて快走路表示がしてあったので、俺と隊長はすごく楽しみにしていた。

が、少なくとも入って10kmほどは、快走路というよりはタフだ。

「俺はこういう道が嫌いじゃないから楽しいけど、他の連中はどうかなぁ」

と軽く心配になる。しかし、コレは俺の考え違いと言うか、みんなをナメた考えだった。この場を借りて、わびたいと思う。場所によっては舗装林道チックな所もあり、センターラインが出たり消えたりするような道なのだが、みんな、元気な音を響かせて走っている。

やがて15キロくらい走った国道289号とぶつかるところで、隊長が単車を停めた。ヘルメットを取ったみんなの顔は、疲労ももちろんある。が、上気したほほときらきら光る瞳は、クルマが多かったり狭いワインディングが続いた今日のツーリングを、それでもしっかりと楽しんでいる顔だった。

思わず笑いがこぼれる。

ここで休憩がてら進路の確認になるんだが、笑いながらCaruma君が叫んだ。

「いやー! 600だとさー! ずっと10000rpm以上に入れっぱなしだよ」

「俺も、俺も。立ち上がりで1000が加速してくと、ついてくの必死だよ」

「あたしも、レッド入れっぱなしですよー」

ミドル組のそんな声を、ニヤニヤと聞くリッター組。

俺なんかその中でも一番でかいから、当然、一番楽なわけだが、『申し訳ない』なんてもちろん思わない。だって、厳しいとか必死とかクチは言ってるけど、顔が言ってねーんだもん。「わりーね、俺は楽だよ」なんて半笑いでからかう方が、よっぽど気が利いてる。

しばらくダベってると、鬼のGO!!!隊長が

「ここで右に行くと高速に乗ってそのまま帰るルートで、まっすぐ行くとまだワインディングだけど」

もちろん俺はまっすぐでもかまわないのだが、ミドル組はかなり疲れてる。その上、なっこは明日仕事だ。いや、仕事ならGO!!!君もそうなんだが、隊長の場合は根っからの変態なので、考慮する必要は一切ない。しかし、放っておいたらなっこのコトだ。まだ先へ行くと言い出しかねない。

口には出さないが、『自分のせいでスタートが遅れた』と思っているだろうから。

みんなアタマではその辺を考慮したんだろう。それに実際、ミドル組は足がつったり手がつったり、かなり疲労が見えることも事実だ。話し合って最終的に、ここから右折して289号を走り、常磐道『いわき勿来(なこそ)』から高速で帰ろうと言う話になった。

 

隊長はここでスイッチを切る。

GO!!!君は速いのだが、スイッチを切るとのんびりと走ることが出来る。なのでコレは、この先289号は飛ばさない、と言う意思表示だ。つまり、そんなスイッチを持ってない俺やAGLA13への、先へ行けと言う合図である。走り出してすぐ、俺は隊長を抜いて前に出た。

ワインディングをすっ飛ばしてゆくと、ほどなく、後ろにAGLA13がぴたりとつく。

「やっぱな。誰も来なくてもお前だけは来ると思ったよ」

ヘルメットの中で笑った俺は、そのまま加速した。

しばらくワインディングを下ってゆくと、さすがにAGLA13はベタづけだ。R1000でのくだりのコーナリングが、冗談みたいに怖くないのは嫌ってほど知ってるが、もう少しは頑張ろう。とは言え50kgは差があるマシンで同じように下るのは、わりと死ねる。べったりつけられたまま狭いゾーンを抜け。

目の前に高速コーナーと広い直線が出てきた。

「さすがにもう、シンドイや。AGLA13、先に行ってくれ」

左に寄って右手をひらひらさせると、漆黒のR1000がヨシムラサウンドとともにすっ飛んでゆく。自分で先に行かせたくせに、そのテールを見たらまた少し元気になった俺は、アクセルを開けてAGLA13に追いすがった。薄暗い高速ワインディングを、キチガイ沙汰にすっ飛ばすAGLA13。

トルクの差を生かして直線で追いつこうと開けるのだが、240を越えてもなかなか迫ってこないテールランプに、ついに俺の方が折れた。これ以上は、少なくとも今日は無理だ。苦笑いとともに肩をすくめ、俺はアクセルを緩めた。

「ちぇ、AGLA13のヤツ、どんどん速くなる上に体力が底なしだから、段々手におえなくなるなぁ」

悔し紛れにつぶやいてみたり。

いわき勿来に着いて、後ろを待ちながらAGLA13としゃべる。

「くっそ、もう追いつけねぇや」

「またまた〜直線が多かったからですよー」

「でも、ハヤブサだからイけたところもあったかな。良いバイクだわ、やっぱ」

「加速は、全然速いですね」

なんつってると、程なくみんながやってくる。ガソリンもないので、中郷SAで集合ということになり、そこからはそんなに飛ばさないで走った。いや、さすがにコレだけ走って多少なりとも疲労があり、しかも暗くなった高速で、AGLA13にくっついて走るのは自殺行為だ。

遠ざかるR1000のテールを見ながら、悔しいよりもうれしくなってしまった。

 

中郷でガソリンをいれ、しばらくダベる。

昨日からの楽しい時間を思い出して笑いながら、俺は何度もなっこのCBRに触れた。

なんだかやけに愛しかったのだ。とても最新型とは思えない惨状は、しかし、彼女の刻んだ思い出であり、歴史であり、誇りだ。女の子とは思えない、とか、女の子としては速い、なんて言われると頬を膨らまし、ムキになって頑張ってしまう不器用な妹の、最高の相棒だったマシンだ。

「お疲れさん」

機械を擬人化する趣味はないが(そんな話は書くけど)、なんとなくそうつぶやいて。

一日にあったとは思えないほどいろんなことのあった、第66回Crazy marmaladeでっかいもん倶楽部は、ここに終わりの時を迎えた。鋼鉄のGO!!!隊長、過激派の若君、スマートなCaruma君、キチガイAGLA13、バカな俺、みんなの走りでなっこのラストランを飾れた、楽しいツーリングだった。

もっとも、一番『らしく』最後を飾ったのは、間違いなく本人だけど。

 

このあと、最後の最後に現れた強敵『50kmの渋滞』を辟易しながら抜け、守谷SAにたどりついて若君となっこに最後の別れをした俺は、GO!!!君、Caruma君、AGLA13といっしょに柏インターを降り、16号をすり抜けながら幸せな気分で自宅を目指した。

さて、帰ったら反省会という名の宴会が待ってるぞ。

 

GO!!!君、先導お疲れ様でした。いつかはGO!!!君に楽させるツーリングも、企画しないとね。

若君、あんな過激派だとは思わなかった。楽しかったよ。ボンボンネタにくじけず、また走ろう!

Caruma君、今回はたくさん話せて楽しかった。また仕事の話、バカ話、そしてツーリングしよう!

AGLA13、毎度飄々としながらも、嫌味のない気遣いに感謝する。で、次もすっ飛ばすぞ!

そして最後に、なっこ。

お疲れさん。いろいろと大変だろう。上手くいかないことも、気に入らないこともいっぱいあるだろう。でもクサらずに、出来る範囲で良いから、頑張らなくて良いから、やるべきことをしっかり見極めて、冷静にな? 俺らぁきっと変わらず走ってるから、あわてないで大丈夫だ。

またいつか、必ず走ろう。

それまで少しの間、

 

バイバイ。

 

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