The 68th big machine club

2008.11.26 第68回でっかいもん倶楽部 in 鴨川

〜いろはにほへと〜

 

「山口ツーリングのあとだけにオイル交換と、雨の中走ったからチェーンも注油して……」

などと思いながら水曜の半日仕事をしていると、携帯にメールが入った。moto君の実弟にして俺のダチでもある、自称ドMのirohaからだ。「今日、仕事半日ですよね? 房総の方へ走りに行きませんか?」もちろん行くに決まってる。が、これではオンだかオフだかわからん。

「何時にどこで、バイクはなにで行けば良い?」

仕事の合間を縫って返事を出し、ハヤブサでmoto家に集合することになった。仕事が終わると同時に、と行きたいところだが、ブレーキやクラッチのスイッチの調整をしなくちゃならなかったので、10分ほどでそれらを済まして、ようやく房総に向けて出発。

いつも同じ16号から125号じゃ面白くないので、整骨院の若い衆に聞いた裏道から南へ下って京葉道路に乗る。そう、ETC入れたてだからムダに高速に乗りたいのだ。正確には『出入り』したい。むしろ全部の出入り口を順番に乗り降りしたいくらい。

 

京葉道路はそこそこの混みようで、渋滞ってほどじゃないが途切れずにクルマがいる。

ハイビームくれながらすっ飛ばし、2時ちょっと前にmoto家に到着すると、irohaが待っていてくれた。兄貴のmoto君も当然行くのかと思いきや用事があるとのことで、三人でしばらくダベったあと、irohaの先導で鴨川の方にあるワインディングを走ることになった。

irohaのブログを読むと、最近よくmoto君と走りに行ってて、ずいぶん鍛えられてるようだ。

俺はirohaの走りを楽しみに、後ろに着いて走り出した。

 

irohaは基本的に、すり抜けをあまりしない。兄貴と走るときは変態走りについて行くために頑張るようだが、俺は善良な一般ツアラーなので、もちろんirohaと一緒におとなしく走る。

それでも最初は多少すり抜けてたのだが、途中の信号待ちで「かみさん、ごめんなさい。ボク、すり抜け苦手なんですよ」と謝るもんだから、「いいよ、無理しないで自分のペースで走ろう」と言うと、安心したのか、その後はすり抜けなくなった。

 

で、後ろで見ていたのだが。

まぁ、驚いた。一年前と比べると、ずいぶんと走りがスムーズになっている。無駄なブレーキングもないし(これはむしろ俺のほうが多いか)車線変更もしっかりと確認しつつ無理なくスムーズにおこなっている。「へぇ、ずいぶん上手くなったなぁ」と感心しながら走っていたのだが。

幹線道路から県道に入って、すこし道がくねり始めたとき、俺は完全に認識を改めた。

前とは段違いに、コーナリングスピードが速くなっている。もちろん絶対速度そのものは変態兄貴やキチガイSS乗りたちには比べるべくもないけど、それでも目を見張るくらい速くなってる。面白くなってきたので、こちらも『リーンウィズ縛り』をしてみることにした。

 

途中で道がまっすぐなところがあったので、信号待ちのときに単車を交換する。

irohaはハヤブサ初乗り、俺はZ1000初乗りだ。

またがった瞬間、硬いシートと腰高なポジションに、一瞬「SSっぽいな」と思ったが、ハンドルを握ると状況は一変する。アップハンドルによって起き上がった上体はリラックスできるし、当然、後ろ乗りしやすいので、リアタイアにトラクションがかけやすい感じ。もっとも、それにしてはサスが硬いか。

この単車の設定速度だと、もう少しよく動いてくれる方が、曲げやすいんじゃないかな。

アイポイントが高いからオフとかモタードっぽい感じがする。も少し柔らかい足にしてリーンアウトでちょこまか走ったり、荒れたタフな峠に持って行ったら面白そうだ。マフラーとホイール換えて軽量化してやれば、200以下のステージ限定なら、かなりの戦闘力がある気がする。

irohaがいつも寄ると言う、ローソン天津小湊店で、トイレ&タバコ休憩。

 

乗った感想を言いあったり、バカ話したりしながら、久しぶりにirohaとの会話を楽しむ。irohaは本当に気持ちの良い男で、シャキっとした受け答えとけじめのある態度、そしてバカ話のノリのよさと面白さを、俺は非常に気に入っている。

AGLA13もirohaっぽいから、俺の若者の好みなのかもしれないね(ホモ疑惑は避けましょう)。

 

ここからしばらく街中を走った後、給油して、ワインディングに入る。

今回irohaが選んでくれたコースは、広い中高速コーナーあり、曲がりこんだアップダウンの激しい低速コーナーあり、荒れたタフなワインディングありと、非常に面白いルートだった。このコースならキチガイSS乗りたちも充分満足できるんじゃないかな、と思うくらい良いコースだと思う。

強いて言えば、ところどころ生活道路っぽい部分もあるので、ちょっと注意はいると思うけど。

んでそんな楽しいワインディングを走っていると、俺はここで完全にirohaを見直した。いや、見直したというのも失礼な話だが、正直、若者の成長力をナメてたと思う。もしくは変態兄貴の教官としての実力を。も少し練習したら、全然ストレスなく一緒にワインディング走れそうだ。

 

irohaの走り方は、どっちかって言うとmoto君より俺っぽいかもしれない。

ハードブレーキングからスパンと曲げるんじゃなくて、ツッコミからある程度曲げ始めるつーか、アベレージスピードを保ってバンクで曲げる感じ。リズムが合うので、気持ちよく走れる。たまに突っ込みすぎて膨らんでるところまで似てるのは、あんましイクナイけどね。

足の硬さがSSっぽいのが、この場合は良い方向に出てるんじゃないだろうか。irohaの曲げ方なら今のままの足でも良いかもしれない。動きの良い足だと、逆に戸惑っちゃうかな? SSに乗ったら面白くなるかもしれないね。本人は「SSはポジションがきつい」って顔をしかめてたけど。

 

予想をはるかに超えて走れるもんだから、相当、楽しくなってきたかみさん。我慢できなくなって、広めのところでirohaの前に出ると、少し気合を入れて走ってみる。一応、リーンウィズ縛りのままだったんだけど、正直、ちょろっとケツ落としたところもあった。いや、ステップ擦っちゃうんだよ。

準ホンキモードですっ飛ばすと、さすがにirohaは見えなくなる。

でも、これはたぶん、ハイスピードに慣れてないからだろう。目がついていくようになったら、きっと化けると思う。もっとも、そのためには直線でもっとあける練習と、必要なところでしっかりブレーキングするメリハリのある走りが必要だと思うけど、これは速い連中と数を走れば身につくだろう。

もみじライン手前で、一服入れる。

ここで少し、ライディングの話になった。俺もたいしたことないんだけど少しだけ先輩だから、俺なりに気づいた部分を指摘する。もっとも、ヤツには俺なんかよりよっぽど良い先生がついているから、その邪魔にならないように、moto君に教わった話を聞いて、その補足程度の話だけした。

さて、暗くなってきたし、最後に一発、気合を入れて走ろうか。

と、その前に。

UMAらしき生物を写真に捕らえたので乗せておく。たぶん、「小便小僧」って妖怪だと思う。

 

気を取り直し、俺が前になってもみじラインを走り出す。

irohaは課題の練習をして、俺はひとり走りのマージン(ヤりあう時より多めのマージン)を取りつつ、できる限り全力に近い速度で走り出した。集中して前にいるクルマの動きを読み、ガードレールや路側帯を見て初めて走るカーブの曲率を読み、突っ込んでアクセルオン。

ハイビームで探りながらだけど、なかなかのペースで走れる。

「っしゃ、ここを堪えて、ここでアクセル全開っ! 一気に立ち上が……あがっ! いぬぅぅうっ!」

暗かったので、あぶなく野良犬を引っ掛けるところだった。

そのあとの長い直線で停まって、irohaが犬に引っかかったりしないよう、声を上げて追い払う。それからしばらく待っていると、二台ほどクルマをやり過ごしたあとに、irohaのエンジン音が聞こえてきた。ヘルメットをかぶってキーを入れ、irohaが抜いてくのにあわせて発進する。

どうやらそのあたりでもみじラインは終わりのようで、後は高速に乗って帰るだけ。

 

高速に乗ったら最初のパーキングに入って、ここで最後のダベリング。

今日の走りの話、これからのこと、moto君やイチローの話をしながら、irohaのおごってくれたコーヒーを飲みつつ笑いあう。話すたびに、この男の気持ちよさを改めて確認させられ、ダチであり可愛い弟でもあるirohaの、人間としてあるいは単車乗りとしての、成長の早さを素直に喜ぶ。

やがて、「そろそろ帰ろうか」と立ち上がったところで。本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は、夜の帳とともに幕になった。半日でこれだけ楽しめたのは、ひとえにirohaのおかげだ。コース選択といい、鋭くなった走りといい、マジで楽しませてもらったよ。ホントにさんきゅな?

 

ハヤブサとZ1000では高速巡航速度に差があるので、残念ながら、ここで解散。それでも、すぐにすっ飛ばすことができない俺は、車線が一本のあいだは無理に前走車を抜かないで、irohaと並んで走った。やがて車線が増えたところで、ミラーのirohaを一瞥してから。

 

俺はゆっくりとアクセルを開けた。

 

iroha、今日はありがとう。たのしかった。また一緒に走ろうぜ!

 

 

 

 

 

 

 

と、素直に終われないのが、かみのかみたるゆえん

そこそこ走ってるクルマを縫いながら走っていると、なんだか妙に変な挙動のやつが多い。「日曜日でもあるまいし、なんだってこんなキチガイばかりなんだ?」といぶかしみながら、前が開けた瞬間、一気にアクセルを開けて速度を乗せてゆく。そのとたん俺は気づいた。気づかされた。

「わかったっ! ライトだっ!」

走りながらステップに立って確認すると、あれ? ライトは点いている。だが眼前の景色はありえないくらいダークネス。前のオーナーが青いばっかりのスタイル重視のバルブを入れていたから、そのせいかとも思ったが、それにしても酷すぎだ。これじゃ使い物にならない。

もう一度立ち上がって覗き込み、そこでようやく事の次第に気づいた。

点いていたのはポジションランプだったのだ。

旧型と違うので、すっかりだまされた(騙しじゃなくてウカツなだけです)。

高速走行中に切れるとは困ったバルブだが、とりあえずライトを点けずに走るのは自殺行為。旧型のバルブが切れたときは、速度を落として明るいクルマの後ろについて走ったけど、今回は真っ暗な上にクルマも少ないので、そうも行かない。ならば答えはひとつしかない。

俺はライトをハイビームにすると、そうした者の当然の定めとして、全開で走り出した。

「ここから穴川まで高速を全開して、16号に降りたら柏まで全開かぁ……」

口調はガッカリしつつも、言ってみれば『都合のいいイイワケ』が出来たわけで、表情はそれほど落ち込まないまま俺は柏に向かって……正確には、バルブを買うためにライコランドへ向かって、夜の高速を(イメージと魂だけは)全線全開で走り出した。

 

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