The75th big machine club
2009.04.05 第75回でっかいもん倶楽部in房総 ―BELIEVE―
「かみさん、弟のirohaが元気ないんで、ツーリングをしようと思ってるんです」 moto君からそんな連絡をもらったのは、いつだったろうか。 「お、いいね。俺も行くよ」 「それでですね、今回は久しぶりにバイクに乗るirohaのリハビリが目的なんで、『あんまり大人数じゃない方がいい』と思うんですよ。 でも、かみさんのサイトで告知しちゃうと、たくさん人が来ちゃう可能性があるでしょう? だから、サイトに告知しないでもらえますか?」 「わかった。いいよ」 つわけで一切告知せず、「ちょっとツーリング」なんて書いてたわけだが。 まさかこんなツーリングになるとは、夢にも思わなかった……
当日の朝。 相変わらず目覚ましより先に起き出した俺は、ケーロクをまたいで八時ころ出発した。 昨日、パワーワンに履き替えていたので、「タイアの皮むきが終わるまでは気をつけなくちゃなぁ」と思いながら、国道をmoto家に向かってすっ飛ばす。途中でマスツーリングしてる人々がいたので、その間をスルスルすり抜けて、さらに先を急ぐ。 すると信号待ちで停まった瞬間。 後ろから大声を上げて近づいてくるヒトがいた。 さっき抜かした単車らしい。
ナンだろう? とそちらを見ると、なんかものすげぇ怒ってらっしゃる。 「あぶねぇじゃねぇか!」 「え? なに?」 「危ない抜かし方、しただろうが!」 そうだっけ? と思いつつも怒ってる以上きっと怖かったのだろうから、そこは俺が悪いと思い、「あ、ホント? ゴメンゴメン」と素直に謝った。すると彼と一緒にいたフェーザーかな? ハーフカウルのバイクが信号の変わりざま、俺を威嚇するようにウイリーしてすっ飛んでゆく。 こっちはタイアの皮むきも終わってないので付き合わず、普通にいつも通りの感じで走りながら、 「まぁ、ウイリーして威嚇するような連中なら、俺とおんなじクズだな」 と、ちょっと安心した。 普通のツーリングライダーに怖い思いをさせたなら申し訳ないが、フロント上げたり、「お前より速いんだぜー!」と言いたいのだろう『俺と同じようなアホなすり抜け』する段階で、安全とか抜き方とか言われる筋合いねーもん。同じ穴のムジナってヤツだぁな。
途中でガソリン入れてから京葉道路に乗り、moto君のところまで皮むきがてらすっ飛ばす。
moto家近所のコンビニで、一服しながら時計を見たら約束より30分早かった。
ま、いるだろうと思ってmoto家に行くと、案の定。 moto君はR1やZ1000の準備をしていた。
トモゾーに借りてきたアクションカムを、irohaのフェンダーにガムテで貼っている。 正直、ココにつけるのは「振動がすごくて画面なんか見られたもんじゃないだろうな」と思ったのだが、さりとて他につける場所もナシ。ま、moto君の走りを撮るためらしいから、本人の好きなようにやらせとこうと、作業を見ながらタバコに火をつける。
moto君の息子、Nくんのポケバイ。 Nくん、まだ脚も届かないのに、一生懸命またがってた。先が思いやられるね。
さて、そろそろ時間だつーわけで、irohaを先頭に走り出したのだが。 この間一緒に走ったときは、だいぶん速くなってたはずのirohaの速度がやけに遅い。 「なるほど、だからリハビリが必要なんだな」と思いながら走っていると、すり抜けの途中でirohaがすり抜けできずに急ブレーキをかけた。後ろのmoto君が、カマを掘りそうになる。 そのあと、また走り出したirohaが、すぐに急ブレーキ。 moto君もがくんとブレーキかけざるを得ない。 「ありゃぁ、こりゃmoto君、怒ってるぞ。iroha、可哀想に」 そう思いながら、とりあえずコンビニに入った。
と、案の定、irohaに怒りをぶつけているmoto君。 「おまえなぁ、あれじゃぁ危なくて後ろ走れねーよ! 行くなら行く、行かないならハンパに行くな」 「はい、すいません。お兄ちゃん、先に行ってもらっていいですか?」 「ああ、お前のペースに合わせてたら、日が暮れちまうからな!」
ショボンとしてしまったirohaがかわいそうで、moto君がコンビニに入った隙に 「転ばないのがイチバン大事だからさ。あわてないで行こう」 と元気付けると、irohaは穏やかに笑ってうなずいた。
しばらく走ったところで。 moto君がまたコンビニに入ってirohaに説教を始める。「今日はなんだか、やけに厳しいな」と思いつつ、あんまりケンカばかりしながら行くんじゃ、せっかくのツーリングも雰囲気が悪くなってしまうので、俺は兄弟の仲を取り持とうと仲裁に入るようにした。 「おまえさぁ、『ハイハイ、先行ってください』みたいに俺らだけを行かせて、自分は後からチンタラ走ってるんじゃ、リハビリツーリングやってる意味がないだろう?」 「……はい、すみません」 「まぁまぁ、リハビリだからさ。徐々に行こうよ」 うなずいたmoto君は「ちょっと待ってくださいね」と言いながら、携帯を取り出してどこかに電話している。さっきのコンビニでも電話してたから、「嫁さんでも機嫌が悪いのかなぁ」といぶかしみつつ、電話が終わるのを待って走り出す。
俺はirohaが気になって仕方なかった。 なので元気付けようと、走りながら「水曜どうでしょう」のまねをして笑わせたりした。 やっぱ笑顔でツーリングしたいからね。 そのうち道が空いてきたので、moto君がガンガン飛ばし始める。言ってもタイアの端っこはまだ皮むき終わってないのだが、こうなればのんきに「皮が」とか言ってられない。「路面はドライだし、徐々に寝かしてきゃ大丈夫だろう」と 、moto君の後ろを追ってアクセルを開ける。
広いワインディングを猛烈な勢いで抜けてゆくと、ちょっと狭い区間に入った。 トンネルがあったり路面が濡れてたりするので、moto君もペースを落とす。そのまま、まったりと走っていると、ミラーにライトが映った。「お、irohaのやつ、もう追いついてきたのかな?」と思ってミラーを見たら、irohaと俺の間に二台のバイクが入り込んでいた。 俺の真後ろ、ミラーに映るバイクの顔はGSX-R1000、しかもケーロクだ。 「あちゃ、中途半端な感じで入られちゃったなぁ。先に行かせるか、ちぎるかしないと」 前をゆくmoto君のミラーには映ってないのかと思って、車体を左に寄せて後ろのケーロクがmoto君のミラーに映るようにしながら走るのだが、moto君、ちっとも気づかないようで中途半端な速度のまま走り続ける。 「これじゃ、後ろのヤツはイライラしてんじゃねーか?」 ところが後ろのケーロク、ちっとも抜こうとしない。 抜きもせず、かといって車間は詰めてくるので、moto君が気づかないなら先に行かせようと決め、ハザードを焚いて左に寄った。するとケーロクはフォーン! とアクセルを開けて、ようやく抜いてゆく。そしてそのままmoto君の後ろについたので、やれやれと思っていると。
なんとケーロクのライダーはmoto君を抜きながら、左足を出して蹴ろうとした!
「あっちゃぁ、これでmoto君にも火がついたか。こりゃ、オモシロくなるぞ」 ワクワクしながら後ろについてゆくと、しかし、俺の期待したようなライディングでのバトルにはならなかった。ふたりは併走しながらヘルメットを開けて怒鳴りあっていたのだ。moto君なら走りで凹ませようとするはずだから、コレはきっと抜いたライダーが文句を言ってきたのだろう。 「普通のツーリングライダーみたいなカッコしてるのに、気の強いやつだなぁ」 思うまもなく。 あわただしく単車を停めたふたりは、怒鳴りあいどころか掴み合いを始めた。
「うわ、ケンカになっちゃったよ。こりゃ止めた方が良いな」 そう思って俺も単車を降りて近づいてゆく。すると、ケーロクの連れのライダーが単車を停めるなり、二人に向かって走り寄っていった。ケンカを止めるのかと思っていたら、なんとその革ジャンを着たライダ−まで一緒になってもみ合いを始めるじゃないか。 「待て待て待て、やめろって!」 といいながら近づいてゆく俺の視界に、次の瞬間、妙な人物が入ってくる。 どっからか現れた、ビデオカメラを構えた女がケンカの様子を撮っているのだ 。 こりゃいかん、ビデオで証拠なんて撮られたら、どっちが先に手を出したとか後々めんどくさくなるに決まってる。この女もどうやら観光客なんだろうけど、景色を撮ってるところにケンカが始まったもんだから、面白がって撮影してやがるんだろう。 無謀つーかバカっつーか。
ま、とにかく撮影されるのはイクナイ。 「おい、カメラに撮られてるからやめろ!」 声をかけながら、カメラとの間に割って入り撮影を阻止しつつ、ケンカしてる三人に近づいてゆく。 と。 突然、奇妙な光景が目の前に展開された。
ケンカしてる連中が、腕を組んでくるくると回りながら踊り始めたのだ。
最初その動きに気づかず、俺は必死になってケンカを止めようと、三人を抑えながら連中の周りを半周ほど一緒に回ってしまった。「らんら、らんら、らん!」歌まで歌いながら回ってるのを見て、しかし、ようやく俺も落ち着く。 いや、落ち着いたつもりだった。 「お、相手もケンカ慣れしてるつーか、警察沙汰に慣れてるな。撮影されてるとわかったら、踊ってごまかし始めたぞ。やれやれ、とりあえずコレでめんどくさいことにならなくて済みそうだ」 夜の繁華街なんかでも、さっきまでケンカをしていたやつらが警察が来るなり仲のいいフリをして警察を介入させないなんて話はよくあるので、つーか俺自身もそうなので、どうやら相手も警察沙汰は避けたいようだと考えて、とりあえずひと安心する。
と、さっきの女が今度は俺の方に向かってカメラを向けてきた。 オモシロ動画として、YouTubeにでもアップする気なのだろうか? 「こいつバカじゃなかろうか? なんで自分から、厄介ごとに首を突っ込もうとするんだ。コレで連中の怒りがこの女に飛び火したら、さっきよりもっとめんどくさい状況に……うん? いや、ちょっとまて。え? え? え? なにが? なんで? 俺、この女知ってるぞ?」 脳内で高速検索すること数秒。 その名前に思い当たる。 「お、おねぇ?」 女はmoto兄弟のカシラ、おねぇことmoto姉ちゃんだったのだ。
ようやく。 本当にようやく。 目の前で起こっている事態を。 その意味を。 俺は理解した。 「く……くっそー! やられたー! てめぇらぁっ! 何やってんだよー!」 あまりのことに全身の力が抜け、思わず大の字に寝転がる。 ケンカしてた男は、俺の朋友、マルだったのだ。
もうひとりの男は、moto君のダチにして俺もよく一緒に呑む、オーちゃんだった。 長いこと続いていた全員の爆笑が終わり、よくよく話を聞いてみると。 コトの始まりはマルの納車だったらしい。 昔、ロケットIII納車の時、Zの協力でマルとガンボにサプライズしたことがあったのだが、マルゾー、それを覚えてて今回はサプライズ返しをしようと思い立った。 そこで黙ってツーリングにでも誘えばいいものを、サプライズの協力者が必要だと考えたクソマルは。 よりによって一番しちゃいけない男に協力を求めたのだ。 そう、そんなハナシを聞いたら 、300%ノリノリになるに決まってる男、moto君に。
しかも、俺からmoto君のアドレスを聞いたら察知されるつーんで、わざわざイチローに連絡を取ってmoto君のアドレスを聞き、「こういうわけなんだが協力してくれ」と言いやがったのだ。ライオンの前に肉の塊を放るようなものだ。そしてもちろん、ライオンは食いついた。も、ガップリと。 マルがメールをして数分後、おそらく300字はあろうかという長文メールが返って来る。 俺をダマして引っ掛けるシナリオは完成し、プロジェクトはスタートした。
キチガイどもは、何度もメールのやり取りをして作戦を究極と言えるまでに煮詰めた。 一方は、イタズラのためなら一切の妥協を許さない男。一方は二十年の付き合いで俺の性格や行動を知り尽くした男。さらに行動力抜群の姉ちゃん&末弟。その上、この企画を聞いた瞬間、「そんなオモシロいことゼッタイ参加する」と叫んでバイクを買ってしまうようなバカ、オーちゃん。 まぁ、布陣としてはカンペキだ。 五人は昨日の夜、俺がGO!!!君やショーファーさんと宴会してるころ、この場所に来て雨の中を何度もロケーションし、計画の細部を修正し、俺の対応に合わせて第二案、第三案、第四案とあらゆる状況を想定し、最後は居酒屋で乾杯して前夜祭を開いたというのだ。 もう、バカすぎて声も出ない、もとい、大声で笑うしかない。
「いや、かみさん。確かに昨日の夜はカンパーイ! なんて盛り上がってましたけどね、今朝はすごかったですよ。みんなで円陣を組んで「いくぞ!」って叫んだときは、誰ひとり笑ってませんでした」 「うるせー! ンなコト聞いてねえっつの」 「大変だったんですから! 打ち合わせてるうちに、「もしかしてコレ、俺を引っ掛けてるのか? 逆ドッキリか?」って心配になったんで、マルさんに電話したんですよ。幸い、電話で話すうちにマルさんにも俺の真剣さが伝わったらしくて、そこからはもう、みんな一丸となってがんばったんです」 「いつも人を騙してるから、そんなこと心配になるんだっつの。なんだ逆ドッキリて」 moto君がいつものように、まじめくさった顔でバカな話をしてる。
と、オーちゃんも笑いながら 「俺なんかさぁ、待ってる間に緊張しすぎて、胃が痛くなっちゃったよ」 「知るか。つーかドコまで大掛かりにしてるんだよ」 「全部です。irohaにカマ掘りそうになって怒ったのも、irohaがしょぼんとしてたのも」 「ちょ、irohaてめぇ! あのしょんぼりも芝居かっ!」 「いやー、かみさんが元気付けてくれたとき、俺、涙が出そうでしたよ」 「そして、裏で半笑いだったのか」 「一生懸命に元気付けてくれるから、泣きそうになりました。0.5秒くらい。それに姉ちゃんなんてホラあそこを見てください。あそこにあるレジャーシートの下に隠れて、カメラを構えてずっと待ってたんですからね。ベトコンみたいに。自分のバイクは見えないところに隠して」 「おねぇもハリキリすぎだっつの。俺、おねぇの顔を三度見くらいしちゃったよ」 「ふふふ、オモシロかったぁ」 ベトコンおねぇが笑ってる。
と、moto君がまじめな顔で 「かみさん、見てくださいよ。あそこのガケなんて撮影にちょうど良いんですけど、登ろうと思うと結構大変で、登れなかったんです。「クルマを持ってきて隠れようか」とか、イロイロ考えた挙句に 、シートに隠れてもらったんです。大変だったんですからねっ!」 「そんな主張されても」 moto君に力なく突っ込んでると、マルゾーが笑いながら 「おめ、俺とオーちゃんなんて、現場で何回も走ってリハーサルしたんだからな。隠れる場所とか、出て行くタイミングとか、全部moto君と相談して、合図まで打ち合わせて。一回、別のやつと間違えて失敗しそうになったり、苦労したんだぞ」 そんな苦労、頼んでねーんだが。
とにかく、誰かが口を開くたびに大爆笑。 引っ掛けられた俺も、あまりにオモシロすぎて怒るどころか大笑いだ。 話によれば、ケンカの仕方までシミュレートしたらしい。 「マルさん。もし、かみさんが離れて傍観しちゃったらどうします?」 「ああ、そのときはオーちゃんが割り込めばいいよ。あいつの性格上、二対一になったらゼッタイ見てられないから。確実に参加するか、止めに入るに決まってる」 ホント、長年の連れってのはこういう時、ムダに厄介だ。 とにかくmoto君らしい、細心の注意を払ったカンペキなシナリオと、二重三重の代替案を用意する徹底したマメさ。マル、オーちゃん、iroha、おねぇの迫真の演技。さらに、天の配剤としか思えないんだが、朝、俺が来るときに国道で遭遇した、似たような事件。 全てがパーフェクトに作用して、俺は完膚なきまでに騙されたのだった。
俺が到着するなり朝の事件の話をしたとき、moto君は笑いを堪えるのが大変だったらしい。 つーか確かに最近、やたらとマルから電話があったしなぁなんて思ってたら、今、自宅で聞いたところによると、Nも、こないだ来たキャスタも、昨日一緒に走ったGO!!!君までみんな知ってたんだと。 GO!!!君なんて事情を知りながら、しれっと宴会やってたわけだ。裏切り者め! 「マルさんがね、「かみの周りのみんなが知ってる状態にしようぜ」って言ったんだよ」 とかNのヤツがぬかしてるので、今日は晩飯抜きにしてやろうと思う。 つわけで、ま、とりあえず。 moto君の企画した『マル新車お披露目サプライズ企画』は、大成功を収めたのだった。 チクショー!
マルの新しい愛機、ケーロク。まだ2000kmしか走ってないらしい。
オーちゃんの新しいマシンRVTは、キャスのと同じSP-Iだ。 今回の企画、上記二台ですでに200万円くらいかかってるコトになるわけで。 バカだよなぁ……
俺がケンカ止めに入ったときのイキオイで、みんなと一緒に回っちゃってるシーンをリプレイして大笑いしている、企画脚本総監督と、ベトナム帰りのカメラウーマン。とりあえず、日本一たちの悪い姉弟じゃねーだろうか。もんすご嬉しそうに笑ってやがる。 以下が、そのときの動画(編集:moto君)。
さんざんっぱら笑ったら。 「さて、それじゃぁ走ろうか」 「いや、もう終わりでいいでしょう。無事クランクアップです。おつかれさまー」 アホな話をしながら、moto君先頭で走り出す。 房総の県道をキチガイ沙汰のペースで走り出した彼を追いかけ、すっかり皮むきも終わったタイアで、しかし全身の力が抜けきった状態で走り出した。走りながらも、「やられたー」と笑えてきてしょうがない。それでもせまっ苦しいタフなワインディングを攻め始めれば、さすがに真剣になる。 まして前をゆくのはあの変態、moto君だ。 場所によっては対向とのすれ違いさえギリギリの、ところどころ砂の浮いたタフな道を、moto君はガンガンすっ飛んでゆく。俺も負けじと後ろについてアクセルをひねりあげ、ケーロクの小さなボディを林道みたいな荒道のタイトなラインにねじ込んでゆく。 シビれる。 楽しい。
クルマを抜くのに手間取ると、そのぶん、moto君との車間がキッチリ開く。 開いたが最後、直線でバカ開けしようが、心臓が飛び出しそうな思いで突っ込もうが、その差は一向につまらない。むしろ離れる。次のクルマにmoto君が引っかかって、それでようやく追いつける。それでも前ほど離されなくなったような気がするが、そうでもない気もする。よくわからない。 高速コーナーは、このタイアでのイメージがまだつかめてなくて、ちょっと遅かったかも。
開けたところに出て、休憩する。
さっきのサプライズの余韻や、マルがケーロク買ったことや、話す事はいくらでもある。 くっちゃべりながら後続を待っていると、ちょっと遅いなぁと思い始めたころになってみんながやってきた。 次々と停車してエンジンを切る中、降りてきたオーちゃんがニコニコしながら 「コケちった」
土のところに突っ込んだので、大ダメージはないものの。
ウインカーはすっ飛んだ。 ま、タフな道だから一歩間違えばこういうこともあるだろう。それの是非は言いたい人間に言わせておくとして、単車ってのはこういうもんだと、俺は思う。だいたい、こけた本人がケラケラ笑いながら「俺、ゼッタイ転ばないようにしようと思ってたのに、納車初日かよー」つってるしね。 ま、納車初日でそんな攻め方するなって話もあるにはあるけど。
はじっこ5mmくらい残して、ほぼ皮むきの終わったパワーワン。残りは筑波で削ろう。
オーちゃんのRVTを走れるようにしたら、さて、次のワインディングに行こうか。
moto君と俺、その後ろにマル、オーちゃん、iroha、おねぇてな感じで走り出した。 先頭ふたりのダメ人間は、とにかく曲がってりゃ幸せなので、ガタガタ減速帯のある場所だろうが、狭かろうが広かろうが、ゴキゲンなバカペースですっ飛んでいく。マルゾーはタフな荒道は嫌いなので、若干遅れ気味だったが、少しずつペースが上がってきた。 ま、ケーロクに慣れてくりゃ、どうせ俺なんか消されるんだろうけどね。フン!
結構な距離を走り、また休憩。 ワインディング全開&休憩つー俺の大好きなパターンだ。
すでにやる気のないダメ人間たち。 彼らの中で今日のツーリングは、サプライズが成功した時点で終わったようだ。 ここでmoto君がオーちゃんのRVTに乗って、コケた影響がないかどうか試走しに行った。試走つーか普通にバカ開けしてた。irohaが苦笑しながら、「ヒトの単車で、何であんなに走れるんでしょうね、ウチの兄ちゃんは」言うので、「ヒトのだと思ってねーからだろ」と突っ込んでおいた。 もう、irohaになんて優しくしてやらないのだ。
お昼時になって、そろそろ腹が減ってきたので、irohaの先導で飯を食いに行くことにする。
観光客向けの海鮮屋だったので、味とネタ的にはイマイチだったが、サプライズの裏話、苦労話で盛り上がっていたので、味なんてどうでもよかったね俺は。海鮮丼がきたときこそ、みんな黙々と喰ってたけど、それ以外はずっと最高に楽しいバカ話が続く。
メシ喰ったら、もう少しだけワインディングに行こうか。 irohaの先導で鴨川市内を抜けた後、県道に入ってペースが上がる。 やっぱリハビリは俺を騙すウソで、irohaはこないだよりも更に速くなっていた。後ろについて走ってても、全然ストレスがない。むしろ兄貴についていくと心臓が止まりそうになるので、iroha先導の方が健康に良いかも。
途中であんま速くないけどがんばってる系のZだかカワサキのでかい二本サス二台に引っかかって、しばらく後ろについて走る。そのうちジレたmoto君が二台をぶち抜いて先に行ってしまった。当然俺も後ろにベタ付けするんだが、気づいているんだかいないんだか、ちっとも道を譲ってくれない。 なので高速コーナーで、反対車線の先がクリアな瞬間を狙って外から一気にぶち抜く。 そのまま切り替えして、右の長いコーナーをフルバンクで抜けミラーを見る。ちぎったことを確認してから、moto君を追ってフルアクセルを決めた瞬間、道の脇にmoto君が停まってるのを見て、あわてて急ブレーキ。ちょっと行き過ぎつつ、ケーロクを止めてヘルメットを脱ぐ。 ほどなく、みんなもやってきた。
つーかirohaだってかなり速くなったし、マルはケーロクに慣れてないとは言え遅いわけではもちろんないし、オーちゃんだって昔はmoto君を抜いたことがあるってくらいだから、とても遅いとは言えない。なのに、ほとんど間をおかずについてくるおねぇも、やっぱちょっとアレな子だよなぁ。 さすがに昔、「女と思ってナメてるやつを、ぶち抜いてへこませる」という、moto君のドエスで意地悪な企画のためだけに鬼教官の弟に鍛えられ、泣きながら練習しただけのことはある。すげぇ優しそうな、おとなしい女の子なのに、あんな弟がいるばっかりに可哀想な話だ。 でも、俺を騙す片棒を担いだ悪人だから、同情はしてやらない。
ココで最後の休憩をしながら、のんびりダベる。
すると、マルがタチションしに行ったので。
別にどうでもいいんだけど一応、約束事だから撮っといた。でも、正直、タチション撮影に飽きてきてることは否めない、かみさん39歳。このあとmoto君もしてたけど、めんどくさくなっちゃったから撮ってない。みんなも、もうどうでもいいでしょ?
ミサイルを迎撃しに行く戦闘機の音を聞きつつ、平和にダベリング。
バカ話、走りの話、前を通る単車の話、そしてもちろんサプライズの話。 ひと通りダベったら、おねぇはスモークシールドでもあることだし、暗くなる前にそろそろ帰ろうか。
高速に乗ってしばらくは、渋滞する中をクルマと一緒におとなしく走り。 二車線になって道が空き始めたところで、先頭のirohaが先に行けと合図。後ろにいた俺は6速に入れたままアクセルを開けて、のんべんだらりと加速しつつ、クルマが切れて前が開けたところで270くらいまで引っ張ってみたが、やっぱしんどいので200前後でチンタラ走る。 と。 ばびゅん! moto君のR1に気持ちよくぶち抜かれたところで、本日のCrazyMarmaladeでっかいもん倶楽部は流れ解散。本当はこの先のパーキングで最後のダベリングだったらしいけど、俺はそれを聞いてなくてすっ飛んで帰っちゃったので、俺ひとりだけ流れ解散。 笑って笑って、走って走った、最高に楽しいひとときだった。
俺を驚かすためだけに、長い時間と詳細な打ち合わせ、非常なる労力を払ったみんなには、心からの敬意を表したい。マル、moto君、オーちゃん、iroha、おねぇ、めっちゃめちゃ笑った 、最高に素敵な時間だったよ。久しぶりに腹筋がイカれるほど笑わせてもらったぜ! みんな、また次回も。 走って、しゃべって、笑おうな!
仕方のないことだけど。 俺が出ちゃったら企画の意味がまったくなくなっちゃうことはわかってるけど。 それでも。
てめぇら、よくも俺を宴会から外しやがったな? おぼえてろよ、チクショー!
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