The 78th big machine club
2009.05.04 第78回 でっかいもん倶楽部 in 龍神スカイライン ―フルアタック―
名古屋のともっちさん宅を辞した俺とフラは、ムラタさんの待つ大阪に向かって走り出す。 ところが、都市高速をガンガンすり抜けながら走ってると、突然、後ろで電飾が光る。言ってもアサイチ、まださっき走りはじめたばかりなのに、イキナリこんなめんどくせぇ話になるのは、絶対フラ公のせいだ。「あーも、めんどくせーなー!」とキレながら、フラに見えるように車体を振る。 すると、後ろに気づいたフラ公、いきなりアクセルを開け始めた。 さっきの比じゃない速度で、ガッシガッシすり抜けてゆく。コレだけクルマがいりゃそんなにムキになってすっ飛ばさなくてもいいのになぁと思いながら、フラの後ろを追いかける。都市高速を抜けて、東名阪に入ってからも、フラはしばらくフルアタックしてた。 その東名阪も、やはり大渋滞。 その中をすり抜けていると、フラが突然PAに入る。ナニゴトかと聞いてみると、昨日から悩まされていた『V-MAXのアイドリング不調』があらわれたらしい。「4000rpmアクセル固定ですり抜けとか、普通に死ねますよ」とフラが泣き笑いになってるので 、「朝から余計なことすっからだ」といじめる。 んで、なんとかアイドリングが戻ったので、ようやく出発。
亀山で降りて名阪国道に入る。 フラが見えなくなったのも気にせず、名阪をすっ飛ばしてたら、えらいたくさん覆面がいた。犠牲者に心の中で十字を切りながら、「ま、せっかくだから、一日に振り切った数の記録でも更新するか」くらいの気持ちですっ飛ばしたんだが、逆に意外とすんなり行けちゃうもんだね。 西名阪に乗ってすぐ、香芝でムラタさんに電話。だいぶん待たしてるはずだが、ちっともイラついた感じなく、ゆっくり来て下さいと太っ腹のありがたい返事をもらって、『フラとは現地集合する 』ってコトで出発。適当に流しながら、岸和田を目指す。
岸和田ではムラタさんつーかムラタ君が、満面の笑みで迎えてくれた。 挨拶もそこそこにバカ話をしてると、やがてフラがやってくる。そこでまたしばらくダベり、昼過ぎくらいだったかな? ムラタ君の「グネグネ道を通っていくのと、高速で行くの、どっちがいいですか?」の選択肢に、ふたり迷わず「グネグネ道」と答えて、給油をしてから走り出す。 で、この道がまた非常に楽しかった。 ネットで同じような道を走った動画を見つけたので、参考にアップしておく。
前回、ぁゃ。ちゃんと行ったときは、高速を和歌山まで走って、国道で高野山まで行ったのだが、今回は貝塚インターで降りてから下道ワインディングを延々とつないで走るので、気分的には前回より も全然、近い感じ。龍神に行く時は是非、使って欲しいワインディングだ。 やがて、龍神までもうすぐのところで、コンビニに入って休憩。
またしばらくバカ話して、「昼飯は後でいいか」なんて言いながら出発。
ところが、さすがに観光地。 前に来た時もハマったUターンチックな細い道が、思いっクソ渋滞。それでもムラタ君と俺はなんとかすり抜けて前に行くのだが、デカブツのフラ公はさすがにしんどいようで、やがて姿が見えなくなった。そのままいったん頂上まで出た はいいが、こんな人の多いところで飯なんか食ってられっか。 なので先に龍神を走って、「護摩山あたりでフラが追いついてくるのを待とう」つー運びになる。 これも似たようなイメージ動画を見つけたので、想像の足しにでも。
せまっ苦しいところや道の荒れてるところでも、ムラタ君は容赦なくすっ飛ばしてゆく。 俺はその後ろについて楽をさせてもらいながら、徐々に龍神のリズムに慣れてゆく。やがて高速エリアに入ったところで、自分でも乗れてるのが明確にわかるほど、劇的に調子がいい事に気づく。「こりゃぁ、どうやらイッパツ、気合の走った走りを見せられるぞ」とつぶやきながら。 ムラタ君の750より明らかに上回ってる、立ち上がり加速を生かして、直線で前に出る。
そして、至福の時間が始まった。 とにかく思ったとおりに身体とバイクが言うことを聞くのだ。こんなに乗れてたのは、間違いなく初めてのことだ。ブレーキを残しながらじわっと曲げてゆく。途中でレバーをリリースしながらフルバンク。次の瞬間にはアクセルを開けて旋回。ぐぐぐっと曲がりながら脱出口を眺めつつ。 アクセルオンで全開脱出。 いつも高回転を使えない俺が、一速で全開脱出をしてるのだ。普段ならもてあますそのクイックなレスポンスが、今日は頼もしくてしょうがない。オーバースピード気味に飛び込んでも、まるっきり冷静に、なんてこともなく立て直す。そもそも、立て直す必要があったのだって、たった一回きりだ。 最後の方には、タイアがぬるぬると逃げ出すのまでわかった。 間違いなくこの時、俺は人生でイチバン速かった。
ごまさんタワーに到着すると、ムラタ君が笑いながら
「くっそー! 消されるとは思わなかった!」 と最大の賛辞を送ってくれる。 ま、普段なら俺もムラタ君もきっとそんなに変わらないと思うが、今日は特別だ。自分でもびっくりするくらい、最高に調子よかったからね。「次回ガッカリされないように、帰ったら練習しなくっちゃなぁ」なんて思いながら、心地よい疲労を和歌山の風に遊ばせる。
パワーワンは、ここで短い生涯を閉じたっぽい。 ロンツーや雨には向かないからパイロットパワーを履きたいところだが、ここまで気持ちよく曲がらせてくれるとなると、もう一回くらいは履きたい気もする。それこそホイール二つ欲しいくらいだよ、マジで。う〜ん、どうしようかなぁ……
頂上でムラタ君と今の走りや単車の話をしながらフラを待つ。つーか携帯が圏外だったので、電波を探してうろうろしてたら、思ったよりずっと早くフラが追いついて来た。 かなりのペースですっ飛ばしてきたのだろう。しっかしこいつも、たいがいバカだよなぁ。 つーか新型マックス、わりとナメられないな。
気持ちよくすっ飛ばした後の、単車乗りとの単車談義。最高の時間だね。 俺はとにかくムラタ君も充分にバカだったことが、そして、その彼の前で最高の走りができたことが、とんでもなく嬉しくて、もう、ずーっとご機嫌の絶好調だった。イキオイあまって、ここで野宿しちゃおうかなとか思うくらい。ま、クソ寒そうだからやめたけど。 時間は確か三時半くらいか。 いつまでも話は尽きないが、ムラタ君は明日仕事だし、俺とフラは名古屋だの三重だのに帰らなきゃならない。いや、「テント張るのメンドウだから、三重のおーがの家に泊まろう 」と、今、勝手に決めたのだ。無論、アポなんて取ってない。家に居なかったら、近所の公園で野宿すればいい。 つわけで、ここでムラタ君とはお別れだ。 最後にガッチリと握手をして、ついでに握手を求めてきたフラ公の手を「ふん!」と振り払ったら、ブログを読んで共感し、会った瞬間に打ち解け、数時間走って完全にダチとなったムラタ君と俺、フラ公 の三人は、南北に分かれて走り出した。 ムラタ君、最高に楽しかったぜ! また、絶対一緒に走ろう。そしてこんどは、ガッチリと宴会やろう!
護摩山の下りをダラダラと下り。 下りきった橋の先、前回ぁゃ。ちゃんとダベった場所のちょっと先にあるスタンドで給油。
ガソリンを入れたら、フラが高速かどっかから持ってきたペラ地図で道順を確認。 今回ナニを勘違いしたんだか、関東と中部のマップルしか持ってこなかったので、和歌山の南端あたりの地図が、フラのペラ地図しかないのだ。頼りないを超えて、むしろちょっとした罰ゲーム。
そして分かれ道を国道425号線で折れ、走り出した……のだが。 あとで調べてみたら、ここは日本三大「酷」道と呼ばれる、とても国道とは思えないことで有名な場所だった。そうとは知らず俺は龍神でのアツい走りを反芻しながら、せまっ苦しい道を走り出す。そして最初の対向車が来たときに、現実に引き戻された。 「ちょ、すれ違う幅がねぇ」
こんな道を延々と、まるで二速でパイロンスラロームするように走り続けてゆくと。
え〜と、今日はオフ車じゃなくてケーロクなんで、帰っていいですか? あ、帰り道はコレしかないんですか、そうですか。 しかたなく、そろそろとダートを走って、またかろうじて舗装されてるだけの酷道を、延々とパイロンスラローム。いくら曲がり道が好きだとは言え、さすがにコレはしんどい。数キロだったら面白がったかもしれないが、「○○まで30km」とか書かれてると、軽く意識が遠のく。 ようやくたまに広い場所に出て。
休憩しながら地図を見るんだが、わき道があるわけじゃないので、要するにただ先の長さを思い知って絶望するだけの儀式と化す。たまにえらい速度で突っ込んでくるクルマがいたりして、危うく正面衝突しかけたり。ヤツもさすがにびっくりして、この道を飛ばす危険を学んだだろう。 が、何も俺で学ばなくたっていいだろうに。 一回は確実に「あ、やった!」と思ったからね。でもヘロヘロで怒る気力もないんだけど。
ひいひい泣きながら、なんとか広い道に出ると、それまでの鬱憤を晴らすようにすっ飛ばし。
道の駅「奥熊野ほんぐう」に到着。 ここで三重のダチおーがに連絡を入れ、今夜の宿を確保する。 さて、もうひとがんばり、走ろうかフラ公!
うんごめん、和歌山ナメてた。国道42号、クソ混み。
新宮から紀勢自動車道に乗るまでの熊野街道で、疲労のあまり軽く殺されかけた。 しかも、最後の方でフラと「ショートカットっぽいからこっちに行こう」つってドはまりし。
思いっきり道に迷う。 そんで、ようやく見つけた道がまた、明るければ風光明媚なところなんだろうが、真っ暗な夜中じゃただの暗くて危ない道だ。「夜峠とか楽しくねーつの、俺はじゅんじゃねーんだから」なんてブツクサ言いながら走ってたら、ようやく42号に復帰する寸前 の交差点で、 「うぎゃー! シカー!」 三頭のシカにゆく手を阻まれ、あやうくシカ殺しの異名を取るところだった。
そんな感じで、酷道と渋滞と夜峠とシカにヤられてボロボロになりながら、ようやく高速に乗る。
と、 フラが微妙な顔で「どうやらこの高速にはスタンドがありません」と泣き出した。泣いてないけど。 結局、俺はそのまま四日市を目指し、フラはいったん松坂で降りて牛は食わずに給油だけして高速に戻ると言う、『新型V-MAXが、いかにツーリングに向かないか 』を、証明するプランになった。んで夜の高速をひたすらすっ飛ばし、待ち合わせの場所、
安濃SAで給油と最後の休憩。 ちなみに左側の矢印が給油待ちの渋滞で、右の矢印はフラナガン。ほぼ見えないけど。
安濃を出て渋滞をすり抜けながら走り出したところで。 本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は、半死半生で終了。ま、新型V-MAXにとっては一日で、高速ぶっ飛ばしから高速ワインディング、低速ワインディングに林道チックな酷道に長蛇の渋滞と、ひととおりの経験ができてよかったんじゃないだろうか。 そして俺にとってもももちろん、またひとりオモシロいオトコと会えた、そして最高の走りのできた、この上なく楽しいツーリングだった。いつか今度は、こっちのオモシロい連中とムラタ君を合わせ、楽しい走りができるだろう。コレは予言じゃなくて未来の事実だ。 そう思ってにやりと笑うと、俺とフラは、おーがの家に向かってアクセルを開けた。
|