The 80th big machine club
2009.05.20 第80回 でっかいもん倶楽部 in 銚子 ―優しさライセンス―
「かみさん、タイアの皮むき行きますよね?」 なっこからのメールがあった。「おうよ」と応えてツーリングが決定。 んで、夜が明けると次の朝には、poitaさんから「富津でぐるぐるやりませんか?」とのお誘いが入っていた。モテる男の葛藤を想像できる瞬間だ。遅刻気味だったのでそのまま出勤し、 午前中半日の仕事にいそしむ。poitaさんに断りのメールを入れられたのが、仕事がハネた午後一時過ぎ。 家に帰ると、すでになっこが転がっていた。
着替えて一服し、「どこに行こうか」「どこでもいいです……って、かみさん。皮むきなら筑波じゃないんですか?」「う〜ん、暑いしめんどくさいなぁ……あ、海が見たいかも。ソロの時によく使う利根川沿いの土手道 で、海を見に行こう」つわけで午後二時ころ、海へ向かって出発した。
途中でガソリンを入れるなっこ。
渋滞を抜け、ようやく土手道に出たところで、まずは一服。
「かみさん、飛ばすなら先に行っちゃってください」「ナニ言ってんだ。飛ばさねーっつの。俺はツアラーなんだ」「あたしもツアラーです」「おう、んじゃ、ツアラー兄妹だな」 などとバカ話しながら、川沿いの気持ちいい風に吹かれて、のんびりと走り出す。
利根川沿いにまったり走っていると、
いつものように放牧中の牛を見つける。
なんかやたら模様の少ないヤツだった。エコかね?
走り出して幾らもなかったが、停まって写真を撮る。
川っぺりをそよいでくる風が、優しく頬をなでる。
「ほらな、かみさんはのんびりツーリングできるんだよ。やれば出来る子なんだ」 「あはは。でも、ホント気持ちいいですねぇ」 「いつもはソロで走ってるんだけどな。だってさ、AGLAなんか連れてきても、100パー景色なんて見ないだろ? きっと、『ここ300出せるんじゃないですか?』とか言いながら、ばびゅん!ってすっ飛んでっちゃうから」 「きゃはは、AGLAならやりそう」
一服したあとは、こんどこそ土手沿いをずーっと走ってゆく。いつもなら、そのまま行ける所まで行っちゃってから地図を見るのだが、今日はなっこも居ることだし、国道に出て素直に銚子を目指そう。そんな風に考え、途中で川を渡って国道に出た。 んで、国道に出てしばらくは、おとなしく走っていたのだが。 いくらのんびりツーリングとは言え、トラックの後ろをずーっと走ってるのはイヤだ。なので適当にすり抜けながら走っていると、突然、物陰からヒトがふたり飛び出してきた。手にはなにやら棒状の得物を持ってこちらを威嚇している。このあたりは治安が悪いようだ (治安を維持する人です)。 男ふたりにぶつからないよう、するっとかわして、そのまま加速体勢に入りアクセルオン。 ちょっと距離を稼いだところで、「あっ」と気づいちゃったかみさん。 「あれ? なっこって『行く子』だったよな?」 不安になってミラーを見ると、ジーザス! 影も形もない。 実はこのとき、なっこには来れない事情があった。俺がすっ飛んで行ったため、わらわらと集まってきた男たちに群がられ、加速できない状態だったのだ。集団レイプの恐怖から逃れるため、停まると見せといてアクセルオン! 即、ウイリー! 驚いてアクセルを戻し再加速! またウイリー! ただの『タチの悪いヒト』である。
一方、俺は逡巡していた。これがGO!!!君やAGLAなら、当然そのまますっ飛んでいくところだが、もしなっこが『行かない子』だったとしたら、つまり俺は『女の子を置いてすたこらサッサ』と言うことになる。さすがにそれは、俺の矜持が許さない(方向がアサッテです)。 なのでミラーを見ながらじりじりと待つ。 んで、なっこがやってきたら、そのまま一緒にすっ飛ばそうと構えていると、やがてやってきたなっこは、そんな俺の優しさライセンスを無視して、なんと、白馬の王子様を引き連れていらっしゃったのだ。んじゃ、このまま先に行かせ……あ、俺の後ろについちゃった。 (どうやら、なっこと一緒にチギるのは無理っぽい) 痛恨の極みだが、このときはそう思ったので、俺のケーロクに向かって足を飛ばしながら、大声で「タイホだ! タイホだ! タイホだ!」と、天才バカボンに出てくるおまわりさん、通称ホンカンのごとく怒鳴る 、白馬に乗った王子様の言うことを聞いて、とりあえず停車する。 するとホンカンが「免許証を出せ」つーので財布から取り出し、持ったまま提示。ホンカン、免許証を取り上げようとするので強く握って離さないでいると「手を離しなさい!」「見せてるじゃん」「渡しなさい! タイホするぞ!」「そんな法律あるの?」と聞いてみると、自信満々で「あるっ!」 寡聞にして、それは知らなかった。
そのスキに振り向いて「なっこ、先行っててくれ」と促すと、顔面を真っ赤にしたホンカンが「ダメだ、あの子も一緒に来るんだ」「あんで? あの子ぁ関係ないじゃん(大アリです)」「ダメだ、ダメだ。言うこと聞かないとタイホするぞ!」なんか段々面白くなってきた。 そのままホンカンと一緒にネズミの現場まで戻る。 しばらく話すうち、「いちいち細かいところを突っ込んでくる、見た目より意外と歳のイッてるこのオッサン、なんかちょっとめんどくさそうだなぁ」と思ったのだろうか。段々と態度物腰が丁寧になってきて、最後の方は「そこまで丁寧にならんでも」とこっちが居心地悪くなるくらい。 なっこに至っては最初っから最後まで、イチミリも怒られてなかった。 結局、通行区分違反の二点、7000円の沙汰が下った。ちなみに、スピードでおとなしく捕まったとすると52キロオーバーで赤キップ&数万円。なのに逃走、追加スピード違反(測定できてな かったけど)、通行区分違反まで重ねたら、逆に罰金が反則金へ格下げになった。 なかなか不思議なシステムだ。や、まぁ、ちっとも不思議じゃないんだけどね。 一見、これも警察の優しさライセンスのようだが、要するに青キップは県警に入るけど赤キップだと国庫に入っちゃうから、ってだけの話。去り際、ツーリング中に嫌な思いをさせてすまなかったけど云々と言ってたので (いや、わりと面白かったです)と、心の中で答えて走り出す。 そこから銚子までは、この話をどうやってレポにまとめようか、ずーっと考えてた(反省しましょう)。
やがて、銚子の港に到着。
わりとクルマが居たので、混んでそうなトコはさけて寂れたところで一服しつつ、先ほどの事件を振り返って笑いながらダベる。「あたしのせいで捕まっちゃって、ごめんなさい」いやいやいや、誰がどう見ても悪いのは俺だから。俺も「ごめんなー」とあやまった。そんなふたりの優しさライセンス。
そこから海沿いを走って国道に乗り、しばらく行ったところで左折。 展望台へ向かう。
あれほど暑かった陽も傾き、そろそろ肌寒くなってきた。
自販機で俺は缶コーヒー、なっこはコーラを買い込んで展望所に登る。時間が遅くてイチバン高い展望台までは登れなかったが、そこで海を見ながら風に吹かれて、またバカ話。俺がぶっちぎっていれば、なっこも一緒に行ったのに的な話にもなって、ちょっと反省した。 結局、今回のすべては『俺がなっこをナメていた』のが、よろしくなかったんだと思う。 猛省。
だいぶん日も翳ってきた。出来れば暗くなる前に帰ろう。 つわけでそこからは、そこそこ飛ばして帰る。国道が混んでたので、ちょっと北上して広域農道を使って時間的なショートカットを試みたのだが、
やたら工事やってて、全然ショートカットにならなかった。
すり抜けしながらすっ飛ばして、県道113号から国道51号に乗ったところで、
ちょっと休憩。
合間になっこが、GO!!!君やAGLAにメールを入れている。こんな面白い土産話、出来れば大勢で楽しみたいところだから、「家に帰ったらヤツラも呼んで、宴会といこうじゃないか 」と言う話で、兄妹ふたりの意見が一致したのだ。
51号で利根川を渡り、茨城側の土手道に出る。 たとえそう呼んでるのは俺だけだとしても、ここは『裏高速』の異名をとる快走路だ。乗れば一気に平均速度が上がり、ガンガン距離を稼いでゆける。 途中で入りを間違って、なんか草むらに出てしまった。Uターンすればいいようなものだが、俺のドタマは後退のネジを外してある上に、なっこは明らかに行きたがってない。その不安そうな顔が、俺のエス魂を刺激する。「こっち、こっち」と呼ぶと、しぶしぶと草むらの中に分け入ってくるCBR。 でもカメラを向ければ
満面の笑みでポーズ。俺も思わず、メットの中で大笑いしてしまった。
陽の落ちかける綺麗な空を眺めながら、ひたすら土手沿いを走り柏を目指す。 何とか完全に日が落ちる前に、無事、柏に到着した。
家に戻ったら、風呂に入って反省会だ。 ビールで乾杯し、Nと三人で今日の写真を見たり話をしていると、やがてAGLAがやってきた。 さっき休憩中に なっこがAGLAにメールした時、「大変なことが起こった」とだけ伝えていて、それを読んだAGLAが、俺に「なにかあったんですか?」とメールをよこしてたので、俺は笑いながら、「悲しい出来事があった」とだけ伝えておいた。それで、AGLAは家に入ってくるなり 「かみさん、どーしたんですか? なにがあったんスか?」 すかさずなっこを指差して 「聞いてくれよAGLA、こいつダッセーの。キップ切られやがった」 するとAGLA、なっこを見ながら手を叩いて笑いつつ「だっせー! バッカじゃねーの?」とののしる。なっこはそのセリフを聞きながら、俺の方を見てくすくすと笑っている。その笑うなっこを見て、ようやく理解したAGLA、こっちを向いて 「もしかして、かみさんも?」 「う……うん」 「ぎゃははははっ!」と大笑い。 そのうちGO!!!君がやってきたので、同じパターンで「こいつキップ切られてんの」言うと、GO!!!君も口の形だけで「バーカ」とののしる。一見、ヒドく感じるこんな態度こそ、口先だけで「大変だったねー」だの慰めを言われるよりよっぽどいいってのは、経験者ならわかるだろう。 これも優しさライセンス。
そして、バカ話は続く。 「メールで『大変だ』って言うから、俺、かみさんが新品タイアでこけたのかと思いましたよ」 「なんだAGLA、うれしそうに。おめ、どんだけ俺を転ばしたいんだよ。つーかGO!!!君、笑いすぎ」 「きゃはは、隊長はハラ黒ですからね……痛っ! なんで蹴るんすか、隊長!」 「なっこがイチバン近いから。って、俺はハラ黒じゃないですよ。ね、Nさん」 「う〜ん……最初は普通の人だと思ったんだけど、どうかなぁ……」 「ちょっと、Nさんまで! ひどい!」 このあとなっこ、隊長とAGLAに「おめーのせいじゃねーか」といじめられて軽く凹んだり、Nに「いや、GO!!!君とAGLA君の言ってる方がおかしいから」と援護射撃を貰ってケタケタ笑ったり、酔っ払ってぽわーんとなってたり、クルクルと表情 が変わってゆく 。なんとも忙しく、微笑ましい。 と、彼女の酔った友達から電話が入る。どうやら、「呑んでるから出て来い」的な話のようだ。 「かみさん、あたしが柏に居ることを証明してやってください」と言うオーダに電話を受け取り、「なっこの恋の奴隷一号です。二号から四号までいます」言うと、ベロベロに酔っ払ったお嬢様、「二号に代わって」とおっしゃられる。すかさず隊長に渡すが、隊長はそのままAGLAに電話を渡す。 すると渡されたAGLAが、まるで長年のダチのように 「あ、もしもし、二号だけど。なに、どしたん? なんかあった?」 周りで聞いてたみんなは、思わず大爆笑。 俺は笑いながら、N、GO!!!君、AGLA、なっこの姿を均等に眺め、こんな楽しいヤツラに囲まれて楽しく呑んでいられる幸せを 、神様ではなくこいつら自身に、心の底から感謝した。そして、なみなみと注がれた焼酎の杯をくいっと干したところで。 本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は、無事(?)に完全終了。 80回アニバーサリーにふさわしいエピソードを締めくくった。
みんな、安全運転を心がけようぜ! レッツ、セーフティライド!
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