The 81st big machine club

2009.06.07 第81回 でっかいもん倶楽部 in 日塩〜霧降

―俺たちの行方(ゆくえ)―

 

さて、久しぶりにマルゾーと走る。しかも、ケーロク同士でだ。

楽しみだなぁとテンション上げつつも、せっかくだからと早寝して体調を万全に整える。翌朝、目覚ましが鳴る前に目を覚まし、ジーパンの下にプロテクタをつけ、上は迷ったけど革ジャンで行くことにした。マルと走るとアツくなってコケるときがあるから なんだが、じゃ何で迷ったかってーとアレだ。

今日の気温が30度ちかくなる予報だからだ。

んでもコケて怪我するよりは汗の方がマシだろうと、準備をしていると携帯にメール。Caruma君からで「案内人が寝坊のため、遅れます」とのこと。「案内人? だれだ?」と思ったが詮索する時間もないし、Caruma君が連れてくるならどうせ面白いヤツだろう。それより、急いで出なくちゃ。

つわけで9時前ころ、ケーロクをまたいで走り出す。

 

柏インターから常磐、外環、東北道とつないで、10時前ころに上河内SAに到着。

そのまま給油して、単車置き場にケーロクを持ってくると、さすがに天気のいい日曜日。単車置き場は一杯だ。適当に止めてタバコを取り出し、一服しつつ携帯をチェックすると、Caruma君からメールが来ていた。

「こっちは佐野に着きました。あかん……眠い。そして無理やり誘ったなっこは四時寝w」

ぎゃははは! 案内人ってなっこかよ。アイツもたいがい、付き合いがいいなぁ。

と笑いながらメールを返し、さて、マルゾーでも探そうかと思っていると、ケーロクの横にするっと停まるYZF-R6があった。お? とそちらを見ると乗り手のヘルメットに見覚えがある。 すぐに メットを脱いだ、その乗り手の笑顔を見た瞬間、俺は笑いながら叫んでいた。

「ちょ、AGLA! まったりツーリング中か……じゃねーよ。なんだこのR6? 買ったの?」

「はい、増車です。今日は慣らし運転なんですよ」

「おめ、だからそっち参加して、こっちに顔出さなかったんだな」

「当たり前じゃないですか。絶対いじめられますもん。かみさん、みんなに黙っててくださいね?」

隊長にサプライズでもかますんだろうと納得してAGLAにうなずいていると、缶コーヒーを飲みながら近づいてくる男がいる。もちろん、俺の朋友マルゾーだ。AGLAの顔とR6を見てびっくりしてから、「一緒に走ろうよー! ワインディング三昧で楽しいよー」と下心見え見えの誘惑をする。

慣らし中のAGLAをいじめようというのだろう。

ま、確かにそれ魅力。

 

しばらくダベって、AGLAに「んじゃな」と挨拶すると、俺とマルは並んで東北道を走り出す。

そんなにぶっ飛ばさないで高速を走り、矢板で降りて県道30号を北上。途中で県道58号に折れてしばらく走るうち、道が登りになって曲がり始めた。すると、マルゾーが四点を出して停ま る。そこで一服しながら携帯を取り出し、ぁゃ。ちゃんとCaruma君にメール。

しばらくして、ぁゃ。ちゃんから返事が来た。

デッカイR1の兄ちゃんがいるぉ!」

ぎゃはははっ! それ、のりさんじゃねーか!

俺は大笑いしながら、マルゾーに「のりさんが来てるらしい」と伝える。

それを聞いてマルゾーも、ニヤっと笑った。

 

一服したら走り出そうつわけで、今回の峠三昧コース、最初のワインディングの始まりだ。

ココは足慣らし、スカスカで言えば長尾峠みたいなもんだ。せまっ苦しいところも似てるが、問題なのはその狭さが長尾ごときではなく、むしろ酷道レヴェルであるつーこと。幅員はすれ違うのがしんどいほど狭く、路面はところどころ濡れている上に、砂、砂利、落ち葉のコラボレーション。

俺はまだしも、マルゾーはこういうところが嫌いなので、早々と先頭を譲りくさる。

なのでイッパツここで引き離してやろうと、ちょこっと気合を入れて走り出したのだが、どうやら俺は大きな勘違いをしていた。こないだココが楽しかったのは、ブラバのケツを突っつき放題に突っつけたからであり、決して道そのものが楽しかったわけじゃないのだ。

そうそう。それで思い出した。

最近、間違った認識をされているようだが、俺も、じゅんも、フラ公にしたって別に「せまっ苦しいとこがイチバン好き」ってわけじゃないぞ? せまっ苦しい荒れたタフな峠道は「嫌いじゃない」だけで、どうせ走るなら広くて走りやすい、対向車の心配のない道の方が好きに決まってる。

つわけで、マルゾーが見えなくなったあとは、軽く苦行チックにひとり旅。

 

それでも何とかかんとか県道58号をやっつけて、日塩もみじラインの入り口にたどり着く。

さて、足慣らしも終わったことだし、ココからはイッパツ、気合入れていこうぜマルちゃん。

 

うん、イチミリの気合も感じられないね。

 

休憩と連絡をしたら、走り出そう。

つわけで、さっきのせまっ苦しい県道58号よりはずっと走りやすい、日塩もみじラインをすっ飛ばし始めた。そしてマルの後ろを走りながら、虎視眈々とパッシングの機会を狙うかみさん39歳。さっき走ったとき、「ニョホッ! マルゾーのヤツ、まだ乗れてないザマス」と気づいてたからだ。

 気分的には、こんな感じ。

しばらくマルゾーについて走ると、やはり本調子じゃないようだ。コーナリングはともかく、立ち上がりとコーナーコーナーのツナギが若干もたついてることに気づく。何度か 寄せてタイミングを計ったあとの、右コーナーのツッコミ。インベタで一気にマルの右ケツに寄せ、立ち上がりで並ぶ。

そのままエンジンを引っ張って前に出ると、次の左コーナーへ外から飛び込んだ。

直線のたびにミラーを確認してみれば、ちょっとづつマルが離れていくのがわかる。「やっべぇ!もんすげ気持ちいいよマルちゃん! 君は今まで俺と走るとき、こんな気持ちだったんだね?」 などとメットの中でわめきながら、ケタケタ笑っちゃうくらい、ご機嫌のかみさん。

いくつかコーナーを抜けたところでマルを消すのに成功した。

それでも気を抜けば追いつかれるだろうから、アドバンテージを稼ぐことに専念する。

天気がいいからだろう、クルマやツーリングライダーが多くて抜くのに手間がかかるが、それでもできる限りアグレッシブに攻め続ける。途中、下りで二回ほどケツが滑った。上体が突っ込みすぎてトラクション不足だったのもあるだろうが、パワーワンと比べると2CTは滑るね、やっぱ。

リアタイアの空気圧が、少し高めだったせいもあるかも……と思いたい(いいえ、ウデです)。

 

結局、全線ほぼフルアタックで走りきり、料金を払って日塩を降りる。

降りたところでマルを待ちつつ、ぁゃ。ちゃんやCaruma君に連絡を入れる。

と、ぁゃ。ちゃんから電話。俺はマルを引き離したご機嫌テンションで電話に出る。

「もしもーし! 今ね、日塩の出口だよー」

「わかりましたー。かみさんあのね、こっちはずいぶん集まってるよ」

どうやら、Caruma君となっこも到着したようだ。「それじゃぁ、こちらもマルが来次第、とっとと霧降に向かわなくちゃ」と思いつつマルを待つのだが、そのマルゾーが待てど暮らせどやってこない。かなり待ってから、「いくらなんでも、コレは遅くねーか?」と、ステキな想像が鎌首をもたげる。

「ヤロウ、まさかコケたか?」

電話をしてみると出ない。コケたとして、電話に出れないほどのひどい状態だと、さすがにちとまずいなと思っていると、しばらくしてマルゾーから電話。「かみ、おめ、どこにいる? 走りきっちゃったぞ?」「俺もだよ。出口から少し先に行ったところで待ってる」「あん、わかった」

つわけで、ようやくマルゾーがやってきた。かみさん、ニヤニヤ笑いながら。

「あんだ、コケたんけ?」

「バカ、ヒト助けだ」

すっ転んガードレールにハマってるヒトがいて、それを助けてたんだそうだ。

なんだツマラん。

 

コケてないマルに用はないので、さっさと霧降に向かって走り出す。

途中で強い風にあおられたりしながらも、俺が前なのに珍しく道を間違えないで霧降高原に向かう県道に乗れた。んで、しばらく走っていたら、山に差し掛かったあたりで、対向の単車が手を振る。

「お、アレはぁゃ。ちゃんと、のりさんだな」

停まってモタモタUターンしていると、先にUターンし終えてのりさんが戻ってきた。んでちょこっと話し、なっことCaruma君は霧降の牧場で待ってるらしいので、もう一回Uターン。三台で牧場に向かう。さっき居たはずのぁゃ。ちゃんが戻ってこないのは、きっと「せっかくだから走って」んだろう。

霧降の牧場に到着し、お久しぶりのご挨拶。と、Caruma君が半笑いで

「ん? お久しぶりだっけ? かみさん?」

「む、そう言えば、つい最近、会った気がする」

「いやいや、僕はお久しぶりですよ〜」

のりさんのセリフにCaruma君とふたり笑いつつ、バカみたいに晴れ上がった空の下でダベリング。

「うわ、それにしても今日は単車が多いなぁ」

「かみさん、あっちの方がすごいですよ」

のりさんとCaruma君にそう言われて、なになに? と見に行ってみると

こりゃまた、なんかのイベントみたいだね。なんかのつーか旧車会の。

 

戻ってきてしゃべりつつなっこを見て、なんとなくおかしくなってきちゃって、笑いながら指摘した。

「つーかよ、なっこ」

「はい?」

「おめ、ホントいつでも居るなぁ」

「きゃははははっ!」

バカ話して笑っていると、

ひとっ走りしてきた、ぁゃ。ちゃんが登場。

俺やマルと同じケーロク乗りのぁゃ。ちゃん。今日はショップに自分のマシンをあずけて、例のリコール対策をしているらしいのだが、その間に借りた代車ってのが、めっきパーツきらきらのニュースクール系カスタムを施されたケーロクだってんだから、この子もたいがいだ。

顔が映りそうなフロントフェンダー。

 

右二本出しマフラーにウェイヴディスク、エンジンにもめっきがかかってる。

俺も一時期、「やろうかな」と思ってたカスタムだけに、思いっきりガン見させてもらったのだが、コレの是非はともかく『俺が』って条件であれば、やらなくてよかった。ちょっと触っても指紋がついちゃうカスタムなんぞ、百回生まれ変わっても俺には向かないだろう。

つーか高い外装パーツ入れても、俺、コケるしね。ほっとけ。

 

宇都宮でも30度あったらしい、クソ天気の中。

見慣れた顔や久しぶりの連中と、単車を前にバカ話。俺の人生において最重要と言ってもいい位置を占める、最高にステキな時間だ。名物のソフトクリームを食べながら、ちょっと飛んできたトンボから、ぁゃ。ちゃんの借りてきた単車まで、バカ話はいつまでも続く。

と。

やってきたツーリングライダーの一団に視線を向けた瞬間、俺は思わずニヤリとしてしまった。

集団の中に居るひとりのそばまで歩いていくと、そっと近寄って小さな声で話しかける。

「おい、なんでこっち来てんだよ」

「しょうがないじゃないですか」

すると、俺の挙動に気づいた何人かが、声を上げた。

「あーっ! AGLAっ!」

せっかくR6の増車を内緒にしてたのに、速攻でバレるかわいそうなAGLA。

「ちょ、なんだよAGLA。なにそのライトな格好」

「つーかなにAGLA、なんでR6?」

「あ、ノーマルフェンダーなのにナンバーがカチあがる!」

「なんて残念な仕様だ!」

わらわらと集まってきたみんなに囲まれて、あっという間に袋叩きにされるAGLA。苦笑しながらイイワケをするのだが、エンジンのかかっちゃったワルノリ軍団は、これっぱかしも聞く耳を持たずにひたすらイジメまくる。一緒に来たのんびりツーリング(?)の人たちも、苦笑していた。

 

やっと開放されたAGLAが、苦笑しながら姿を消しても、バカ話は終わらない。

そんな中、マルと俺は、ひたすらワインディングを走った疲労だろうか、はたまたバカみたいな気温にやられたのだろうか、だいぶんテンションが下がってきていた。他のみんなが、「このまま霧降を下って飯を食って帰る」と聞いたのも、その要因のひとつかもしれない。

ま、「これから赤城まで走ろう」とか言ってるバカに付き合う方がおかしいって話もあるが。

ぁゃ。ちゃんが「そろそろ」と立ち上がったところで、俺とマルの『ワインディングチーム』と、ぁゃ。ちゃん、のりさん、Caruma君、なっこの『メシ喰って帰るぜチーム』に分かれ、牧場の出口で軽く挨拶を交わした後、俺とマルは霧降高原を走り出した。

 

霧降は、マルの庭みたいなもんだ。

ブラバとケーナナの時でさえ、ここではついていくのに必死だった。赤城あたりとならんで、マルのホームコースみたいなもんだろう。だが、ケーロクに乗り換えてから日が浅いマルちゃん、やはりコントロールに四苦八苦しているようで、ここでも突っついて遊ぶことができた。

下っていったん街中に出、給油を済ませる。

「さて、かみよぉ。どこに行くべか?」

「多少つまんなくてもいいから、混んでないワインディング」

「んじゃ、とりあえず足尾の方に行ってみんべ」

つわけで走り出したのだが、とにかく車が多くて、だいぶんヤな感じ。

120号沿いのコンビニで、休憩しながら行く先の算段をする。

 

マルちゃんも、だいぶんお疲れ気味だ。

それでもケーロクの乗り方や挙動、それに「おまえ、どうやってる?」「おまえ、こう言う事ない?」と、同じ単車に乗るもの同士だからこそできる会話を充分に楽しんだ。昔は俺がV-MAXだのクルーザに乗り、マルはニンジャ。そのあとはハヤブサ、ケーナナ、新ブサ対ブラバだった。

それが今回、20年の付き合いで初めて、車種から年式までまったく同じ単車なのだ。

なんだか、やけに嬉しい。

「R1000って速いんだけどよ。軽すぎて怖いつーか、挙動がシビアすぎて、なかなか意のままにならないな。メガスポの方が挙動がまったりしてて、操りやすい気がする。おめーが ケーナナのあと、すぐに新型ハヤブサ買ったわけがわかったよ。俺もハヤブサ行くかなぁ」

「バーカ、そんで結局ケーロク乗ってるんだから、メガスポじゃダメなんだよ」

無論、ハヤブサが悪いとかそういった話じゃない。俺とマルってのは(単車に関しては)生き物としての構成がほとんど同じだから、マルが今のままのイキオイでハヤブサなりブラバを買いなおしても、間違いなく俺と同じ轍を踏むに決まってる、つー話をしてるのだ。

この件に関しちゃ、ある意味、俺が先人だからね。

 

停まってるだけで汗をかくほど、バカみたいに暑い。その上、道は限りなく観光渋滞。

つわけで当初の予定である、いろは坂〜金精峠〜赤城山プランを却下して、おとなしく足尾から裏道林道チックな県道を走ろうと話が決まった。最初の58号でアレだけクソせまい林道みたいな峠を走ってるのに、まだそんなトコ走ろうって言うんだから、ま、モノズキっちゃモノズキだ。

それでも、混んでる観光地の峠よりはマシだろうと、一服したら走り出す。

国道122号を左に折れて、県道15号鹿沼足尾線に入ると、道が最初に走った県道58号のように、うねうね節操なく曲がり始めた。勾配のきついUターンチックな林道は、『 狭くて対向車の来るいろは坂』と言った体(てい)で、正直、とても走りやすいとはいえない。

ブラインドの先に濡れた落ち葉の積もってるトコがあったり、気が抜けない上に狭い。しかも、意外と対向が来るので、精神的に削られる。マルゾーはとっくの昔に俺に道を譲って、のんびり走行モードに切り替わっているから、ほとんどソロツーリングだ。

それでも、時々顔を出す広い場所を軽く攻めたりしながら、ようやく道の広い場所へ。

一服しながらマルを待つ。

程なくやってきたマルとしばらくダベっていると、「かみ、単車かえれ」言うので、

せっかくだから交換して乗ってみることにした。

俺のはX-TRE入ってるし、パッドもメタリカなので、せっかくだからその違いを感じ取ってやろう。

そう思って走り出してみると、まず感じたのがサスの硬さ。「そうそう、そうだった。ノーマルセットって硬いんだよな」と改めてサスセッティングの違いを感じる。マルが俺のケーロクにまたがった瞬間、「お、やっけーな。よく動く」ともらしてた理由がよくわかる。

そっからブレーキングしてみると、効かないわけじゃないが手ごたえが唐突だ。ガツンと効く感じで、コントロール性はやっぱりメタリカに軍配が上がるか。立ち上がり、トラクションを意識してアクセルを開けてゆくと、踏ん張ると言うより硬い感じで、もちっと圧側減衰を抜きたい。

総じて、俺のセットは上手くいってると言っていいだろう。もちろん、俺限定で。

 

X-TREの恩恵は、ハヤブサやケーナナほど顕著ではない気がする。

狭い峠だから高回転を使いきれてないせいだろうが、一速で立ち上がってゆく時に、俺のよりもマイルドと言うか、怖さがない気がする。でも、遅くはないからコレは好みの問題だろう。サーキットユースならいざ知らず、公道で俺レヴェルの腕なら、劇的に違いが出るってほどでもなさそう。

タイアの違いも、けっこう感じた。

とは言え2CTと無印の差と言うよりは、扁平率50と55の差の方が顕著だったかな。俺のケーロクに比べるとマルロク(マルのK6)はバンキングが穏やかと言うか、しっとりしてる。だらっと長く寝かせるような時も、俺のケーロクの方が比較的自由度が高いかな。

もっとも、俺はいまやすっかり55信者なので、あんまりアテにはならないけど。

 

マルゾーと遊びながら走り、栃木インター手前のコンビニに入って最後の休憩。

マルが食い物を買いに行ってる間に、タイアをチェックしてみると。

当たり前なんだろうが、2CTはサイドの減りが早い。

マルのパイロットパワー無印と比較してみると、赤線枠で囲った部分が明らかに減ってる。2CTは、パワーワンに比べれば、減り方や挙動が知ってるミシュランっぽいけれど、バンク中の感じは無印よりパワーワン寄りに感じた。総じて今のところ、rakの感想ほどネガは感じてない。

もっともこれは、単純にスピードレンジが低いからだろうね。

 

コンビニで、単車の横に座り込み。

長い付き合いの相棒、俺の半身と思っているオトコと、ケーロクを眺めて話し込む。

「昔さぁ、V-MAXとニンジャでやり合ってたころのこと、覚えてるか? あのころ、よく言ってたよな。『これ以上の速度域でやるようになったら、命がけだな』って。今、まさにその領域に入ってきたんだなぁって、つい、思い出しちゃったよ」

「あのころは、まだ平和だったな。俺ぁもう、おっかねーからゆっくり乗るよ」

「でもよ、マルゾー。考えてみれば俺は、おまえがいたから、スピードをあきらめないで走り続けてきたんだ。VTXに乗り換えた時も、ロケットIIIの時も、109Rのときも。んで、結局、お前の棲んでる世界にハヤブサで戻ってきたんだ。だからさ、今度は俺の番だと思うんだよ」

俺の言葉に、マルは肩をすくめて苦笑した。

 

そう、今度は俺の番なのだ。

「ここまで単車のパワーをもてあましたのは、はじめてだ」と、上手く操れなくて凹み気味のマルのケツを叩いてやるのだ。他の人間なら、俺は決して余計なお世話はしない。ゆっくり乗ると言うのなら、ゆっくり乗って付き合うか、それが嫌なら一緒に走らない。

だが、マルだけは別だ。

もし、ゆっくり乗ったとしても、結局、また速く走りたいと思うようになるのが、わかっているから。

無論、いつかは身体なり年齢、または他のことが原因で、ゆっくり走るようになるのだろう。速く走ることに何の未練も感じずに、ゆっくり『だけ』で単車ライフを送れるようになるんだろう。お互い速くない単車に乗って、心の底から楽しく走れるようになるだろう。

でも。

少なくとも、今はまだ、その時じゃない。

俺たちは結局、一度も言葉にしなかったが、それでもお互いに感じていた。

もっともっと、速く走ることができるようになる、と言うこと。

そして、俺たちはそこを目指すのだ、と言うことを。

 

なぁ、マルちゃん。

道はまだまだ遠いけど。俺たちには無限に時間があるわけじゃないけれど。

でも、もう少しの間だけ、

 

バカやろうぜ。

 

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