The 82nd big machine club
2009.07.05 第82回 でっかいもん倶楽部 in 佐野 ―シャットダウン―
前日の宴会で、佐野に9時集合と決まった。 7時半ころ起きだすと、すぐにAGLAも目を覚まし、バタバタ準備してたら銀星も目を覚ました。mioちゃんはすでに姿を消していたし、GO!!!君は飲まないので、たいてい夜のうちに帰ってしまう から、これでフルメンバー。俺とAGLA、銀星の三人は準備して階下に降り、愛機に火を入れる。
手前がAGLAとR6。奥が銀星とヤツの新しいマシン、GSX-R1000<K2>だ。
AGLAがガソリンを入れるために途中のスタンドへ入り、俺は銀と一緒に16号を走る。とは言え銀はまだ乗りたてだし、すり抜けも得意じゃないから、しばらく走るとミラーから消えていた。なのでそのまま自分のペースで柏インターに乗り、ゲートをくぐったところでケーロクを停める。
ETCを入れてからこっち、ゲートでの写真は久しぶりだね。 やがてやってきた銀と一緒にAGLAを待ち、ヤツのK7が来たところで三台並んで走り出す。常磐を気持ちよくすっ飛ばし、三郷のゲートをくぐってしばらくは、銀を待ちながらのんびり走る。だが、 銀が追いつかないうちに、三郷ジャンクションが見えてきたので、銀は現地集合に決定。
AGLAとふたりで走るのだが、そこで思い出したかみさん39歳。 「あ、そうか。AGLAは600シーシーだっけ。何キロくらいで走ればいいかなぁ」 なんて思いつつ、とりあえず外環を200スピード(1スピード=0.5km/h)くらいで抜けてると、もちろんAGLAのライトはビタイチ消えない。むしろ近づいてくる。も少し速度を上げ ながら東北道に入ったあたりで、そこそこすっ飛ばし始めた。俺が前でクルマを縫いながら遊んでると。 バシュン! イかれた。 「ぎゃははははっ! やっべ、600速ぇじゃんよ!」 相変わらずのAGLAの走りに大笑いしながら、俺もアクセルを開ける。1000同士なら消されるところだが、さすがに600だと楽についていけるので、久しぶりにAGLAと長いことからみながら走ることができた。うん、このくらいのハンデでちょうどいいよ、ホント。
250を越えると離れるライトに、ミラーを覗きながら俺はクスリと笑う。 俺のケーロクは55タイアを履いて外周が大きいのでメータが下方修正されてるはず。つーことは、AGLAの上限は向こうのメータ読みで250くらいだろうか。 さすがにバカ開けすれば引き離せるが、それでもちょっとアクセルを抜くと、すぐに追いすがってくるのはさすがだ。 すり抜けもよどみなく、ライトな服装とのギャップにまた笑ってしまう。 AGLAと絡みながら、右に左に縫い続けるハイラインクルーズ。 俺はもう、最高にご機嫌だった。
そんな調子だから、佐野SAまではあっという間だ。 天気のいい日曜日らしく、ドライブ客とツーリングライダーでごった返すSAに単車を停め。
ニッコニコでAGLAを振り返ると、ヤツは苦笑いしながら 「かみさん、車載工具もってます?」 「あん? どした?」 「シフトが……」 言いながらAGLAの指差す先を見ると。
ちょ、シフトペダルっ! 締め付けが甘かったようで、シフトペダルのボルトが振動で抜けてしまっている。 「あんだよ、買ったばっかりだろ? こりゃあ、バイク屋のせいか?」 「あ、悪いのはたぶん俺です」 どうやら自業自得らしい。
ETCを取り付けたせいで車載工具のスペースがなくて、俺もAGLAも残念ながら工具を載せていなかった。なので、とりあえず銀が来るのを待つ。ところが その銀が一向にやって来ない。「ありゃ、ヤロウ帰っちゃったかなぁ」なんて言ってたら、ようやく銀がやってきた。 「銀、AGLAが大変なことになった」 と笑いながら車載工具の有無を確認すると、どうやら銀のK2には入ってた。 AGLAと銀で応急処置をしてる間に、俺はトイレに行きながらマルに電話を入れる。 ぷるるるガチャ 「おう、かみ。今、佐野の出口に着いたぞ。おめ、どこにいるんだ?」 「出口ぃ? いや、俺らSAまで来ちゃったぞ?」 てめぇは相変わらず人の話を聞いてねぇとかなんとか怒られながら、マルゾーに佐野SAまで来るように言って電話を切り、便器の上でしばし格闘。しばしつーか長いこと格闘。んでようやく戦い済んで出てくると、すでにマルゾーが到着していた。俺、10分以上戦ってたのか。
全員そろったところで、 マルゾーをブレーンに対策を練る。 バイク屋はたいてい開店時間が遅いので、とりあえずホームセンターで応急処置をしようと言うことになった。その手の作業はマルゾーの最も得意とする分野だ。九時半ころにはホームセンターが開くだろうつーんで、それまでしばらく、バカ話をして時間をつぶす。
俺「マルゾー! マルゾー! 俺、今日はAGLAと一緒に走れたぞ!」 マ「うむ、俺らには、このくらいのハンデを貰ってちょうどいいな」 A「いやぁ、600おもしろいけど、1000と走るのはしんどいですよー」 マ「ところで、なんだこのバイク」 銀「あ、ボクのです」 マ「ぎゃははははっ! バカだねぇ。でも、この辺のバイクはやっぱカッコいいな」 俺「おめ、今ならこっち乗ったほうが速ぇんじゃねーか?」 マ「がはは、うっせー!」
なんつってるうちに時間になったので、栃木インター目指して走り出す。 給油して後から出た俺が、100で流すAGLAに追いつき、そこから一緒にちょろっと走ったところで栃木インター出口。高速を降りて下道を流し、ホームセンターまで五分くらいか。 そして……ホームセンターの駐車場にバイクを停めたあたりから、俺の身体に異変が起こり始める。 「ハ、ハラが痛てぇ……」 前の晩、酔い覚めで牛乳だのジュースだのをバカ飲みした上に、新しいメッシュジャケットでAGLAとひたすらすっ飛ばし、思いっきり冷やしたのが敗因だったのだろうと思う。他の連中がAGLAのバイクを直す材料を探す 間に、最初に感じた違和感は脂汗を流すほどの痛みに変わる。
ステンパイプと、鉄ノコと、なんかのテープ。 材料がそろったところで、マルゾーの工作教室が始まった。 切り飛ばした内径8mmのステンパイプにテープを巻いて外径を調節し、カラーとしてシフトペダルの穴に通したら、8mmのボルトで留める。ホームセンターボルトだから アタマが13mmで、車載に13のレンチが入ってなかったため、あわててレンチを買いに行ったりと、みなでバタバタ修理してる間。 俺は腹を抱えて脂汗を流しつつ、痛みが去るのをひたすら待っていた。
マルの作ったパーツを使って、シフトペダルを修理するAGLA。 なんだかんだ、かなりしっかりと直ってしまったようだ。さすがにマルゾー、この手の作業は強い。 そしてこれが、この日俺の撮った最後の写真となる。
このあとの俺はもう、ただひたすら痛みと格闘、いや耐えるだけだった。 ホームセンターで買った二枚セットのタオルの一枚を腹に巻いて、もう一枚で脂汗をぬぐいながら、しばらく駐車場でうずくまっていたが、いつまでたっても改善が見られない。マルゾーの「俺の実家で暖かいもんでも飲んで休め」の言葉に、よろよろとケーロクを跨いで走り出す。 普段なら楽しいはずの曲った道を、タオルを巻いたハラに風を当てないようにカウルにもぐりこんで、よたよたと抜ける。そのうち、マルゾーが信号待ちで「コンビニに寄って、暖かいもんでも飲め」と提案したので、 蒼い顔のままうなずいてコンビニまでひた走る。 やがてコンビニにたどり着き、ホットドリンクを飲んでじーっとしていると、若干楽になった。 それでも、座ってるのがきつくなってきて、ついには横向きに転がってしまう。
転がった俺の額にダラダラとにじみ出た脂汗が、コンビニの駐車場のコンクリートに黒いシミを作る。打ち寄せる波のように、痛んだりちょっと楽になったりを繰り返す自分の腹 に向かって無言の罵声を浴びせながら、「うぅうぅ」とうめいて背中を丸める。そのあたりでようやくマルゾーが 「う〜ん、ちょっと可哀想な気がしてきた」 すんげぇ可哀想だっつの!
みんながダベる中、しばらく様子を見ながら唸っていたのだが、どうにも改善が見られない。 ついにあきらめた俺は、よろよろと立ち上がりながら「すまん。帰るわ」とつぶやいて、ケーロクのシートバッグをあけた。中からカッパを引っ張り出し、メッシュジャケットの上に着る。 とにかく風が当たって冷えると痛いうえに、カンカン照りにもかかわらず寒くなってきたのだ。 「このクソ暑いのにカッパ着るてんだから、ホントに具合悪いんだな」 マルのそんな冗談にも、切り返す余裕さえなく。 着膨れた俺がみんなに挨拶してケーロクを跨ぎ、じんわり走り出したところで。 本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は中途半端な時間にシャットダウン、強制終了。せっかくの晴れた日曜日、AGLAやマル、それに新しくR1000を買った銀まで来た、楽しいはずのツーリングを牛乳ごときでだいなしにしてしまった、反省点の多いツーリングだった。
ちなみにこの後、銀はバイトのために帰り、マルとAGLAは予定通り赤城山に行ってひとネタやらかしてきたらしいが、それはマルゾーのところででも。俺は、途中でZ系の連中に抜かれても、車種のわからない速そうな車に抜かれても、ひたすら120スピードでおとなしく柏まで帰った。 帰ってから、遊びに来たGO!!!君にからかわれつつ、 ハラにタオルを巻いて。 貴重な梅雨の晴れ間を、無為に過ごしましたとさ。 ちくしょー!
マルゾー、AGLA、銀。 せっかくのツーリングだったのに、ごめんね。 これから俺、ツーリングの前には牛乳飲まないことにするよ。
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