The 83rd big machine club

2009.09.13 第83回 でっかいもん倶楽部 in 那須

―水前寺の教え―

 

マルゾーと、久しぶりにサーキットを走ってきた。

ま、サーキットつっても那須モータースポーツランドつーミニサーキットなんだが、せっかくやせたのにリバウンドしてしまってツナギがキツキツのおっさんと、いい歳して単車で脚を折っときながら完全に骨がつく前に足を引きずりつつ「リハビリだー」とかほざいてるおっさんにはちょうどいいサイズ。

前日、原付で事故って首を痛めたGO!!!君が来てたので、とりあえず応急的に治療したりしながらも話が楽しくて呑んだくれてしまう。翌朝、軽い寝不足で起きたのが午前6時半。相変わらず単車に乗る休みの日は、何の苦労もしないで早起きできる小学生メンタリティだ。

ガサゴソ出発の準備をし、七時前ころケーロクを跨ぐ。

「いやー! ひっさしぶりだなぁっ!」

思わず叫びながら国道をすっ飛ばし、柏インターから常磐→外環→東北道へ。

遊んでくれる相手は居なかったけど、この時間でもすでに混雑していた。行楽ドライバーやツーリングライダーを縫いながら、160〜200スピード(1スピード=1/2キロ毎時)くらいで流す。それこそAGLAあらため『しんご』とでも走るならともかく、普段ひとりならこのくらいがイチバン楽だ。

 

約束より早めに佐野に到着し、タバコを吸いながらマルにメールを入れる。

すると、マルも10分ほどでやってきた。軽トラックに積まれたマルロク(マルのケーロク)の横のスペースに俺のケーロクを突っ込み、ロープと持参のタイダウンで固定したら出発だ。ぶんぶんうなりをあげつつ80〜100キロで快調に進む軽トラックのなかで、マルとバカ話をする。

「いやー久しぶりに走ると気持ちいいなぁ。マル、なんかこれから走ると思うとワクワクするな?」

「俺なんか荷台にバイクが積んであるだけでワクワクだよ」

「おぉ、ホントだ。なんかバイク積んでるだけで、ほかのバイクに抜かれても悔しくないのな?」

「そーいえばさ、こないだ城にツーリング行ってきたんだけどさ……」

久しぶりにマルと色んな話をしつつ、ゲラゲラとバカ笑い。

やけに楽しい。

「マルちゃん、マルちゃん、俺の今日の目標はね、『転ばない』だぜ!」

「あー頼むからそうしてくれ。柏まで運ぶなんて、ぜってーヤだからな」

などと前フリチックな会話を交わしていると、そのうちマルの様子がおかしくなってくる。

「あん? どーしたマルゾー?」

「う……うんこしたい」

「あんでさっきしとかねーんだよ」

「バッカおめ、マジでしてーんだぞ? ほら見ろ」

「ぎゃはははっ! トリハダ立ってるじゃねーか!」

「ちょ、おめ、写真なんか撮るンじゃねーよ!」

つわけで、途中のSAでトイレ休憩。

「つーかマルゾー! てめぇなに保安部品外して万全の体制で来てるんだよ!」

「あたりまえだ。俺の方が重たいからな。少しでも軽量化だ」

二十代のころのようにハシャギながら、軽トラに乗り込み、サーキットを目指す。

 

サーキットに到着。

左がズルッチョマルゾーのマルロク@保安部品取り外し済み。

 

車検を受けて、空気圧を調整し、走行券を買ったらあとは走るだけ。

 

ピットで出番を待つ、ケーロク二台。

 

ツナギが小さくて苦しいので、マルゾーはギリギリまでツナギを着ない。

 

開始十分前に、ようやくあきらめてツナギを着始めた。

 

やがて、走行時間がやって来る。

俺は意気揚々と走り出し、そして……ま、結論から言えば、たったヒトコト。

ひゃっほうガシャーン!

と言うわけで、ろくに走りもしないうち、走行不可となってしまった。

ま〜ったく、自分がイチミリも進歩しないオトコなんだなぁと言うことを思い知らされたよ。

 

それでは、コトの顛末を俺視点で語ろう。

一周目、マルの後ろに続いてバックストレートからコースイン。

そのままインベタですすみ、2コーナー立ち上がり、17Rあたりから普通に走り始める。ウォーミングアップしながらのんびりとツーリング状態。二周目もそのままマルのケツでのんびり走っていたのだが、三週目、後ろから来たマシンに気をとられて、ヘアピンでマルに突っ込みそうになる。

ま、『ガムテで養生したミラーは後ろが見える』ゆえの弊害ってやつだ(違います)。

俺に気づいたマルがインを開けてくれたので、そのまま前に出ると、今までよりちょっとだけペースを上げて走り出した。もちろんまだリーンウィズのまま、峠を楽しむかのように余裕を持って走る。四週目に入ってもそれは変わらない……つもりだったのだが、どうやら気がせいていたようだ。

焦りとまでは行かないけれど、リハビリっていう意識があって、気持ちが前に出すぎていたのかもしれない。四週目あたりから、ほほすべてのコーナーでステップをすり始める。rakの真似をして頭をイン側に入れ、コーナリングフォースを稼いでみたりするのだが、やはりステップをこする。

それじゃあ、そろそろ身体ごとインに入れてゆこうか。

 

五週目、ホームストレートから1コーナへアプローチ、この日初めて車体を膝に引っ掛けた。

おっと、ハングオフするとなると、今度は速度が足りないな。次の2コーナーつばめ返しでは、も少しツッコんでハングオフ。もっともココはすぐに17Rと15Rが控えてるので、 深く行くわけじゃない。15Rを抜けながら膝をこする。うん、もちっと開けられるな。覚えておこう。<太線重要>

左高速コーナーから右、そして左のヘアピン、 もいっちょ左、右、もいっちょ右の最終コーナを抜けてホームストレート。1コーナーから、さっきより突っ込みの速度を速くして右曲がり。バックストレートから右曲がりの2コーナーを抜けて、さぁ、今度は 20Rをさっきより速く立ち上がるぞ。

と、15Rでアクセルを開けた瞬間。

つーっとリアが滑って「あっ」と思った瞬間には、真横を向いた状態でタイアがグリップ。とたんに右を向いた車体がブンっとフレて、左側へすっ転ぶ。俺はそのまま投げ出され、眼下に横転するケーロクの姿を見ながら 宙を舞い、コースの真ん中を転がっていった。

 

ハイサイドなんていうのも恥ずかしい、タイアのウォーミングアップ不足とリアのトラクション不足だ。

気持ちが前に行き過ぎて、リアのトラクションへの意識が甘かったのだろう。コースに横たわったまましばらく動けない。とりあえず、右足をまたやっちゃってないか確認し、それから手足、身体を確認してるうちに感覚が戻ってきたので、ゆっくりと立ち上がる。

スタッフに返事をしながら、ケーロクを起こしてコースの外へ出し、車体の確認。

ステップが曲がっているが、エンジンはかかった。とりあえず走れそうなので、ぶっ飛んだシートカウルの一部など部品をスタッフに預けると、一速のまま残りのコースを走ってピットイン。ピットにいたマルや他の人に「すみません。申し訳ない」とわびてから、マシンの確認をする。

とりあえずイロイロとやられてるが、再起不能というわけじゃないので、ひと安心。

この段階では直して走る気満々だったのだが、他の部分はともかく、ステップホルダーがネジリ折れてしまったのが致命傷で、再スタートならず。残りの時間、マルや他の人が走ってるのを見ながら 、未練がましくケーロクをいじり、やがてあきらめた後は、ぷかぷかタバコをふかすだけだった。

 

こっちから見ると、イッコも問題ないんだけどなぁ……

 

やがてマルが一本目を終えて帰ってきた。

走り終わったマルとクソ暑い太陽の元で一服していると、駐車場にデカい単車が入ってくる。

「あれ? ロケットIIIじゃん……って、オトーさんじゃん」

俺がロケットIIIを降りたのと入れ違いくらいにロケットユーザーになった栃木のオトーさんが、ツーリングがてら遊びに来てくれたのだ。「アサイチの仕事が早く終わったんでね。栃木に住んでて那須のサーキットに来たことなかったし、せっかくだから 、かみさんたちの走るのを見に来たんですよ」

や、ホント申し訳ない。もうすでに飛んじゃいました。

つわけでマルとも面識のあるオトーさんを加えて、三人でダベる。が、マルは暑いのと思ったよりタイムが上がらないので元気がなかったし、俺はもちろん全身フルガッカリス。テンションが上がらす言葉も途切れがちになってしまう。せっかくきてもらったのに、おとーさんには悪いことをした。

 

やがて、昼ごろ、いちどオトーさんがどこかへ走りに行き、午後一時にマルが走り始める。

ブレーキの具合が気に入らないマルゾーは、思ったようにタイムが上がらず四苦八苦してる。

走りからも感じ取れるそれに苦笑しながら、他のライダーや単車も見学。ドカにのったヒトとファイアブレードに乗った人がマルより速かったかな。ハタで見てると、色んな違いがよくわかっておもしろい。走ってるときはちっともわかんないんだけどね。岡目八目とはよく言ったもんだ。

 

ドカに突かれるマルゾー。

 

そのうち体力が尽きたのだろう、終了時間より数分ほど早く、マルがあがってくる。

いつの間にか帰ってきて、しばらく見学していたオトーさんも一緒にピットでしばらく話し込んでから、オトーさんはせっかく買い込んで来たりんごをくれて(俺は食えないのでマルに)、ロケットIIIにまたがり帰っていった。オトーさん、クソ暑い中、わざわざありがとうございました。

俺らの方はまた喫煙ゾーンに行って、そこでちょっとダベる。

そのうち日差しが強くて休んでる気がしなくなってきたので、撤収の準備に取り掛かった。とは言え俺の方はもう、脚がすっかり言うことを聞かなくなっていたので、ほとんどマルにまかせっきりだったが。二台のケーロクを積み込む時に、ほんのちょっとだけ手伝ったくらい。

超、役立たず。

 

「冗談で言ってたら、ホントに柏に行く羽目になっちったなぁ。わりーねマルちゃん」

「あーよ、ホントに悪りぃよ。おめ結局、『転ばない』って目標、達成できてねーじゃんか」

「つーかさ、全然転ぶ気配なかったのに、一瞬で終わったのが悔しい」

「バカみてーにアクセルをカパカパ開けっからだ。おめ、このサーキットに持ってきた単車、全部すっ転がしてんじゃんか。SDRだろー、ハヤブサだろー、んで今回はケーロクか。ポコジャカポコジャカ転ぶんじゃねーよ。タイアあったまるまで俺の後ろ走ってればコケなかったのに」

「いけると思ったんだよー」

変な同情のない、マルらしい気遣いで気が楽になった俺は、軽トラの助手席で久しぶりにマルゾーと長く、しかもシラフで話をした。昔話やこれからの話、共通のダチの話、目の前で軽トラを追い抜かしてゆくツーリングらしき単車の話なんかをしつつ、ゲラゲラ笑いながら柏を目指す。

 

とは言え軽トラで柏までの道のりは、マルにとっても俺にとっても長かった。

運転してるマルは、自宅への距離にくわえて柏までの往復が150キロ増える。しかも柏周辺は混んでいるからなおさらかったるいだろう。そして俺はサーキットですっ転んだり、そのあと歩いたりした上に、軽トラの助手席に三時間座っていたら、柏についたころには立ってられなくなっていた。

痛みで力が入らないのだ。

マルにケーロクをおろしてもらい、シフトペダルの折れカスをネジってギヤを入れ、立ちゴケしそうになりながら何とか駐輪場に仕舞うころには、一歩一歩の歩みが、いちいち脳天にハンマーをくれるような激痛を伴うようになっていた。マルゾーにもう一回お礼を言って

「あんま礼を言われると、気持ち悪いし鬱陶しいからもう言うな」

と返されたところで、本日のCrazy Marmaladeでっかいもん倶楽部は、ココに終わりを告げる。

ちょっと自分の回復力を過信しすぎたせいで、ケーロクを壊し、マルにメンドーをかけ、だんだん楽になっていた脚の痛みまでも数週間前のレヴェルに戻ってしまった、自業自得にしても痛烈な一日だった。まさに三歩進んで二歩下がる、人生はワンツーパンチ。水前寺清子もビックリ。

 

結局、この夜は痛みに耐えかねて久しぶりに鎮痛剤を飲んで寝たり、翌日の今日はまるで九月初めのように、派手に足を引きずって仕事をするハメになってしまった。普段、 患者さんに「無理しないで治すときはしっかり治さなくちゃ遠回りになる」とか、どのクチが言ってるんだって話だ。

つーか本当に治るのが遅くなったよなぁ。

 

とりあえず、昨日の段階で安物バックステップとシートカウルの一部をオークションで落としてはみたのだが、仮に単車の方が直っても身体の方がどこまで回復するかわからないので、楽しみにしていた週末の琵琶湖〜和歌山行きは断念せざるを得ない可能性が出てきた。

またムラっちゃんと走れないってのが、悔しいやら申し訳ないやら。

まぁ、それも「リハビリだぜ」なんて言いながら無理をした自分のせいなので、誰に当たるわけにも行かないのだが、やはり悔しいことは悔しい。なのでもし、週末ロングツーリングに行けな いようなら、そこで浮いた分の金で、例の『激安カウル』でも買ってやろうかなとか画策したり。

みんな、わりと気になってはいるでしょ?

いや、出来ればこんなネタモノ買わずに、琵琶湖&龍神に行きたいんだけどね。

でも、あせったせいで今回、こんな結果になったことを考えると……ねぇ。

 

てなわけで、かみさん復活までには、まだ、もう少し時間がかかりそうだ。

 

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