The 85th big machine club

2009.11.15 第85回 でっかいもん倶楽部 in 東京

― Lunch Biking ―

 

「スーパーレーサーでランチしましょう」

つー話が持ち上がったので、朝10時ころケーロクをまたいで走り出す。最初はゆっくり行こうと思っていたのだが、しばらく走ってるうちに調子が出てきちゃって、そこそこのペースですっ飛ばし始めた。常磐道を抜けて首都高に入ると、ほどなく、黒いR1000が見える。

「お、しんごだ」

後ろに近寄っていくと、手振りで「前に行け」というので「ヤなこった」と首を振る、とても大人気ないかみさんもうすぐ40歳。久しぶりにしんごとランデブーしながら、途中で前に出たり、また譲ったりしつつ、昼間の首都高を抜けてゆく。つーかこの段階でわりと消耗気味だ。しんご速ぇや。

高速を降り、出口の信号で止まったところで、しんごがこっちを見ながら

「スパレサ、まだ開いてませんよ? 11時半からです」

「ぎゃはははっ、マジかよ」

「Rさんは『集合場所だから開いてなくてもいいんだよ』って言ってました」

つわけで、まだ思いっクソ準備中のスパレサへ到着すると、先にナリさんとCaruma君が来ていた。そのCaruma君は、俺らの格好を見るなり、「なんだよー! お食事会じゃねーの?」と口を尖らせている。本人はわりとラフでカジュアルなスタイルだ。

「いや、お食事会でしょ?」

「じゃなんでかみさん、そんなガッチリ着込んでるのよ」

てなかんじで笑いつつ、今度はナリさんに向かって

「ナリさん! 超ぉやせましたねぇ! 何キロ落としたんですか?」

「30キロくらいだよ」

出産でもしたんだろうか。

 

バカ話していると、ZX10RとCBRがやってくる。

スタイル的には、明らかに似たような人種っぽい。ZXの方は白人さんで、CBRは若い男の子。「もしかして、今日一緒に走るヒトかなぁ」と思いつつも、とりあえずは、久しぶりに会ったナリさんやCaruma君と、気持ちのいい晴天の元で話しこむ。

やがて、Rが新車のCBRでやってきた。

んで、思ったとおりZXとCBRは今日、一緒に走るRの友人だったので、ここで紹介してもらう。ZXの白人さん、AJさんはRのバイク友達だそうだ。日本語もちょっと話せた。CBRのNORI君もRのモバゲー友達だという若者だった。つわけで、自己紹介が終わったら、

給油して、芝浦へ。

 

超ぉ久しぶりのRの背中を見ながら、晴天のもとを走るのが、もんすご気持ちいい。

昼間の首都高は、当たり前だがとにかく明るくて道がよく見えるので、怖い思いをせずに、気持ちよく走ることができる。レインボーを渡って芝浦に入り、ここで待ち合わせしてると言う、もうひとりの人を待ちながら、缶コーヒーを飲みつつダベリング。

明るい芝浦は、てめぇで撮った写真を見ても、一瞬ドコだかわからなかったくらい、別顔。

 

缶コーヒーと間違えてコーヒーゼリーを買ってしまったら、コイツがとにかくもうクソの役にも立たなくて、なんぼ吸っても鬱陶しいくらい出てこない。なので、三口ほど飲んでゴミ箱に放り込んだ。自分で自分に勝手に騙された(いつものことです)。

 

バカ話をしながら、しばらく待ち合わせの人を待っていたのだが、なかなかやってこないので、「とりあえず走ろう」ということになる。道がよくわからないつーんで、(ま、俺もわかってないんだけど)AJさんとNORI君は首都高マップで勉強したあと、Caruma君の先導で走る。

んで俺は、Rやナリさん、しんごと一緒に走る段取りになった。

「おぉ、久しぶりだなぁ……怖いけどワクワクするぜ」

なんて思いながら、R、ナリさん、俺、しんごの順で走り出し、本線合流から最初の下り右コーナーでみんなのエンジン音が高まってきた瞬間、ゾクゾクっと背中に震えが奔った。「気持ちが引き締まるのはいいが、身体が固まっちゃダメだぞ」と自分を叱咤しつつ、右コーナーに飛び込む。

路面からのフィードバックやなんかはまだ希薄な感じだが、速度そのものの乗りは、思ったより悪くなかったと思う。ま、コレはひとえにケーロクの出来のよさなんだが。それでも久しぶりだから、とにかく、ケーロクの邪魔をしないことと、出来るだけリーンウィズで走ることを意識する。

一応、リハビリだしね。

 

Rとナリさんが余裕ですり抜けていく後ろを、何とかカンとかくっついて走る。

流れるように、ひらめくように走ってゆく、ふたりの背中を眺めながら、「ちぇ、余裕だなぁ」と軽く悔しがりつつ、なるべく肩の力を抜いてすっ飛ばす。たまにミラーを見ると、しんごのライトがぴたりとついてきている。エンジンはうなり、速度は乗っているのに、気を抜くと離される。

シビレるなぁ。

ヘルメットの中でニヤニヤし、ニヤついてる間にちょっと離され、あわててアクセルを開ける。ふたりがアクセルを抜いてくれるのと、時々やむをえずクルマに詰まってくれるおかげで、なんとか姿を見失わないで走れるが、それでも俺の方はいっぱいいっぱいだ。

ちぇ、後ろのしんごも余裕で遊んでら。もう、ミラー見るのはやめたっ!

辰巳を抜けて9号に入ると、アベレージがぐんと上がる。いや、R的にはまだ全然だろうが、こっちはもうメーター見る余裕もない。あとで聞いたら俺のトップが二百七十スピードくらいだそうだから、すり抜けながらだと俺としてはマックス、他の連中にはまだまだってトコロだろう。

前で先導してくれるから行けるけど、ひとりでこの速度から突っ込むのはきっとムリだ。

 

もういちど辰巳まで来たところで、Rは行ってしまったがナリさんは辰巳に入った。

俺もヘロヘロだったので、コレ幸いと後ろに続く。しんごも続いて入ってきて、三台で辰巳の駐車場に単車を停めた。ヘルメットを脱ぎ、お互い顔を見合わせて、ニヤリ。楽しかった、怖かった、シビれた、疲れた、色んな感情が混じって複雑な、でも同じ時間を共有した笑いだ。

この笑顔があるから、「ああ、来てよかった」と思えるのだ。

ここでナリさんやしんごとはもちろん、たまたまやって来ていたR750に乗るナリさんの友人も交えて、ナリさんの変態っぷりや、R1000談義に花を咲かせる。ウエイブローター、話を聞いてみたらかなり面白そうだ。もっとも、俺の腕じゃあ、今のところは要らなそうだけど。

しばらく話しこんでいたら、しんごの携帯にRから連絡が入る。

芝浦集合とのコトで、それじゃあ走り出そうかと準備していると、しんごが休憩場所に居るヒトに向かって、すたすたと近づいてゆく。なんだろうと思っていたら「ハヤブサの方ですか? Rさんのお友達です?」と聞いていたので、「なるほど、このヒトが待ち合わせの人か」と納得。

彼も一緒に走り出す段取りになって、疲労困憊の俺はヘタレながら、

「しんごー! 俺、もうすっからかんだからな? マジで飛ばさないぞ?」

なんつってると、しんご、ニッコリ笑った後。

「あーはい、わかりましたー」

死ぬほど心のこもってない返事が返って来て。

しんご、ナリさん、俺、ハヤブサさんの順で辰巳を出て、走り出した。

 

しんごはときどき、直線でハヤブサさんを待っているのだが、彼のライトが見えてくるとすっ飛ばし、またしばらく行って直線で待つと言うのを繰り返してるうちに、ハヤブサさんの姿が見えなくなった。なので「ゆっくり走って待つのかなー」と思っていたら、無情にも高まるエグゾースト・ノート。

しんごの鬼っぷりに、俺はメットの中で苦笑する。

ま、そんなコト言いながら、俺もナリさんも待ってないんだから、結局は同罪なんだけどね。

それはともかく、俺がスッカラカンなのは本当のことで、やがて、ふたりにじわじわと離されはじめた。「くそ、厳しいなぁ」と思いながら、なけなしの体力をかき集めていると、突然、リアブレーキがスカッ。リアをナメすぎてフェードしたようだ。とたんに気が抜けて、一気に置いてけぼりにされる。

この癖は、何とか矯正しないとなぁ。

「う〜む、やっぱ俺は遅くなったようだ」

としょぼくれながら芝浦へ入ってゆくと、RやCaruma君、AJさんやNORI君のほかに、ものすげぇ見慣れた顔が当たり前のように笑っていた。途中合流したなっこだ。肩を落とした野良犬かみさんはトボトボと駐車場にケーロクを停める。すると、なっこが笑いながら

「かみさん、見てくださいよ。RさんとCarumaさんが、あたしのバイクを磨いてくれてるんです」

見ると確かに、RとCaruma君が手にフクピカを持って、なっこのCBRを磨いていた。

「Caruma君、なにしてんの?」

「だってきれいに磨いたら、女の子を紹介してくれるって言うんだもん」

あーなるほど。そりゃ仕方ない。でも、俺はしょぼくれちゃったから手伝わないよ。

 

芝浦でまた、みんなと話しこむ。

俺はといえば、いつの間にか貧乏ランプが点滅していたので、「うわ、もうワンタンクも走ったのかよ。開け過ぎだ」と、さらにブルーが加速。もっとも、あとで給油の時に確認してみたら、8リッターくらいしか入らなかったし、距離も行ってなかったから、どうやらこれは燃料センサーの異常のようだ。

タンク交換したとき、チューソンの作業がテキトーだったんだろう。あとで説教決定。

ここでは確か、ナリさんやしんごと共にNORI君を囲んで話してたかな。NORI君は28歳の若者で(つっても子供いるみたいだけど)高速より峠を走ることが多いらしい。家もそんなに遠くないし、そのうち今度は峠で走りたいね。ここはアベレージ高すぎて怖いから(ヘタレのイイワケです)。

バカ話しているとRの携帯に連絡が入り、ハヤブサさんは来ないと言うことになった。

「それじゃ、スパレサでランチして解散しましょうか」

Rの言葉にうなずいた我々は、またも二組に分かれて走り出す。

とは言え俺はスッカラカンだし、この時点ではガソリンが残り少ないと思っていたので、走り出してすぐに「あ、ダメだ」と逃げを打ち、早々に戦線離脱。途中で追いついたCaruma君やAJさん、NORI君と一緒に、ゆっくりと行くことにした。

つっても、この組だって一般的にはとても遅いとは言いがたいんだけど。

 

と、途中で明らかに遠回りしてきたR組が、内側からばびゅんと抜いてゆく。

Rが行き、ナリさんが行き、しんごは俺の後ろについた。そのまま高速を降りて、まったりとスパレサへ向かう。到着すると、どんなルートを来たんだか、すでになっこが到着していた。しかし、なにやらCBRにもたれて、ぐったりとしている。

「あんだ、どうした?」

「眠いです」

今更、驚くことでもないが、なっこは徹夜してそのまま顔を出したらしい。

相変わらずの鉄人っぷり。

でも耐え切れずに寝ちゃってるけど。

 

スパレサは結構混んでいたので、しばらく外で待つ。

そのあいだに、またイロイロ話しこんで笑いあう。天気はいいし、シビれるほど走ってきた(他の連中にとってはともかく、少なくとも俺は)後だし、話す事はいくらでもある。気の置けない連中とこうしてダベるのは、本当に楽しい、大切な時間だ。

やがて、店のおねぇさんが「席が空いた」と呼びに来たので、みんなで店内へ。俺はホット、ナリさんはアイスコーヒー、NORI君もドリンクだけだったかな。それ以外の連中は、食い物も頼んでた。しんごのカフェラテには

なんか葉っぱみたいな模様が書いてあった。

んで、Rのカフェラテにハートが書いてあったのを見たCaruma君が

「ちょ、ハートだよ、ハート」

「うん、Caruma君。たぶんそれに深い意味はないと思うよ?」

と笑いあい、食事しながらも楽しい会話は続く。俺とナリさん、しんごとNORI君が同じテーブルで、今日の走りの話とか、バイクの乗り方、よく行く峠の話なんかで盛り上がる。ま、俺とナリさんは、「歳喰った」とか「衰え始めてる」とかいった、ちょっとシケた話でも盛り上がったけど。

もっとも、俺より六つ七つ上のナリさんが、俺より全然すっ飛ばすんだ。

少なくとも、年齢をイイワケにはできないよね。

 

食事を終えた後も、たぶん一時間くらいは盛り上がっていただろう。

途中、オモテでキックスタートに苦労してたおねぇちゃんのエンジンをRが掛けてあげたりとか言ったイベントも発生し、「やっべ、掛からないかと思った」なんて言いながら戻ってきたRを、みんな拍手で迎えつつ大笑い。つーか、Rだからおねぇちゃんも笑顔でお願いしたんだろう。

俺が出てったら、良くて通報、ヘタすりゃその場で緊急逮捕だ。

やがてRが、「それじゃ、そろそろ帰りますか」と腰を上げたところで。

本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部は、ナナメに差しはじめた、初冬にしては強い日差しの下、無事に終わりを告げた。話して、走って、ランチしてと言う、俺としてはちょっと珍しい形態の走りだったが、「こんなのも、たまにはいいな」と思えた楽しい一日だった。

ただ、リハビリなんて言いつつも、後半、明らかに失速してて、それは悔しかったかな。

「元々こんなもんだったのか、それとも遅くなってるのかさえ、自分じゃわからない」

ってんだから情けない限り。周りの話でおそらく期待してたであろうRはガッカリさせてしまったかもしれないけど、ま、コレばっかりはあわてても急にどうにかなるわけじゃない。とりあえず乗れることはわかったんだし、これからまた走りこんでいけばいいだろう。

少なくとも俺には、ナリさんって言う目標があり、それは幸せなことなんだから。

 

みんな、楽しい時間をありがとう!

また、走ろうね!

 

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