The 90th big machine club
2010.01.31 第90回 でっかいもん倶楽部 in 房総勝浦 ―フルアクセル・ガール―
ま、なんだかんだ言って、Rやしんごと走るんじゃ、すっ飛ばしツーリングになるに決まってる。 つわけで前日、俺にしてはソコソコ早寝をしたので、いつもならビクとも起きない朝のメールでも、サクっと目が覚める。時間は朝の八時。マルは「九時ころ行く」つってたから、 「ヤロウ、また何かやらかしたのか?」と思って見てみると、送信者はしんごだった。 『おはようございます。かみさんバッテリーケーブルってあります?』 朝からひと笑いしたあと、「ウチにはねーよ。あんだ、上がったんけ?」と返信すると、「上がったのかレギュレータ不調かわかりませんが、とりあえずエンジンがかかりません」と返事が来たので、電話してちょこっと話し、整骨院においてあるケーブルを持って行くことにした。 んで九時ころオモテに出ると、ちょうどマルゾーがやってきたので事情を話す。 「がははは。やっぱ単車は国産だよな」 と、イッコも事態の解決にならない意見をほざくマルを尻目に、さて、それじゃあ出発しようか。
結局、ケーブルは整骨院になく、無駄足を踏んだだけで混んでる船取線をすり抜けつつ、花輪からようやく高速に乗った。マルとふたりで久しぶりの高速を楽しく踊りつつ、アホほど大量発生している旧車会をぶち抜きながら、約束よりちょっと遅れて市原SAに到着。 すると、すでにナリさんが来ていて、こちらに手を振る。 そしてその横には、女の子がひとり。
Rの知り合いで、ぁゃちゃんの友人だという、ユリアちゃん。 コートを着てバッグを斜めにかけた、いたってフツーの格好の女の子だ。 が、なにやら足元だけ様子がおかしい。そう、ライディングブーツを履いているのだ。ま、ぁゃちゃんのダチって段階で、間違ってもフツーじゃねーことは予想してたけど、ホンキでフツーの格好に、足元のみ、思いっきりライディングブーツってのは、いかがなものか? や、ま、ファッション云々を俺が言うなって話も、あるにはある。
ユリアちゃんのマシンは、CBR250だ。ナンバーもキッチリ、カチ上がってる。 「今日のメンツに250じゃぁ、ちとシンドいんじゃないかなぁ」 などと、この時点では彼女のことを何も知らず、ちょっと心配していた、かみさん@本日幹事。 「はじめまして。ユリアです。今日はよろしくお願いします」 「どもー、ぁゃちゃんから聞いてるよー! つーかさ、友達は選んだ方がいいぞ?」 などとバカ話をしてるとマルが追いつき、
ほどなく、成田に友人の見送りに行ってたR、しんご、それともうひとりのお初、ヒロ君がやってくる。 ちなみに左から、しんご、マル、R、ヒロ君、ナリさん。
ヒロ君(写真左)は国内仕様のCBR1000が昨日、納車されたのだが、ココに来るまでの間に、早くも全開走行してきたらしい。「なるほど、なるほど。彼も残念なヒトなんだな」と、俺がうれしくなったのは言うまでもないだろう。
そーいや、しんごの単車は大丈夫なんけ? と思ってたらRが 「途中でホームセンターか何かがあったら、寄ってバッテリーケーブルを買います」 俺がうっかりじゃなかったら、余計な手間かけなくて済んだのに、ごめんな、しんご。 つわけでしばらくダベりながら、今日の行き先を決める。 今回は俺が先導つーか企画担当なのだが、ヒロ君はこの辺が地元だというので、彼にサポートしてもらって……いや、ほとんど彼の企画立案で、「とりあえず海に出て飯を喰う」ということになった。勝浦あたりにたくさん店があるから、そのどこかで喰おうつー、きわめてアバウトな作戦だ。 出る前にサービスエリアでガスを入れて行こうつー話になったんだが、先述の旧車会が群れていて、いつ順番が回ってくるのかわからない状態だった。なので、高速を降りてからガスを入れることにして、まずは高速を走りだすと、かみさん、うれしくてアクセルをワイドオープン。 とたんに、今日着てきたダウンジャケットを後悔する。空気抵抗がひどいのだ。 「つーか、なんでじゅんだのポンちゃんだのは、ダウンであんなにすっ飛ばせるんだ?」 と、湧いてくる素朴な疑問の答えを探しながら、230〜40スピードくらいで走ってると。 ばひゅん! RのCBRに、サクっと簡単に刺された。 「ヤだよ。こんなんで付いて行けるかっつの。や、革ジャン着ててもついてけねーけどさ」 見る見る消えるRの背中に、ヘルメットの中でひとりツッコミ。やがて「俺が行かない」のが判って速度を緩めたRと一緒に、ほどなく現れた出口から高速を降りる。そこから最寄のスタンドに寄って、ガスを補給しつつ軽くバカ話。
さ、ガスを入れたら、今度こそ出発だ。走ろうぜ!
ヒロ君の先導で下道を走り出し、国道に乗って勝浦へ。 俺は二番手についてヒロ君の走りを見ながら走ったのだが、途中から、どうにもニヤけるのが止められなくなってきた。いやまぁ、俺はたいていへらへらニヤけちゃいるけど、それはさて置き、このヒロ君、ものすげぇ楽しそうに走るのだ。 もちろんすっ飛ばすし、車もサクサクパッシングするし、走りも綺麗で速い。だが、そんなことよりなにより、背中から感じるオーラつーか走ってる様子が、本当に楽しそうなのだ。ポンちゃんなんかもそうだが、背中が楽しそうなヤツの走りってのは、見ててこっちも楽しくなる。 うれしくなって俺も一緒にすっ飛ばした。 行くタイミングがRやじゅんと一緒で、俺の行くタイミングとちょっと違ったりするのだが、そんなことイッコも気にならないくらい、とにかく走りが楽しそうなのが素晴しい。 俺は途中からもう、メットの中でケタケタ笑いながら、思いのほか暖かい天気と食いつく路面に、ご機嫌ですっ飛んでゆく。
途中でナリさんが、CBR250のユリアちゃんや、すり抜けの好きじゃないマルを気使ったのだろう、「もちっと速度を緩めよう」と言ってくれたので、ヒロ君もそこから速度を緩めて走っていたのだが、いかんせん、後ろが俺だったのが彼の不運だった。 楽しくて仕方ないかみさん40歳は、ついつい速度を上げてしまう。 ツーリングライダーの集団を、ヒロ君が挨拶しながらおとなしく抜いてゆくのを見つつ、反対車線から一気にごぼう抜きにして前に出たりするもんだから、ヒロ君がついつい速度 を上げてしまうのも、無理ないだろう。「ぎゃははははっ! やっべ、すんげ楽しいっ!」と騒ぎながら走ってるうち…… カンペキにはぐれた。 ま、天気が良過ぎたのがいけないんだろうね(良すぎたのは脳の天気です)。
路肩に停めてみんなを待つと、ナリさんとマルがやって来たあとは、影も形もない。 幾らなんでもそんなに離れるわけはないし、どうしたんだろうと思いながら、バカ話をしつつ休憩。やがてヒロ君の携帯にRから電話が入る。ナニゴトか話して電話を切ったヒロ君、「そういえば、途中にホームセンターか何かがあったら寄るって言ってましたね」とニヤリ。 ああ、そういえば、そんなことを言ってたような気がしないでもない。 「でも、そんなの、来る途中にありましたっけ?」 いやヒロ君、キミは聞く相手を間違えてる。 自慢じゃないがかみさんは、「うっかり」が売りなんだぞ(ウリにも自慢にもなりません)。 やがてRがやってきて、メットを取るなり「ダメじゃないですかー!」 すまん、ヒトコトもねーです。
みんなも集まってきたので、勝浦までの残り行程を確認しつつ、一服。
ヒロ君の楽しそうな走りに笑ったり、ユリアちゃんがニーゴーとは思えない走りで遜色なくついてくるのに感動したり、いつものようにマルゾーと掛け合いしたり、休憩の間も楽しくて仕方ない。そんな風にバカ話してるうち、ふと思い出したかみさん。 「おっと、忘れちゃいけない。写真とっとかなくちゃ。最近は良く忘れるからな」 俺が写真を撮ってると、突然、Rも写真を撮り始めたのだが…… 「ちょ、R! なにその堂々っぷり!」
満足のいく写真が撮れたようで、よかった。 そのあとも、ユリアちゃんのブーツの底に書かれたマークに笑ったり、ヒロ君の『ブルートゥースで走行中も電話できる装置』に感心したり、初めて会った人と楽しく話せるのも、単車のチカラ。んでまた、いつもの連中といつものように笑いあえるのも、やっぱり単車のチカラ。 ホント、単車って楽しいよね。 次の 目的地を、ヒロ君の携帯で見つけたイレブンに設定して、残りの数十キロをRの先導で走り出す。 とは言えカリカリすっ飛ばすんではなく、気持ちのよい天気の中をスムーズに走ったって感じだ。もっとも、すり抜けの苦手なマルゾーあたりは、 「なにがー! 充分すっ飛ばしてるじゃねーか!」 なんてクチ尖らせそうだけど。
昼飯は、 ツーリングマップルに書いてあった「天平」と言う郷土料理のお店へ。 ノンアルコールビールで乾杯して、料理が来るのを待つ。ここは、『すべて注文を受けてから調理する』と言うていねいな仕事に定評があるそうだ。や、まぁそれは今、リンク先で知った知識で、このときはカケラも知らなかったんだけど。 注文したものが来る間、バカ話をしながら待つ。
ナリさんのメンタル論は、俺も常々考えていたことだけに、思わずうなずいてしまった。
マルゾー。なんだろうね、この手。クルーザにでも乗りたいのかね。 もちろんこのメンツだけに単車の、それもすっ飛ばす系の話が多かったんだけど。そんな中、Rがユリアちゃんに「普段どんなツーリングに行ってるんですか?」みたいな質問を した。そんでまぁ、話の流れから言っても仕方ないんだが、ユリアちゃん、地雷を踏んでしまう。 「バイクショップの店長がですね、私が会った中でイチバン速い人なんです」 はい、NGワード発動。 とたんにRの体温が上がったような気がして、 俺やしんごは軽く頭を抱えて苦笑する。 そのRは、穏やかな笑みを浮かべて。 「へぇ……」 声のトーンがもう、すでに怖いんですが。 「だめだよ、ユリアちゃん。その手の話は、このオトコに火をつけるんだから」 「そうなんですか?」 「いやいや、全然そんなことないですよー!」 だから、その怖い笑顔をやめれ。
やがて、ユリアちゃんの頼んだお茶漬けがやってきた。
「おいしー!」 喜ぶ顔に、良かったと胸をなでおろす、慣れない幹事のかみさん。 カメラを向けて動画を撮ると、「なんかこのさっぱりした感じが〜」などとグルメレポーターのマネで応えてくれるユリアちゃんのノリに、周りの連中の顔もほころぶ。実に腕のいい 、ムードメーカーだ。「う〜む、頭のいい子だなぁ」と感心してると、俺らの食事もやってきた。 時間はかかるけど、待っただけのことはある、おいしい食事だった。 飯を食いながら、さらに色んな話をする。ここでユリアちゃんが「ウイリーできるとカッコいいですよね」と言い出し、さらにR1のケツに乗っかって260出してもらった話なんかを始める。「ユリアちゃん、君は発言するごとに自分のカブを下げてることに気づいてるのか?」と大笑い。
今日初見のヒロ君もユリアちゃんも、実に素晴らしい残念っぷりだった。 ま、言ってもこっちは残念のカタマリみたいな集団だから、もちろんみんな大喜びしてたんだけど。
天平を出るとナリさんに「ちょっと喰いたんねーから、コンビニ行こうよ、かみ」と誘われて、コンビニへ向かう。ジュースを買って飲みながら、しんごやナリさんと単車や走りの話をしてると、あとからやってきた Rが、コンビニに入り際、「ユリアちゃんの師匠と走ってみたいなぁ」とつぶやくのが聞こえる。 俺たちは顔を見合わせて苦笑した。 駐車場に戻りながら、 「しんご、デイトナどうよ?」 「いいですよー」 「んじゃさ、もしデイトナとR6だったら、今ならどっちを買う?」 「R6ですね」 「ちょ、即答かよ!」 バカ笑いしながら駐車場へ行き、そこでこの先のコースを決める。 かみさんプレゼンツは、行き当たりばったりが身上なのだ。 ヒロ君の「せっかくだから海沿いに走りたいですね」と言う意見を取り入れ、海沿いに鴨川を抜けて最後にワインディングを走り、鋸南あたりから高速で帰るプランになる。海沿いから高速に抜けるワインディングは 、大まかに三本あるのだが、さて、どれで行こうか? どれでもまあ面白いとは思うのだが、せっかくだから走ったことのない『舗装林道』を走ろう。つーか、地図を見せながら、「この三本でどれがいい?」って聞いたら、即答でイチバンくねった舗装林道を選んだRの意見を採用したのだ。 ホント、好きだよなぁ。や、俺も好きだけどさ。
つわけで、こんだ俺が先頭で走りだす。 さっきの反省から、あんましガシガシ行き過ぎないように、せっかくの海を眺めたりしながら、わりあいチンタラ走る。Rとかナリさんのライトがミラーにチラチラしているが、 もちろん見えないフリ。ユリアちゃんに、『7時東京』つータイムリミットがあったので、バカ走りして道に迷ってる時間がないのだ。 トンネルを抜けたところを左折して、いったん停まってコース確認。 今度はヒロ君を先頭に、くるっと折り返し、今来たトンネルの上を通る、くねった舗装林道へ入る。これがまた、俺だのRだの以外は間違いなく辟易するだろう、なかなかご機嫌に荒れた林道だった。山汁、ガレ、舗装を剥がしたダート。しかも両脇は落ち葉でまるっきり使えない。 ヒロ君のペースが段々落ちてきて、ちょっと開けた場所で停まる。 国道の看板が出てたので地図でもう一度確認し、とりあえずそのまま行こうと言う話になった。もちろんその瞬間、マルだのナリさんは顔をしかめてたけど。Rが先導するつってたのが、 いつの間にか「かみさん、先行ってください」となり、ま、俺も嫌いじゃないので荒れた林道を走り出す。 犬がいたり、コケが密集してたり、なかなかタフな道を下ってゆくと……あれ? なんだか広い道に出ちゃったね。「おかしいなぁ」と思いながら、目に付いた駐車場に単車を入れる。 林道で一箇所、どっちに行くか迷った場所があったのだが、そこできっと間違えたのだろう。 ま、俺が先頭を走ってるんだから、ある意味、予定調和だ。
「とりあえず、ココで一服してコースを確認するよ」 「えー、販売機もないじゃないですか」 言われて、なるほどと反省する。俺や何人かはタバコ吸うからどこでもいいんだけど、吸わない人にはやっぱり、販売機くらいはあったほうがいいよね。どうもツーリングのコーディネートなんて慣れないもんで、その辺の気遣いが足りないようだ。 今年は、も少しマメにツーリングの企画してみようかな。
俺が バッグから地図を出して、ヒロ君がGPSで現在地を確認。んで走ってきた林道の南側にある県道のそばだとわかったので、行き方を確認してから、とりあえず俺が斥候として先に走りだした。これ以上みんなに、Uターンばっかりさせたくなかったのだ。 んで走りながら県道を探せば、なんだよここ、moto君と走ったことある道じゃねーか。
県道の入り口に単車を停め、しばらく待ったが来ないので、まだ駐車場にいるんだろうとマルに電話する。もちろん、当たり前のように繋がらないので、「クソマルめ」とののしってから Rに電話。入り口で待ってると伝えて電話を切り、みなの到着を一服しながら待つ。 やがてやってきた連中と、さぁ、最後のワインディングだ。
最初こそせまっ苦しい道を走っていたが、そのうち道が開けてきて、高速ワインディングになる。 スピードが乗りすぎるから充分気をつけなくちゃならない。直線はちょっとだけアクセルを抜き気味にして、コーナリングを楽しむように八割くらいで走る。言っても『俺の八割』なワケだから、当然、後ろのRはベタづけだ。あおったりはもちろんしないが、常にミラーに写ってる。 「ま、遅くてつまんなきゃ、勝手に抜いてくだろう」 と当たりを付け、Rとふたり高速ワインディングを駆け抜ける。 つーかさ、なんだかんだ、やっぱり曲がった道がイチバン楽しいね。ここのコースはちょっとスピードレンジが高すぎて、200オーバーしちゃうトコロもあるから少し怖いけど、でも、やっぱりこれがイチバン楽しいや。Rもこの道は面白かったようで、「いい道ですね」と笑っていた。
高速の看板が出てきたので、いったん高速に乗りかけて「あ、ガソリン入れるんだっけ」と思い出し、とりあえず近くの道の駅みたいなところに入る。ここでルート確認がてら、スタンドの位置を地図で探し、ヒロ君の携帯でも情報が一致したので、そのスタンドで給油して帰ろうと決まる。 なので最後のダベリング。
ユリアちゃんの手動冷却ファンのオトコマエっぷりに笑い、彼女の今日の走りのイケっぷりを皆で絶賛した。本人は照れて「やー、全然ですよ」と笑ってたが、残念な人間たちに褒められてる段階で自分も残念なんだってことだけは、 わかっておいて欲しいところだ。 「も、2st乗っちゃえばいいじゃん」 「でも、2stって飛ばさないとカブっちゃうんですよね?」 一瞬、全員がぽかんとしたあと、苦笑しながら一斉に 「そんだけ飛ばしてればゼッタイ平気だから!」 「むしろ焼きつきのが心配だ!」 どうやら自覚症状はないようだ。
道の駅を出て、ガソリンを補給する。
楽しかったツーリングも、ソロソロ終わりの時間だ。 戻って高速に乗ったところで、お別れのご挨拶。
つってもマルやナリさん、しんごは俺の家に来て宴会やるので、お別れってワケじゃないんだけど。
ヒロ君、今日はご苦労様でした。 俺のつたないツーリングコーディネートを手伝ってくれて、ホントに助かったよ。また近いうちにツーリング行こう。とりあえず、そのエンジンが生きてるうちに。あと、俺んちはバカな単車乗りがいっぱい集まるから、そのうちウチでも一杯やろうぜ。
R&ユリアちゃん、今日はありがとう。マジ、楽しかった。 コレからドンドン陽が長くなるし、またアチコチ走りに行こうぜ! んじゃ、みんな気をつけてなー!
で、終わらないのがマーマレードスタイル。 帰りの館山道は、当然のことながら激混みだったのだが、ここでこのツーリング最後の、そして最大の山場を迎える。すり抜けながらすっ飛ばしていると、前にRとユリアちゃんの姿が見えた。まぁ、ユリアちゃんは250だからRが合わせて走ってるんだろうと思いつつ、ナリさんとともに後ろにつく。 やがて渋滞が緩和されてきて、アベレージスピードが上がり始めたのだが…… 「おい、ユリア!」 俺は思わず、メットの中で呼び捨てにしたね。 そして前をゆくナリさんも、こちらを振り向いてメットの中で笑いながら肩をすくめている。 いや、確かに250だって最高速はそこそこ出るよ。しんごが確認したところじゃ、ユリアちゃんのCBRは200ちかく出るらしいが、俺だって昔は250ですっ飛ばしてたんだから、そのこと自体は驚かないさ。だけどな、それはクリアな道でガッツリ開けっ放しなら『出せる』ってだけの話だ。 1000がスナッチで出す200じゃない。 いくらコッチが200前後で遊びながら走ってるつったって、それに250でついて来るってのは、ものすげぇコトなのだ。なぜなら、あの単車でついて来てるってコトは、ユリアちゃんはアクセルをほとんど戻してないってコトなのだから。いくら流れ始めたとは言え、車の列を縫いながら、だぞ? 何よりすげえと思ったのは、コッチが時々すっ飛ばして消えた後だ。 時々300とかで走ったりしたあと、また遊びながら待ってると、ものの数十秒で追いついてくるのだ。コレは『200で流してるところについて来る』なんてのの比じゃない。あの子は消されてからもずっと、姿の見えない俺らを追いながら、一瞬たりともアクセルを緩めないで走ってる証拠だ。 しかも、すり抜けながら。 マルゾーなんて、速攻であきらめちゃってるのに、なんて素晴らしいガッツ。 俺やナリさんは面白すぎて、走りながら思わず手を叩いてしまった。メットの中で「やべー! ユリアちゃんキレすぎだー!」と、ゲラッゲラ笑いながら、俺はこの、カッコはフツーなのに中身はガッツのカタマリみたいな女の子に、もう、カンペキにやられてしまった。 「世の中、ホント面白れぇやつが多いなぁ」 いや、単車乗っててすっ飛ばすヤツなら、あのガッツには惚れるぞ、マジで。
んでまた面白れぇのが、ヒロ君。 国内仕様はリミッタがついてるから、当然、そこで頭打ちなわけで、俺ならハナから行こうなんて思わないだろう。だが、ヒロ君は決してアクセルを抜かないのだ。「頭打ちするなら、ずーっと頭打ちしてやろうじゃねぇか」くれぇのイキオイで、も、開けっ放し。 リミッタ上限で、ひたすらすっ飛んでる。 それをRやナリさんがからかうように、250だの300近くまで引っ張ってぶち抜いちゃ、追いついてくるの待ってるもんだから、最後の方になってヒロ君、Rがすっ飛んでく瞬間に蹴りを入れる真似をしたりして悔しさを表現してた。見てないけど、メットの中は間違いなく笑ってたはずだ。 いやー、ユリアちゃんショックも大きかったが、ヒロ君もえらい面白いオトコだ。
ヒロ君やユリアちゃんに散々笑わせてもらって、もう、どうにも楽しくて仕方ない気分のまま、館山道をあっという間に駆け抜ける。最後の分岐でいったん停まり、ホントにホント、最後のご挨拶。んでまた、分岐で停まったらすぐに追いついてきたユリアちゃんに大笑い。 太陽が照ってて時間があるなら、このままいつまでも走っていたい気分だ。 「んじゃ、俺ら千葉北で降りるから。今日はホントにありがとう。楽しかったよ」 東京へ向かうRやユリアちゃん、ヒロ君にお別れを言ったところで、本日のcrazy marmaladeでっかいもん倶楽部は、無事に終了。徹頭徹尾、ヒロ君とユリアちゃんに話題を持って行かれた一日だったと言っていいだろう。ふたりともお疲れ様&ありがとう! さてこのあとは。 今日あった楽しい話をしながら、ナリさんやしんご、それにマルと一緒に美味い酒を呑む。俺はシアワセな気持ちで高速を降り、ナリさんとしんごっつーフォローのまったく要らない連中とともに、16号を気持ちよくすり抜けながら、ビールと風呂に思いを馳せたのだった……
ところが、これでもまだ終わらない、マーマレードクオリティ。 みんなで家に帰ってきて、さて、呑んだくれようと準備をしつつ携帯を見ると、マルからのメール。 『おっかさん、ここが幕張だょ。首都高まわるしかなさそうなので、ずびばぜん〜』 「ぎゃはははははっ! しんご、ナリさん! マルのやつ、今、幕張だって」 俺は爆笑しながら、ナリさんとしんごに報告した。 やがて仕事を終えたGO!!!君もやってきて、幕張から大回りして来たマルゾーもようやく到着し。
鴨鍋を突っつきながら、楽しく呑んだくれたのだった。
いや、ホントに楽しいツーリングだった。 そしてまた、素晴らしい出会いがあった。 みんな、次もまた一緒に走ろうぜ!
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