The 93rd big machine club

2010.06.26 第93回でっかいもん倶楽部 in 大郷戸ダム

―男たちのメロディ(前編)―

後編はこちら

前回のキャンプの前に脚を折って、結局、参加できなかったわけで。

今回は待ちに待った、久しぶりの山賊宴会だ。

ウッキウキで仕事を終わらせた俺は、とっとと帰ってくるとフューリィに荷物を積み込む。

当初の予定では、サイドバッグとリアシートの黒いバッグだけで済むはずだったのだが、農家さんをやってる患者さんにもらった野菜とか、ウインドシールドなど想定外の荷物が増えてしまって、最終的にはいつも通りアホほど積み込むハメになった。

ま、それでも昔に比べたら、ずいぶんと減ったんだけどね。

体重は増えたけどね。ほっとけ。

 

出発前の景気づけ、ナオミにまたがらせてフューリィの厄落とし。

うん、ごめん。なんかだいぶん無理させた。

つわけで、無事、ナオミ厄払いも終わり、さぁ、レッツ宴会!

 

 

国道を抜けて、県道19号から筑波山経由で大郷戸ダムを目指す。

 

 

なんだかんだ一時間弱で、筑波山のふもとまで到着。

 

ここでよしなしに電話を入れて、「なにか買っていくものはあるか?」と尋ねる。

大丈夫とのコトだったが、そのまま筑波山の脇を抜けて、国道50号を越え。

宴会場最寄(もより)のスーパーに到着。つってもかなり遠いけど。

ここで酒を買い込みがてら、もう一度電話した。すると、ろろちゃんが出て、

「あ、ろろちゃん? なんか買って行くものあるかい?」

「君の欲しいものが、僕の欲しいものだよぉ」

「ぎゃははははっ!」

 

やめれ、ろろちゃん。買い物してる主婦に、思いっきりガン見されたじゃないか。

 

買い出しが済んだら、それじゃぁ本日の目的地、大郷戸ダムを目指すのだが……

 

気持ちよく走れるのはいいんだが、なっかなか大郷戸ダムが見当たらない

そのうち、「栃木県」なんて看板が見えてくるに至って、だんだん落ち着かなくなってくる。

「おいおい、ここ益子じゃねーか。茨城から出ちゃったぞ? 大丈夫か、俺?」

おまけに、雨までポツポツ来始めて「カンベンしてくれよー」と悲鳴を上げながら進む。幸い、雨は小降りというかホントにパラパラだった。走りながら、動画を撮ってたカメラを外して サイドバッグに仕舞いつつ、「一回、停まって道順を確認するかなぁ」なんて思ってたら。

ようやく大郷戸ダムの看板が見えた。

ほっと胸をなでおろし、そのままダムに向かって走ってゆくと、途中の休憩所に、上半身裸で寝転がってるSSライダーが居る。「まぁ、確かに蒸し暑いし、気持ちはわかるなぁ」と思いつつ、どうやら彼もこちらに気づいて顔を上げたので、俺は会釈をして通りずぎた。

仕事の疲れで細かいものが見えない状況だったので、顔はまったくわからない

「なんか、マルっぽい雰囲気のヤツだったなぁ」

と思いながら、さらに奥まで入ってゆくと。

なるほど、よしなしの言うようにダートロードになった。

しかも、あちこちに大穴が開いて水溜りができてるので、走りにくいったらない。

ま、景色はとってもキレイだったけど。

ダートと格闘しながら進んでゆくと、やがて開けた場所が見えてきた。

「おぉ、いた、いた。馬鹿なヤツラが集まってる」

湖畔の公園つーか、昔キャンプ場だったっぽい場所へ、フューリィとともに乗り込む。

すると、すでにあらかた出来上がってる、

ダメ人間軍団。左から、ろろちゃん、よしなし、POPOさんだ。

 

「くっそ、乗り遅れちゃいかん! 俺も呑むぞ!」

とっとと荷物を降ろし、テントを張って準備をする。

「つーかさ、俺の間違いじゃなければ、雨が降ってる気がするんだけど?」

「大丈夫、大丈夫」

「気のせいだよ」

 

いやいや、気のせいじゃないじゃん! めっちゃ傘さしてるヒトがいるじゃん!

 

蒸し蒸し暑いので、とにかく早いところビールが飲みたい俺が、汗をかきながらテント張っていると。

ヴォー!

四発の音が聞こえた瞬間、俺は一瞬にして状況を理解した。

「ぎゃははははっ! アレ、やっぱマルだったんだ!」

ヒトがテント張ってる横を掠めて、クソマル登場。

 

「おめーはよ、なんでコッチ見といてシカトしてくんだよ!」

「知らねぇっつの、俺は仕事疲れで目が見づらくなってんだよ!」

「ダート走りたくないから、わざわざ手前で待ってたのによぉ」

知ったこっちゃない。

つわけで、キャンプ地の全景つーか、ダム湖の風景。

バス釣りの人たちがたくさん来てた。

 

「あんだおめ、テント持ってきてねーのか?」

「おめーに渡すものがあるから、ちょっと来ただけだ」

いいながら差し出されたのはケーロクのノーマルステップ。

「おぉ、サンキュー! つーかよ、おめーも泊まってけよ」

「バカ、それどころじゃねー! 嫁にケーロクのローン組んだのバレちまったんだ」

「ぎゃはははっ! あんでバレたん?」

「銀行から通知が来たんだよ。ったく、よけーなコトしやがって」

「まぁ、悪いのは黙ってローン組んだお前だけどな」

「『これでウチが家庭不和になったらどうするんだ!』って担当のおねぇちゃんに言ってやった」

「そしたら、その担当のおねぇちゃんに結婚してもらえよ」

 

ひと笑いしたら、さらに暑くなった。もう、これ以上は我慢できない。

つわけで。

さぁ、呑むぞー!

カシュ! んごきゅ、んごきゅ、んごきゅ……

気持ちよくビールを一気飲みしていると、突然、そのビールの缶をぶんどられた。

「てめぇ、いいかげんにしやがれ。んごきゅ、んごきゅ」

「わはははははっ!」

ま、このクソ暑い中、目の前で呑(や)られたら、そりゃぁ、我慢しろつー方が無理だわな。

つっても、この後帰るマルゾーはさすがにふた口で飲むのをやめた。

その代わり、俺がたくさん呑んであげた。これぞまさに、厚き友情。

 

「かみさん、荷物 減らすって言ってたのに、めちゃめちゃ多いじゃん」

「うっせー! 野菜とか土壇場で物が増えたんだよ」

「ボクも荷物を積んでくるの大変だったよー。特に、コレを入れるのが」

うん、キミの荷物はまず、そこから削るべきだったね、ろろちゃん。

 

相変わらずのバカをやりながら、ゲラゲラ笑っていると

eisukeさん登場。

ニコニコしながら、クルマの裏でごそごそやってると思ったら。

バーナーを持ってあらわれた。火をつけたまま、な。

「ぎゃはははっ! 持ってきてから火をつけりゃいいじゃないですか!」

「あ、そうそう、炭を起こさなくちゃ」

eisukeさん、聞いちゃいない。

バーナーで火をおこしたら、

 

お次はテント設営……ってeisukeさん、クルマで来てるのに?

「いやぁ、みんなテントで寝てるのに、クルマで寝たら悪いじゃん?」

「あ、eisukeさん、そのテントどうしたんですか?」

「買ったんだよ」

それ、みんなに悪いとかじゃなくて、新しいテントに寝たかったんじゃ?

 

ろろちゃんの持ってたビニール袋の中に、料理の材料らしきものと一緒にポテトチップの袋を見つけた俺は、いつも、俺んちでお菓子好きのGO!!!をからかってるのと同じ感覚で、何気なくろろちゃんにお菓子のことをツッコんでみた。

「へぇろろちゃん、オヤツ持ってきたんだ?」

すると、ろろちゃん。

「 違うよかみさん、これは料理の材料だよ」

「は、なになに? なに言ってるの?」

「ミートソースも、とろけるチーズも、ソーセージもポテトチップも全部料理の材料」

「ぎゃははははっ! いったい何を作る気だよ、ろろちゃん!」

「この材料でわかるでしょう。イタリアンに決まってるじゃない」

イタリア人とカルビーから訴えられる前に、謝罪会見の日取りを決めようか。

 

ろろちゃんはナベで料理を作り始め、俺たちはそれを不安げに見守りつつ、もとい、興味しんしんで見守りつつ、バカ話に花を咲かせる。特に、帰っちゃう予定のマルゾーとは、も少し話しておきたい。そのマルゾー、ろろちゃんとはお初だったはずなんだが、今までのやり取りでおおよそを掴んだようだ。

「なんだよー! 面白れぇじゃねーか! これ(宴会)、今度は何時やるんだ?」

「だから面白れぇつったろ? 何時やるつーか、いつだってヤルんだ」

「でもねー、マルさん。今回の宴会は、今回だけなんだよ」

「そう言うことだ。毎回毎回、面白いけど、そのたびに起こることは違うからな」

「次回はみんなで、ソフトドリンクを飲みながら真面目に語り合うかもしれないしねー」

それは天地がひっくり返ってもあり得ないよ、ろろちゃん。

 

みんなが爆笑してるのを見て、今日は帰らなきゃならないマルゾー、ウルトラ悔しそう。その悔しそうな顔に、またみんなで大笑いしたりして。まぁ、ソフトドリンク&真面目な話はともかく、毎回、違った展開や違った話になるけれど、毎回、最高に面白いことだけは間違いない。

 

 

普段、飲まない人にはゼッタイ酒を勧めない俺だが、マルゾーだけは特別。

「もーよ、おめーもあきらめて呑んじまえ」

「俺だって呑みてぇんだよ! でも、今年一年『おでかけ禁止令』が出ちまったんだ」

「あん? ローンばれたからけ? 別に今まで家計に負担かけてたわけじゃねーだろ?」

「『そのお金、どっから出てたのよ』って責められて、大変だった」

「ははは、その余裕があるなら家計に回せってか? 大変だなぁ」

「アイツが真っ先に言ったのが、『もう、かみさんと出かけないでよ』だったんだぞ」

「ありゃぁ、嫌われちまったなぁ。つーか、だったらバイク乗らないでクルマで来りゃいいじゃん」

「かみのところへ行くつった段階で、ぜってー信じてくれねぇよ」

「どっかでバイクに乗り換えるってか。実際、おめーが俺ンとこクルマで来るわけねーしな」

世の奥様たちにとって『かみ』は、イコール『バイク』であり、イコール『家庭の平和の敵』であり、イコール『余計な出費』であり、要するに諸悪の根源なのだ。そしてみんな、俺がそのことを申し訳ないと思うどころか、軽く胸を張るくらいの勢いだってことを知っているのだ。

だから俺は、ダチの(単車に乗らない)彼女や奥さんに、異常に受けが悪い。

肩こり腰痛もちは別にして、な(^0^)b

「つーか俺、『かみさんにそそのかされても、ゼッタイ行っちゃダメだからね』って釘刺されたぞ」


「そそのかすつーか、俺が『どこどこ行くぞ』ってただ報告しただけで、仕事や用事をほっぽりだして、てめぇが勝手に飛んでくるんじゃねーか。ま、でも、嫌われるのはしょうがねぇよ。しかしなぁ、○○(マル嫁)も、昔は優しくて可愛かったのになぁ……母になると女は強ぇなぁ」

どっちかって言うと、母になったことより『俺の存在そのものが原因』なんだろうけど。

 

そんなバカ話してる間に、eisukeさんはかつて俺の愛した蛇口ワインを準備する。

正式名称は知らないが、4リッターだかのでかい紙箱にワインが入ってて、その下のほうに注ぐための蛇口がついてる。味より何より、とにかくそのギミックが最高に好きで、一時期えらく愛飲していたことがある逸品だ。パソコンラックのプリンタの脇において、酒が切れると蛇口からジャー!

な、至福だろ?

そのeisukeさんのワインを、「ちょっとください」と言ったのはろろちゃん。

もちろん、ただ呑むならちょっとじゃ済まないわけで、料理に使うってのだ。eisukeワインが注がれてジュワーっと盛大な音を立てるろろちゃんの鍋を見ながら、俺も自分の持ってきた野菜をみんなに喰ってもらおうと、バッグの中から取り出した。

「みんな、肉ばっか持って来たなぁ。俺は野菜を持ってきたよ、ナスとかキュウリとか」

「え、かみさんナス持ってきたの? ちょうだい!」

「いいよー! 肉と一緒に炒めるとウマい……」

「ナスがあれば、さらにイタリアンだからねぇ」

こんなテキトーな認識のヤツが作ったイタリアンの味に、一同、ますます不安を覚える。

そしてついに、

ポテトチップス大量投入。

やがて出来上がってきた、なにやら怪しげな物体。

ただし、この段階で驚くほどいい香りが漂っている。

「うっわ、ポテチ煮えてるじゃん。でも、やけにいい香りがするなぁ」

恐る恐る、ヒトクチ目を食ってみると……

「やべぇ、なにこれ。激ウマ! ろろちゃん、これウマいよ!」

「イタリアンだからね」

「マルゾー、喰ってみれ」

「もぐもぐもぐ……ぎゃはははっ! うめぇっ!」

トマトソースで煮込まれたポテトチップは、普通においしいジャガイモだし、ミートソースのからまるナスも、ちょうどいい歯ごたえと煮えっぷり。チーズのからまったソーセージなんて、『いいから、とりあえずビール持ってこい』状態だ。冷静に考えれば悪い組み合わせじゃないんだが、とにかくビックリ。

「ヤルなぁ……つーかさ、ろろちゃん。この料理のネーミングは?」

しばらく黙り込んだろろちゃん、不意にボソっと。

「○○○○」

すまん。

わかりづらいから、も少しヒントを出したいところなんだが、あまりにお下品かつ読者の盛大なヒキが予想されるので、全文伏字にさせていただく。爆笑のなか、eisukeさんが更に乗っかって、お下品なツッコミをいれ、俺は思わず「やめてー! メシ喰ってるのにー!」と悲鳴をあげた。

俺はろろちゃんが大好きだし、朋友だと思ってるが、さすがにこのネーミングは認められない。

「とりあえず、ネーミング以外は最高だよ、これ」

「いやぁ、うめーなぁ、ロロイタリアーナ」

最終的に、マルゾーの命名した『ロロイタリアーナ』が定着した。

 

ロロイタリアーナ思わぬ活躍に、今度はeisukeさんの血が滾(たぎ)った。

「肉食べよう、肉!」

いいながら取り出されたのが。

このデカさだけで、オトコは熱くなるのだ。

さらに牛だけじゃ物足りないぜと、豚も投入。

もちろん、eisukeさんの定番、アブラたっぷりブタバラだ。

適当に火が入って旨みが閉じ込められたところでカット。

あたりに、とんでもなくいい香りが立ち込める。

「やっぱブタのアブラだよねー」

「いや、牛も美味そうっすよ」

「しっかし美味めぇなぁ……あぁっ! なんてこった!」

POPOさんに借りてたイスが、俺の体重を支えかねて破れた。

「ぽ、POPOさん、ごめんなさい! イス、壊しちゃいました」

「ははは、いいですよ。どうせ、もらったもんだし」

と笑い飛ばしてくれる、優しいPOPOさん。

ホントすいません。近いうち、買って返します。

 

クソ暑い中、いいおっさんたちが汗をかきながらバカ話して笑ってると。

クルマに乗った、さわやかな青年が現れる。

本日最後の参加者、イチローだ。

現れた段階から、すでにちょっと眠そうな顔をしているが、これはイチローの仕様。ニコニコしながらやってきた久しぶりの顔に、マルやよしなしが声をかける。相変わらずおとなしいイチローは、「あ、こんにちは」とか「あ、どうも……」と、口数少なく微笑みつつ頭を下げる。

「おう、イチロー来たか。喰え喰え」

「はぁ……あの、自分でも持ってきたんですが」

言いながら、バッグから肉と飲み物、それに、ライスを出す

「ははは、いきなりライスか!」

「ボク、ライスがないと肉を食べられないんです……」

言いながら、不安そうに俺のほうを見る。(な、なんかマズかったですかね?)的な表情のイチローに、俺はニヤリと笑って大丈夫だと伝える。それから、(ああ、そうか。eisukeさんとは初めてだっけ。そりゃ、イキナリ見たらおっかねぇよな)と苦笑してると、ようやく意を決したイチロー。

「あ、挨拶が遅くなりました。は、はじめまして。○○(本名)です」

POPOさんとeisukeさんが優しく応えてくれるのに乗っかって、ろろちゃんが真面目な顔で

「はじめまして、ろろです…………まぁ、会ってるけどね」

これでちょっと押しの弱いイチローの気持ちもほぐれたようだ。

同時に、マルゾーは帰る意志を示す。

「くっそー、帰りたくねぇ……一回帰ってから、子供つれて戻ってこようかな」

「ぎゃはははっ! 俺が居るって言うなよ? まぁ、バレるだろうけど」

「いや、『ちょと焼肉屋に行ってくる』つってさぁ……」

「はははっ! えらい焼肉屋もあったもんだ」

「ずいぶん山の中の焼肉屋ですねぇ」

焼肉屋に行ったのにクルマがドロだらけなのを、どうやって説明する気なんだろうね。

 

やがて、シブシブと帰り支度を始めるマルゾー。

 

俺たちの方は、まだまだ宴も序盤、やる気マンマンで大騒ぎだ。

 

マルゾーがヤサグレても、フルシカトで大騒ぎ。

すると、悔しさ満タンのヤサグレオヤジは帰り際に、

盛大にホイールスピンをかまし、悔しさのアピールとさよならの挨拶に代え、帰っていった。

次の宴会のときは、上手に嫁さんごまかして来いよな、マルちゃん。

 

後編に続く

 

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