The 93rd big machine club

2010.06.26 第93回でっかいもん倶楽部 in 大郷戸ダム

―男たちのメロディ(後編)―

前編はこちら

 

楽しい宴会場を去らねばならなかったマルの涙雨だろうか。

ちょいちょい、雨が降ったりやんだりする。

するとPOPOさんは、

ひょいっとカサをさす。

それを見た酔っ払いかみさん、妙な対抗意識を目覚めさせ。

ポンチョを着てみた。

さらにろろちゃんのハンドガンに対抗して

コンバットナイフシャベルを構えてみたり。

超ぉ、弱そうだね(アタマが)。

 

ナイフを投げてスパっと地面に刺したいのだが、

なかなか上手くいかない。

なので当然、

トボトボと取りに行く。

その哀れな姿にみんな大笑い。

ええ、喜んでいただければ、幸いですよ(泣きながら)。

 

マルの涙雨に、俺の涙も加わって、さすがに無視できない降りになってきた。

「ここが考えどころだね。移動するか、あきらめてこのままココで呑んじゃうか」

「え〜、移動するのはメンドウだなぁ」

まぁ、POPOさんの場合は装備の量がハンパないからね。

だが、この時点では、まだ泥酔まで行ってない山賊たち。さすがに、素で雨に降られるのは敬遠したい気持ちが強かったようで、紆余曲折、喧々諤々の末(そんなにモメてません)、「数十メータほど先にある大きな木の根元まで移動しよう」と言うことになった。

つわけで、引越しタイム。

POPOさんは、装備が多いからとにかく大変。

逆に後ろのイチローはほぼ手ぶらだから、ボケっと見てるだけ。

ここで自然に手伝えるようになれれば、イチローもオトナなんだけどね。

この撮影ポイントで、だいたい、移動先までの半分の距離かな。

こうして見ると、結構、歩いたンだねぇ。

そりゃ翌日、脚も痛くなるわけだよ。

 

「も、酔っ払ったら間違いなく、ここまで寝に戻ってくるのが面倒になるだろう」

そう思い当たった、深謀遠慮の代名詞、かみさん。

『テントごと引越し』の荒業を敢行する。

 

やがてみんな、ひと通り荷物を移動し終わった。

そこですでにテンションの上がり切っちゃってる俺は、おもむろにナイフを地面に刺し。

「ココをキャンプ地とする」

ま、ココは宴会場であって、キャンプ地ではないんだけどね。

 

で、その宴会場。

大きな木の下なので、多少の雨なら問題なし。

多少じゃない場合は……まぁ、それもそれで、いい思い出になるさ。

 

さて、腰も腹も落ち着いたところで、ゆっくり呑みながらダベろうか。

それぞれ、焼いたり煮たり沸かしたりしながら、バカ話をして笑いあう。

と、ろろちゃんがおもむろに、ハンドガンを取り出した。

「この銃はね、暗くても飛んでくところが見えるんだよ」

「なにー? それは見たい!」

つわけで、見せてもらった。

 

ごめん、俺の撮影が、なっちゃいなかったよ。

 

やがて陽はとっぷりと暮れ、辺りは闇に包まれる。

だが、宴会パワーは収まらない。むしろ酔いも回って絶好調だ。

 

ちなみに、フラッシュ焚かないで撮影すると、こんな感じになる。

周りが暗くなり、明かりがポツポツと灯っていると言うことは、当然、ヤツラが幅をきかせ始めることになるわけで。なにってもちろん、夏のキャンプ一番の敵、虫だ。それも、蚊とかかわいい連中じゃなくてもっと強靭なツワモノである、ブヨなんかのならず者たち。

や、まぁこの場所的に言えば、ならず者は俺たちの方なんだけんども。

 

「どうやら、虫除けキャンドルの出番だな」

いいながら、ぷうに貰ったローソクにユーカリオイルをたらしてみると。

ぼうっ!

えらい勢いで燃え上がる。まぁ、冷静に考えれば、『油なんだから当たり前』だけど。しかも、ローソクが溶け出しちゃって、うまく燃えてくれない。「やっぱ、キャンドルを作る時に練りこまなくちゃダメなのかなぁ」と、ちょっとガッカリしてると、よしなしが俺を呼ぶ。

「かみさん、ほらこれ」

差し出されたのは、空き缶で作った小さな皿。これにユーカリオイルを直接入れろということか。

やるじゃん、よしなし。

つわけで早速、試してみると。

おぉ、これはステキング。

あたりにユーカリの香りが立ち込めて、コレなら虫も寄って来ないんじゃないだろうか。

もっとも、本当のユーカリの匂いなんてイッコも知らないけど。

 

虫対策も万全(?)だぜと、ガンガンビールを干してゆく山賊たち。

ここで酔っ払ったかみさんの得意技が出る。マーマレ読者おなじみの、泥酔電話攻撃だ。最初のターゲットは、『山賊キャンプに参加したい指数』の一番多そうな、大阪のバカ弟、ムラタだ。携帯を取り出して、ムラタに電話するも、繋がらない。

「くっそー、あのヤロウ。電話があると思って、電源切ってやがるな?」

酔っ払い特有の自分勝手な理論で、ムラタを『かみのいじめるリスト』に載せていると、それを察知したのか、折り返しムラタから電話がかかってくる。携帯の画面を見てニヤリ笑ったかみさん40歳、電話を取るなり、「やーいやーい」系のからかいを入れて、ムラタをいじめる。

ま、骨折って寝てたときに、いじめられた仕返しだ。

ムラタとバカ話をして気分よく電話を切ったら、こんだナオミに電話する。ナオミ特製の梅ワイン&梅ジャムの評判がよかったので、その報告がてら宴会に電話参戦させてやろうという、俺の優しさである(大きなお世話と優しさは紙一重です)。

ナオミが出たのでしばらく話し、梅ジャムを気に入ってた、ろろちゃんに代わる。

オトコだらけのときは北米仕様(シモネタリミッター解除)のろろちゃんは、ナオミだろうがなんだろうが、女の人がいるとリミッターがかかる。さっきまでの暴れん坊っぷりもドコへやら、すっかり別人にシフトすると、優しくて楽しいろろちゃんの出来上がり。表情も、なんとなく優しそうでしょ?

 

イチローはもう、眠そうだが、ヤツの場合いつも眠そうなので、真偽は定かでない。

やがて電話を切ったろろちゃん。

ほら、あっという間にリミッターカット。北米仕様の出来上がり。

つーか普通に傭兵の親玉みたいだね。

 

闇の中、楽しく宴会していると、誰だったかがイキナリ騒ぎ出した。

「ちょ、ホタルじゃね?」

あわてて立ち上がり確認に行く、意外とロマンチストな山賊たち。

足元の方に小さく光ってるのが、たぶんホタル。

 

雨の中だから、上の方に光ってるのは星じゃなくて、たぶんホタル。

山賊たちの下品な宴会に突然あらわれた、優しくてきれいな贈り物を、みなでしばらく堪能する。それを売り物にしてるようなホタル群生地じゃないから、絶対的な数は少ないけど、放流されたりしてない、純度100%の天然ホタルは、なんだかえらく幻想的で美しかった。

このためだけにでも、もう一回ここで呑みたいくらいだ。

 

ホタルを堪能したら、また戻って呑んだくれる。

とは言え、クソ暑いせいでビールオンリーだったから、明日の二日酔いがひどいことになりそうだ。そう思った俺は、オプティマス・ノヴァ(ガソリンストーブ)を取り出して、POPOさんのポリタンクから水をもらい、お湯を沸かし始めた。

コーヒーを淹れようって寸法だ。

ところが泥酔してるもんだから、ちょろっとづつお湯を注ぐってな繊細な作業ができない。てめぇでは、そーっと淹れてるつもりなんだが、コッヘルのお湯は盛大に流れ出す。流れ出したお湯は、もちろんドリッパをあふれてシェラカップの中へ。

結果、つぶ入りコーヒーが完成する。

何度かお湯を沸かして作ったのだが、も、毎回驚くほど精密に『つぶ入り』を製造するかみさん。ここまで何度も作れるなら、むしろ賞賛に値するとおもうな、俺は。「くっそ、このコーヒー、種が入ってる」とか小さくつぶやきながら、それでもガブガブを飲んだおかげで、翌日は楽だった。

 

酔いも回り、雨も強くなってきたところで。

そろそろ寝ようかという話になり、ひとりひとり、自分の寝床へもぐりこんで行く。

俺も寝床にもぐりこんで、テントを叩く雨の音を聞きながら、ごろりと横になる。mixiに書き込んだり、音楽を聴いたりしつつ、最終的には雨音を子守唄にして、やがて心地のいい眠りに落ちてゆく。山賊宴会の夜は、こうしてロマンティックに過ぎていったのだった。

こんな楽しくてステキな夜も、なかなかあるもんじゃないぜ?

 

 

翌朝、目を覚ますと雨がテントを叩いている。

昨日の夜は雰囲気を盛り上げてくれた雨も、これから撤収して帰ろうという事になれば話は別。濡れたテントを仕舞ったら、帰ってから干さなきゃならないし、他の装備だって濡れてるに決まってるから、片付ける時にやたら汚れる。もちろん、仕舞うバッグの中まで。

「う〜む、雨の中を撤収するのは、さすがにメンドいなぁ」

とは言え、自然に文句を言っても始まらない。

「ま、天気に怒ったってしょうがないし、もちっと寝てるうちに雨も弱まるかもしれない」

こういう、いい意味での諦観から前向きな方向へ考えを進められるのも、自然の中で遊ぶ楽しさのひとつだろう。理不尽に対して怒ることは大切だが、いつも怒るばっかりじゃ、成長は望めない。つーか何より、怒ってばっかりじゃ楽しくないしね。

文句を言うより前向きに生きよう(少しは過去も振り返って学習しましょう)。

やがて、雨音が弱まってきたので、のそのそとテントから這い出す。

 

山賊たちの、夢のあと。

 

昨日、調子に乗って引っ張り出したポンチョは、泥酔してすっかり仕舞うのを忘れてたので

なんだか、可哀想な感じになってる。

もちろん、撥水加工してある表面は無事だが、残念ながら内側が濡れまくってるので、タンクトップの身体に着込もうとすると、とっても不快な思いをすることになる。きちんと仕舞っておけば、撤収作業の時にぬれなくて済んだのに、残念なことだ(毎回、残念な感じです)。

「乾かねぇだろうなぁ……」

と哀しくつぶやきながらポンチョを木に引っ掛け、撤収作業をしているとPOPOさんが起きてきた。

さすがにキャンプの達人は、朝から優雅にコーヒーを沸かしている。

もちろん、昨日の段階でいいだけつぶ入りにしちゃった俺には、コーヒーなんぞ望むべくもない。いや、POPOさんに言えばもちろん分けてくれたろうけど、それはさすがに俺の矜持が許さない(意地はもっと大切なところで張りましょう)。

つわけで、POPOさんに水だけ分けてもらって、のどを潤してから撤収の続きにかかる。

 

やがて、よしなしや他のメンバーも起きてきた。

それぞれ、撤収作業に取り掛かる。

ろろちゃん、よしなしは、俺と同じバイク組なので、荷物をまとめるのが大変。

 

POPOさんは車だけど、重装備なのでやっぱり大変。

 

俺は脚が痛んで歩くのが遅いので、撤収に時間が掛かる。

そのため、みんなより早く作業を始めたのだが、途中で追い抜かれてしまった。撤収作業なんて、ひとりの事だからそれでもいいけど、みんなで動く時なんかに遅いのは迷惑がかかるから、あちこち歩き回るようなツーリングは、まだまだ参加できないなぁ。

歴史めぐりとか、神社めぐり、温泉めぐりなんかもしてみたいんだけど。

 

さすらいのイタリアンシェフ、ろろちゃんは、朝からロロイタリアーナを温め直してる。

「どうすんの?」

「もちろん食べるんだよ」

朝っぱらから濃厚なイタリアン(要出典)をパクつくろろちゃんと、それを苦笑しながら見てるイチロー&よしなしのふたり。よしなしは慣れてるから撤収が早いし、イチローはノー荷物だから、早いもクソもやる事がないのだ。もちろん、eisukeさんやPOPOさんもサクサク。

俺はそんな光景を笑って見ながらも、そろそろ鈍く痛み出した脚のせいで作業が遅い。

やがて、ようやく荷物を積み終わる。

それからみんなで集まり、しばらくバカ話しながら過ごす。雨もすっかり上がって、ちょっと蒸し暑いくらいになってきた。前日は、このあと茨城に寿司でも食いに行こうかなんて言ってたが、さすがに俺の脚はもう限界だ。我慢してバカ話してたのだが、ついに立ってるのが厳しくなる。

「ちと脚が痛いんで、俺はそろそろ」

「おお、無理しないで」

「気をつけて」

「またヤリましょう」

それぞれ挨拶を交わしたら(イチローはこのあと俺の家に来る予定だから、挨拶は要らない)、本日のCrazy Marmalade でっかいもん倶楽部も、どうやら終わりの時間だ。天気は悪かったけど、それさえも楽しむたくましい連中との、最高にステキな一晩だった。

フューリィをまたいだ俺は、みんなに手を上げてアイサツすると、柏へ向けて走り出した。

みんな、楽しかったね。

ま、イチイチ確認する必要は一切ないだろうけど、またやろうぜ!

 

 

つわけで、走り出したかみさん。

「もしもー♪ 友と呼べるならー♪ 許して欲しいあやまちをー♪」

思いっクソぬれた路面を眺めてるうちに、『乾いた大地』が頭の中をループし始める。蒸し暑いし、空は曇ってるしで、風を切って進む以外は気持ちのいい要素なんかひとつもないんだが、楽しい連中との宴会の残滓なのか、なんだかやけにご機嫌になってしまう。

「命あったらぁー♪ 語ろう真実ぅー♪ 乾いた大地はぁー♪ 心ぉーやせさせるぅー♪」

歌詞の内容なんか全然シンクロしないのに、やけに『乾いた大地』ばかり歌いながら、曲がった道やまっすぐの道を、気分よくご機嫌に流す40歳。そして、かみさんがやらかす時は大抵、こんなご機嫌のとき。そう、県道257号線から、県道41号線を南下する曲がり角をすっかり失念

そのまま257を走り続け、途中で、「あ、曲がりはぐった」と気づく。

もちろん、独歩の空手が後退のネジを外してあるように、かみさんのツーリングの後退のネジも外れてる。むしろハナから装着されてない。なので、「ま、国道294から南下すりゃいいか。どうせ道も空いてるだろうし」とポジティブシンキン。楽しきゃ、なんでもOKだ。

294を左折して南へ進路を取り、途中のガソリンシタンドで給油し、また走り出す。

 

予想通り、ガラ空きの294を走りながら、こんど飛び出したハナウタは、SHOGUNの名曲。

「走りぃー♪ 出したらー♪ なにか答えが出るだろぉーなんてー♪」

ドラマ、『俺たちは天使だ』のテーマソング、『男たちのメロディー』だ。

「男ぉー♪ だったらー♪ 流れ弾のひとつやふたつー♪ 胸にいつでも刺さってるー♪」

さっきまで宴会をやってた、最高にバカで楽しい連中。いつも一緒に走ってくれる、やっぱりバカで楽しいステキな連中。色んなオトコたちの顔が浮かんできて、そこに『運が悪けりゃ死ぬだけさー♪』なんて単車乗りっぽいフレーズまでからんじゃって、も、最高に楽しくなってきた俺は。

まっすぐな道路をタンタンと走りながら、大きな声で歌い続けた。

さーて、次はどんなツーリングに行こうか。

 

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