The 98th big machine club
2010.12.11-12 第
98回でっかいもん倶楽部 in 秩父 ―星降る夜空に(前編)―
野外宴会のレポートは『エンカイ』と『ツーリング』のどちらにカテゴライズすべきか。 こんな問題もmioちゃんのお膝元、秩父に行くとなれば話は簡単だ。行くまででちょっとしたツーリングだから、迷うことなくツーリングカテゴリに入れられる。いや、距離としてはそんなに遠くないんだけど、いかんせん直に繋がる高速がなく、国道299以外は林道的なウラ道しかないのだ。 夕方4時集合なのに午前中仕事してた俺に、ウラを探る時間はない。 混雑覚悟で、外環〜関越(川越)〜国道299ルートをとることにする。
おっと、その前にリアサスのプリロードをひとつ抜いておこうか。
峠道ならともかく、街乗りするにはプリひとつ抜いた方が、俺には乗りやすいようだ。 それから、ETCもつける。
吸盤に携帯ホルダーつけて、それに挟み込んでみた。
家に帰ったら、用意しておいた荷物をユリシーズに積み込む。
いいだけ満載。 あと、どう見ても違うっぽいけど、誰がなんと言おうとコレはユリシーズ。
走り出してすぐに、荷物の重さを目いっぱい体感させられた、かみさん41歳。「う〜む、今日はひらひらと走るのはあきらめて、クルーザチックに走ろう」と心を決める。マスが集中してる単車だけに、荷物を積んだ時の操作感の変化がすごくて、攻める気になれないのだ。 クルーザだとこの辺の変化が鈍くていいんだけどね。 「ロングのときはサイドバッグか、サイドケースをつけた方が重心的によさ気だな」 フラフラと高い重心に辟易(へきえき)しながらそうつぶやくと、16号から柏インターへ入って、常磐道を三郷へ。高速を走りだしてすぐ、俺のユリシーズの顔がSに変わってることを確認させられた。身体に感じる風圧が強いのだ。ユリシーズ顔についてたスクリーンの偉大さを思い知る。 「う〜む、『こんなちっこいので、効果あんのけ?』とか貶(けな)して悪かったなぁ」 独り言でユリシーズにワビながら、三郷から外環で関越を目指す。 120スピード(1/2時速)くらいで荷物の挙動に気を使いながら走り、大泉から関越へ。さすがに土曜日の関越下りはそこそこ混んでいたので、じわじわと速度を上げつつ、最終的には150スピード前後でクルマの列を縫ってゆけば、ひらひらとは行かないがストレスなく走れる。 80〜100くらいでドコドコを楽しむには、太陽が傾きすぎてたのだ。 関越を川越で降りて16号へ。 そこでおとなしく16号から299へ行かないのが、かみさんのかみさんたるゆえん。走ってる途中で青看板に『秩父』と出ちゃった上、ちょうどそこで信号に引っかかったもんだから、「お、こっちから秩父に行けるじゃないか」と、ついつい横道にそれてしまう。 「ウラを探る時間はない」とか、どのクチが言ってんだって話だ。
後でチェックしたら、ここは『狭山環状有料道路』つー道の途中だったようだ。環状でもなければ有料にするのもどうなんだ? ってカンジの短い有料道路をあっという間に走りきり、目に付いたコンビニで休憩がてらタバコを買いこむ。 県道を397〜262〜30とつないで、いつも下道で秩父へ行く時に通る、県道15号に出た。ここはしょっちゅう混んでるので、ハナからイく気もなく、低回転でドコドコと気持ちよく走る。とは言え、すでに時刻は午後三時を大きく過ぎ、太陽は思いっクソ斜めに差し込んでいる。 やがて299に乗ると、空気が冷たくなってきた。 単に時刻的な問題だと思うのだが、あまりにもタイミングが良かったので 「おぉ、さすがに秩父は寒いぜ」 とつぶやきながら、クルマを縫って先を急ぐ。
知らないうちにヒステリックに乱立されたセンターポールに四苦八苦しつつ、どうやら時間通り。
集合場所に到着。 「ぎゃははは! かみさん、ビューエルやかましいねぇ。向こうからファンの音が聞こえたよ」 笑ってるろろちゃんにニヤっと笑い返したら、まずはお初のTKさんにアイサツ。 「ども、はじめまして、かみです」 「TKです」 穏やかに返してくれたTKさんは、とても俺より上には見えない、すげぇ若々しい方だった。同じユリシーズ乗りである(俺のはもはやユリシーズとは言いがたいけど)TKさんとユリ話をしたり、茨城からやってきた野宴リーダーPOPOさんや、mioちゃんとそのムスコにもアイサツ。 「あれ、mioちゃん。eisukeさんは?」 「先に宴会場に行って、もう、晩の鍋を煮込んでますよ」 「ぎゃはははっ! 好きだなぁ」 「ヨッシーが来ないなぁ」 「よしなし? いいよ、ほっとけ」 それからベルクで今夜の酒とメシを買い込む。俺はいつもどおり鶏肉と、ローストビーフ、それにカクテル缶とジャックダニエル一本を買い込んだ。荷物を単車に積んだら、mioちゃん先導で裏道を抜け、宴会場へ向かう。途中のコンビニでろろちゃんが、紙皿や割り箸を買いこんでた。
宴会場へ着くと、eisukeさんとよしなしが、すでに一杯やってるところだった。
こちらも早速、一杯やりたいところだが、冬の陽はつるべ落とし。もうすでに暗くなりかけてるので、まずはテントの設営を済ませる。ろろちゃんとPOPOさん、俺の三人がテントを張ってる間にも、クルマ組はゲラゲラ笑いながら火を起こし、呑んだくれてる。
「相変わらずココはペグが通らないなぁ。もういいや、ペグの代わりに石でも結んどけ」 横でペグ打ちに苦労するPOPOさんを尻目に、俺は超ぉ適当な設営を済ませて、イスやテーブル、ガソリンストーブを運ぶと、焚き火のそばに陣取る。やがてろろちゃんやPOPOさんも、設営を済ませて落ち着いたら……ってeisukeさん、それは? 「バームク−ヘン、貰ったんだよ。かみさんも食べる?」 「や、俺は甘いものは……」 と断ってる横で、ろろちゃんはすでにバームクーヘンを喰いながら。 「ビール呑もうと思ってたのに、コレ食べたらコーヒーが呑みたくなっちゃったよ」 と言いながら、コーヒーを片手に笑う。 俺は負けない。一杯目は酒を呑まなくちゃならんのだ!
つわけで、それじゃあまずは呑みますか。
mioちゃんがなにやら作ってるのにはかまわず、カンパイしてカクテル缶を開ける。 「ぷはぁ、美味い」 「でも、一瞬で身体が冷えるねぇ」 ろろちゃんの感想に笑いながら、二本目のカクテル缶をとりだす。 eisukeさんはいつもどおり鍋を煮込み、よしなしは軟骨や肉を焼き、mioちゃんはeisukeさんのツインバーナーを借りてなにやら一生懸命作ってる。その姿を見たら俺もじっとしてられなくて、とりあえずガソリンストーブに火を入れて、お湯を沸かしてみた。 空気が乾燥してるから、加湿しといた方がいいしね(野外ではクソの役にも立ちません)。
一杯引っ掛けて、ちょっと落ち着いたなぁと思ってると。 「はい、かみさんこれ」 mioちゃんが差し出したのは。
イナズマ焼き。 一部で猛烈に流行中(要出典)である、俺の夢に出てきた食い物だ。 俺のヨタ話を読んだmioちゃんが、独自に改良を重ねた結果できあがったB級グルメで、お好み焼きともクレープとも違う、独特の食感と味を誇る。まぁ、大別すればお好み焼き、たこ焼き系の味なんだけど、天カスの食感とかマスタードなどの工夫で、オリジナリティがあって、しかも旨い。
「やべぇ、mioちゃんコレ美味めぇよ!」 「マジすか、よかった」 「これ、商売にしようよ。俺はアイディア料3%でいいから」 「あれ、かみさん、3%は欲がないですね」 「いやいや、テンパーとか言うとmio公が乗ってこないから」 「マジで売る気だ!」 それぞれの料理を作りながら、mioちゃんのイナズマ焼きをネタにバカ話で盛り上がる。
eisukeさんは、いつもの煮込み鍋(今回はモツじゃないけど)を皿に盛りつつ。 「はい、mioちゃん。はい、ろろちゃん、はい、POPOさん」 と配りまくっている。田舎のおばあちゃんチックに盛りまくる姿を見て、みなで大笑い。 しかし、コレがまた暖かくて美味いのだ。
「やべぇ、あったまる〜うめ〜」 騒いでると、こんだよしなしの焼いたナンコツが回ってきた。 箸休めの漬物まで。 ここで重大なことに気づいた俺は、みなに注意した。 「いいか、みんな。そろそろ気づこうじゃないか。食い物、持って来すぎだってことに」 しかし指摘は時すでに遅く、となりでろろちゃんが悲しそうな顔をしながら 「なんかもう、おなかいっぱいになっちゃったよ〜」 爆笑しつつ、俺も同意。 まあ、なにも食うものがないってより100倍シアワセな状況なんだけど。
トツゼン、誰かの携帯が鳴った。
なんかの手続きの電話だかなんだからしいのだが、みんなと関係ない話だからだろう、気を使ってボソボソと小さい声で話すよしなしの姿が、逆に『大きな声で話せない相手と話してる』ように見える。当然、俺やろろちゃんが黙ってるはずもなく、大声で指差しながら。 「ああ、よしなしがまた不倫電話してる!」 「さすがよしなし先生、やるなぁ」 早くも大騒ぎ。
と、eisukeさん、ニコニコしながら。 「まだ、うどんも余ってるんだよ」 「い、いや、もう喰えませんって」 「じゃあ、mioちゃん、うどんあげるよ」 「ぎゃははは! おう、チビmio! 明日の昼飯はうどんだぞ、きっと」 mioちゃんのムスコまで巻き込んで、ワルノリはとまらない。 教育上、よくないだろうなぁと半笑いで思ってたら、 「いいか、お父さんの言うことを聞かないと、この人たちみたいになっちゃうぞ?」 mioちゃんがそう言うや否や、猛烈なブーイングが飛びかう。 「お父さんみたいになっちゃうのが、イチバンまずいだろうが!」 「チビmio、お父さんの真似だけはするなよ?」 やいやい言われつつも、チビmioは色々もらえる食い物と、焚き火に夢中。
「やばい、チビmioの目がキラキラしてる」 「そりゃ、楽しいよなァ。公認で火遊びだもん」 「まあ、オトナの方が明らかに目ぇキラキラしてっけどな」 どっちを向いても反面教師ばかりだ。
ひととおり腹いっぱいになり。 イナズマ焼きを作り終えたmioちゃんも参戦して、宴はさらにヒートアップ。 バカ話をしながら焚き火を囲んで酒を呑めば、そこはもうパラダイス。こんなもんバカだと思う人もいるだろうし、それはもちろん否定しないが、少なくとも今日集まった連中にとっては、間違いなくパラダイスなのだ。『火を囲めないから、夏はあんまりキャンプしない』ってくらいだしね。 さて、食欲を満たしたら、こんだゆっくり酒を呑む……とならないのが山賊スタイル。 「よーし、チビmio。火ぃでかくするぞ!」 「ヤバイ、かみさんが焚き火をイジりはじめた」 「つーかよ、焚き木、少なくねぇか?」 「なに言ってんすか! こんなにいっぱいあるのに!」 「いいや、足らん。焚き木は幾らあっても足りないのだ。俺の焚き火魂ナメんな」 「さすがにコレは燃やしきれないでしょう」 「なにをう!」
バカ話しながら、焚き木を火のそばで井桁に組んで、もうひとつの焚き火ゾーンを作った。それから横の燃えさしを持ってきて、井桁の焚き木にくべる。チロチロ燃え始めるのを、チビmioと一緒に見つめながら、席に戻ってカクテル缶を干し、ジャックダニエルに手を伸ばす。 と、シェラカップを忘れてることに気づいた。 「よしなし! 紙コップくれ」 「紙、プラ、どっちにします」 「おぉ、さすがにわかってるな。プラのヤツくれ」 紙コップは酒を注ぐと漏れるので、プラ製のカップをもらってジャックを注ぐ。 トクトクトク……と言う大好きな音を聞きながら、カップを満たし、ごくりと呑(や)る。 「ぶはぁ、うめぇ」 思わず、にやりと笑いがこぼれた。
火もだんだん強くなり、宴もどんどんヒートアップ。 誰かがカシコイ橋渡し方法で、隣の井桁の燃えを手伝った。
ばっちり景気よく燃え出して、まさに俺好み。
mioちゃん、TKさん、ろろちゃん、俺。楽しくて、寒さなんかイッコも感じない。
全景。な? 山賊宴会したくなるだろう?
と、クルマが近づいてきた。 「マスターが直接これるわけねーし、誰だろう?」 と思ってると、mioちゃんのトモダチKY君だった。 河原キャンプで何度か差し入れをしてくれた男だ。 「どーも、KYです」 言いながら差し出されたのは、日本酒とワイン。どちらも秩父の地酒だ。
「おぉ、ありがたい!」 酒と、それよりうれしい新たな参加者に大喜びしながら、かみさん、カパカパとジャックダニエルを干してゆく。ナオミでも居ればストップかかるだろうが、今日はノーリミット。ろろちゃんが横で、「大丈夫かなぁ。呑みすぎちゃダメだよ?」と心配してくれるのにも関わらず。 「大丈夫、だいじょうぶ! 超ぉたのしいじゃん」 前後の繋がらないセリフを吐いて、ゲタゲタ笑うダメ人間。 ろろちゃん、いつもありがとう。 イッコも言うこと聞かないでごめんね。
左からKYくん、eisukeさん、手前に来てろろちゃん、奥の赤い服がPOPOさんで、薪の束を男らしく蹴飛ばしてるのがテキサスの荒馬よしなし先生。その横の青い服がTKさんで、一番右が秩父の変態コトmioちゃん。その奥、小さく写ってるのがちびmio。 この段階で総勢9人。
焚き火で一升瓶ごと燗をつけられる、秩父の地酒『武甲』。 しっかりと日本酒らしいクセがあるから、ダメなヒトにはダメだろう。俺は好き。
「TKさんとKYくんがごっちゃになる」 mioちゃんのトモダチふたりに絡み始めた、メンドくさいオヤジ筆頭のかみさん。 俺の中では誰のダチだろうと『火を囲んで呑んじゃえば俺のダチ』でもあるのだが、問題なのは酔っ払った俺が、『それはおまえの言い分で、向こうはそこまで馴れ馴れしくない』と言うもっとも重要なポイントをチョイチョイ見失いがちなことにある。生まれてから、人見知りしたことないから。 もっとも、mioちゃんのダチってことは、変態に決まってるので、まあ問題はないんだけど。 万が一、そこまで変態じゃないとしても、俺に会わせる段階でmioちゃんがクズっぷりを説明してるだろうしね。つーか説明もしないでイキナリ会わせたとしたら、そりゃ会わせるほうが悪いよ。俺の実弟でさえ、俺を知らない人に会わせるときは、 「異常にフランクなオトコだけど、ビックリしないでね」 ってわざわざ注意するんだから(そこは反省しましょう)。
でまあ、酔っ払った俺はゴキゲンでTKさんやKYくんとも話をした。 話をしたつーか、俺がバカ話してるのを苦笑しつつ聞いてもらったってカンジかな。
マスターがやってくると聞いていたのだが、ヤツはこの場所を知らない。 なので、俺の電話はフリーにしておきたい。 しかし、コレだけ酔っ払ってくると、俺の悪い癖が顔を出す。得意の泥酔電話攻撃だ。ろろちゃんに、「いつもレポで悪いクセだって自分で言ってるじゃん」と突っ込まれつつ、ココで引いたらかみさんじゃない。そこへもってきて、こちらもいい具合に出来上がったmioちゃんが引き金を引いた。 「かみさん、かっくんの電話番号、教えてください」 普通なら、『イキナリひとの電話番号を教えちゃう』なんてありえない。 だが、mioちゃんは福井のかっくんとすでにマイミクになってるみたいだし、かっくんも俺のレポでmioちゃんってオトコの存在とバかさ加減はわかってる。そしてかっくんもバカだから、バカなmioちゃんが好きに違いない。となれば、電話番号を教えたところで、何の問題もない。 バカにバカの電話番号を教えても、バカが共鳴して楽しくなるだけに決まってる。 美しいほどの純粋論理によって、そう結論を導き出した俺は、電話帳を見ながらかっくんの番号を読み上げる。みんなニヤニヤしながら、その様子を伺っている。やがて、かっくんが電話に出たのだろう、ダメ人間は、「あ、もしもしどうも。mioです」と、話し始めた。 そして、やはりバカ同士は一瞬で共鳴した。 電話の声なんてもちろん聞こえないから、mioちゃんの言葉でかっくんの様子を推理するしかないのだが、ものの三十秒で打ち解けたことはすぐにわかった。そこからしばらく話し、今度はよしなしにバトンタッチ。よしなしは前にかっくんと会ってるので、会話はすぐにいつものバカ口調。 やがて、電話は俺に回ってきた。 もちろん俺も、久しぶりのかっくんの声に、ニヤニヤしっぱなしだ。
そして、コレでカンペキに火のついたかみさん。 しかも、『自分の電話をフリーにしておいて、宴会電話が出来るシステム』も見出したのだ。 止まるわけがない。 「よしなし! 携帯を出せ! 今からムラタの番号を言うから」 しょっちゅう俺の泥酔電話被害にあっている大阪のムラタが、今宵も被害にあう。ムラタと同い年で仲のいいよしなしがしばらく話したあと、もちろん、俺にも電話が回って…… 「あ、ムラタさんに掛けてるの? 俺も話したい!」 mioちゃんが電話を奪い、ムラタと話し始める。 その辺からカオス(俺のドタマが)になって、あとはもう、誰が誰と話したのやら。 少なくとも俺は、ビタイチ把握してない。
と、暗闇の中、こちらへまっすぐ向かってくるクルマが一台。 「だれだ?」 みなで注目していると、降りてきたのは銀星&銀子の夫婦だった。
「ぎゃはははっ! おめ、仕事はよ?」 「この人が行きたいってウルサイから、いつも30食くらいのところを、『50食売れたら行ってもいいよ』って言ったんですよ。そしたらこのひと、ホントに売り切っちゃって」 銀子が肩をすくめて笑ってるのを尻目に銀星は、
皿に盛られた自分の店、『ハッピースターバーガー』のハンバーガーを差し出して、うれしそうに笑ってる。栃木を夕方四時にでたつーんだから、本当に来たかったんだろう。その気持ちに、こちらも嬉しくなるが、そこは俺。そして銀星。 嬉しいと素直に言葉にせず、つい、悪口雑言を吐く。 「おめ、相変わらずバッカだなぁ」 へへへと笑う銀星は、本当にいい顔をしてた。
そしてハンバーガーは、もちろん美味かった。 ろろちゃんが、悔しそうな顔で 「おなかいっぱいだよぉ」 「じゃ、食わなきゃいいじゃん」 「食いたいんだよぉ」 どうしろつーんだ?
「火が足りない」 他の人間はまさかの、そして俺だけは確信していた事態に陥(おちい)った。 酔っ払った俺の目の前にいいだけ薪(まき)を積んで、「これだけあれば大丈夫」なんて、そりゃあ無茶ってもんだ。ちょっと火が弱くなると、「さびしいじゃねーか」と薪を足し、チビmioが火を見つめてると、「おお、チビmio! もちっと燃そうぜ」と薪を足し。ガンガン燃え上がる炎を見ながら、 「おぉ、景気よくなってきた。ハデにいかないとな」 などとドタマの悪いセリフを吐きながら、延々と燃やしてきたのだ。
よしなし用意しただけでも、こんなにあったのだが。
「まさか、なくなるとは思わなかった」 「どうする? 薪を調達してこないと」 などと相談してる連中の横で、景気よく薪をくべる41歳。 「あ、かみさんダメだよ、薪が足りなくなる」 「だから、言っただろう。薪は幾らあっても足りなんだ!」 ゼンゼン事態の解決にならないやり取りの後、mioちゃんがまだ酒の入ってない銀星をつれて、薪を調達しに行った。mioちゃんがつーか俺が、「おめ、呑む前にmioちゃんと薪を取って来い」つって、こき使ったんだけど。銀は素直にmioちゃんと出かけて行った。 しばらくして調達されてきた薪を見て、一同、大爆笑に襲われる。
「なんだこれ、ハシラじゃねーか」 「明らかに、薪ではないな」 「だからー、コレをナタで割って、薪を作るんじゃないですか」 言いながらmioちゃんが、木のカタマリにナタを振り下ろす。 と、次の瞬間。
ナタの柄がボッキリと逝ってしまった。 「ぎゃはははっ! ナタ、根性ねぇ!」 「うわ〜折れちゃったよ、どうしよう」 どうしようもクソも、ここに空手の達人がいない以上、このままくべるしかないわけで。
「おぉ、燃えるには燃えるけど、デカいくせに燃え方は地味だな」 「かみさん、せっかく持ってきたのに、地味とか言わないでくださいよ!」
だって地味なんだもん。
銀星夫婦も加わって、これで総勢11名。 あとはマスターが来れば、全員集合だ。
騒いでると、ろろちゃんからオーダーが入った。 「かみさん、ココにもちょっと火を持ってきてよ」 そう言いながら、目の前のスペースを指差す。おそらく、寒いか何か料理を作るだかでチョコっとだけ火が欲しかったのだろうが、泥酔かみさんにそんなこまっしゃくれた調節は出来ない。皮手袋をして燃えまくってる木のブロックを引っ張り出してくると、
さらに薪をくべて盛大に燃やす。 「おほっ、いいじゃない。火が広がってハデになったね」
「誰がそんなにたくさん欲しいって言ったんだよ〜! ちょっとでよかったのに〜!」 ろろちゃんが悲壮な声を上げるが、時すでに遅し。 サイは投げられたのだ。
結局、俺のせいで薪の消費スピードが上がってしまったので、せっかくmioちゃんが薪を持ってきたのにも関わらず、この後も、薪の節約に心を砕かなければならないハメになってしまった。もちろん、心を砕いたのは俺以外の人々なんだが。
KYくん、eisukeさん、POPOさんはちょっと切れちゃってる。ごめんなさい。 てな調子で、宴は続く。
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