The 98th big machine club

2010.12.11-12 第98回でっかいもん倶楽部 in 秩父

―星降る夜空に(後編)―

前編はこちら

 

やがて……あの男から電話が入る。

着信を見た俺は、ニヤリと笑うとゴキゲンで電話に出た。

「もしもーし!」

「うわ、超ぉテンション高けぇ、うぜぇ」

「おめーな、こっちぁ火ぃ囲んで酒ぇ呑んでんだぞ。テンションも高くなんだろうよ」

ちょいちょい会った事はあるが、一度ゆっくり話したいと思ってたオトコ、マスターだ。デカいチームのアタマで、若いのに経験値が高く、めちゃめちゃデキたオトコなんだが、そんなカタガキや説明なんぞ一瞬で忘れさせる、バカで気持ちのいいヤツだ。

「今、ドコよ?」

「影なんとか」

「んじゃ、わかる人に迎えに行ってもらうよ」

つわけでmioちゃんとTKさんが迎えに行く。

 

んで相変わらずバカやって騒いでると、ほどなく、ドヨドヨとお下品な排気音が聞こえてきた。

ノーマルマフラーのはずなのに。

「お、来たな」

電話でナオミとしゃべってる銀子は放っておいて、ヤロウみんなでマスターを迎えに出る。例の有名なハヤブサフェイスをノーマルに戻した、マスターのM109R、通称『くじら』は、前日だかにインストールされたGSRのウインカーのエッジも鋭く、巨体をのっそりと河原に停めた。

久々のマスターは、ヘッドランプに照らされまくってまぶしそうにしつつ、ニヤりと笑う。

それからeisukeさんがクルマのエンジンをかけ、ライトで照らし出してくれる中、

ヤツがテントの設営を始めた。

俺はイッコも手伝わずにその様子を見ながら、「おぉ、ワンタッチテントじゃん! どーよこれ?」とか、ただただジャマになる余計なことばかり言ってた。

やがて設営も終わり、

マスターも山賊宴会の輪に加わる。

mioちゃん&チビmio、ろろちゃん、TKさん、POPOさん、eisukeさん、よしなし、KYくん、銀星と銀子に、マスター、そして俺と、総勢12人にもなる大宴会は、こうしてついにハイライトを迎えた。そしてもちろん、この段階で俺はベロンベロンの泥酔状態だ。

マスターとゆっくり話すとか、すでに不可能な状態。

もっとも、俺のバカさを見て笑いつつ、あっという間にマスターもみなと打ち解けたようなので、まるっきし役立たずだったわけでもなさそうだ。いや、俺なんか居なくても、ヤツはすぐに打ち解けただろうけど、それを言っちゃあ、俺がただの酔っ払いになっちゃうからね(ただの酔っ払いです)。

マスター、次に会ったときは、ゆっくりいろんなことを話そう。

 

銀星とKYくん。

 

悪いこと覚えちゃった、チビmio。

 

騒いで、呑んで、喰って。

そして時折、空を見上げれば、ドタマの上にドカっと広がる、

満天の星。ほとんど写ってねーけど。

 

「ああ、星が綺麗だなぁ」

本当に心の底から、そんな言葉が湧き上がってくる。

凛(りん)と冷えた透明な夜気の中、

気持ちのいい連中と共に見上げる星空の、どうにもたまらない美しさ。

思わず、ぶるっと震えがきたり。いや、もちろん寒いのも寒いんだけど。あと、なんかイイコト言ってる風だけど、泥酔した俺は、同じセリフを何度も何度も繰り返してたそうだ。「星がきれい」「星がきれい」ってうるせぇくらいに。そしてもちろん、俺は一回しか言った覚えがない。

酔っ払い、超、うぜぇ。

 

誰がいつ帰ったのか、イッコもわからないまま酩酊したかみさん。

自分勝手にゴキゲンで呑んだくれ、ジャックダニエル一本、丸々ひとりで空けてしまった。

当然、このへんからまるっきし記憶がないのだが、(ま、今までの部分も怪しいものだが)それでも、楽しかったことと、星がとんでもなく綺麗だったことは覚えている。

そして、マスターに「クズども」だと前置きしつつ紹介した、目の前にいるこの連中と、こうして呑んだくれたり大騒ぎできるシアワセは、「何物にも換えがたいな」と思ったことも。まあ、そのほかの俺の醜態は、連中の誰かが書くだろうから、それを参照して欲しい。

そんなわけで、思いのほか寒さもゆるめだったステキな夜は、こうして更けていったのだった。

 

 

 

 

と思ったら大間違いだった。さすが秩父。

てめ、mioさんの地元ナメんじゃねーぞとばかりに、夜中の攻撃が始まった。

も、寒くて仕方ないのだ。

いやまて、わかってる。酔っ払って暑かったからって、Tシャツとパンツで寝た俺が悪いのは、充分に理解している。だが、だとしてもだ。ジャック一本空けた俺のドタマには、『寒いなら持ってきた服を着ればいい』という単純な図式が浮かんでこないのだ。

しかし、このままだと凍死する事も間違いない。

さてどうする?(服を着ましょう)

 

俺の取った行動は、テントの説明書には大抵、「やってはいけません」と書いてあるモノだった。

テントの中でストーブ焚くと、バカみてぇに一瞬で温かくなる。

そして物を食えばさらに暖まる。

冬山登山でも、よく取られてる効果的な作戦だ(いいから服を着ましょう)。

暖を取り、肉を食って、とりあえず一息ついた俺は、ストーブを消して、幸せな気分で寝袋にもぐりこんだ。そして、しばらくすると寒さで起きる。ストーブをつける。暖まる。消して寝る。寒くて起きる。三回繰り返したあたりで、さすがにコレは根本的解決になってないことに気づいた。

ま、酒も抜けてきたんだろうが、ようやく服を着て、今度こそ気持ちよく寝袋にもぐった。

とりあえず、テント丸焼きにしなくて良かったよ。

面白いけど、死ぬもんなぁ。

 

 

翌朝。

目が覚めると、すでに人の動く気配がする。

あのあと結局、暑くなって脱いでしまっていた、カドヤの最高傑作『毛布ズボン』をはきなおし、コンタクトを入れてからモタモタと表に出る。手を置いた単車のシート、ヘルメット、

色んなところが凍っていた。

 

くじらも、朝日を浴びて一息ついたように見える。

 

POPOさんのビーエムも、スクリーンがすっかり凍ってる。

 

ろろちゃんのビーエムは、日陰に居るからすげぇ寒そう。

 

向こうでは、POPOさんやよしなし、eisukeさんにマスター、ろろちゃんにmioちゃん親子が、

焚き火を囲んで話し込んでいた。

「お、かみさん起きてきた」

「生きてたか、おはよー」

「あ、おあよーごらいます」

むくんだ顔で起きてきた俺は、そのままモタモタと準備をして、まずは湯を沸かしコーヒーを飲む。メンドウなので、ドリップじゃなくインスタントだが、呑んだくれ明けの寒い朝つーシチュエイションが味付けになり、とても美味しい。タバコに火をつけて焚き火のそばにより、

みんなと朝からバカ話で笑う。

昨日はいったん家に帰ったTKさんも、オフロード装備を整え、戻ってきていた。

ケモ道最強のマシン、トライアルバイクに乗って。

 

それから、ものすげぇチンタラ時間をかけて、のろのろ撤収作業をはじめた。

とは言え、撤収しながら写真を撮ったり話をしたりするので、なかなか作業が進まない。

テントを干してみたりもしたのだが、

弱々しい冬の朝の太陽では、いかんせん力不足。

テントは持って帰って干すことに決め、若干ぬれたままで仕舞いこむ。

そして更に、ちんたらちんたら作業を進めつつ、写真を撮った。

 

だって、この景色を撮らないわけには行かないだろう?

 

「ろろちゃん、日陰に置いたままだと、バイクが永遠に乾かないよ?」

言われてろろちゃん、ビーエムを移動する。

ヘリポートのわきに置かれたビーエム。

眺めながら、「いい絵だなぁ」と思ってると、戻ってくるろろちゃんを見ながら、マスターがボソリと

ヘリに乗ってる人に見える」

なるほど、確かに見えるな。すげぇダメな空軍兵士に。

 

エンジン音が聞こえてきた。

帰ってたKYくんが、ジェベルに乗り換えやってきたのだ。

さらに、mio公も

ノリノリでやってくる。

TKさんとKYくん、mio公の秩父三人衆は、このあとケモ道へ繰り出すそうだ。

こちらは寒さで足が痛み、それどころじゃない。

つーか痛くなくたってユリシーズでケモなんぞ、誰が行くものか。

「ああ、そうか。脚が痛かったんだ。ふらふらしてるから、まだ酔っ払ってるのかと思った

シツレーな暴言にツッコみを入れようと思ったら、周りのみんな納得してやがる。

ヒトを何だと思ってるんだろう(酔っ払いです)。

 

よしなしとeisukeさんのクルマ組は、撤収作業が簡単な代わりに、火の始末をしてくれてた。

 

「かみさん、ETCヤバいんじゃないの?」

思いっきり凍ってるETC車載器を、誰かが心配してくれた。

しかし、俺はコイツがやれる子だと知っている。フューリィでキャンプしたとき、付けっぱなしでめちゃめちゃ結露したのだが、そのあと乾いてからキーオンしてみたら、普通に使えたのだ。撤収作業しているうちに、車載器はすっかり乾いていた(俺認識)ので、気にもせずキーオン。

「ピー! ETCカードが挿入されました」

ほらみろ、超、強い子だ。

 

そのままユリシーズのセルを回すと、

ぶるん! と震えながら相棒が起きた。

「わははは! すげぇゆれてる」

有名なビューエルのアイドリングでみなの笑いを取ったら、充分に暖気しつつ。

MP3プレイヤを取り出して、ヘッドフォンを耳に突っ込み、ヘルメットをかぶってグローブをする。

出発の準備が出来たところで、みなに片手を上げ。

大きな声で(ヘッドフォンしてたから)

「んじゃ、またね!」

山賊どものステキな笑顔に見送られ、俺はゆっくりと走りだした。

いやぁ、楽しかった。

みんな、また呑んだくれようぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、もちろん終わらないのがマーマレードスタイル。

俺の相棒としては歴史の浅いビューエルだが、メリケン製のクセにきちんと空気を読むようだ。

「このまま終わったら、かみさん的に美味しくないだろう」

と、余計な気を回したのか回してないのか知らんが、ヤツなりに有終の美を飾ってくれた。

高速をゴキゲンにすっ飛ばしてると、どうもリアブレーキの効きが悪い。もともとビューエルってのは、リアの効きが弱いのが仕様(エリックビューエルはレース畑のヒトなので、リアブレーキは姿勢制御装置程度にしか考えてないフシがある)なのだが、それにしても効かなすぎ 。

つーか、も、明らかにブレーキペダルがおかしなところまで降りてしまう。

「うわ、ブレーキオイルが抜けたか?」

リアブレーキがスカッとなるのは、かみさん最大のトラウマ

しかもオイルに乗ったら、事故は免れない。

なので、とっとと停めて確認すると……

 

 

 

 

 

見れこのブレーキペダルの盛大な下がりっぷり。

もはや、ブレーキオイルなんて甘っちょろい問題じゃなかった。

よく判らない?

んじゃ、アップにしてみようか。

 

まさか、マスターシリンダーのネジが二本ともゆるんで飛んでくとは思わなかった。

「いっや、ボルトが緩みやすいとは、わかってるつもりだったけど」

さすがに俺も、コレはカンペキに予想外。ま、オイルが漏れて転ぶという事態だけはなさそうなので、とりあえずそのまま走り出し、「フロントブレーキだけでもいけるな」とつぶやきつつ、柏にたどり着いたところで。本日のCrazy Marmaladeでっかいもん倶楽部は、なんとか無事に終了。

最後のおまけはともかく、最高に楽しい二日間だった。

 

まだまだ寒い日は続くけど、集まって騒げば寒さなんてなんのその。

またやるから、また呑もうぜ!

参加したことないキミも、次は一緒に呑もう!

 

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