The 14th small machine club
2007.09.24 第14回ちっちゃいもん倶楽部 ケモライド オールコース・ラン
さて、最近ドハマりのケモライド、二回目の挑戦。 今回行くのは、前回行ったコースに、その先のホンキで厳しい地獄のコースを加えたオールコース。この間、散々しんどい思いをしたあそこを前哨戦にするとか、正直、『なに言ってんだ、アンタ?』って話なんだが、そんな俺やK君の心の叫びは、あの男の胸には届かない。
日曜日、何とか風邪を退治して、雨の中、moto家に向かって走り出す。 moto君の実家で待ち合わせ、例のトレーラハウスで一服しながらしばらく話し込んだ。それから彼の家に向かい、愛妻Tちゃんと、愛息Nくんにご挨拶。と、晩飯の材料のひとつを買い忘れたというmoto君が、スクーターに乗って買出しに出かける。 そう。 ここで俺は、彼の愛妻Tちゃんとふたりっきりになったのである(息子がいます) となれば、スケベ大魔神の誉れも高い俺様が、ちょっかい出さないわけがない。さくさくっと口説いて彼女と心を通わせた俺は、ダンナの居ぬ間にと、彼女の身体に手を這わせた。Tちゃんは力を抜いて目を閉じると、俺の手に身体のすべてをゆだねたのだった(完) 完じゃない。 いや、今回、moto君の家に前日入りした理由のひとつに、Tちゃんの首の調子が悪いから診てやってくれまいか? と言うのがあったのである。コレでもいちおう、この道20年なので、それじゃ、ケモライドでそっちに行く機会に治療しようか、と約束していたのだ。 Tちゃんを治療しているうちに、moto君が帰宅。 入れ違いに、こんどはmoto君の腰を診る。腰つーか腰をかばってイカれかけてる脚やケツなんだけど。前回のケモライドの後、moto君の動きを見てて、脚の動きがおかしいなと思ってたので、いい機会だから一緒に治療しとこうと相成ったわけである。
愛息Nくんをからかいながら、moto君の治療も済み。 さて、ビール飲もうぜ!
moto君とN君。溺愛してるが、甘やかさない姿勢は好感が持てる。
Tちゃんとmoto君。こっちは、もう少し甘やかしてあげなね? moto君とは何度も飲んでるし、話も会うから楽しくて当たり前なんだが、Tちゃんも話しててすごく楽しい子だった。単車の話や、いろんな話で盛り上がれるダチと飲んだくれるだけでも最高なのに、傍らには可愛らしい女の子が、一緒に飲んで笑ってるのだ。 そりゃ、絶好調に楽しい宴会に決まってる。そのかわいい女の子が人の嫁さんだとしても。 いや悔しくない。ホントだ。ホントにホントだ。俺の目を見るな。食いつくぞ。
ビール、焼酎、日本酒。合わせるつまみは、moto君が目の前でさばいてくれた秋刀魚刺。延々と飲んだくれ、笑いっぱなしの、しゃべりっぱなし。も、これ以上楽しくなったら、俺、ひきつけ起こしちゃうかも的な盛り上がりの中、不意にmoto君がつぶやく。 「かみさん! このまま寝ないでケモライドいきますか!」 と言う何を発病したんだこいつは的セリフに時計を見れば、3:00ってなに? あわてて(自分の)スイッチを切り、用意してもらってた布団にもぐりこんだ。
翌朝、『かみさん、やばい!』のセリフに起きた俺は『今何時?』と質問を返す。 返ってきた答えが、7:30。うん、完璧に寝過ごしたね。たしかK君と待ち合わせた時間は5:00だったよね。飛び起きて荷物をまとめ、慌てるあまりTちゃんに挨拶もしないで(Nくんにはした)moto君のクルマの後ろについて、待ち合わせ場所へ。 ま、結果的にはK君も遅刻してたつーか、moto君が起きられたのは、K君からの遅刻をあやまる電話が来たからだったのだ。K君、思いっクソ寝坊して、ビビりながら恐る恐る電話してみたら、モノすげぇ不機嫌そうなmoto君の声が聞こえて、慌ててすっ飛んできたらしい。 ま、不機嫌だったんじゃなくて、起き抜けの寝ぼけ声だっただけなんだが。 moto君のトラックに、三人の単車を積んで、いざ、ケモライドコースへ。 前回はあまりよく道を覚えてなかったので、今回はしっかりと道を頭に刻みながら、途中、moto君のTTRにガソリン入れたり、朝飯や昼飯、ケモライド必須アイテムのスポーツドリンクを買ったりしつつ、ようやく、D山駐車場に到着。
今回は、前回のコースにプラスして、moto君が彼のケモライド師匠であるtomohitoさんに教わったより一層へヴィなケモノ道を行くわけだ。こういう情報と言うのは、知らない我々にとっては、まさに値万金、宝石よりも貴重なものである。 心から感謝するとともに、教えなきゃよかったと思われぬよう、また恩を仇で返すことにならないよう、ケモノ道ルールをきちんと守って走り、伝えるように努める所存だ。と言うわけで、場所の詳細など、明記しない部分もあるが了承されたい。文章硬いな。
前回と同じ場所から、同じようにケモノミチへ入ってゆく。 あれから、それほど日がたってない(約二週間)ためか、セクションやそのつなぎも、なんとなく記憶にある場所が多い。全体の長さの見当もだいたいつくので、精神的にすごく楽だ。フロントフォークを落として足つきを良くしたのも、すごく効いてる。まるきし怖くない。 怖くないから、大胆に攻められる。 結果、あっという間に前回最大の難所だったポイントに到着した。 そんな俺とは逆に、今回かなり苦しい思いをしているのがK君。 なんとこの男、先日、サーキットでモタードをやってきた時のハイシートのまま、今日この場に来てしまっていたのだ。そう、片足つんつんバレリーナ状態でケモノミチ。なにゆえそこまで男道なんだK君? どんだけ求道精神あふれてンだって話だ。 Vの入り口で、ヘバるK君。 なんつって余裕こいてるけど、俺も休憩して初めて、結構疲れてることに気づく。精神的に楽だから気づきづらいだけで、ケモライドは、身体への負担が大きいと言う証明だ。びっしょり大汗かいて、昨日の酒、全部出ちゃったしね。 寝坊のせいで時間もない。と言うことで難関セクションは、協力体制を敷いて引っ張り、押しながら登る。ま、moto君はほとんど助けなしで上がっちゃったけど。思うに、ヤツの単車にはジャイロか何かがついてるに違いない。 前回の最終休憩ポイント。 今回はココから戻らずに、さらに先へと踏み込んでゆくことになる。ここで飯を食い、休憩を入れてから、いよいよまだ見ぬ地獄へと連れて行ってもらうわけだ。なんだかんだ、息が上がっていて、固形物が取れる状態じゃなかったので、俺はウィダーインゼリーで済ませた。
さぁ、休憩もいれたことだし、いよいよ出発しますか。 とここで、俺とK君にとって非常に幸いな出来事が起こった。 今回のコース、半端じゃないとmoto君に脅かされていたので、実は、前述のtomohiroさんを筆頭にココを走った方々のブログを精読して、ある程度知識だけ仕入れていた。その中でも、かなり厳しそうだとビビっていた、『つるつる坂』と呼ばれるセクション。 そこに来た時に、moto君が意外そうな声を上げる。 「あれ? 今日はぜんぜん滑らない」 きっと気合で風邪を治した俺や、ハイシートでセクションに挑む『魁男塾』K君を、神が哀れんでくれたのだろう。もっとも通過に苦労するだろうと思われていた場所が、少なくとも普段よりは圧倒的に登りやすいだろうコンディションになっていたのである。 事実、俺もK君も転倒一回で、何とか登ることが出来た。 いや、つっても言わせてもらえれば、俺にとってはぜんぜん登りやすい状態ではなかったけどね。アレが濡れてて、立ってることもままならないほどすべると言う、『いつもの状態』だったら、俺なら近くにテント張って舗装されるまで待ち続けるね、ホント。 で、この写真の奥の方から出てきたところで、目の前に舗装路が見えた。 「お疲れ様でしたー! これで終わりです」 moto君の言葉に、思わず目が点になる。コレで終わり? うそでしょ? 他の人のブログじゃ、もっとイロイロ難所があったような気がしたんだけどなぁ。なんて腑に落ちない顔をしている俺の横で、K君が安堵の表情を浮かべている。ハイシート、キツかっただろうからなぁ…… 「なワケねーだろ! こっからが地獄の始まりだよ〜ん!」 絶望。 この言葉を顔にしたら、このときのK君の顔になるだろう。もちろん、うすうす分かってはいたんだろうけれど、それでも「終わり」の言葉に安堵してしまった、彼の素直さが敗因だ。むしろ、moto君の鬼っぷりの勝利。さすがに自他共に認めるドS。恐るべし、moto。
さらに、↓この場所の前でmoto君、明らかに様子のおかしなことを言い始めた。 「ここが入り口です」 え〜と、君は俺に見えない誰かとお話してるのかな? 少なくともその『入り口』ってのが、俺の脳には認識できないんだけど? こうなればとにかく、moto君の後ろについて走るしかない。moto君、K君、俺の順番で地獄へと入っていくわけだが、先がどうなっているのか、俺には一切わからないので、ある程度、車間距離をあけて走りだした。んで件(くだん)の『入り口』とやらに進んでゆくと。 「おわっ」 いきなり数十センチの落差。 何とか転ばずに先へ進むと、しばらくの間は延々と下りが続く。いや、この日本語では、俺の体験を正確に表記できてない。斜度45度の下り坂、それも道幅なんてないに等しい下り坂の一面が枯葉で覆われている。もちろん、片側はガケだ。 上の写真を見ながら、モニターを上に向けて、斜め45度くらいに傾けてくれ。 傾けた? 横から見たら『イ』こんな風になった? じゃぁ、イメージしてみて欲しい。 そこをバイクで下るのだ。 左に落ちたら確実に大怪我するから、気をつけて。
俺とK君は表情を引き締め、緊張しながら気合で下っていく。当然、一度や二度すっ転ぶのだが、さすがにここで派手にすっ転んだらいろんな意味で後がないので、俺は何とか自力でリカバリできるところに踏みとどまる。 K君は一度、下りながら転んだのに、単車が登り方向に向いていると言う、なかなかハデな転び方をしてた。さすが男塾。そのあとリカバリにチャレンジするも、あえなく断念。moto君がヘルプに入るが、そのmoto君でさえ、さすがにてこずって『クソッ!』と叫んでいた。 一瞬、軽く殺伐として、申し訳ないけど、俺はニヤついてしまった。 遊びってのは、ホンキでやればやるほど、楽しい。そのあとも、セクションとセクションのつなぎって言うより、俺にとっては全域がセクションみたいな道を、おっと間違えた、これはもう誰がなんと言おうと道じゃない場所を、moto君はガンガン進んでゆく。 一方、難所のたびに、俺を振り返って不安げなまなざしを送ってくるK君。 (お互い、かなりきびしいよね。でも、がんばろうぜっ!) と、弱者ふたりはアイコンタクトで会話しつつ、何とか進んでゆく。そのうち、ある場所でK君が転んだ。そのとき、寡黙な彼には珍しく『ヴァッ』とか日本語で表記するのが非常に困難な悲鳴を上げる。しょっちゅう『ぬぉっ!』とか叫んでる俺と違って、あのK君の悲鳴だ。 こりゃヤバいっ! 慌てて駆け寄ると、K君、V字の壁と車体で右足を挟まれている。右足と言えば、すぐそばにあるのは、カンカンに焼けたエキパイだ。俺とmoto君で車体を起こし、K君に様子を聞くと、ねじったり火傷したりはなくて、単純にはさんだだけらしい。ほっと安心。 ついでにココで、休憩となった。 見切れてるのはmoto君。moto君の居るところを、V字を右に見ながら進んでゆくのだ。
疲労で心折られかけているK君。モザイクの下はすげぇ悲しい笑顔だったりする。
K君の右足の痛みが引いたところで、またも走り出す。 も、どんな所をとか、どのくらい難しいとか、どんだけしんどいとかは書けない。実際に体験する以外に、伝える方法はないと思う。ただひとつだけ実感できたことは、この間と今回の、たった二回のケモライドだけで、知らない間に、単車の扱い方がずいぶんと変わってきた。 なにをすべきか、少しずつ分かるようになってきたし、分かったことを実際にやれるようになってきたのだ。もちろん、ベテランケモライダーから見れば児戯に等しいだろうが、たとえば必要なときに、きちんとフロントアップしたりとか、いつの間にかできるようになってる。 これほどしんどいのに、それが嬉しくてニヤニヤしてしまうのだ。
深い泥水の中を走り、ぐちゃぐちゃのドロの中を走り、V字にタイアを取られ、ガケにすっ飛びそうになり、木の根に足を取られ、ツタにからめとられ、車高より低い倒木をくぐり、アクセルを開け、クラッチを使い、立ち、座り、とにかく走って走って、走る。 やがて、沢のそばで休憩になった。 あぁ、やっぱり写真じゃ伝わらない。 俺の撮影がヘタなのももちろんあるだろうけど、身体から湯気を上げつつ沢に下り、冷たく澄んだ沢の水を頭からかぶったときの、全身から邪気が抜けてゆくような爽快感。それを感じながら、ふと見上げた先にあるこんな風景は、もう、たまらなく甘美だ。 水は思わず笑みがこぼれるほど、冷たく美しい。
沢のそばに身を置くだけで、不思議と、素直で穏やかな表情になってゆく。
たっぷりと沢の水で身体を冷やし、自然の恵みに癒されたら、さぁ、走り出そう。 とはいえ、道はもちろん有って無きが如し。moto君こそ、セクションを越えながら『きゃっほーっ!』とかありえない元気っぷりを発揮しているが、俺とK君はほうほうの体(てい)で、相変わらずアイコンタクトで励ましあいながら、moto君の後を必死に追う。 草ぼうぼうの急坂(当然、すべる草の上を下る)だの、イノシシのドロ浴びの跡だの、倒木越えだのを、とにかく、最後の力を振り絞って、残った体力とわずかばかりの技術を総動員して、修験者の表情で進んでゆく。 と。 舗装路だ。 振り返ったK君の顔に、安堵の笑みが浮かんでいる。俺の顔も、もちろんゆるんでいる。一般的には、ものすごく荒れて、落ち葉の渦巻く走りづらい道なんだろうが、ケモノの後は話が別。俺とK君にとっては、高速道路より広くて安心できる、走りやすさ抜群の道だ。 その道で、昼飯を食った水のみ場まで戻る。 この間、ここで出会った老夫婦と、今回も偶然再会した。おじさんも、おばさんも、相変わらず元気だった。なんだかうれしくなって、俺は疲れて寝転がりながらも、ニヤニヤとしてしまう。程よく休憩を入れたら、さて、最後はあの尾根越えルートだ。 気を抜かず、最後までしっかり走ろう。 ここで俺とK君が順番を入れ替え、俺はmoto君の後について走る。つーかね、この尾根越えルートだって、一般的に言ったら、充分すぎるくらいガッチリと林道なワケだよ。落っこちたら絶対引き上げられないようなガケが、場合によっては両側にあるんだよ。 moto君、飛ばす飛ばす。 それでもボケっと走るよりは緊張が続いてキッチリ走れるから、俺も気合を入れてmoto君を追った。時々離されるけど、先が急に倒木でふさがれてたりするので、そこで減速せざるを得ない分、何とか見失わずに走ることが出来た。もちろん、K君もガンガンぶっ飛ばしてる。 数十分、体感的には数分で、俺たちは無事、駐車場に帰り着くことが出来た。
moto君とK君は、ここでトラックにバイクを積んで帰り、俺はこのまま柏へ帰る。 着替えて、帰り支度をしたら、今回のcrazy marmalade ちっちゃいもん倶楽部は、全身筋肉痛で、どこをどう動かしても筋けいれんを起こすほどボロボロになってる癖に、妙に『終わりたくないなぁ』と後ろ髪を引かれながら、無事終了だ。
気の毒なランツァ。ちょうど納車一ヶ月にして、すでに当初の面影なし。
これが、オトコK君の魂のハイシート。ひとりだけ、明らかに腰の位置が違う。
このあと、駐車場でランツァの試乗会をやった。 K君が乗ったら、お次はmoto君。 変態ライダーの面目躍如。いろんなパフォーマンスを見せてくれる。あんまりすげぇので、うっかりず〜っと見とれてしまって、動画ほとんど撮りはぐった。ごめん。ちょっとだけ撮れたやつを編集したので、ヤツの変態っぷりの片鱗でも味わって欲しい。
オフロードに乗り始めて、ちょうど一ヶ月。 その間に二回、ケモライドに参加させてもらって、俺の単車に対する姿勢が、だいぶん変化し始めている。SDRの時も感じた操る喜び。アレに数倍する操る喜びを、この新しいステージは俺に与えてくれるのだ。楽しくて、楽しくて、ひきつけ起こしそうだ。 最初こそロードに、それもクルーザーで攻める走りに、何かしら生かせるといいなぁくらいの考えでしかなかったが、今、俺はオフの面白さにどっぷりとハマっている。単車ってのは、まだまだ、こんなに奥が深くて面白いんだ。操るってのは、こんなに難しくて楽しいんだ。 この先なにがどうなるなんて、俺自身、見当もつかないけど。
俺は、単車に乗ってられりゃ、ハッピーだよ。
|