The 23rd small machine club

2007.02.03 第23回ちっちゃいもん倶楽部 in the snow

〜狂気準備集合罪〜

 

天気予報はバリバリ100%、雪。

雨じゃなくて雪だ、つってんのにケモ道を走ろうとか、企画段階で狂人なのだが、集合するメンツに今更そんなことを言っても、どいつもこいつも反省とか熟慮とか、ひとしずくたりとも持ち合わせがない。そしてもちろん、俺もそのうちのひとりだ。むしろ筆頭だ。

だが、朝起きて目の前に現実を突きつけられたときは、さすがに軽くめまいがした。

 

ウチの裏。

墓に雪とか、朝から見て元気の出る風景ではない。

 

この絵も、できれば見ないフリしてやり過ごしたい部類だ。

だが、集合時間は8:30。現在時刻6:20。普通に行っても二時間近くかかる場所なのに、もう、明らかに間に合わないくらい時間が押してる。遅刻すると、セクション二往復とかキチガイ沙汰のペナルティをさらっと与えるmoto君だけに、ここは迷ってる暇はない。

用意したボックスをリアに積むと、俺は雪の中をそろそろと走り出した。つっても俺がいくらバカだってアスファルトの上に積もった雪の上なんて走ったことがないので、試しにリアブレーキを軽く踏んで、どのくらい滑るか試してみる。

と。

ねぇマスター、軽く10メータくらい滑走するんだけど、これなに?

この段階で引き返そうかと思ったが、まだコケたわけじゃない。一回転んだら、ヘタレと言われようがなんと言われようが帰ろうと心に誓って、国道16号へ出る。まぁ、国道なら車も多いし、道路の雪もタイアに跳ね飛ばされて……飛ばされてないね。

日曜の朝6:20の交通量を考えれば当たり前なんだけどね。

もう、軽く死にたくなってきたよ。

 

真っ直ぐ走れば、どうにか走ることだけ出来なくもない。が、フロントブレーキなんか死んでも触れないし、リアブレーキもちょっと踏むとすぐにケツが流れる。かといって2サイクルのランツァに、エンジンブレーキなんてこまっしゃくれたモノは付いてない。

Yes、その通りだ。俺には停まる術(すべ)がないのだ。

時速30キロから50キロくらいでのろのろ走り、車間距離を鬼のように開ける。それでも、下り坂で赤信号とか見えてくると、動悸が激しくなる。セバスチャン、マツモトキヨシで救心買ってきて。脳内セバスチャンにフルシカトされながら、神経をすり減らして走る。

10分ごとに心が折れて、帰るイイワケを探しはじめる。

 

やがて、どうにか千葉市内に入ったところで、道の雪が溶けてウエット路面になってきた。オフロードタイアは濡れた舗装路だと滑るなんて言うが、雪路面を走ってきた俺に言わせれば、サーキット並みの喰いつきを誇る最強の道路だ。この瞬間なら、ウエット路面でフルバンクできたね、俺。

千葉市内、国道16号が左に折れて高速沿いに走るくらいのところで、緊張が解けて寒くなってきた俺はコンビニに入る。そこで携帯電話を開いて、moto君に『今日は行くのか』と聞こうとすると、先にirohaとmoto君からメールが入っていた。

iroha「雪なのですがどうなんでしょう? こんなコンディションでも決行するんでしょうか?」

うむ、おまえの不安はよくわかる。俺も正直、現場にたどり着けるかどうか怪しい。

moto「K君のバイクのエンジンがかかりません。定刻の到着は難しそうです」

おぉ! K君、Good Job!

早速moto君に電話して、アホほど雪が降ってる旨を伝える。どうやら向こうは雨のようだ。雪の中より雨の中のが数百倍マシなので、ケモ道はやめてmoto家に向かうと伝えると、電話を切って走り出す。いや、ケモ道は雪でもかまわないのだが、そこに至るまでの峠道は舗装されている。

正直、舗装路の上の雪は、もう、お腹いっぱいだ。

moto家を目指して走り出すと、126号に入ってすぐ、雪は雨に変わった。俺の心も晴れやかに変わった。雨の中なら、何の問題もない。向こうで一服した後、ドロ遊びでもしようじゃないか。むしろワクワク気分でmoto家に着く。すでに三人は、キャンピングの中にいるようだ。

つーかね。

やる気マンマンの俺に対して。

 

なにこの温度差。

おめーら、走る気ねーだろ?

俺なんて、ケモ道の様子が変わってても大丈夫なように、単眼鏡まで持って来たっつーのに。

ヤツラのまったりモードに引き込まれ、このままコーヒーを飲みつつバカ話スタート。irohaが相変わらず絶好調で飛ばし、俺は腹を抱えてげらげら笑う。内容は、まぁ、irohaらしいエロ話が大半だったので、ココで詳細を書くのはやめておこうか。

 

暖房の効いたキャンピングの中でまったりしてると、やたらあくびが出る。ダリくなってきたなぁと思いならが横を見ると、K君もめちゃめちゃ眠そうだ。いかん、せっかくの休みをこのまま無為に過ごすわけにはいかない。なのでK君にちょっとハッパをかける。

「K君、単車直さないの?」

余計なコト言うんじゃねーよクソかみ的表情で目を見開いたK君に、moto君とirohaが追い討ちをかける。『そうだ、K君、直そう』『K君、手伝うことあったら言ってよ』続けざまに放たれる矢に、ついに崩れ落ちたK君は、悲しそうな顔でガレージに向かった。

こないだK君にトラックを修理してもらったmoto君は、さすがにお手伝いに出るが、俺とirohaは暖かいキャンピングの中で、さらにまったりと仕事や人間関係、単車の話で時間を過ごす。やがて、それにも飽きたので、K君の様子を見に表へ出た。

 

ガレージで修理をするK君と、それを見守るmoto君。

こんだここで、結局同じようなバカ話をしながら、K君の手伝い(だかジャマだか)をする。イロイロやるうちに、ようやくK君のDトラがしぶしぶとうなり声を上げた。直ったとなれば、室内でじっとしてる手はない。雨でドロドロかも知れないけど、せっかくだからオフ遊びに行こうぜ!

 

キチガイの祈りが天に通じたのだろうか。

走り出してすぐ、雨が雪に変わる。ちらちらと舞い落ちる、白く美しい花びらに見とれながら、とりあえずメシを喰うために、近所のうどん屋へ行くと。

あっという間にバカ雪。

うどんを喰って外に出るころには、アスファルトまでしっかり雪に覆われていた。

『また、雪@舗装道路かよ』と辟易しつつ、土のところまで行っちゃえば大丈夫だろうと自分に言い聞かせて、moto君の後ろを走る。つーかこの男は、ホントどんな状況でも負けん気が強い。ちょっとコナマイキな抜き方をする四輪がいると、雪の上でガンガンケツを振りながら追いかけるのだ。

その姿にあきれを通り越して感動さえ覚えながら、俺とirohaとK君はおとなしく走る。

 

やがて、いつもの場所とは別の、だだっぴろい場所に出る。

ごめん。

さんざんイロイロ言ってたけど、この景色見たら俺も火がついた。

ぎゃぁぎゃぁバカみたいな奇声を発しながら、雪の上を走りまくる。

 

もちろん、悲しそうな顔をしてたK君にも火がついた。

大笑いしながらみんなで雪の中を駆け回っていると、moto君と初めて会ったときに一緒にツーリングに来た、O君が偶然通りかかる。夏のツーリングから帰って来た日、moto家でバーベキューやったときに来た、キチガイ沙汰に面白い男だ。

 

俺らの姿を見て、ゲタゲタ笑いながら近づいてくる。

「雪の中、単車で走ってるバカがいるなぁと思ったら、見たことある単車だったよ」

そう言うOくんも、車の中で待たせてる彼女に

「でもさ、俺もオフロードバイクあったら、絶対ここに居るよ」

言ってたのを、俺は聞き逃さなかった。

 

moto君作、ゆきだるま。

コレでわかる通り、この段階で雪が降った嬉しさにハシャギメーターがレッドゾーンを振り切ったmoto君は、誰にも止められない状態になる。もちろん、そんなこと言ってる俺も、irohaも、わりと冷静なK君さえも、雪国の中学生みたいにほっぺたを真っ赤にしてはしゃいでる。

ま、俺たちのメンタリティなんてのは、こんなもんだ。

 

irohaのDRはトライアルタイアを履いている。

それに気づいた瞬間、またいで走り出すmoto君。広場のわだちを見てもわかるとおり、おとなしくしてるヤツなんてひとりもいない。見てるだけのO君でさえ、寒いのに震えながら、げらげら笑って俺らの狂態を眺めてる。静かな雪の房総に広がる、異空間。

 

小学生並みのドタマになったハシャギ大王。

「かみさん! ゼロヨンやりましょう!」

「乗った!」

この間、コンマ3秒。

一列に並んで、moto君がホーンで

「ピッ・ピッ・ピッ」。

緊張が高まり。

「ピーッ!」

みんないっせいにダッシュ!

しっかし、雪の上ってなすげーね。前に進まないこと、進まないこと。特にランツァなんて、キャバクラ嬢と貢いでる客の、店外での会話を超えるカラ回りっぷり。3速に入れてもホイールスピンしっぱなしで、悔しいとか負けたーとかより、ゲラゲラと笑いが先に出てしまう。

「やべー! 進まねー! ぎゃはははっ! ランツァ遅っせー!」

「イェー! かみさん、ビリー!」

「くっそー! もう一回だ、もう一回!」

四人全員、気が触れたみたいに笑いながら走る。

 

ちょっと休憩を入れても、タバコ吸いながら次のバカを思いつく。

「こんどは、バイク入れ替えてやりましょう」

「んじゃ、じゃんけんで勝ったやつから、好きなのに乗ろう」

「最初はグーな? せーの、最初はグー! ジャンケンポッ!」

俺がDトラ、K君がDR。irohaがTTで二番目に勝ったmoto君は、あえて不利なランツァに挑む。横一線に並んで、ピッ・ピッ・ピッ・ダーッシュ! 絶妙のトラクションで、ランツァを前に進めるmoto君。俺はモトクロタイアを履いたK君のDトラなので、俄然有利なはずなのだ。

しかし、俺の前をぐんぐん進んでゆくランツァ。

やっぱマシンじゃなくてウデなんだねぇ。

 

ゼロヨンにも飽きたので、今度はもう少し広い場所に行く。

直線を長く取って、さらに競争。やっぱランツァはビリッケツ。

一服したら、こんどは広場全体を一周する、オーバルレースを始めるバカ四人。

エンジンが止まってしまうirohaは、鬼キックを繰り返しながら笑ってる。K君はmoto君の後ろにぴったりつけて、何とかマクろうとムキになってるし、moto君はクスリ喰っちゃったみたいにご機嫌だし、もちろん俺は、もう、嬉しすぎてションベンしちゃう犬みたいな状態だ。

楽しい、楽しい、楽しい。

休憩中に、ふとirohaがつぶやく。

「何でみんな来ないんだろう?」

千葉県は変態率が高いつっても、さすがにココまでバカはそんなにいないよ、iroha。

 

公園に行って休憩。

コーヒーを飲もうつー話さえ、もはやまともには済まない。

「ゼロヨン、もう一回やって、負けたやつが払うことにしましょう」

それ、俺に決定だよmoto君。

んでも、みんなでわいわい言いながら、結局もう一回レースして、案の定、俺がビリ。

 

コーヒー飲んで、さて、次は何をしようか?

と、キチガイ兄弟がふたりで、何事かささやき合っている。どうせ、ロクでもないことを思いついたに決まってる。すると、irohaのアクションで、俺も、ヤツが何をやりたいのかわかった。すかさず『バカ、iroha。んなコトしたらドロだらけになるぞ?』iroha、間髪いれず『それがいいんじゃないですか』

バカにつける薬はない。

準備。一番重要なアイテムだ。

 

トラクションをかけるには、イチバン重い俺が乗るのが有効。

マシンの操縦は、もちろんmoto君。

そして、千葉県最強のエクストリーマー、irohaが挑む。

 

 

 

さすがに、ヒトひとり引っ張りながら曲がるのは難しかったようだ。

即座に転倒したTT250Rを起こす、エクストリームブラザース。

 

んで、再挑戦。

 

irohaの生き様に、男たちは感動を隠しきれなかった。

 

さて、ココまできたら、やっておかなきゃならないことがある。

なので、さらに場所を移動し、いつものフラットダートに行く。

そう、俺がランツァで初めて来て、コレクターズアイテム並みにぴかぴかのランツァを、わずが数十分でボロボロにした、いわくつきの場所だ。そして、ココに来たら必ずアタックしなければならない場所、それが、スーパーヒルクライムだ。 ま、スーパーってほどの坂でもねーんだけど。

まずは、処女雪の登坂に向かって、俺が一発目。

そりゃ、そうだ。助走さえ、すべってまともに出来ないんだから。

んで、K君が続けてトライ。

あえなく頓挫。よし、K君には勝ったぜ、なんて思ってたら。

 

iroha、ぶっちぎり。

 

 

 

エクストリーム兄弟の末弟らしいガッツに、俺とK君はただ、唖然とするばかりだった。そしてエクストリームブラザースのリクエストに応え、後日、ドカッコいい動画をアップすることを、ココに宣言する。誰もがirohaの男っぷりに惚れ惚れとすること間違いナシの、ステキなやつを。

 

このあと、みんな各自で走り倒し、さすがに夕方5:00近くなってきたので、帰ることにする。

雪の積もったアスファルトの上を、そろそろと走り出せば、本日のCrazy Marmalade ちっちゃいもん倶楽部は、ここに栄光の終焉を迎える。笑いすぎてどうにかなりそうなくらい、最高に面白い一日だった。明日、社会復帰できる気がしないね、ホント。

 

誰になんと言われようが、俺たちは単車が好きだ。

単車に乗って、こんな風に仲間とバカをやりながら笑いあうのが、大好きなんだ。

だから。

難しい理屈も、余計な精神論も、何も要らない。

単車に乗って、笑いあおう。

たぶん、それが一番ステキなことだから。

 

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