The 34th small machine club

2009.01.31〜02.01 第34回ちっちゃいもん倶楽部 in 沼田

〜雪中キャンプツーリング 後編〜

前編はこちら

 

夜は深まり、雪も強さを増してきた。

しかし、宴の方も負けてはいない。ガンガン呑んだくれ、ゲラゲラ笑いころげ、キチガイ沙汰のお祭り騒ぎになってくる。しかしココは深夜の雪深い山の中だ。どれだけ騒ごうと、誰に迷惑がかかるわけでもない。大声を張り上げ、駆け回り、もうやりたい放題 。

ケモでもそうだが、俺はこの『深夜の山中での宴会』が、たまらなく好きなのだ。

 

びゅおぅ!

「うわあぁぁぁぁぁっ!」

またもmioちゃんの悲鳴に、みながそちらへ視線を向けると、あるはずのものがない。

テントは強風に飛ばされて、ガケの下まで転がり落ちていった。

 

あわてて拾いに行くmioちゃん。

写真ではアレだが、かなり急な坂なので、降りるのも登るのも容易ではない。

その姿を、温めたカクテルを片手に笑うmoto君。

 

酔っ払って楽しくなっちゃった俺は、嬌声を上げながら、その坂道を転がり落ちる。

写真では写ってないけど、ものすげぇ満足げな笑みを浮かべているはず。

そこから這い登ってこようとして、坂のきつさと酔いに、途中から匍匐(ほふく)前進になったり。

ほら、超ぉ楽しそう。

 

mioちゃんもテント飛ばされたくせに楽しそうだ。

 

moto君は……まぁいいか。

 

irohaと俺。カイロのおかげで、前をはだけても大丈夫なiroha。

 

俺とオーちゃん。

オーちゃんの目元が赤く染まって、目も開いてない。さすがに酔っ払ってきたのが判るね。

 

こんな具合で、クソ楽しい雪中大宴会の夜は過ぎていったのだった。

おやすみー!

 

 

 

翌朝、寒さに目が覚めると、どうやら暑かったようで、シュラフを蹴っ飛ばしていた。

キリギリス組の真似をして貼ったカイロのお陰だろう。

起き出してみると、mioちゃんがすでに撤収準備を始めている。

「mioちゃん、もう片付けてるの?」

「うん、みんなが撤収してる間に、一服しちゃうもんね」

「ぎゃははははっ!」

笑いながら、俺も撤収を始める。

 

よしなしやオーちゃんも起きてきた。みんな、二日酔いはないようだ。

 

撤収準備をしていると、俺のリアボックスのふたが見当たらない。

「あれ? 箱のフタがねーや」

「かみさん、あそこ。ガケの下に落ちてますよ」

「お、ホントだ。mioちゃんサンキュー」

拾いに降りてみると、降りるのも登るのもなかなか難儀だ。

こんな急坂、ゲラゲラ笑いながら転がり落ちてったんだがら、相当バカだなぁ、昨日の俺。

ま、今に始まったことじゃないけど。

 

荷物を仕舞いこんで単車に積んだあとは、チェーンを巻いて雪道走行の準備だ。

俺は前後にチェーン装備。mioちゃんは麻縄を巻きつけた自作チェーン『スーパーネジネジ君』。

 

よしなしはクルマ用のを改造したゴムのチェーン。オーちゃんもmioちゃんの麻縄を分けてもらってた。

 

さぁ、準備は整った。行こうぜ!

 

この目出し帽が目立つったらない上に、通りがかるスキー客に大うけ。中には窓を開けて手を振ってくれるおねぇちゃんまで居たもんだから、カンペキにノってきたmoto兄弟。「俺らノーチェーンで行きます」と言い出し、本当にそのままチェーン無しで降りてしまった。

もちろん、走りだす前には、いつものお約束。

「iroha、ゆっくり行くからな?」

「うん、わかったよ。兄ちゃん」

「よし、行こう」

ばるん! ばろろろろろろっ!

『雪の上でチェーン無し』とは思えない勢いで下り始めるmoto君に、見ていた全員が(おそらくirohaもヘルメットの中で)「おいっ! ゆっくりじゃねーのかっ?」っとツッコんでた。つーか、今回のツーリングでつくづく思ったんだが、 『moto君にはチェーンなんて要らない』んじゃないだろうか?

 

moto兄弟が行ってしまってから、残ったこちらに問題がもちがあった。

オーちゃんのDRが冷え切って、いくらキックしてもエンジンがかからないのだ。

見れば空冷エンジンのシリンダヘッドにまで雪が積もっている。「これじゃぁ火が飛ばないやなぁ」と思った俺は、火が飛びやすくなるようにmioちゃんが 貸してくれたガストーチで、シリンダヘッドを軽くあぶって雪を溶かしてみた。

余計なものまで溶かさないように、俺にしては神経を使って暖める。

んでオーちゃんがもう一度キックすると、今度はすんなりとかかった。さて、それじゃ降りようかとみんな自分の単車にまたがったところで、オーちゃん、思いっきりエンストかます。「やべぇ!」と騒ぎながら何度もキックするが、エンジンがかからない。

あせらせちゃ可哀想なので、ヘルメットを取って近づくと笑いながら。

「ちゃんとニュートラ入れて、スタンド出して、思いっきり蹴った方がいいよ」

オーちゃんうなずいて、ニュートラに入れてスタンドをかけ、気合イッパツ、キックを踏みおろす。

ばるるるんっ!

さて、こんどこそ本当に、雪道を下ろう。

 

時速30〜40キロくらいで、凍った道に気をつけながら、みんなで下ってゆく。俺はチェーンをはいてたので、雪の残ってるところを選んで走った。すれ違う対向車が目を丸くしてるのがおかしい。スキーやボードを積んで雪山を上がってきた目の前にバイクが 走ってきたら、そりゃ驚くよなぁ。

昨夜の降りのわりには積雪が少なく、道も凍ってる場所がほとんどない。

やがて下まで降りると、道路上の雪はほとんどなくなった。なので、目に付いた駐車場でランツァを停め、後続のmioちゃんに「ここでチェーン外してくから、先に行ってて」と告げる。mioちゃんとオーちゃんは麻縄だから使い捨てだけど、俺とよしなしのチェーンはそうも行かないのだ。

mioちゃんとオーちゃんを先に行かせて、よしなしと俺はチェーンを外す。ものの数分でふたりともチェーンを外してしまいこみ、待ってるはずのmoto兄弟やmioちゃん、オーちゃんを追って走り出した。やがてふもとのコンビニのところで、みんなが待ってるのを見つけて停まる。

雪の粒が、ずいぶんと大きくなってきた。積もりきる前に下れてよかったね。

 

ここで圏外のため切ってあった携帯の電源を入れると、eisukeさんから丁寧な案内メールが何通か来ていた。これから先のおいしい食事場所とかが書いてあったのだが、前日、高速をイヤになるほど走り、クソ寒い中で暴れまくった俺たちは、体力の残量がすでにリザーブに入っていた。

ジジむさい話だが、一晩寝たくらいじゃ、節々の痛みが取れない。しかも雪の中でシュラフだしね。なのでeisukeさんに電話して、せっかく教えていただいて申し訳ないが、店には寄らずに帰る旨を伝える。そのあと、コンビニでしばらくダベったり遊んだり した。

お気に入りの目出し帽をとらないmoto君に、みんなで大笑い。

それから、irohaが写真を撮ってくれるというので、せっかくだから小芝居してみた。

目出し帽にからまれる、かみ。こういうときは笑ってちゃダメだね。反省。

 

ノって来たら止まらない、ドエスとドエムの変態兄弟@おそろいのカッパ。

「なにやらたくらんでるな」と思ったら。

 

ちょ、強盗! おねぇさん、逃げてっ!

 

楽しくバカ笑いしたら、さて、帰路につこうか。

走り出してしばらくすると、雪がやんで青空が出てきた。キリっと晴れた空に、なんだか気持ちがワクワクしてくる。ところが楽しい気分で沼田から高速に乗って法定速度で走りだすと、気持ちのいい天気とは裏腹に、50キロくらいでケツが痛くなってくる。むしろ、ケツの肉が取れそう。

「意外と疲れてるなぁ。まぁ、昨日も300キロくらい走ってるし、夜も大騒ぎだったからなぁ」

なんて思いながら、それでも気持ちよく晴れ上がった青空に、まるでこれからツーリングに行くかのような気分で高速を走ってゆく。それにしても、小さい単車で高速を走るのは、デカいのに慣れてしまった身には相当に堪(こた)える。まぁ、甘えっちゃ甘えなんだけど 。

やがて、茨城へ帰るよしなしが、北関東道の分岐でバイバイ。そのまましばらく行くと、今度は秩父へ帰るmioちゃんが隊列を離れて帰ってゆく。今日はありがとう、楽しかったよ。まぁ、いまさら確認の必要はないと思うけど、一応言っておこう。

キチガイども。また一緒に、雪中キャンプやろうぜ!

 

パーキングに入って最後のダベり。

ゆく 先の長さに軽くうんざりしながらも、天気の良さに救われて笑顔がもれる。

「ちいさいので高速を延々と走るのはきついなぁ」

「そうですね。やっぱりこういうツーリングだとビッグオフローダの方が良いんでしょうねぇ。そうだ、かみさん。クルーザじゃなくて、ビッグオフローダ買いましょうよ。アレなら高速巡航も楽だし、フラットダートくらいなら走れますし。アフリカツインとかBMWとか 、いいじゃないですか」

「ぎゃはははっ! 買わねーつの! 俺はフュ−リーに乗るのだ」

「それにしても気持ちのいい天気ですね。ちょっと林道とか走りたいですね」

「そうだなぁ……あ、しまった。よしなしと一緒に帰って、茨城の林道を走ればよかった」

「いやいや、なに言ってんすか。さすがに、そこまではヤですよ。『家に帰る途中に、軽く走れそうな林道があれば、ちょっと走ってもいいかなぁ』って意味で言ったんじゃないですか。やっぱり、かみさんは考え方が変態なんですよね」

変態のキングみたいな人間に、えらい言われようだ。あとで仕返ししてやろう。

 

日が差すと暖かく感じるほどの晴天のもとで、気の置けない連中とダベるのは楽しい。放っておいたらいつまでも話が尽きないが、あいにくまだまだ先は長い。距離的には 100キロ、150キロくらいのものだが、風にあおられると弱いオフローダーだけに、時速100キロで流すのもひと苦労だ。

さっきの仕返しに、二日続けてmoto君の犯罪現場を押さえた。もはや俺のライフワーク。

 

俺はあと100キロ、moto君たちは150キロ先の自宅へ向けて、強風の中、カトンボみたいな単車にまたがる。二日がかりの第34回ちっちゃいもん倶楽部は、凍死者どころかひとりの転倒者も出さず、無事その幕を下ろ した。雪の中を走る楽しさを改めて実感したツーリングだった。

雪が降ったら楽しい。

これは雪の少ない地方の人間なら、誰だって一緒だと思う。仕事があるから、何かに支障が出るから、だから雪が降るとイヤになるだけで、本質的に雪遊びってのは楽しい。せっかく単車なんてガキの乗り物に乗ってるんだから、中身もガキ全開で、これからもガンガン走ろう。

すんげぇ、オモシロかったよ。

雪が降ったら、また集まって雪中宴会ツーリングやろうぜ!

 

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