The 35th small machine club
2009.02.15 第35回ちっちゃいもん倶楽部 in 秩父 〜ミオトラップ〜
鉛色の空に少々へこたれながらも、俺とろろちゃんは表に出た。 実は俺とろろちゃん、一緒にツーリングするのが初めてなのだ。最初に会ったのは、橋の下での野宿宴会。そのあともかみ家での宴会では会ってるものの、休日のタイミングがなかなか合わなくて、一緒に走ることがなかったのである。そんな楽しみもあって、俺の気分はすぐによくなった。
ろろちゃんとDR-Zのコンビ。この位置にハンドルロックがあるために、ろろちゃんは何回かキーをひん曲げてたりするみたいだ。そういえば昔、V-MAXでもそんなことがあったような。ま、俺の場合はそれ以来、ハンドルロックをしない方向で解決したけどね。
16号をすり抜けて、ガソリンを入れてから柏インターへ。 とりあえず120くらいで流しながら、ランツァの調子を見つつ、段々と速度を上げる。とは言えこっちは230ccの2サイクル、それも低速に振ったオフ車だから、どう頑張っても150が限界。もちろん、ろろちゃんは余裕でついてくる。 あとで聞いたら、ろろちゃんのDRはファイナルを変更してあるので、170くらい出るらしい。 タコメータのないランツァのエンジン音を聞きながら、しばらく150オーバーで走ってみたけど、焼きつきの恐怖と戦いながら走るのは、やはり精神的にシンドい。ちらほらクルマが出てきたのを潮に、130前後の巡航に切り替えた。
外環を走りきって和光インターで降りたら、俺もろろちゃんもニコチンが切れ始める時間。信号待ちで止まった時に「ろろちゃん、コンビニに入ってタバコ吸おう」言ったら、ろろちゃん、にっこりと笑って我が意を得たりの表情。「よくわかってるなぁ」のセリフに、俺も思わず破顔する。 ところが。 走っても走ってもコンビニが現れない。 「あぁ、和光から国道254の下り側にコンビニを出したら、きっと流行るだろうな」とかくだらないことを考えちゃうくらい、とにかくコンビニがない。すり抜けながら探していると、途中でろろちゃんが先頭を代わった。コンビニじゃなくてもいいから、とにかくタバコを吸いたいんだろう。
案の定、明らかに閉まってるコンビニっぽい店の横で停車するDR。 一服つけて携帯を見ると、mioちゃんから着信があった。 ろろちゃんに缶コーヒーをおごってもらいながら、mioちゃんに電話してみるが、どうやらすでに出発したようだ。その旨ろろちゃんに告げて、お互いの単車を見ながらしばらくダベり、タバコを二三本灰にしたら、さぁ、出発だ。 埼玉が地元のろろちゃん先導で、裏道を駆使しながら秩父を目指す。 途中で飲み屋だの食い物屋があり、いい匂いなんかがしてくると、ふたり顔を見合わせて店を指差し、ヘルメットの前で酒を飲む動作を繰り返す。俺とろろちゃん得意の、「もう、ここに入って呑んじゃおうぜ?」「ココでメシ喰って一杯ひっかけようよ」的な冗談だ。
バカやりながら楽しく走るが、しかし、道は混んでいる。 やがて、ようやく299号に乗ったころには、俺は完全に『引き絞られた弓』になっていた。前に出てしばらくはろろちゃんと一緒に走っていたが、やがて我慢しきれなくなって、弓のつるを放つ。瞬間、はじかれたように加速する、ドロだらけの薄汚いブラックランツァ。 すり抜けと逆走を駆使して、299をすっ飛ばし始める。 クルマの列もツーリングライダーも、今の俺にはパイロンだ。SS、メガスポ、ビッグネイキッド。暖かい日差しに誘われて出て来た単車の列を、片手を挙げて挨拶しながら次々と抜き去る。一台二台、絡んでくれるヤツラもいたけど、ロードタイアを履いたランツァは、なかなかの戦闘力。 軽い車体とアイポイントの高いポジションは、ワインディングではやりたい放題。 さらにケーロクで身についたスピードレンジがこれに加われば、鬼に金棒だ。すり抜けで引き離し、速度を落とさずに突っ込めば、でかい単車はついて来れない。いやもちろん、乗り手が変態のSSなら、さすがにビタイチかなわないだろうけど。 幸いと言うか、残念ながらと言うか、この日の299では変態には会えなかった。
やがて、道の駅あしがくぼに到着する。 mioちゃんがすでに待っているのを見つけて、手を上げて挨拶しながら近寄ってゆく。そこでバカ話しながら待っていると、ほどなく、ろろちゃんも到着した。
つーかmioちゃん、ロケットで出かけてたのをわざわざセローに乗り換えてやってきた。 俺が「ロケットで来たら、突っついていじめてやろう」と思ってたのを読みきって、逆にこちらをハメるつもりでいるのだ。単車を乗り換えてきたことや、カンペキにオフロード装備をしていることからも、その決意が伺える。ロードタイアの俺らを、ヒドい道へ連れて行こうという算段に違いない。
しばらくダベったら、さて、mioちゃんどこに行くよ? や、まて。その前に、とりあえずメシ食わせてくれ。俺、朝から何も食ってないんだよ。ろろちゃんは、朝からパンだのカニカマだのイロイロ喰ってたみたいだけど。つわけでまずは、mioちゃんオススメの焼肉屋に行くことになった。
『焼肉亭よしだ』は、前に来たときも連れてってもらった、秩父牛の旨い店だ
やる気満々(肉的に)のろろちゃん。
オーダーをしたら、ダベりながら肉の来るのを待つ。 つーかろろちゃん、カメラを向けるといつもしかめっ面で威嚇する。 やさしいくせに、なぜ怖い人を演出?
手始めに、mioちゃんの頼んだ豚キムチ丼がやってきた。これで700円弱はリーズナブル。
間をおかず、俺とろろちゃんの頼んだ肉たちもやってきた。
とたんに、満面の笑み。 どんだけ肉が好きなんだ。や、まぁ、俺も好きだけど。
俺とろろちゃんの肉食獣ふたりは、mioちゃんがさっさと食べ終わってしまっても、延々と肉を焼き、食い続ける。脂の乗ったカルビと白モツ、濃厚で臭みのないレバーに豚肉。カルビや白モツから流れ出る脂がじうじうと炎を上げ、レバーは塩で喰うのが旨いくらい臭みがない。 調子に乗ってご飯の代わりとかしながら、腹いっぱいになるまで肉を堪能した。 「ぎゃははは、ろろちゃん! なに腹さすって悲しそうな顔してんだよ」 「く、喰いすぎたぁ」 大笑いしたあとは、しばらく食休み。まったりとしながら、バカ話に花を咲かせる。 「mioちゃん、このあとどこに行く?」 「かみさん、舗装林道を走りたいって言ってましたよね?」 「うん、言った。確かに言った。でも俺が行きたいのは『舗装』林道だからな? 多少せまっ苦しくてもいいつーか、むしろそんなのは好きだけど、頼むからダートはやめれよ? もちろん、ケモノ道とか絶対ダメだからな? 舗装林道だぞ、舗装林道!」 「大丈夫、ちょうどいい道があるんですよ!」 だから、その笑顔が信用できないんだってばよ。
結局、ろろちゃんにご馳走になっちゃったあとは、腹ごなしにワインディングを走ろうか。
志賀坂峠に向かう299の途中で、ガソリンを入れてコンビニに寄ってタバコを補充し。 志賀坂峠の手前(途中?)から右に折れて、合角(かっかく)ダムに向かうワインディングに入った。しばらくmioちゃんの後ろについてセローを突っついていじめ、せっかく買ったばかりのトライアルタイアをガンガンすり減らしてやる。ケモやるころには、スリックにしてやるぜ。
そのあと短い直線のところで横に並んで、突っ込みで前に出る。 初めて走る道だが、確かに林道にしてはそこそこ綺麗で、ケーロクでも楽しんで走れそうなオモシロい道だ。左右にうねるワインディングをペタペタ切り替えし、速度の乗る長いコーナーでよれながら、俺はケタケタ笑って走る。やっぱ、峠は楽しいねー♪ 長めの橋を越えたら、あっという間に合角ダムに到着だ。 mioちゃんは、そこからさらに(俺にとって)初めての道へと入ってゆく。 「ココもオモシロいなぁ、ケーロクで来たいなぁ」なんてつぶやきながら、峠道を堪能していると、しばらく登ったトンネルの入り口で、mioちゃんがわき道に入る。ほら、きた。やっぱりだ。目の前の道は、どう見ても舗装されてない。俺は思わず、苦笑しながら叫んだ。 「ちょ、まて! ダートもケモも行かねーっつの」 するとmioちゃん、ニヤリと笑って 「大丈夫ですよ、舗装されてないのは入り口だけだから」 「ホントかぁ?」 「ホント、ホント!」 ろろちゃんが追いついてきたので、そこからまた、俺が先頭で走りだす。すると確かに、しばらく行ったら道は舗装されていた。うん、mioちゃん、ウソは言ってない。舗装だけはされていた。 写真:ろろちゃん つーかこれは舗装『だった』林道だ。 道の両脇には落ち葉とドロが浮かぶと言うより堆積し、脇の藪からは道の半ばまで枯れた枝がその手を伸ばしてヘルメットを叩く。ガケは崩れかけ、赤ん坊の頭くらいの落石がゴロゴロしている。軽トラック一台が何とか通れるだろう道は、ヒビ割れ、ところどころ崩壊で細くなってる。 「やられた」 俺は笑いながら、『舗装だった林道』を攻め始めた。
「ココはさすがに、ケーロクじゃぁシンドいだろうなぁ」 クルマの車輪に寄せ固められ、道の真ん中にこんもりと盛られた砂。イキナリそこだけ濡れている、残骸としか形容できないアスファルト。リズムを変えて突然180度曲がりこむ道。そのたびにケツを流され、フロントを持って行かれ、もう、すべてが楽しくて楽しくて仕方ない。 荒っぽいダート部分にちょっとアクセルを抜くと、ミラーのはじにmioちゃんのライトが映る。思わずニヤリと笑みが漏れる。気合を入れなおして、mioちゃんの姿をミラーから消すのだが、長い直線の終わりころ、コーナーに飛び込む前にミラーを見ると、またチラリ。やるな、mioちゃん。 やべぇ、ウルトラ楽しい。 少し広くなった別れ道に出るまで、俺はタフなワインディングを堪能した。
悪魔のツーリングコーディネーター、mioちゃん。
ろろちゃんは、泣きながらお手上げ(含ヤラセ)。
道はさらに続き、しかもどんどん酷くなる。 完全なロードタイアで重量のあるDR-Zのろろちゃんは、少々遅れ気味だ。「まぁ、あのタイアじゃぁシンドいよなぁ」と、mioちゃんの姦計にハマったろろちゃんに同情しつつ、それでも速度は緩めない。目の前のタフな道が、「ほら、どうした。もっと攻めてみろよ」と俺を誘うのだ。 太陽はかなり傾き始め、気温も下がってきているのだが、曲がりくねった林道と格闘する俺の体温は、上昇しっぱなしだ。暑くて、途中でダウンインナーのジッパーを降ろしたくらい。
またも別れ道がきて、そこで停まってmioちゃんと一緒にろろちゃんを待つ。
はい、いつものショット。 つーか最近、みんな撮られるのに慣れてきてる気がする。 カメラ目線とか要らないよ、mioちゃん。
攻めてる間は道しか見てないが、停まると秩父の山々の美しい姿が見える。
さて、このワインディングを超えれば、その先は国道299。本日最後の林道だ。 俺はニヤニヤしながら、セローに続いて最後の林道に入る。 mioちゃんがジェスチャーで「前に出ろ」言うのを知らん振りして後ろにつけた。しかしかたくなに前に出ることを拒みつつ、「大丈夫、この先もすぐ舗装されてますから」言うmioちゃんに「そんな甘言は信じないぜ」と苦笑しつつも、せっかくなのでまた前に出る。 ダートロードをしばらく攻めると、確かに舗装された部分が出てきた。 しかし、そこから調子に乗って攻めてゆくと、下りの長いコーナーの途中で、イキナリ舗装が途切れてたりする。『どう好意的に見ても罠にしか思えない』そんな荒れ果てた林道を、テンションの導くままガンガン攻めてゆく、かみさん@今年には不惑。
最初こそ、ひと続きだった舗装林道は、このあたりになると舗装とダートが交互にやってくる超タフなコースになっていた。ダートでは前に乗ってケツを流しながら走り、ロードではリアにトラクションをかけてグリップで曲る。刻一刻と変化する道に合わせて、ひたすら単車を操る。 これほど楽しいこと、そうはない。
最後に道が広くなり、下りながら林道が国道299に接続した。
mioちゃんと一緒にろろちゃんを待っていると、なにやら派手な単車が現れる。
KTMのRC8だ。 なかなか珍しい単車なので、あわてて写真を撮り、mioちゃんに説明した。もっとも、ロケットとケモノ道にしか興味のないこの変態は、「ああ、そうなんですか」的にローテンションで聞いてたけど。むしろ目論見通りろろちゃんをハメて、KTMとかどうでもいい感じだったけど。
と、ランツァのシフトレバーに枯れ草が絡まってた。
「おい、mioちゃん! これを見ろ! どのツラ下げて舗装林道だって?」 「なにがですかー! ちゃんと舗装されてたじゃないですか」
バカ話しながら笑っていると、ろろちゃんが追いついてきた。
フラフラと現れたろろちゃん。
単車を停めて、がっくりとうなだれる。 と、次の瞬間!!!
「この悪魔めぇ!」 ろろちゃんがmioちゃんを絞め殺そうとするサマに爆笑しながら 「や、ろろちゃんがZ1000で来てれば、こんなことにならなかったんだよ」 と俺がまぜっかえすと、すかさずmioちゃんが 「いや、かみさんがケーロクで来てれば、俺もロケット乗ってきたんですけどね」 「んだよ、じゃぁ、悪いのは俺かよっ!」 またバカ笑い。
ま、俺に言わせれば、ろろちゃんが
こんなアホなステッカー貼ってるからいけないんだと思う。 「mioちゃんにハメられたー! せっかく綺麗に洗ってきたのに、DRも汚されちゃったぁ」 と相変わらずアレなセリフを吐くろろちゃんに、俺とmioちゃんは大爆笑だ。
ま、とにかく「舗装林道でサワヤカツーリングだ」つってるのに、
オフロードブーツ履いてきてるヤツの言うことは信用するなって話だ。
このあとmioちゃんの先導で走り、140号で別れを告げ、俺とろろちゃんは299を走り出した。 途中でろろちゃんがすり抜けしなくなり、俺との距離が離れ始めたところで。 本日のCrazy Marmalade ちっちゃいもん倶楽部は、そのまま流れ解散。起きたのも遅かったし、秩父に行くまでに時間がかかっちゃって、mioちゃんと走れたのは短かったけど、うまいメシあり、楽しいワインディングあり、キビしい林道あり、大満足のツーリングだった。
何よりまたひとり、mioちゃんの真の姿を知る同志が増えたのは、なんとも心強い限りだ。 写真:ろろちゃん mioちゃんいわく、舗装林道だそうだ。 舗装って言葉について、むしろ日本語について、も一度勉強しなおすことを切に勧めたい。
mioちゃん、毎度のナビゲーション、ありがとう! お腹一杯になるまでタフなワインディングを走れて、最高に楽しかったよ。 次また秩父に行くときも、よろしく!
ろろちゃん。ホントに、お疲れ様っ! 肉喰って幸せだった顔が、段々苦痛にゆがんでゆくサマは、悪いけど最高にオモシロかったよ。 これに懲りず、また走ろうぜっ!
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