The 40th small machine club

2009.05.30-31 第40回ちっちゃいもん倶楽部 in D山

〜思いっきりケモライド(中編)〜

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翌朝、呑んだくれたわりには気持ちよく目が覚める。

みんな、昨夜の呑み疲れもないようで、さわやかな朝に気持ち良さそうだ。

 

もっとも、よしなしだけは二日酔いで死にかけてたらしいが。

 

準備万端整えて、後は山に入るだけ。 この段階までN君は、「自分も一緒に行ける」と思ってたらしく、おかあさんと一緒に帰ると判ったら大泣きし、Tちゃんは連れて帰るのに難儀したそうだ。

ま、俺はOちゃんがフル装備だって事実に、なんか納得行かなかったけど。

 

Oちゃんのセローと、moto君のXR230。俺とよしなしのSLも含めて、トライアル車以外では最強といっていい部類のマシンたちだろう。 さらにどちらも、ケモライドにおいて最も頼もしい味方、最強のタイアである、トライアルタイアを装着済み。言わばケモライド的スーパースポーツだ。

 

ぼっちゃんのトリッカーも、セローのエンジンを積んだ超軽量マシン。

タダでさえ低いトレール車のステップより更に低いステップと径の小さいタイアが、少し弱点と言えば弱点だが、とにかく軽いからケモでの戦闘力は充分だ。ただし、ぼっちゃんのマシンはモトクロタイアなので、今回はかなり苦しんだ。たぶん次回は、ブロックタイアかトラタイア履いてるね。

サイズがあれば。

 

つわけで、楽しいケモライド、出発だ!

まずは入りっぱな、D山的にはなんてことのない道を進んでゆく。

気持ちが盛り上がってくる瞬間だ。

と。

ものすげぇ珍しく、セクションでもなんでもないような場所でmoto君がこけた。

もちろん、俺もよしなしも迷わずシャッターを切る。

んで、また進んでゆくのだが、 前回なんでもなく通れたところが、わりとセクションチックになっていて驚いた。もっともそれも当然で、今回はほぼ一年ぶりくらいのD山になる。一年あればガケ崩れや雑草の成長、他ライダー の削りなどで、山の顔がまったく変わっていても当たり前なのだ。

 

川渡りで、坊ちゃんが最初の洗礼を受ける。

とにかく、タイアが喰わないのだ。もっとも、まだオフの乗り方もよくわからない、トリッカーも「買ってから乗るのは今日が初めて」という状況なので、無理もないといえば無理もないが。そのあと、交代して乗ったmoto君は、上手にトラクションをかけて、あっさり登ってしまった。

それを見てぼっちゃん、クヤシそうな顔をする。

おそらくココで、ぼっちゃんの魂に火がついたのだろう。この先のあらゆる場所で、ぼっちゃんは音を上げずに「くそ!」と何度も気合を入れながら、ものすげぇ頑張った。少なくとも、初 めての時の俺なんか足元にも及ばないくらいのガッツだった。さすがmoto君のトモダチだ。類友ってやつだね。

 

俺が初めてD山を登った時、最初に折れたセクション。

一年ぶりだとずいぶんと表情が変わっていた。今までは右のコースが難しく、左はその迂回路といった体(てい)だったのだが、右がけっこうケズれて難易度が落ちてたり、左の迂回路がケズれすぎて逆に難しくなってたり、ずいぶん と見知らぬ山になってた。一年あるとすごく変化する。

山も女も同じなんだね(カッコいいこと言ってる風だけど、カッコよくありません)。

 

右コース。かつてpoitaさんが華麗に散った場所だ。

 

テーブルのように張り出していた段差が、ずいぶんと削れて行きやすくなってる。

岩で滑るのに気をつければ、そんなに難易度は高くなさそうだ。

ところが、そんなことになってるとは、露ほども知らない俺。

ぼっちゃんがこっちでmoto君に教習を受けてる間に、

 

迂回路の方を登ってハマりかけた。

ま、ケズれて深くなってるところにステップを取られただけだから、すぐに越えられたけど。

そしてこのあたりから、俺はSLの戦闘力の高さに、「あんだよ、なんで今まで、ランツァなんかでこんなトコ走ってたんだ? バカじゃなかろか?」と、脱力する思いだった。 なんだかんだ言って、4サイクルトレールってすげぇわ、やっぱ。冗談みたいにケモライドが楽になった。

なんて言いながら、やっぱり思いっきりすっ転ぶんだけどね。

 

ちょっとした登りを越えた先。

 

緑が心と身体に沁みてくる。

美しい自然の中で、バカな連中とケモライド。最高に楽しい時間だ。

 

ぼっちゃんも鬼教官に教わって、無事にクリア。

 

さらに軽いセクションを越えたところで、車体の下からガゴンと派手な音がする。

(ハラ打ったかな? SLは車高が低いから、けっこうあちこちぶつけるなぁ)

なんて思いながら走り出そうとすると、すぐにエンジンが止まってしまう。どれだけ半クラに気を使ってもパスンとあっけなく止まってしまうので、「木の枝でも挟まって後輪が回らないのか ?」と思いつつ、下を向いて確認したところで、思わず声が出た。

ブレーキペダル曲がって思いっクソ、ブレーキがかかりっぱなしになってるジャマイカ。

車載工具を出して直そうと試みるも、案外しぶといブレーキペダル。今回に限ってまた、「今日は、いつもの工具 は持って行かないでいいか」と一式置いてきてしまっているので、車載工具と知恵とトンチでどうにかするしかない。

いや、他にもうひとつ方法があったっけ。

今回は、それで直そう。

必殺、他力本願。

moto君にチカラワザを任せて、のんきに見守るかみさん。

どうにか乗れるくらいまでペダルを直してもらったところで、ぼっちゃんの息が上がっちゃってるのを見たmoto君がココで軽い休憩を取る。すると、Oちゃんが「ウ○コしてぇ」 と騒ぎ始めた。もう我慢できないくらい切羽詰ってるとわめきながら、俺が持ってたギャッツビーのウエットシートを掴んで、

半ケツで駆け出してゆく姿に、みなで大笑い。

帰ってきたOちゃん、「ケ、ケツがスースーする」と顔をしかめて、更に笑いを取っていた。ギャッツビーの製品開発陣も、まさかメンソールの洗顔シートでケツを拭かれることになるだろうとは予想してなかっただろう。つーか予想できてたら、間違いなくこっち側の人間だ。

 

休憩を終えたら、さらに先へと進む。

トリッカーは車高の低さがアダになって、ハラを擦る場面が多かった。

 

ここまでの動画。

 

 

ここで前半の山場である、Vに到着する。

下で停まって順番を待つ。

まずはmoto君がアタックし、頂上付近まで一気に上って、軽く漕いでクリア。あまりのバランス感覚に体内ジャイロ疑惑が持ち上がってるほどの男が、XR230にトラ イアルタイアを履いちゃったら、そりゃぁ鬼に金棒どころの騒ぎじゃない。手がつけられないよ、実際。

 

次はよしなしがアタックして。

地味に投げる。むしろ予定調和チックに投げる。

 

お次はOちゃん。

もともと単車に乗るのは上手い男だから、装備とタイアがしっかりすれば何の問題もなくなる。とは言うものの、ガッツが逆にアダになり、一回目のアタックでは見事なバックフリップを決める。マクれて天を駆け上がったセローが、空から彼の上に降ってきたのだ。

危うく落ちてくる車体をかわしたOちゃんに向かって、俺を含めたみなが

「惜しい、動画撮っておけばよかった」

二回目のアタックで、ほとんど上まで登り切って、自力でクリア。

 

クリア寸前のOちゃんの後ろには、やる気マンマンの俺。

つーかこの前に別のルートでアタックして一度失敗しているので、みんなが成功してるコースに、こっそりと鞍替えをたくらんでいるのである。そんな風に、写真を撮ったり動画を撮ったりしながら順番を待ってる間も、楽しくて仕方ない。

あんまり楽しいんで、余計な事を言い出したかみさん。

「とりあえず、ヘルプが要るときは土下座な?」

「ど、土下座っすか? なんか毎回、ヘルプのハードルが高くなってないすか?」

「俺にはちっとも高くねーけどな」

なにそのプライドナッシング的な話をして笑っていると。

moto君が俺のSLで遊び始めた。

XR&トラタイアの走破性の高さに、タダでさえ上手いこのオトコはほとんど体力を使ってないのだ。ムダに元気な様子で、SLでフローティングターンとかしながら遊んでいる。 ただ、最近はmoto君の走り方を見てると、前よりも参考に出来るようになって来たので、見るのが楽しい。

 

そうこうするうちに、俺の順番が回ってきたので、SLを返してもらって

位置について、用意……

 

ドン!

ばるるるっ!

ガシャン。

はい、SL初投げ。

つわけでこっからリカバリして再挑戦。三回目くらいだったか、寸前まで登ったところで車体を前に放り投げ、なんとか車体だけクリアしたのだが、笑いながらSLを起こしたところで、リアがずるずると滑 りだす。思わず「ちょ、待って待って待って!」と叫ぶのだが、もちろんSLは聞いちゃくれない。

万有引力の法則に導かれ、車体半分、落っこちて元の木阿弥。

坂の上でひっくり返った軽いはずの車体は、あちこち引っ掛かりウンともスンとも言わない。しばらくリカバリを試みた後、まだ体力的に限界ってわけではなかったけど、さっきの話が前フリになってること に気づいちゃったが最後、俺に選択の余地はなくなった。

「すいませーん!」

と大声で叫んで、みんなの注意を集めてから、イキオイよくガバっと地に伏せ

「ヘルプお願いします!」

みんな爆笑してたので、土下座ヘルプのクセにちょっと勝った気がした(負けです)。

 

ぼっちゃんも、買ったばかりのトリッカーを引きずり倒しながらクリア。

 

ココまでの動画。

 

 

難所を越えたところで、とりあえず一服。

今回、実戦初投入のXR230は、まだめちゃめちゃキレイなまま。

同じく初実戦の俺のSLは、この段階ですでにウインカーもミラーも割れてるけどな。

 

さぁ、一服したら、こんどは長いV字の坂を登るコースだ。

滑りやすく幅が狭いので、足を上げたまま一気に登りきらなければならないのだが、難易度そのものはそんなに高くない。途中で止まってしまわないようにさえ気をつければ、ランツァでも楽勝だったコースだから、SLならハナウタまじりで登れるだろう。

そんな風に思いながら、トップバッターのmoto君が登ってゆくのを見ていた……のだが。

 

一年ぶりのD山は、やはり俺たちの知っている山ではなかった……

 

後編に続く

 

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