The 42nd small machine club

2010.10.16-17 第42回ちっちゃいもん倶楽部 in 大郷戸

〜月に歌え山賊の歌を(前編)〜

 

雨、が降れば、小川、ができ。風が、吹けば、山、が出来る♪(山賊の歌)

つわけで、お待ちかね。ヤッホヤホホホ山賊宴会。もちろん、山賊つっても通りがかりの旅人から金品を略奪したりするわけじゃなく、ただ単に、『見た目が山賊な連中が集まる宴会』だから山賊宴会ってだけ。言わばファッション山賊だね。だね、じゃない。

場所は前回に引き続き、茨城と栃木の県境、益子にある大郷戸(おおごと)ダム。

基本的にほとんど人気(ひとけ)がなく、金品を略奪しようにも、『釣り人くらいしか来ない』と言う、俺らの宴会にふさわしい場所だ。釣り針やリールを強奪しても、釣りをやらない俺にはビタイチ使い道がないので、山賊行為は自粛して飲酒行為にはげむとしよう。

 

午後、仕事がハネると同時に自宅へ取って返し、単車に荷物を積み込む。

まさに『こんな時のために買った』とも言えるユリシーズは、外車の運命(さだめ)で補修パーツ入手の目処が立ってないから、残念ながら長期入院中。そしてメインマシンのケーロクは、大荷物を積むとイッコも面白くない上に、もうタイアがないのでコレも牧場に待機。

まぁ、足も完調じゃないしつーんで、今回はナオミに借りたXR100Mで出撃だ。

 

大荷物に、軽く車体を取られながら、大郷戸に向けてふらふら走り出す40歳。いつもならスルっと抜けてゆく渋滞を、クルマと並んでもたもた走りつつ、国道6号『水戸街道』を北上。物陰に隠れてる白馬に乗った王子様に笑顔で手を振りつつ、県道19号線へ。

こないだ、しんごと筑波山へ走った道を、景色を眺めながらトコトコと走ってゆく。

もちろん口ずさむのは、『1/6の夢旅人2002』だ。半ヘルだから、大声で歌うと道ゆく人が振り返るのだが、俺のこういう方面の神経はタングステンワイヤー製なので、まるきし気にせず歌いまくりながら走る。「恥ずかしい」って言葉は、もっと違う場面で使うものだ。

 

ちまちまと裏道を走り、筑波山の麓(ふもと)へ出たのが午後三時くれぇだったか。

太陽がかなり傾いてきててちょっと焦るが、それで事故っちゃっちゃ元も子もない。前に出てゆこうと逸(はや)る気持ちを押さえ、ココロのカタマリを胸のあたりに置くように意識する。ちなみにすっ飛ばす時は、このカタマリを数メータ前方に置くとコントロールしやすい。

こないだの事故の時は、胸に置いたまますっ飛ばしちゃったので、対処が遅れたのだ。

蛇足。

 

真壁あたりのコンビニで、休憩がてらバーボンとタバコを買い込む。

レジの女の子がすげえ純朴で可愛らしく、非常に好感が持てた。

スタッフとして有能かどうかはともかく。

 

筑波山麓から北へ延びる県道41号を走り、岩瀬の駅前を抜けると国道50号だ。

「水と晩飯の材料を買い込もう」

国道を横断してすぐのスーパーに入る。すると、駐車場にいた白いクルマがクラクションを鳴らした。運転席からのぞくゴツい男が、こちらを見て笑ってる。群馬のVTX乗りにしてステップスクラッチャーのeisukeさんだ。俺も笑い返して大声を上げる。

「ちーす! eisukeさん!」

「いまねぇ、mioちゃんとOTOさんらしきロケットスリーが二台、上がってったよ」

「マジすか? そりゃいいや。んじゃ、俺はココで鶏肉を買ってから行きます」

「ははは、りょうかーい!」

eisukeさんを見送ってスーパーに入り、鶏肉と油代わりの鶏皮、水4リッターにビール代わりのチューハイを買い込んで、XRに積み込む。ただでさえ大荷物でバランスの悪い状態なのが、総計5キロほどの重量物を上のほうに積んだため、かなりハンドルが取られる。

それでも道が空いてるので、危ない思いをすることもなく、気持ちよく走れた。

 

やがて道はダム湖の周辺に入ってダートとなる。

凸凹くぼんだダートをそろ〜り走ってゆくと。

大郷戸ダムに到着。左がeisukeさんのクルマで、右がOTOさんのロケットスリーだ。

 

このゆるいカンジが好き。気ぃ抜いてっと事故るけど。ほっとけ。

 

単車を停めてアイサツすると、他の連中はみなテントの設営を完了している。

mioちゃんロケットの箱が異常に浮き上がって見えるのは俺だけじゃないはず。

 

見回してみると、OTOさんのテントが見当たらない。

「あれ? OTOさん宴会しないの?」

「ええ、今日は帰ります」

OTOさん釣り好きだし、次にココでやるときは是非、いっしょに呑んだくれたいものだ。

 

陽が傾いてきてるので、俺もとっとと設営を済ませる。

XRに乗せるために、荷物がだいぶんコンパクトにまとめられた。

そのぶん、密度が高くなって重いのは、アンジェ兄貴の指摘どおり。積むスペースがあるなら、何でもかんでもコンパクトにすりゃいいってモンじゃないんだが、いかんせんXR100だと限りがあるからね。パッキング学的には、ある意味、いい勉強になった。

そんな学問はきっとねーけど。

 

と、設営終了したはずのmio公が、単車の横でなにやらゴソゴソやり始めた。

NEKOさんも使ってた、携帯用のハーフカバーだ。

バイクを外に置いておくと結露がすごいから、ETCやカーナビなんかの精密機器がある時は、こんなミニスカートみたいなカバーでも絶大な効果がある。もっとも俺なら精密機器が濡れちゃったら、乾くまで電気を流さない方向で対処するけど。

考え方の違いだね(いい加減さの違いです)。

 

野営場所の全景。

柔らかい芝生と、そばに臨むダム湖。ヘタなキャンプ場より快適だ。便所ないけど。

 

やがて、陽光に赤みが差してきたころ、OTOさんが帰り支度をはじめた。

OTOさんのロケットは、いつの間にか爆音仕様になってた。

ま、言っても『マーマレドスプーンを読んでロケットスリー買っちゃった』つー変態だからね。ただ単に、周りの人間がより変態だから相対的に常識人っぽく思えるだけで、きっと絶対値は高いんだよ、このヒトも。んで、その周りの変態どもは並んでお見送り。

俺的に、今回のベストショット。なんかいい雰囲気じゃない?

 

爆音で帰ってゆくOTOさんを見送ったら、さて、腰をすえて呑もうか。

茨城の野営リーダーこと、POPOさん。

こっちの方で野外宴会やるときは、ほぼ100%の出席率。そして大概、キャンプ地に一番乗りしてるから、このヒトの設営場所を中心に山賊ゾーンが広がってゆくことになる。今回も、写真のジェベル250に驚異的な積載テクニックで大量の荷物を積みこみ登場。

POPOさんの周りを見ると、「どうやって積んだんだ?」と頭をひねること請け合い。

 

やがて、宴会の準備が整った。

クルマのeisukeさんはともかく、三人が同じイスに座り、四人が同じテーブルを使っている。

いろいろ使ってみると、最終的には似たようなところに行き着くのだ。ただ真似したわけじゃなく、それぞれ自分なりに試してみた上での選択だ。「俺はヒトと違う」なんて意地を張るコトに、あんまり興味を持たない連中の、合理的な選択結果だと言えるだろう。

もちろん、「コレがベストだ」なんて言う気は、さらさらないけど。

ま、そんな話はおいといて。

さて、やりますか!

 

まずはmioちゃんが、秩父名物(?)の『味噌ポテト』を取り出して、みんなに配る。

甘めの味噌ダレがかかった揚げジャガイモなんだが、コレがまた美味い。

俺がみんな用に持って来たのは、左下のギョニソー(魚肉ソーセージ)と、右下のゆでピー。

ゆでピーナッツはナオミが生から茹でたヤツで、冷凍のゆでピーほどぐにゅぐにゅしてなく、マメの歯ごたえが残ってる。しっかりとピーナッツの味がするのに、柔らかい歯ごたえなのは、なかなか不思議な感触で、ウチの宴会では人気のあるツマミだ。

 

よしなしは、トースターでトリ軟骨を焼いてる。

ヤツの右下、紙コップの中身はモヤシ。辛目のキムチダレかなんかで味のついてるヤツ。

安くて調理が簡単、もしくはそのまま食えるモヤシは、キャンプ時に重宝する。

 

んで、eisukeさんが持ってきたのが、本日のメインとも言える。

永井食堂のモツ煮。右下のタッパにネギまで刻んでくる念の入れよう。カンペキな布陣だ。

 

車座になって呑み、バカ話しながらも、それぞれ手元で晩飯を作る。

 

mioちゃんは使い捨てのバーベキューコンロでmio肉を焼き、俺はコッヘルのフライパンで、まずはそのまま鶏皮を焼く。すると皮から鶏油が出てくるので、それを使って『から揚げ用』の鶏肉を焼くのだ。要するに、ひとつひとつが馬鹿でかいヤキトリってとこか。

鶏油が出すぎて、鶏皮も鶏肉もパリパリに揚がったのは、うれしい誤算。

やがて陽が落ち、あたりが暗くなってくる。

それぞれの料理もひと段落して、まったりと呑み始めていた、ちょうどそんな時。

その事件は起こった。

 

よしなしが不倫しているのは、いまや周知の事実。

不倫と言うものは、そもそも、こっそり隠れてやるのが当たり前だし、だからこそ楽しい決して友人の前で堂々とするものではない。ところがこの厚顔無恥にして破廉恥(はれんち)なオトコは、なんと神聖な野宴会場に、その不倫相手を連れてきたのだ。

「ごらん、星が綺麗だねぇ。まるでキミの瞳のようじゃないか」

とかなんとか、鬱陶しいセリフを吐いたかと思えば。

 

肩に手を回して抱き寄せる。なんと言うハレンチ学園。

みんなは気を使って黙ってたが、俺は、よしなしと愛人の厚かましい態度が許せなかった。

なので制裁を加えるべく、ここでその愛人の素顔を晒(さら)すコトにする。

 

スクープ! これがよしなしの愛人の素顔だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、みんな予想はついてただろうが、せっかく撮ったしね。

そもそも、俺がテント設営してるときに、こそこそやってきたmioちゃん。

「かみさん、ヨッシーの愛人を捏造しましょう。写真撮ってください」

「いいねぇ。それはステキな企画じゃないの。ぜひともやろう」

てな流れだったわけだ。

何やら『やり遂(と)げた感』の漂う、mioちゃんの立ち姿。

別に何もやり遂げてないんだけど。

 

「ところで今、何時ころ?」

「ぎゃはははっ! まだ六時半ですよ」

「不思議だよねぇ。ものすごい楽しいから、普通なら時間が早く進むのに、まだそんな時間なんだ。でも、それで油断してると、今度はイキナリ11時くらいになってるんだよね」

「酔っ払ってくると、時間の進みが速くなるんじゃない?」

楽しい連中と楽しい時間を過ごす。

と、やはりと言うか当然と言うか、段々寒くなってきた。

まあ、半そで短パンだから、当たり前なんだけど。

「肌寒いから、ちょっと何か羽織ろう」

とパーカーを羽織ってみたら、背中がやけに暖かい。そこで逆に、ちょっとどころか、かなり寒いことに気づいちゃったかみさん。あわててテントに戻り、レザーパンツとダウンジャケットを引っ張り出してくると、カンペキな防寒仕様にお色直しする。

でも、足元はビーサン。イッコもカンペキじゃない。

 

バカ話して呑んで喰ってしてると、eisukeさんの持ってきたモツ煮がなくなった。

が、なくなったのはモツだけ。

eisuke鍋は、むしろココからが本番だ。

うどんを入れて、めんつゆと酒で味付けし、水を入れて少し薄める。

なお、手前のチーズ鱈は入れてないのでご安心を。

やがて火が通り、ぐつぐつ煮えてきたら出来上がり。

急激に寒くなってきた夜の野外には、やはり鍋物が最強だ。

モツのダシが充分に出たスープとうどん、むちゃくちゃ美味い。

コレは俺が『茹でピー』を配ってるところかな。

とにかく、呑んで喰って笑い。

山賊どもが大騒ぎしてる姿を、雲の隙間から月がのぞきこんでいた。

宴は終わらない。

後編へ続く

 

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