solo run

東方見聞録
一日目 二日目 三日目 番外

2007.08.16 夢の中で

 

国道6号線、日立あたりを走ってるときに見た、夢の話である。

 

下道で柏まで帰るぞーと勢い込んで走り出したはいいものの、6号はトラック道路だということをすっかり失念していた俺は、120くらいのペースで走りたいのに、60キープで走るトラックに業を煮やし、何度も反対車線から抜けていた。

そのうち、日立あたりで道が広がったので、コレ幸いと速度を上げる。車の列をすり抜け、前が開けた瞬間、アクセルをがばっと開けた。とたんに、列の先頭にいた車が、赤いランプをともす。 もちろん、このときの俺の気持ちを一言で言えば、うんざり。

いい加減疲れて手は痛いし、右の前腕はヒクヒクと今にも攣りそうだし、正直、相手が誰だろうと停まってやるつもりはサラサラない。しかもヤツラは、 「停まってくれてありがとう」なんて殊勝なことは、決して言わない連中だ。

 

つーか。

ウチをしょっちゅう読んでくれている人は、『またかよ』とか『ネタなんじゃねーの?』とか『ちったぁ学べよ』などと思うかもしれないが、あのね 、言わせてもらえば、誰より俺がイチバンうんざりしてるんだよ。オノレのウカツっぷりに。

 

もちろんのこと、俺はアクセルをひねる。

とたんに元気よく飛び出すM109R。しかし、向こうも車速を上げ、ぐいぐいと加速してくる。おぉ、こりゃぁ今まで会った中じゃ最高に速いな。気合入れて走らないと、ちっとヤバ目 なんじゃねーか? つーわけで、俺は全力で逃げ始めた。

やがて水戸あたりの広い三車線道路を、寸前まで右側を走り、右折に見せかけて先頭まで出ると、赤信号で停まってる先頭の車両の前を横切って、横から来る車を確認しながら 、サクっと左へ曲がる。曲がりながら、俺は大声で自分を罵っていた。

「あぁ、もー! なんでこんな大事な時に、ビデオカメラ外しちゃってんだよ!」

だが、さすがに停まってビデオをセットするヒマはない

 

曲がった道が50号だったので、そのまま全開走行。

そかし、蘇化子はジャッキーの師匠(酔拳参照)だっつの。しかし、こっちはタンクトップに半ヘルのお気楽な格好である。いいとこ150も出れば御の字 なわけで、加速で少し離せても、その先が続かない。水戸南の高速入り口付近でUターンし、また50号を突っ走る。

曲がる時

「おい、止まりなさい!」

と言うスピーカーの声が一瞬聞こえたが、もちろんそんな誘惑に負ける俺ではない。50号を走ってまた6号近くに出ると、そのまま市街地へ入り込む。加速を生かして何度も曲がり、どうにか巻いたかな? と速度を落として、コンビニへ入った。

コンビニの駐車場の奥でUターンし、鼻先を前に向けて停車すると、せめて通り過ぎる姿を写真に撮ろうと、カメラを探る。と、驚いたことに追っ手は迷うことなくコンビニに入ってきた。

やばいっ! とあわてて発進する。

行こうとする俺を止めようと、鼻先をこじ入れてきた追っ手の目の前を、間一髪走りぬけると、俺はまた夜の道へ飛び出した。まぁ、追っ手は俺にぶつけるわけには行かないので、ギリギリで引いたのは向こうなんだが。

 

今度は逆方向、明かりの少ない工場地帯あたりに飛び込んで、狭くて暗い道をハイビームで探りながらすっ飛ばす。やがて曲がりくねった工場裏を走るうち、ミラーから ヤツラのライトが消えた。やれやれと思いながら気を抜いたところに。

「うわぁっ!」

目の前にドでかい水溜りが出現。なすすべもなく、そのまま水溜りに飛び込む俺とM109R。

ばしゃっ!

っと涼しげな水音。

思いのほか深かった水溜りのドロ水は、俺とM109Rの全身をぐっしょりとぬらした。

「最後の最後に、最悪だったなぁ」

とぼやきながら、俺はゆっくりと国道に入る。

 

今思えば、ここで少し時間を稼げばよかったのだが、ずぶぬれで早く帰りたかった。

なのでしばらく国道6号を濡れねずみのまま流していると、俺の後ろにピタリとつく車が一台。

「まさかなぁ」

と思っていたら、水戸バイパスに入ったあたりで

「停まりなさい」

の声とともに、赤いランプが付く。さっきの追っ手だ。

「あーもー! しつけーなー! めんどくせー!」

モノすげぇ理不尽にキれながら、向こうがじれて隣に並んだところで、フル加速。あわてて加速した向こうの車速が充分に乗ったところで、フルブレーキング。思いっきり俺を追い越した姿に、ちょっと笑ってしまう。

横向きに道をふさごうとする追っ手を、ヤツラのケツの方からすり抜けて、そのままバイパスをゆっくり走り始めた。なんでゆっくりかっつーと、こいつ速いし、こっちは150くらいしか出せないんだから、高速度じゃ勝負にならないわけだ。

だとしたら、もう少し道が狭くなって、他の車が出てくるところまでいくしかない。

 

俺は後ろに、スピーカーでわめきながらパシパシとパッシングをくれる追っ手を引き連れて、むしろ余裕を持って悠々と国道を走った。やがて道幅が狭くなり、トラックによる車の列が出来始める。対向車も、そこそこ出てきた。

ころあいだ。

トラックが三台ほど連なってるところで、対抗が来るのを見計らって、俺はアクセルを開ける。こっちのダッシュなら余裕だが、向こうはかなりがんばらなければトラック三台をいっぺんに、それも対向車をかわして抜くのは難しい。

赤灯回してサイレン鳴らしたって、トラックがどくスペースはないのだ。

それでも、しばらくはがんばって付いてきたが、同じようなことを二回繰り返したところで、追っ手は完全にミラーから姿を消した。俺はようやく長い息を吐き出し、ずぶぬれの身体が冷えていることに、いまさら気づく。

「寒いや。早く帰ろう」

精神的にも肉体的にもクタクタになった俺は、帰ったら風呂に入ろうと心に決めて、M109Rのアクセルをぐいっと開けた。高いギアから急にあけたので、M109Rの身体がぶるっと震える。

俺も思わず、ぶるっと身震いした。

 

そんな、切ない夢を見ながら、俺はゆっくりと自宅に帰ったのだった。

 

ツーリング中に夢を見るようなら、少し停まって休んだ方がいいようだ。

 

さぁ、ゆっくり休んだら。

 

また走り出そうか。

 


総走行距離:3000km

<<back <<menu

index

inserted by FC2 system