solo run
能登ツーリング
2008.05.02 かみ、リフレッシュする
軽い二日酔いなど吹っ飛ばす上天気に、気持ちが沸き立ったのだろうか。 起きてフラ公と待ち合わせるコンビニへ行くと、なんだかヤケに花が目に付く。 藤棚。
藤の花は、大好きだ。
上品な色といい、美しい房といい、すばらしい花だよね。あと名前もいい。むしろ名前がいい。
これはなんだろう。
ずいぶんと派手な色使いの花壇だ。
白い花を撮ってたら、偶然、後ろにNがいた。なにこの乙女チック画像。
花を撮ってると、ゲボゲボと下品なエグゾーストが聞こえてきた。 上品とか乙女とかカケラも関係ない男、フラナガンだ。
フラの愛機、V-MAX。
そこでフラにツーリング仕様のシャコタンをまたがせて笑いを取ったあと、工具を引っ張り出して車高を上げる。温泉施設でゆっくりするNに荷物を預かってもらえるので、ふたりとも身軽な状態でワインディングを走れる。ココに来てからずっと生殺しだったからね。 イヤでもテンション上がるつー話だ。
近場の温泉施設に、Nと荷物を預け。 さぁ、行こうぜ相棒。
能登大橋から能登島に入り、最初のワインディングを走り始めると。 「か、軽りぃ! なんだこりゃ!」 ビートルバッグの重さはあるにしても、荷物とNがいないから40kg以上軽くなってる上に、リアサスもまともな状態になってるから、ハヤブサの反応がいい。こういうとき、イキナリ調子に乗るとすっ飛ぶから、まずは様子見ながら抑えて走ろう。 それでもけっこういいペースで走りながらミラーを見ると、思ったよりずっと近くにフラがいる。 やるな、と思いながら徐々にペースを上げてゆく。直線でぶっちぎっちゃ面白くもなんともないので、多少控えめにフラのペースにあわせながら、ミラーでフラの走りを見て楽しむ。隼の性能なら、けっこうなペースを作りながらでも、後ろを見る余裕がある。なるほど、これはまた、楽しいもんだな。 ココのところrakに引っ張ってもらって、俺自身は速くなれたし、楽しいし、言うことないんだが、rakの方は果たして楽しいのだろうかと、実は少し申し訳ないような気分になっていた。しかし、シャカリキにぶっ飛ばしてしのぎを削るんじゃない、こんな走り方も、なんだかすごく楽しい。 これなら、それほど申し訳なく思わなくていいのかな、と、心が軽くなる。
それにしても、フラのV-MAXは良くできてる。 俺は今まで、V-MAXを三台乗り継いだが、ココまでいい足を作れたことはなかった。もちろん、V-MAXだからそんなに限界が高いわけじゃないけど、それでも今までのイメージは軽く越えるくらい、フラのV-MAXの仕上がりはいい。乗り手のフラと息が合ってるように見える。 比較的、中、高速コーナーの多い能登島を抜けたら、海沿いの国道を北上する。 ガソリンを入れて、穴水あたりで休憩。 「V-MAX、よく仕上げたなー」 「いや、まだまだですよ」 なんて言いながら、タバコを吸いつつ、今走ってきたワインディングの話をする。同じ道でも、乗る単車や走り方で、ずいぶんと感じが違ったりして、その視点や感じ方の違いがすごく面白い。やっぱり、単車は こうでなくっちゃ。俺は嬉しくて、ニヤニヤが止められないでいた。
穴水からさらに国道を走り、宇出津から県道6号へ。迷いながら広域農道の入り口を探す。
途中、昼になったので、コンビニで飯を食った。 今回は旨いメシを食おうというツーリングなんだが、タンデマーも荷物もなく、しかも脇を走るのがバカとなれば、そんなことはどうでもいい。飯なんて食わなくてもいいくらいだ。コンビニのそばとおにぎりでハラを満たしたら、さて、ワインディングを走ろうぜ。
ようやく入り口を見つけ出し、珠洲(すず)広域農道に入る。 高台を抜ける広域農道には、ほとんど車が走っていない。たいていの地図には広域農道なんて小さくしか乗ってないから、観光客は皆無だ。地元の車が数台といったところか。走りやすい広い道だが、全般にちょっと高速ワインディングなので、アベレージは高い。 隼にはもってこい、V-MAXだとちと頑張らなくちゃって感じだが、フラのV-MAXは調教がしっかりデキてて、かなりいいペースでついて来る。なので立ち上がりや直線など、明らかに隼が勝ってるポイントは押さえ気味にして、コーナリング中心でフラを引っ張る。 1、2コーナーほど先を走りながら、ちょっとアクセルを緩めると追いつかれるので、そこからまた引き離し、と繰り返してるうちに、広域農道が249号と交差する地点でいったん単車を止める。降りてタバコをくわえながら、メットを取ったフラに向かって 「気持ちいいなぁ。楽しいなぁ」 「気持ちいですねぇ。楽しいッスねぇ」 ちょっと頭が足らないんじゃねぇか的会話を繰り返す俺とフラ。
この先あと2、3kmばかり広域農道が続くので、終点まで行こうと走り出すと。 ココも通行止めされてる。 来た道を戻り、249を東へ折れてもうひとつの広域農道、珠洲道路を目指す。地図で見ると、249より東側はあまり曲がってないが、南西へ向かう方はくねってるようなので、249からそのまま南西へ曲がり、珠洲道路を走り出したのだが…… いっや、こっちはもうほとんど高速道路だね。 もちろん大きな高速に比べれば曲がってるんだけど、速度レンジとしては首都高と大差ない。ガマンできなくて何度か全開走行をしたら、さすがにフラが見えなくなった。あわててアクセルを戻し、高速コーナーで多少シンドそうにしてるV-MAXを眺めながら気持ちよく走る。 あっという間に最初の広域農道の入り口を越えてしまった。
ココでいったん休憩し、この先の道を考える。
ついでに給油をして準備が整ったら、珠洲道路を穴水まで一気に抜けよう。 少しせまくなり、いくらか速度が落ちたので、また楽しくフラと走る。『このペースでついてこれるV-MAXって気持ち悪いなぁ』とメットの中でゲラゲラ笑いながら、フラを引っ張り、自分も十二分に楽しむ。『俺は単車に乗るために生まれてきた』と、心から思える瞬間だ。 幸せな時間を満喫していると、珠洲道路は県道にぶつかって終わりになる。 「このまま帰るんじゃ、つまんねーよな、フラ?」 「走りましょう!」 バカふたりは地図で曲がってそうな道を探し、県道50号線を目指す。
ところが、俺は最近地図が見れるようになったばかり、フラに至ってはいまだに地図を持っていない。『能登まで来るのに、地図はどうした』と聞くと『ありますよ』と言いながら、高速でもらった能登半島の全図を差し出すような男だ。当然のごとく、道を見失う。 行っちゃ戻りを繰り返しつつ、あなみず駅にたどり着いた。 そこからようやく県道50号に乗ったのだが、これがまた、いかにも地方の県道ですフレーバーたっぷりの、荒れた、タフなワインディングだった。タフつーかかろうじて舗装してあるだけと言う林道だ。しかも途中までは、民家の中を走ってる。 時々、地図で道を確認しながら、俺とフラは荒れた林道を突っ走る。 最初こそ、『うわ、走りづれぇなぁ』と辟易しながら、のんびり走っていたのだが、どんどん荒れてくる道を見てるうちに、なんだかムダに楽しくなってきた。『つーかアレだな。俺とかフラにはこういう荒っぽい道が向いてるんだな』とメットの中で笑いながら走る。 速度があがり、砂の浮いた路面でリアタイアがすっ飛ばされる。 そのたびに、キャッホー! とか、うひょひょひょひょっ! とかキチガイ沙汰の歓声をあげながら、リーンウィズか軽いリーンアウトで、バンバンアクセルを開ける。今考えれば、けっこうヤバいとこもあった気がするけど、このときはランツァみたいに乗れる気がしたのだ。 途中、いちどだけ休憩を入れ。 50号、51号、23号と荒れた林道チックな県道を、30kmほどワインディング三昧。
ロマン峠に戻ってきた時にはテンションがおかしくなり。 「フラよー。このまま帰るってのはナシだよな?」 「行きましょう」 「能登島のワインディング行くべか」 「まだクネクネ道を走れるんですか。幸せだなぁ」 ダメな加山雄三みたいなセリフに吹き出したら、そのままツインブリッジのとを渡って、能登島に入る。そのまま休みナシでワインディングを抜け、当然のごとく途中で道を間違え、予定よりずいぶん走った八ヶ崎あたりで、いったん休憩を入れた。 と、後ろから来るはずのフラが来ない。 「ありゃ、飛んだか?」 思ってると、やがてのろのろと走るV-MAXの姿が見えてきた。 「あんだ、おめ。どうしたよ?」 「ステップが……」 つぶやくフラの足元を見ると。 シムラっ! 逆さ、逆さっ! 可到式ステップの上下が180度ひっくり返ってる画ってのも、なかなか見れねぇよな。 ボルト一本で固定されてるステップが、振動や地面との擦れで緩んでしまい、くるりと回ってしまったようだ。休憩してるときに、そんな話を聞いてたのだが、まさか今ココでやらかすとは思わなかった。フラナガンおそるべし。つーかちゃんと整備しろ(言われたくないはずです) 「いやぁ、かみさんに気づいてもらおうと思って、思いっきり手を振ったんですけど、かみさんゼンゼン気づかないで行っちゃうし、道端にいたおばあちゃんが、自分のことだと思って手を振り返してくるし、思わず笑っちゃいましたよ」 おばあちゃんの中で単車のイメージが上がっただろうし、良かったじゃねーか。 フラがステップを直してる間、タバコを吸って景色を眺めてると、フラの携帯にミチル君から電話が入る。名古屋から5人でこちらへ一泊ツーリングに来るというので、途中で合流して一杯やろうという話になってたのだ。いや、一緒には走らない。タンデムじゃ悔しいからね。 すぐ近くの能登島にいるのに『あと30分か一時間』つー、明らかにまだ走る気満々の答えを返したあと、フラは一気にステップを修理した。んで『もうあと少しだから、せっかくだし、おめぇ前を走れ』とフラを前に出し、最後のワインディングを走り出す。 V-MAXの(ノーマルに比べて比較的)落ち着いたリアの挙動に感心しながら走りぬけ。 温泉施設でNを拾いがてら風呂に入り、今日の宿に到着。 フラは別の宿でミチル君たちと合流だ。
微妙な安っぽさが、俺の心をすげぇ落ち着かせる。 ミチル君たちが帰ってきて、風呂に入って晩飯を食う時間を待つ間、部屋にあったウッドパズルで遊ぶ。身体が疲れてるのに頭が冴えてるこんなときは、パズルでクールダウンってのもなかなかいいものだ。ま、全部解けたからそんな余裕かましてるんだけどね。 解けてなかったら、部屋にこもってたかも知れん。
時間になったので、いつもの又五郎寿司へ出発だ。 ミチル君や彼のバイク仲間と合流。 左からVTRのMさん、バンディット1200のKさん、モトグッチのOさん、んで、初めてミチル君と会ったとき一緒に走ったイナズマ1400のNさん。Mさんあたりは会うなり『かみさん、お噂はかねがね』とか、やい、ミチル! おめ、どんな噂してんだコラ。ま、想像はつくけど。
今日一日、俺とワインディングを走り続けたフラナガン。ぎょろ目がいつもよりぎょろっと輝いてた。道が曲がってりゃ楽しいって男のクセに、いつまでV-MAX乗るんだろうね。死ぬまで乗るんだろうね。んで、隣のNは一日温泉でのんびりとリフレッシュしたので、ムダに元気。
ミチル君と、こっちもワインディング三昧でリフレッシュした俺。なにこのご機嫌顔。
みんな飯を食ってきていたので、適当につまみを出してもらって、さぁ宴会開始だっ! 干物のぬか付け。しょっぱいけど、すんげぇ旨い。酒ガブ呑みする。
初めてだろうが、歳や住んでるところが違おうが、単車に乗ってるってだけでイキナリ話せるんだから、やっぱり単車乗る人間と宴会ってのがイチバン楽しいね。それぞれ自分のバカな体験や面白い話、時にはちょっと深刻な話をしたりして、時間はあっという間に過ぎてゆく。 やがて夜も更けてきたので、宴会はお開きになった。 宿へ戻って、寝る準備をし……てるわけがない。なぜなら。
フラ公だけは、宿に戻らず俺のところへ呑みに来たのだ。
そりゃっ! 二次会だ! 「よ〜し、それじゃまずフラ、パズルをやれ」 酔っ払ってわけのわからないオーダーをする俺の言葉を、素直に聞くフラ公。 酔っ払いには難しいぜ?
んで、こっからふたり延々と、ひたすら呑んで喋った。 V-MAXの話、隼の話。俺のバカ話に、フラの失敗談に、語るコトはいくらでもある。酒はどんどん進み、酔っ払った俺たちに『歯止め』なんて言葉の持ち合わせはない。明日の朝、絶対シンドイことはわかっているのに、俺とフラは今日の走りをつまみに、いつまでも飲み続けた。
さて、明日はいよいよ能登を離れる。
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