solo run
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山国志
2008.08.16 周防(すおう)の男と、南総(なんそう)のはぐれ熊
ゆっちょむは、バカだ。 俺が同じ歳だったときとほぼ変わらない、頭の悪い子だ。楽しい時間は目いっぱい楽しむ。はしゃぎ、騒ぎ、呑んだくれる。俺と似たようなペースでガンガン呑んだくれ、血圧が上がりすぎて血管が浮き出るくらい、全速力ですっ飛ばす。これは宴会にのぞむ姿勢としては間違いなく正しい。 ただ、ひとつ。 この男は、酒に弱い。そしてバカな子だからそのことを失念してしまう。生き物のカテゴリとして大きく分ければ、ヤツのキチガイエグゾーストを受け継いだ銀星あたりと同じ範疇に生息しているんだろう。テンションのままにカパカパ逝くところなんて、俺、銀星、ゆっちょむ、みんな同じ。 実はあんまり酒に強くないところも。
てなわけでこの朝、ゆっちょむは強烈な二日酔いに苛(さいな)まれていた。 仕事に出るデコと別れて、ゆっちょむとふたりドルフィーの家に向かうのだが、その前に旅の洗濯物をコインランドリーで洗濯し、その間にファミレスで飯を食おうということになった。ちなみにファミレスは『ジョイフル』で、関東人の俺には、どうしてもホームセンターの名前に聞こえてしまう。 二人で雑炊のセットを食ったのだが、喰うと同時にゆっちょむはトイレに駆け込んでしまう。 俺はもちろん喰い足りなくて、ゆっちょむがリバースしてる間にグラタンを頼んだ。戻ってきたゆっちょむがつらそうな顔をしているので、「どうせ洗濯と乾燥にも少しかかるから、それまでのあいだ寝てろよ」と促すと、素直にうなずき、ファミレスのいすの上にぶっ倒れる。 死んでるところ撮ってやろうと思ったら、気づいて笑いやがった。空気の読めないヤツである。 ゆっちょむが寝てるあいだ暇なので、携帯で天気を確認したりしてたのだが、どうもまだ喰い足りないっぽいので、俺としては珍しく、甘いものを喰ってみた。 カキ氷。ブルーハワイだったかな? 残念ながらリキュールがかかってるわけじゃない。
洗濯と乾燥で一時間くらいかかったか。 洗濯物を荷物に押し込み、コンビニでジュースだのグミだのタバコだのを買い込む。さっき吐いてしまたゆっちょは、ここでウィダーインだか朝飯バナナだか、ケモライドの昼飯みたいなのを買って喰い(飲み?)、すかさずリバースしてた。ちょっとした胃洗浄。 ところが、ヘロヘロだったこの弟分。 単車をまたぐなり「あ、頭が痛いの治りました」とか言い出す。さすが弟分つーか、やっぱりバカつーか、こいつもたいがい単車が好きなんだなぁとうれしくなりながら、ふたりで地図を確認し、ゆっちょの先導で走り出す。言っても、ゆっちょも地図的なものは適当なので、やたら頼りないふたり旅。
県道184号から、国道376号へ入れば、俺的に山口名物である、快適ワインディングだ。
ツアラーZZRにケツを見せてるわけには行かないので、ワインディングに入ってゆっちょむから「この先しばらく一本道ですから、行っちゃってください」言われた瞬間、Gixxerにムチをくれてかっ飛ばし始める。つってもその一本道の峠ってのが、ある意味こっちも名物の、林道チックな狭い峠道。 道路のミュー(摩擦係数)と相談しながら、6割程度で気持ちよく流す。
途中、ガスった山が綺麗だったので、停車してタバコに火をつけ、ついでに撮影。
するとほどなくしてゆっちょむがやってくる。
さっきまでゲロ吐いてたくせに、なにその満面の笑み。 ま、俺も精神の構造がほとんど一緒だから、ものすげぇよくわかるけどね、その気持ち。 朝からワインディング。なんてステキな響きの言葉だろう。
もちろん、直線もある。
こんな感じの道幅や路面だと、関東にいるときは走りやすいワインディングって思うんだけど、こっちにきちゃうと狭い林道ってな印象になっちゃうのが怖いね。どっちにしろ、とにかく車が少ないのが何よりありがたい。SS乗りには絶対的にオススメの、隠れた快走スポットだよ、山口。
メットの中はご機嫌の笑顔。そして臭い。
434号と376号が重なったあたりから、そのまま376号を走ってゆけばドルフィーの家に向かうのだが、このそばには菅野湖という湖があって、菅野ダムというダムがある。ダムといえばその周りはたいがいワインディングだ。今現在、ワインディングを走ってるにもかかわらず、食指が動くバカふたり。 「あれ? ゆっちょむ。道、こっちでいいんだよな?」(ダムへ行く道を指しながら) 「そうですよ、かみさん。間違いありません」(半笑いで) つわけで、地図に弱いふたりは残念ながら道を間違えて、菅野ダムの方へ走り出してしまった。家で待ってるドルフィーのことは、もちろん気になる。だが、それも交差点を曲がって数秒の話だ。俺とゆっちょむは 『ダムという名の美女』の待つ湖へ向かって、愛機のアクセルを開けた。 もちろん、ふたりとも半笑いで。
菅野ダムの周りは、相変わらずせまっくるしい峠道だった。 全開にするポイントなど皆無だが、それでも道が曲がってれば楽しい俺たちは、ただひたすらに曲がり道を走る。すると、ダムに入る少し前から俺たちの前にいた、爆音のトッポいKP(シビック)が、待ってましたとばかりにアクセルを開け、結構いいスピードでコーナーに突っ込んでゆく。 頭の中で、ユーロビートが鳴りはじめた。いや、MOVEか。 コーナーをひとつ二つ、車間を開けて走りを見た後、おもむろにハイビームにしてKPのテールへぴたりとつける。ちょっと走って、追いつけない相手じゃないことがわかったのだ。もっとも、こんな狭い道で抜くのはかなりリスキーだ。少なくともハーフウエット路面と俺の腕じゃ、抜くのは無理だろう。 プレッシャーをかけられたKPは、ちょっとムキになってアクセルを開け始める。 だが、抜くのは無理でも付いていくだけなら楽勝だ。とは言え、そんなにエグくあおるわけじゃない。路面のコンディションが悪いし、なにより楽しくて仕方ないから、ジャレついてるだけなのだ。直線もコーナーも、まるっきし同じ車間のまま、ひたすら峠を走るKPとR1000。 ただ走ってるだけで楽しいのに、こんなボーナスまでもらっちゃっていいのかな。
すっ飛ばす俺とKPの前に、一台クルマが現れた。 残念そうにしぶしぶと車速を下げるKPの横を、片手を挙げて挨拶しながら抜き去り、前のクルマも抜いてそのまま単独走に入る。さっきまでの高揚感はなく、残念な気持ちは俺も同じだ。狭いスリッピーな峠を流し、ちょっと開けた駐車スペースで停まってゆちょむを待つ。 すると、KPがやってきて前を走り抜けざま、手を上げて挨拶してくれた。 さんきゅ、楽しかったよ。 ゆちょむと合流し、国道376号とも合流し、さて、ドルフィーが待ちくたびれてるぞ。
空は微妙な雲行き。あとはドルフィーの日ごろの行い次第なのだが……期待できねぇなぁ。
途中、ガソリンを入れてるあいだにドルへ電話。 もうすぐ着く旨を伝えて、ゆっちょとふたり二号線をしばらく走ると。
ライダーズハウス・ドルフィー(自己申告)に到着。 ドルフィーと、サイトでしか見たことないドルのM109Rが出迎えてくれた。 つーか俺、こんなでかい単車に乗って、こんなんで峠攻めてたのかよ(いまさらです)。
ドルのオトコマエな性格を現してる、オトコマエなバッグの装着方法を見て、まず、ひと笑い。
や、スイングアーム(ドライブシャフト)はねーだろ、実際。 アレか? 引っ張りあげてバネ下重量の軽減か? 自分で自分の襟首を持って空に浮かぶ原理か?
ドルんちのまわりは、まだ家が少ない。
そして周りには山。いや、実現は無理だとしても、真剣にここへ住みたいとは、マジで思うよ。
2月に俺んちで宴会したとき以来、久しぶりのドルフィー。 つっても、こちらもネットでは話してるからね。ぜんぜん久しぶりの気がしない。
シンプソン兄弟。 偶然、おんなじジャケットを手に入れてるところに、運命的なものを感もういいですかそうですか。
それじゃ、挨拶代わりにまずは走ろうか。 するとゆっちょのバカがバカらしく、単車を交換したいと言ってきた。ヤツとしては単純に、久しぶりにM109Rに乗りたいだけだったんだろうが、この行動が後に、ヤツの運命を左右する.。ここでゆっちょむは自分から『今日は単車を交換して走る』というルールを設定してしまったのだ。
ドルのブルバードM109Rにまたがって、ご満悦のゆっちょむ。 地獄へのカウントダウンは始まってるんだけどね。
「かみさん、どこに行きたい?」 「道が曲がってるトコ」 頭の悪い回答に苦笑したドルは、俺を歓迎するために考えていてくれたプランを放棄して、ここらの走りのメッカに連れて行ってくれるという。「こいつもたいがい、ヒトがいいつーかオトコマエつーか、バカだよなぁ」とご機嫌の俺は、ゆっちょのZZRに乗ったドルの後ろについて走り出す。
目指すは広島県の羅漢渓谷。 ガソリンを入れたら、ゆっちょとドルが単車を入れ替え。 そこから細い道へ入り、地元スペシャルで羅漢へ向かう。
ドルフィーの背中。 背が高くて足が長いから、でかいクルーザがよく似合う。俺とかゆっちょむだと、でかい単車にセミがへばりついてるみたいに見えるからね。「やっぱクルーザはガラの でかいヤツが似合うんだなぁ」と思いつつ、でも、ドルの背中を見てたらデコのときみたいに、なんだかクルーザに乗りたくなってきた。 あれ? 俺、クルーザ欲しいのか?(本人以外はみんな知ってます)。
「この先の道の駅で休憩して、そこから、ここいらの走り屋の聖地へ向かいます」 ドルの言葉にワクワクしながら走ってると……
雨が降ってきやがった。 も、確実に間違いなく、これはゆっちょむのせい。 今、決めた。
濡れそぼる木々ってのはあんがい美しい。ケモなら死ぬほど見てるし、しかも見とれるほど美しいときがある。だけど、ロードの時はできれば見たくない風景だ。テント張って酒飲み始めてから降ってくるなら、それもまたオツなんだけどね。テントに当たる雨の音、実は大好きなのだ。
ほうほうの体で、道の駅「羅漢」に到着。
クルーザ、ツアラー、スーパースポーツ。節操も統一感もあったもんじゃない。
羅漢で雨を避けて休憩を入れながら、バカ話をする。 「やっぱり、かみさんがいるから降ってきちゃいましたね」 「なにをー! ドル! 俺じゃねぇよ、ヌレギヌだ」 「俺、オシッコしてきます」 ゆっちょむはマイペース。 と、道の駅の駐車場で軽い接触事故が発生する。当ったんだか当たってないんだかわからない程度だし、どうやら示談で済ましそうな様子なので、こちらのものんびりと様子を見ながら、あれこれと勝手なことを言い合う。 「あんだ、ありゃ入ってきた方が悪いな」 「あ、あそこですよ、かみさん。車体がちょっとだけへこんでますよ」 「俺、オシッコ」 ゆっちょむ……
雨が小降りになったので、俺とドル、それにオシッコ大明神の三人は改めて走り出した。 弱まったとは言え充分な雨量で俺たちを濡らす天に、恨みがましい目を向けながら、ぬれた峠をのんびりと下っていると、山を降りたあたりでドルフィーが単車を停めた。「かみさん、どうせ濡れついでに、錦帯橋 (きんたいきょう)でも見て帰りますか?」と言うドルは、言葉通りずぶぬれだ。 「そうだな。つーか俺ら、おめーほど濡れてねーし」 半笑いでそう指摘すると、俺とゆっちょむの姿を見て、ドルが悲鳴を上げる。 「ホントだ! ちっとも濡れてない!」 「俺ら、カウルって雨除けがついてますからね」 ゆっちょむが余計なアオりを入れると、ドル、がっかりした顔で「なんで俺だけ、こんな濡れとるんじゃ」そりゃおまえ、風に逆らって堂々と走る、クルーザの宿命だよ。でも、雨の中をゆっくり走ってるときのドルの後ろ姿は、実はかなりカッコよかった。のんびり下りが退屈だった俺は、走ってる間中、 「次に買うなら、どんなクルーザがいいかなぁ」 って吟味しながら走っていたくらいだ。 「軽くてシンプルなのがいいな。1000ccくらいのビッグシングルで、とにかく細身。車重は軽い方がいいから、エンジンはアルミでフレームはチタンか。座面は低くてステップはちょっと高め。エンジンは低いほうが安定してるしカッコいいけど、バンク角はある程度ほしいから搭載位置が難しいところだ」 そんなもん、自作するしかないわけだが。 ま、雨なら雨なりの楽しみ方がある。
雨でシケシケになりながら、いや、ドルだけはずぶ濡れになりながら、錦帯橋に到着。
用事でちょっとはずしたドルを尻目に、俺とゆっちょむは雨の中を観光。
岩国城。
なにやら一部では有名らしい、佐々木屋小次郎商店。右下になんか居るね。
ゆっちょむがみたらし団子を買ったので、俺は岩国寿司を買ってみた。
普通の散らし寿司。うまかった。つられてゆっちょむも買ってた。
佐々木小次郎がツバメ返しを編み出したと言われる、柳の木だそうだ。
やがてドルがやってきて、錦帯橋を案内してくれた。
橋の上は有料っぽいんだけど、ここから見るのは無料。 つーか、橋の上に乗っちゃったら橋は見えないわけで、確かにここのほうが全景を楽しめる。 しばらく観光してから、それじゃ時間は早いけどドルの家に行こうか。つーか呑もうか。
帰って車に乗り換え、近所にあった俺の好きなラーメン屋、またも『山小屋』でラーメンを食い、コンビニで必要そうなものを買い込んで、山賊なんとかに晩飯を買いに出る。「晴れてればそこで飯を食いたいところだが、雨なので弁当にしよう」と言うドルの提案だ。 クルマで二、三分だったかな? 山賊なんとかに到着。
ドルとゆっちょ。 ドルフィーがお弁当を買っているあいだに、俺とゆっちょむで中の探検に出る。
こんな風に露天で飯が食えるんだけど、雨なので、仕舞ってる席もおおかった。
雨の縁日みたいで、ちょっとさびしい感じが、逆に俺の琴線に触れる。そして、上の写真の左奥にある顔を出して撮影する装置(装置は言いすぎです)は、もっと琴線に触れる。俺は、この手のものを見て『顔を突っ込まなかったことが無い』のが売りなのだ。もうすぐ39歳になるけど。 なので、
撮ってみた。 つーか撮影係のゆっちょむ、引きすぎ。俺様の美しい顔がビタイチ判別できないじゃないか。
無事、山賊弁当を買い込んだら、とっととドルの家へ。 早いところ風呂に入って酒が呑みてぇ。 つわけで、新築のキレイすぎる室内に、ドカドカと上がりこむ薄汚い俺とゆっちょむ。
さっさと風呂を借り、その風呂のあまりの近代兵器っぷりに、腰を抜かして出てくる。 あと、トイレの近代兵器っぷりもすげかった。
午後4:00と言う、一般的にはちょっと早い時間、mioちゃん的にはすでに後半戦の時間から、ビールを引っ掛けでバカ話をしてると、ドルの携帯が 鳴った。仕事かな? と思って見てると、「はぁ? どこの?」急に大声を上げる。いぶかしげに見る俺に、笑いながらドル。 「ショーファーさんが、○○まで来てるって。俺、迎えに行ってくる」 ドルの言葉に、ゆっちょむが爆笑する。 「ちょろい! ちょろすぎるよ、この人たち。なんでこんなに簡単に釣れるんだ!」 つーか、おまえもな。
ほどなくして、ショーファーさんがやってくる。
すげぇ見慣れた顔なので、柏から離れてる感が一気に無くなった。旅気分、ぶち壊し。 しっかし、ホントこのヒトはフットワークが軽いね。仕事で小倉まで来たつって、クルマで二時間かけて山口まで出てこないよ、普通。しかも、到着したのが5:00ころで、6:00には帰るとか、相変わらずおかしなコト言ってるし。一時間の出会いとバカ話のために、往復四時間。 まぁ、間違いなくカッコいいことだけは確かだ。
そして、「もしかして」とわずかな可能性を逃さず、山賊弁当をショーファーさんの分も買っておいた、ドルの慧眼もすばらしい。さっきラーメン食ったばっかりなのに、一緒になって山賊弁当食ってるゆっちょむの胃袋は、むしろ猛省を期待したい。おめ、完全イキオイだけで喰ってるだろ?
ビールを飲んだ後は、よしなしがお土産で茨城から持ってきた酒や、ドルが買っておいてくれた酒を呑みながら、しゃべって、呑んで、笑って。楽しい時間が続く。
何が悲しくて、山口まで来て茨城の酒を呑まなきゃならんのか。よしなしにも猛省を求む。
やがて、仕事を終えたデコが、クルマに乗ってやってきた。 初見のショーファーさんとご挨拶。しばらく話したら、ほとんど入れ違いにショーファーさんは小倉へと戻っていった。毎度、急襲ご苦労様です。「山口に来た気がしねぇー!」とか文句言ってましたが、ホント、うれしかったですよ。こんなサプライズは、いつでも歓迎です。 今度は、呑めるときにも来て下さい。
宴会を続けてると、ドルの嫁さんのJちゃんが帰宅。
ドルはJちゃんが大好きだ。
Jちゃんが帰ってからは、呑んでても何してても、折に触れてJちゃんを気遣う。 でもベタベタした感じじゃないから、とても好感が持てる。『男らしい優しさ』みたいな感じ。そういうステキチックな神経は俺にはトンと持ち合わせがないので、なんだか新鮮な感じだった。Jちゃんもかわいらしい女の子で、ドルさえ居なきゃぁ、速攻で口説いていただろう。 んでまぁ、口説く代わりに、肩が悪いというJちゃんを治療する。実は来た時からドルに頼まれていたので、Jちゃんが帰るまで、ひそかに酒の量を抑えていたのだ。ここで楽にしてあげて、Jちゃんの心をがっちりキャッチすれば、次回から来やすいってのもある。むしろ大いにある。 治療を始めると、ちょっと天然の入ったJちゃんは、ありえないうめき声を上げる。 『ヒトの嫁さんにあんな声上げさせていいんだろうか的なうめき声』に、周りはゲタゲタ笑っている。「気持ちいいよ〜」とか叫びながら喜ぶJちゃんを見て、ドルはまるで自分の事のように喜んでいる。っと、あんまりそういうこと書くと、ドルの好感度が上がるので、ここらでやめておこうか。
ヒトの家に邪魔するときの、イチバンの要(かなめ)。 『その家の嫁さんの心』をがっちりつかんだ俺は、治療を終えて、解禁になったぞとばかりに酒をカパカパ干してゆく。なんたって、ドルの「また、かみさんに来てもらおうな?」のセリフに、Jちゃん「あたし、迎えに行く」まで言ったからね。俺の圧勝。ドル家を完全制圧したと言っていいだろう。 呑んで、喰って、騒いで。 まるで俺んちに居るみたいな宴会が続き、やがて夜もふけてくる。 宴会やった部屋の隣の和室、スライド式の壁を閉めれば、そこはもう客用寝室だ。俺とデコ、ゆっちょむは、三人川の字になって穏やかで幸せな眠りについた。山口組の三人、ショーファーさん、そしてJちゃんにもらった楽しい時間を反芻しながら、俺は明日も続く楽しい旅にワクワクしていた。 みんな、楽しかったよ。 ありがとな?
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