solo run

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山国志

2008.08.19 火の国、上陸

 

後半は、走りよりも宴会の率が高い予定になっている。

だが、九州に渡る以上、どうしても走っておきたい場所がある。無論、やまなみハイウェイだ。何度か走ってる道だが、せまっ苦しい峠道を抜けた瞬間、目の前に広がる雄大な風景と、その風景の中を走る高速アベレージのワインディング。まさに単車の聖地の名にふさわしい。

九州に来てやまなみを走らないのは、焼酎を呑まないのと同じくらいもったいない。

 

起きて準備をしたら、フェリー乗り場まで、早朝の街中を走り。

 

フェリー乗り場に到着。

 

とっとと乗り込むと、二等船室はご多分にもれずバカな家族が満載だった。

ガキが騒ぐのは仕方ないにしても、それを止めるどころか『一緒になって騒いでるバカ親』がいる光景は、何度見てもガッカリする。旅の恥はかき捨てじゃない。自由な旅に出たからこそ、より自分を律していくことが肝要なんじゃないだろうか?

ガキの目の前で、SAのゴミ箱に家庭ごみを捨てる、共有の場所で私有の場所のように騒ぐ、車の窓からポイ捨て。そんな姿を見せることに抵抗がないのは、その人間に芯が通ってないからだ。そんなヤツラがどうでも俺の知ったことじゃないが、親を選べないガキには同情を禁じえない。

毎回、こういう不愉快を感じ、そしてそれを黙ってられない人間なので、俺は出来るだけフェリーを使わないし、使っても一等が多い。二等の方が色んな人間と出会えて楽しいことは間違いないのだが、『初見の人間の前でバカに説教くれる』ってのも、あまりスマートとは言えないし。

 

今回、一時間以内という短い時間だったので、まぁ、我慢しておこうと二等に乗ったのだが、「やはり、ドコにでもバカは居るのだなぁ」と改めて感じさせられた。さっきのバカ親は、子供にせがまれて、客室の中で「よーいドン!」とかやってやがる。ガキの声よりそいつの声が気に触る。

トイレに立ったとき、バカ親の父親の方に向かって「あんたが先頭切って騒いでどうするよ? 子供に媚びるな」と声を荒げずに穏やかな調子で諭した。「え?」みたいな顔で固まってたので、「ここはあんたんちでも俺んちでもねぇんだからさ」と言い残してトイレへ。

帰ってきたら、少しは静かになってた。

まぁ、楽しい旅に出て楽しい思い出を残したいところに無粋かもしれないが、楽しい思い出を作る権利はあっても、彼には『俺の旅に楽しくない思い出を作る』権利はない。まぁ、ほんの45分くらいだし、お互い、少しだけ譲り合おうぜ。横に居る、さっきまでヤカマシかったおっさん。

あんたもな。

 

そんなこんなで、大分に到着。

 

ここから高速に乗って西へ向かいながら、途中の由布院で降りて、やまなみハイウェイを目指す。

 

が、最初のPAに入った瞬間、思いっきり雷が鳴り始めた。

「こりゃ来るかなぁ」

と思いながらタバコを吸って休憩してると、ポツリ。

 

と思った次の瞬間には、土砂降りだ。

「これだけ派手なら、長くは続かないだろう」

そう思って、なんか大分の名物っぽい鳥のから揚げを食いながら、しばらく雨宿り。

思ったとおり、すぐに雨が小降りになり、やがて降ってるか降ってないか判らないくらいになってきたので、急いで出発する。「これじゃぁ道が濡れてるから、やまなみどころじゃないかなぁ」とガッカリしながら走っていると、俺のひとり言を聞いてたのか、太陽が顔を出す。

ずいぶんと日差しがきつくなってきたので「もしかしたら」と一縷の望みを持って、由布院で降りる。

由布院からしばらく続くワインディングは、せまっ苦しい峠道だ。

しかも路面はウエットで、楽しく攻めるというわけには行かない。

なので車をパスしないでのんびり走る。

 

やがて、やまなみハイウェイに乗る。道も、乾いてきた。

 

厚い雲の向こうに、ちょっとだけ青空が見えてきた。こりゃ、期待できるんじゃねーか?

 

ワインディングとこんな道の繰り返しが、たまらなく気持ち良い。

 

と、峠道に入ったら霧がでてきた。

「また降っちゃうのかなぁ」なんてガッカリしながら走ってると、途中で見覚えのある風景に出くわす。

 

去年のツーリングでテント泊をした、曲がりこんだコーナーの中州みたいな場所だ。

「おお、懐かしい」

思わず停まって、写真を撮りつつ一服。

 

峠を降りきりしばらく行くと、

 

やまなみハイウェイらしい、開けて気持ちの良いワインディングになる。

 

いつもの壮大な風景にも、お目にかかれた。

ここから風景を楽しみつつ走っていれば、やがて道はご機嫌なワインディングへと姿を変える。

だだっ広い風景の中に道だけが続き、見通しがいいから気持ちよくすっ飛ばせる。最初の数回こそ、コーナリングの練習だとばかりに試行錯誤してたが、やがて美しい風景と気持ちのいい道に、そんなことがバカバカしくなってしまって、ただ、気持ちよく走ることだけに集中。

もう何日もワインディング三昧の生活なのに、それでもやまなみはステキだ。

 

結構なペースですっ飛ばし、大観峰(だいかんぼう)に入る。

空も、ご機嫌に晴れ上がってきた。

 

一服してると、次々と単車がやってくる。やはり圧倒的に多いのはハーレィだ。あと、国産のツアラーとかネイキッドが多かった。SSは俺以外一台も見なかったが、平日だからだろう。休日の大観峰は、まるで箱根の大観山みたいに、単車の品評会ができる。

『大観』ってのはアレだ。単車を観覧できるって意味なんだ(ヒャクパー違います)。

 

端っこを残して、センターだけ丸坊主。でも、最近はそんなに恥ずかしくもない。

ヒトの評価云々より、『自分が楽しめるか』の方が100倍大事だ。

つーか端っこデロデロのやつを、センター坊主でミラーの点にしたら、その方が面白くね?

 

大観峰からの眺め。そういや、ここが晴れ上がってるのも、久しぶりに見たかも。

ハーレィ軍団のひとりに綺麗なおねぇちゃんがいたので、目が合った瞬間にっこりしたらフルシカト。

悲しい笑顔を固めたまま、R1000にまたがって走り出す、かみさん38歳。

 

熊本に向かいながら走ってると、風を受けてても暑い

さすがは火の国だ。

こりゃ、また気温35度を軽くオーバーしてるな。

 

熊本から高速に乗り、北を目指す。

今日はNの家にお泊りの予定。旅もこのあたりになってくると、野宿を取り立てて変わったこととは思わなく、むしろ普通に生活の一部になってきてるので、別に寝るところはドコでもいい。だが、N一家と呑むのは楽しみだし、美味い焼酎って楽しみもある。

R1000のアクセルは自然と開け気味になり、

まだ日も高いうちに福岡に到着。

今回、九州の地図を持ってきてなかったので、そこからちょっと迷うも、近所の駅の名前を覚えてたので、携帯のナビで検索。大体の方向がわかったので適当に走ってると、見覚えのある場所に出た。N家に到着し、ちょうどタクシーでやってきたNとタイミングよく遭遇。

早速、家にお邪魔してシャワーを借りる。

んでN母が出してくれるビールを、もちろん遠慮なく呑み、適度に酔っ払ったところで

 

N父と近所の飲み屋で待ち合わせ。

「お久しぶりです」と挨拶もソコソコに、N父の焼酎ボトルをガンガン空ける。

 

N両親と俺。

酔っ払って帰ったら、ご機嫌のN母が家庭用カラオケを出してきた。本人、めちゃめちゃ楽しく歌ったあと、「ほら、かみさんも」とマイクを差し出す。一回は「いや、俺は……」なんて言ったものの、続けて勧められれば元来、嫌いじゃないかみさん。マイクを握って歌いだす。絶好調のカラオケ大会。

さんざ歌って酔っ払ってると。

ふと、N父が携帯電話を取り出した。

「あぁ、俺だ。明日は午前中休んで午後から行く」

ぎゃははははっ! 思わず大爆笑。会社の後輩だか秘書だかに電話して、仕事を半日にしちまったよ、このヒト。オトコマエだなぁ。うれしくなった俺は、もちろん、酒もガンガンすすむ。「かみ、この甘い酒、呑むか」「いただきます」と即答。甘いのが苦手な俺だが、そんなことは関係ない。

楽しく呑んだくれ、あっと言う間に空けてしまった。

こうして、九州での楽しい夜は更けていったのである。

 

そして、明日は山口へ行って、また、楽しい連中と呑むのだ。走るばかりの前半も楽しかったが、呑んだくれの後半も負けずに楽しい。もう、ずっとこうしてダチの家を回りながら、走って呑んだくれて生きてゆきたい。一生野宿でもいいよ、ホント。

つーか。

俺、社会復帰できんのだろうか?

 

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