solo run

in ご近所

2010.04.26 ヤツラの足音が聞こえる

 

いいかげん、腐りはじめている気がした。

なにがって俺が。

なので、「とりあえず虫干ししてみよう」と思ったのが土曜日のこと。

ウレタンマットを買ってからこっち、とんと出番のなかった銀マットを引っ張り出し、ベランダに敷いて。タバコを一服つけて小説を読みながら、まったりと太陽を浴びる。その間、三回ほど自分と戦って、とりあえずビールを呑むのは我慢した。自分のストイックさが怖い。

 

ちなみに見える景色は面白くもなんともない。しかもここ数ヶ月、いいだけ家の中でグズついてたから瞳孔が開ききっちゃって、モグラじゃねーんだからってくらい、とにかくまぶしくて仕方ない。それでも風に吹かれるのは、やっぱり気持ちのいいもんだね。

ちょうどpoitaさんから電話があったので、パンツ一丁でバカ話。

 

とりあえず、太陽が好き。

 

ギプスを巻いた脚を殺菌していると、

 

右足の衰えっぷりが哀しい。

気持ちよく日光浴して、風が冷たくなってきたのを見計らって戻る。

夕方になってGO!!!君が、脚が治るまで貸してくれる予定のアドレスV100、通称ゴスペルを持ってきてくれた。ありがとうを言うまもなく、出会いがしらにワルクチを言い合いながら、ダラダラと過ごす。ちかごろNとGO!!!君、いや、GO!!!のヤローが、結託して俺をいじめるようになった。

とかくこの世は住みにくい。

さらに夜になって、しんごがやってくる。太ってからこっち、ずっとGO!!!にいじめられてるから、先手を取ってしんごに「俺の顔見て太ったって言うんじゃねーぞ!」と釘を刺したら、しんごはコッチを見て、「ああ、そう言えば少し、太りましたね」。

とたんにGO!!!が、ニヤニヤしながら、「少し?」。

しんごは優しいなぁ。GO!!!はいつか退治する。ついでにマルも。

気心が知れたというよりは家族みたいなふたりと宴会(つっても呑んでたのは俺だけだが)しつつ、単車の話や走りの話をたくさんする。早いところ単車に乗りたいなぁという気持ちが、ムクムクと湧き上がってきて、それをごまかすためにピッチが上がる。んで、いつも通り泥酔。

 

そんなこんなで、翌日の日曜は激烈に二日酔い。

ツーリング行ったGO!!!だの、秩父を走ってるmioちゃん、板乗り、UKなんかから、俺をいじめるべく電話やメールがあったのだが、こっちは頭が痛くてそれどころじゃなかったので、布団の中で丸まってた。夕方だか夜にRから電話が入って、ちょっとしゃべる。もちろん、これも「走ってきました」電話。

ホントなら、羨ましいやら悔しいやらで悶絶するはずだが、この日はぜんぜん大丈夫。

なぜなら翌日、ひっさしぶりに、「乗る」予定だったからだ。

 

あけて本日の昼下がり。

松葉杖をつきながら、ひょこたんひょこたんと駐輪場へやってきた、かみさん40歳。

貸してもらったアドレス『ゴスペル』を引っ張り出し、意気揚々とセルボタンを押す。

んぎょぎょぎょ……ぷしゅん。

GO!!!に、「バッテリ、上がってますよ」言われつつ、一縷の望みをかけて押してみたのだが、残念ながら、まるっきしかかる気配なし。しかたなくキックレバーを蹴る。とは言え、右脚はヘロヘロなので、どうにも上手く蹴ることができない。またがってバランスを取りながら、左足キックの嵐。

だらだら汗をかきながら、数十キックののち、ようやくエンジンが掛かる。

とたんに、ワクワクと高揚してきた。

 

Nと一緒にのんびり走りながら、まずは整骨院へ。

書類の回収やPCデータの入れ替えをしてる間に、Nが掃除と水槽の水足しをしてくれる。そして、ゴスペルに乗るためにイチバン大事な、カナディアンクラッチを引っ張り出せば、整骨院での作業は終わりだ。カナディアンクラッチてのは、片腕にはめる洋式松葉杖のことな。

これが、

こんくらい短くなるので、持ち運びにとっても便利なのだ。設計者の意図はともかく。

さて、整骨院の用事が済んだら、お次はタクの店まで。フューリィを預けっぱなしにしてあるんだが、とりあえず放置期間が長いから、乗る前に充電してくれるという話になってて、そのために必要な、キーを渡しに行かなきゃならんのである。

や、ホント毎度毎度お世話になります。むしろお騒がせします。

 

風は肌寒いながら、気持ちよく晴れ上がった空の下、久しぶりのバイク。

かみさん40歳、機嫌の悪かろうはずもなく、ハナウタを歌いながらタクの店に向かう。時々ミラーでNの走りを確認すると、ずいぶんと安心感が出てきた。なので無理に待ったりして歩調を合わせることはせず、自分の走りたいようにすいすい走る。

遠心クラッチ特有の、アクセルオンで一瞬遅れる反応さえも楽しみながら、混んだ県道を南下。

タクの店についた。カナディアンクラッチが、まるで純正部品のように違和感ゼロだね。

杖を突いてひょこたんしながら店の中に入っていくと、タクとチューソンが笑いながら出迎えてくれる。タクが笑いながら「痛々しいなぁ」言うのに、「や、全然元気だっつの」と笑い返し、フューリィのキーを渡して、ほかのスタッフのジャマにならないよう表に出てから、もうすこしだけ駄弁る。

と、ゴスペルアドレスを見ながらチューソン。

「なんか、微妙に長いですよね。改造(いじ)ってあります?」

「ああ、これGO!!!のだからね。ヤツのバイクは基本的に、赤くて改造車なんだよ」

ふたりが納得してうなずいてる様子に、「うむ、こうやって少しづつでも、GO!!!の悪党っぷりを宣伝してゆかなくては」と、気持ちを引き締める。ほかにもマルだのよしなしだの、第一印象がいい人間の本性を暴くのは、ジャーナリストとして俺に与えられた使命なのだ。

頑張らなくちゃ。

 

タクとチューソンに別れを告げると、爽やかに県道を走り出すかみさん。

とりあえず久しぶりなので、ガンガン乗りたい気持ちを抑えて、Nとふたりちょっとだけ遠回り。ちょっと寒さが強くなってきた裏道を抜け、国道に出てのんびり走る。とちゅう、寄ろうと決めていたブックオフに入ったところで、俺の足元を撮ってないこと気にづいてパチリ。

左がクロックスのバッタもんサンダルで、右がギプス(キャスト)の上にはくキャストシュー。

キャストシューはメッシュなので、とっても通気性がいい。今日くらいの天気だと、軽くイラっとするくらい風通しがいい。要するに寒い。ズボンでわからないけど、右は膝下までガッチリギプスなので、もちろん足首はイッコも曲がらないけど、スクータだから問題なく走れる。

いつになったらギプスが外れるのか、まだわからないけど、乗ることが出来たのが今は嬉しい。

 

二月の頭から仕事もせず、ただひたすら転がってるだけの毎日だった。

しかも去年の七月から十月までも同じような境遇だったのでいっそう、溜まるストレスやイライラは強烈なものだったのだが、シンプルな俺のドタマはシンプルなだけに強靭だったみたいだ。スクータに乗ってちょこっと風を切っただけで、あれほど溜まっていたものがすうっとなくなるのだから。

つわけで、一部のダメ人間どもにはお待たせ。

おまえらの足音がずいぶんと聞こえるものだから、嬉しい反面、あせってたりもしたんだけど、もう、俺は大丈夫。バカと単車乗りにつける薬がないことを、今回も証明できたと胸を張りつつ。それから、このセリフを吐くのが何度目かも忘れたけど、それでも吐ける自分を誇りに思いつつ。

 

俺はまた、走り始めたよ。

 

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