solo run

風に吹かれて

一日目 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目

2010.08.16 三日目(前編) 大阪〜四国〜山口

―洗濯日和、カード日和―

 

朝、目を覚ますと、ミサトちゃんが帰ってきていた。

「あ、ごめんなさい。起こしちゃいました?」

とりあえず、女の子に起こされて文句を言うメカニズムは、俺の中には装備されてない。むしろ気持ちよく起きれて、とってもステキな一日がすごせそうってなもんだ。「や、ぜんぜん。ちょうど起きたところだよ」と、起きぬけのわりに機嫌よく笑って、洗面所へ。

歯を磨いてるムラタに、「おはよー」と声を掛け、ミサトちゃんの作ってくれた朝食をいただく。

それから、ちょっとまったりしつつダベり、7時くれぇだったか、仕事に行くムラタと一緒に出発。

「んじゃ、またな」

「また、呑みましょう。んで、走りましょう!」

実に爽快な、一日の滑り出しだ。

 

ムラタの家からしばらく走って、高速に乗る。

湾岸線は、海を見ながら気持ちよく走れた。

が、そのあと神戸の京橋あたり。高速の乗り継ぎで、ちょこっと迷う。いや、『いったん下に降りてから改めて乗りなおすシステム』だったんだが、なんか気づいたらいつの間にか三宮駅前にいたのだ。今夏、最初のミステリーだね(いつもの迷い道です)。

京橋インターから乗りなおし、垂水ジャンクションで神戸淡路鳴門自動車道へ。

 

乗ってすぐ、淡路サービスエリアで休憩する。

ロケットスリーで初めてロングに出た時、最初に泊まった場所だ。

いや、『停まった』の変換ミスじゃない。

写真に写った芝生のところで、テント張って寝たのだ。

平日だから空いてると思ったが、普通にたくさんのヒトが出てたので驚いた。まぁ、世間的にはまだ、ギリギリお盆中なワケで、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。とは言え、俺は人ごみがとってもスキじゃないので、とっとと思い出の地をあとにした。

 

走り出してみると、えらく風が強い。

海のど真ん中、島の上を走ってるんだから風が強いのは当然なんだけど、カウル類のないフューリィだと、これが結構しんどいのだ。車体そのものは低くて重いから安定してるんだけど、乗ってる人間はほぼ直立してる上に、大股かっぴらいて風に逆らう、クルーザスタイルだからね。

ま、イッコも予定があるわけじゃないし、無理せずのんびり進もう。

つわけで、三十キロほど先の緑PAに入り、一服する。

空と海の『青』が、とてつもなく気持ちいい。

タバコ一本つけて、お茶で水分補給しながら、ぼーっと海を眺める。

走り出しても、もう、すっ飛ばす気はサラサラない。考え事しながら走ってると、さっきの休憩でmixiのチェックをしてないことを思い出した。いや、別にそこまでmixi中毒ってコトでもなく、前日のつぶやきにアンジェさんが反応してるかどうか、確認するのを忘れたのだ。

反応してくれてるなら、もしかしたら今日、会えるかもしれないからね。

 

つわけで、10キロ先の淡路南で、また休憩を取る。

「ここもロケットで来て、雨宿りしたんだよなぁ」などと感慨にふけりつつ、ギラギラとやる気マンマンの太陽を避けて日陰に駐車し、俺も東屋みたいなところで太陽から逃れつつ、mixiチェックしてみる。と、案の定というか嬉しいことに、アンジェさんからメッセージが入っていた。

「おっしゃ、一気にやる気が出てきたぜ」

アンジェさんに、携帯のメールアドレスと電話番号を送り返し、意気揚々と走り出す。

 

神戸淡路鳴門自動車道は、がらんがらんのグレンラガン。

まっすぐな道と、緑と、青い空。

この先、いいだけ見ることになる美しい風景の、コレがたぶん一発目だろうか。

「ああ、生きてるなぁ」と、自然に口元がほころぶ。

 

大鳴門橋か、小鳴門橋のどっちか。

「鳴門のうずしおを見よう」てんで駐車するクルマが事故を多発したらしく、左側には延々と「路肩 駐停車禁止」の文字が書かれている。俺は見たことがあるし、べつに海の水が渦巻いてるからって特に興味を惹かれるわけでもないから、おとなしく停車しないで素通りした。

うん、ウソだ。ホントは鳴門のうずしお、もう一回見たかった。

でも、写真の橋の先の方に小さく写ってる単車二台のうち、ビッグスクータに乗った半ヘルの女の子がやたら可愛かったんで、そっちを優先したのだ。いや、まぁ追いかけたからって何があるわけじゃないんだけど、男ならなんとなくわかるだろう?

で、女の子たちは先をまっすぐ、俺は鳴門北で高速を降り。

二度とふたりが結ばれることはなかった(一度も結ばれてません)。

 

鳴門北で高速を降りたのには理由があった。

地図を見ているうちに、『鳴門スカイライン』てのを見つけてしまったのだ。

10キロに満たない短いワインディングだが、レイアウト的に面白そうだ。

鳴門北で降りて県道11号を北上し、鳴門スカイラインに入る。

んで走り始めたのだが、すぐに心臓がドキっとする。目の前に例のクルマがなんと10台ほど連なって停車していたのだ。さすがに、まさか捕まるとは思わないが、それでも精神衛生上よろしくない。横柄に手で「早く行け」とやられたので、中指立ててから少し行って停まる。

振り返って、写真を撮ったのだが、この位置だと並んでる連中がほとんど撮れなかった。

何があったのかは、カイモクわからない。

 

さて、出端から軽く不愉快だったが、曲がり道を走り出せば忘れるのが、かみさん。

「おぉー! こらぁ気持ちいい道じゃないのー!」

大毛山の中を走る、ちょっと狭いけど楽しいワインディングを、ゴキゲンで走っていると、山間部を抜けて橋に差し掛かったところで、不意に目の前が開けた。あわてて路肩に単車を停めると、カメラを取り出しながら思わず大声で叫んでしまう。

「すげー! 気ンもちぃー!」

播磨灘とウチノ海の間に掛かる、この橋と山海の風景に、しばらく見とれてしまった。

 

橋を越えてゆくと、道はまた山間部に入り、クネクネと曲がりだす。

もちろん、絶景もいいがコレはこれで楽しい。

「にゃははは、幸せだねぇ」

クルマもなく、気持ちよくすっ飛ばせるので(フューリィなりにだが)暑さも気にならない。

やがて、ちょっとした広場に出たので、単車を停めて販売機でジュースを買う。

『鳴門カントリークラブ』というゴルフ場の入り口だった。

一服しつつエンジンを冷ましたら、また、ワインディングを走り出す。とは言え、10キロにも満たない短いワインディングなので、すっ飛ばしてるとあっという間に終わってしまった。下りきったところには、もちろん、播磨灘が美しい青で迎えてくれている。

蒼天に映える、凪いだ播磨灘をしばらく眺めたら、さぁ、こんだ海沿いを走ろうか。

 

国道11号線を、西に向かって進む。

ワインディングで満たされ、美しい景色に洗われた俺の心は、遅いトラックが道をふさいでいてもイライラすることなく。「それなら、トラックと車間をとるために停まって、海を眺めて写真を撮ればいいじゃないか」などと、仏様モードに入ってゆく。かみだけど。

確かに美しい景色だとは言え、恐ろしいほど単純だよな、俺のドタマって。

 

やがて道は徳島を抜け、香川県に入った。

とたんにやたらと出てくる『うどん』の文字に、思わず笑ってしまう。だが、笑ってばかりもいられない。香川に入ってしばらくすると、だんだん道が混雑してきた。地図を確認してみると、どうやらこの道は高松に向かってずっと渋滞しているようだ。

どーすんべかと考えてると、コインランドリーがあったので、「とりあえず洗濯すっか」つわけで。

 

国道沿いのコインランドリーに入った。

ところがこのコインランドリー『しゃぼん』が、も、クセモノったらなかったのだ。

 

まずは荷物を解いて洗濯物を取り出す。

ついでに、ここで新しい服に着替えて、今まで着てた服も洗濯だ。

 

『しゃぼん』の全様。

それになりの広さはあるが、冷房もなく暑い。

ここで車道から見えないように気を配りつつ、さっさと服を着替える。

せっかくアンジェさんに会えるなら、アホな服の方が面白いだろうと、オレンジアーミーパンツ。

で、洗濯しようと機械の方へ近寄っていくと、どうも様子がおかしい。明らかに、コイン投入口が見当たらず、あるのはカードを刺すスロットだけ。「なんだこりゃ?」とつぶやきながら、周りを見渡してみると、洗濯物をたたむテーブルの上や、壁のアチコチに妙な説明書きを発見。

そこでようやく、店内に流れてるやかましいビデオが、コレのことを説明してるんだと気づいた。

要するに、このカードを買ってチャージしないと、洗濯機も乾燥機も使えないのだ。本人(つーかこの店)は「現金の要らない画期的なシステム」だの、「ICカードで安心」だのほざいてるが、とりあえず売っちゃって使われなければ店が得と言う、回数券のシステムとなんら変わりない。

「めんどくせぇなぁ」

とつぶやきつつ、仕方なくカードを買ってチャージする。

 

ようやく洗濯機を回すことが出来たが、どうにも納得いかず、気分が晴れないかみさん。

ちょっとゴキゲンナナメ。

つーのはもちろんウソ。コインランドリーだって商売だからね。別に怒るほどのことじゃない。このときの時刻が午後一時くらいだったか。いつもならお昼寝してる時間なので、眠くてこんな顔になってるだけだ。実際このあと、アンジェさんから電話があったら、すっかり目が開いてゴキゲンになった。

「もしもし、かみさん? アンジェです」

「どーも、かみです。今日、遊びに行っていいですか?」

「それがねぇ、ちょっと帰りが遅くなるんで、午後八時ころになっちゃうんですよ」

「八時ですか。どうしようかなぁ……四国を回ってから行ってもいいんですけど、今回は正直、アンジェさんに会うために来たんで、回る気はなかったんですよねぇ。竜馬ブームで混んでるつーし……じゃ、今回はとりあえず、いったん他へ行きます。また寄りますよ」

「えぇっ!? そうですか。残念だなぁ」

アンジェさんは、そう言って残念そうに電話を切った。

「ふふふ、アンジェさん、俺の『また寄ります』を社交辞令に取ったんだろうな」

つぶやきながら、俺はニヤリと笑みを浮かべる。ここを読んでるキチガイ連中なら、もうお判りだろう。俺は基本的に行くと言ったら必ず行くのだ。特にこういう気持ち良さそうな男との話で、社交辞令なんて決して言わない。そう、この段階で、翌日また四国に来ることは決定したのだ。

「へへへ、面白くなって来たぞ」

俺はニヤニヤしながら、洗濯が終わるのを待ちつつ、のんびり昼寝を決め込んだ。

 

洗濯乾燥も終わったところで、俺は携帯を取り出すと電話をかけた。

誰ってもちろん、山口のドルフィーにだ。

「もしもし、ドルです」

「おう、ドルか。あのさ、おまえら今日、どっか走ってるんだろ? そんでさ……」

「ぎゃはははっ! かみさん、俺です。ドルさんじゃないですよ。ゆっちょむです」

「あんだ、ゆっちょけ。今、どのへん走ってんだ?」

「萩のあたりっすね」

「俺は今、四国にいるんだけどよ、アンジェさんってヒトと会えなかったから、そっち行くわ」

「わかりましたー、ドルさんに代わります」

家主のドルに宿泊許可を取ったら、今晩の宿は山口に決まり。

善は急げとばかりに、津田東から高松自動車道に乗り、四国脱出だ。

 

途中、府中湖PAで休憩がてら、讃岐うどんを食う。

あ、そうそう。mixiでつぶやいたら、いろんな人が食いついてたけど、ホントごめん。有名店で食ったわけじゃなくて、「PAのうどんでも、ホント美味いんだな」って意味でつぶやいたんだよ。だから、俺はまだホンキの讃岐うどんてのを喰ったことがないんだ。

『美味い』のレヴェルが違う話で盛り上がってたから、言い出せなかったよ。

 

んで、それはともかくここで、ぶっかけうどんを食ってるときの話。

食券を買って注文しちゃってから、周りをよく見たら座る席がない。なのでひと通り見渡し、イチバン可愛い女の子が座ってるトコで、「すいません、ココいいですか?」つってOKをもらい、そこでなるべく離れるように座って(いちおう気を使ったのだ)、うどんを食ってたのだが。

その位置だと、女の子のツレの男ふたりが、彼女に話しかけてるのが、嫌でも聞こえてくる。

これがもう、面白くて面白くて、正直、うどんそっちのけだった。

とにかく男ふたりは女の子の気を引きたいのだろう、色んな話をするんだが、も、彼女には明らかにその気がない。むしろ、俺が相席をお願いしたときが一番、ステキな笑顔で答えてくれてたくらい。そのうち、業を煮やした男のひとりが、おもむろに。

「そうそう、すっげぇ面白い話があるんだよ!」

と言いながらしゃべりだした。俺はその瞬間、思わず心の中で、(ちょ、なんでそんな自分からハードルあげるマネを! ホントに面白いなら、逆にたんたんと話した方が受けるよ!)と、ツッコんでしまった。しかも、結局その話が大して面白くないもんだから、逆に面白くて面白くて。

俺はひとりでそっぽを向きながら、必死で笑いを堪えつつ、うどんをすすりこんだ。

 

男の子ふたりに、心の中で「頑張れよ」とエールを送ったら、さぁ、俺も頑張って走ろう。

「それ魅力」で有名な瀬戸大橋を、南から北へのぼってゆく。

 

瀬戸の海は凪いでいて、遠くに島々が青く浮かんでいるのが見える。

当然、すっ飛ばす気持ちなんて浮かんでこないので、景色を見ながらのんびり走る。

倉敷から山陽道に乗り、山口へ向けてひたすら西へ。

GO! GO! WEST! ニンニキニキニキニン♪

たぶん、篠坂PAあたりだと思う。後ろにカブトガニの絵が描いてあるから。

 

広島を過ぎたあたり、廿日市(はつかいち)とか、あの辺かな?

目の前が急にドカンと開けて、長いくだりの先に山々が見えたので、思わず写真を撮った。

んで、岩国付近の海沿いへ出た瞬間。

山陽道、こんなにきれいな景色だったとは知らなかったよ。

はじめて通った時はケーナナですっ飛ばしてたし、次は新ブサで夜中だったから。

やっぱり、景色を見るならアップライトなポジションの単車がいいね。

 

ここらまで来れば、ドルんちまでは、あと少しだ。

 

後編に続く

 

一日目 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目

index

inserted by FC2 system