solo run

風に吹かれて

一日目 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目

2010.08.16 三日目(後編) 山口県

―山口三人衆 デコ、ドル、ゆっちょむ―

前編はこちら

 

山陽道の海沿いの景色に見とれてるうち、山口のドルんち付近へやってきた。

ここでホッとしたかみさん、すっかりうっかりインターを間違え、イッコ手前で降りてしまう。

 

ま、降りちゃったものは仕方ないので、そのまま国道を抜けてドル家を目指す。

つーかイイワケさせてもらえれば、四国からずーっとクソ暑いアスファルトの上を走り続けてくるうちに、どうやら熱中症になったようなのだ。頭がボーっとしつつズキズキ痛んできて、身体は日焼けの火照りだけじゃなく、明らかにちょっと熱っぽい。

「こりゃ、ドルんち行ったら申し訳ないが、酒呑むより寝かせてもらおう」

なんて思いながら、インターを出たとこで地図を開いてルートリカバリしたのだが、このあたりを走る国道2号線が、クルマも少なく面白いワインディングだったもんだから、フューリィと遊びつつ右に左にひらひら駆け抜けてたら、あっという間にドルんちまで来てしまった。

なので、いちおう連絡入れてから行こうと、近所のコンビニに入って電話する。

「もしもし、ドルか。もう家に帰ってるんけ?」

「帰ってますよ。かみさんは今、どのへんですか?」

「お前んちの近くのコンビニまで来てる」

「もう、ゆっちょむは来てますよ」

「了解、んじゃ今すぐ行くわ」

つわけで、ハヤブサでの襲撃以来、二年ぶりかな? ドルんちに行ってみると。

ゆっちょむが、海パンを履いてあらわれた。

「久しぶりだが、その前にだ。ゆっちょ、おめ、なんでそんなカッコしてるんだ?」

「プールですよ、プール。かみさんも入りましょうよ」

「ぎゃはははっ! おめーは相変わらずだなぁ」

 

「よう、ドル。久しぶり! それがウワサの新しい家族か」

「いらっしゃい。かみさんもよかったらプール入ってってくださいよ」

つわけで、アイサツもそこそこに、ドルんちへ荷物を置かせてもらうと。

ドル家の最新アイテム、自宅プールに行く。

 

井戸水のプールなので、ビックリするほど冷たい。

俺に海パンの用意はないから、はいてたパンツでカンベンしてもらって、さっそく飛び込む。

すると、入るや否や、冗談みたいに頭痛が取れ、火照りが引いてゆく。

「おぉ、すげぇ! マジで熱中症一歩手前だったのに、イッパツで楽になったよ」

「井戸水やけん、冷たいでしょ?」

「おう、助かるわ。ゆっちょ、お前は入らないのか?」

「さ、寒い……」

「ぎゃはははっ!」

一気にゴキゲンのかみさん40歳。

見れ、この幸せそうな顔を。

いや、熱中症で出てた頭痛がキレイさっぱり消えたもんだから、ホントに幸せだったんだけど。

 

ドル家の庭。花壇から芝生から、ぜんぶドルが自分で作ったそうだ。

「キレーな庭だな。コレ全部、ドルが自分でやったんけ? 1/1箱庭プラモだな」

「かみさん、この家ソーラパネルで発電しとるけぇ、電気代もかからんらしいすよ。俺、そのうち家族みんなでこの家に引っ越してこよう。あ、もちろんドルさん夫婦には二階のひと部屋をあげますよ。ふたりなら、ひと部屋もあれば充分っしょ」

「ははは、家賃、払ってくれるならええよ」

「家賃はソーラパネルが稼ぎますけぇ」

「ぎゃはははっ!」

太陽の下、バカ話しながら笑いあい、暑くなればプールに入る。

最高のもてなしだ。

 

「かみさん、ドルさん! ハダカで芝生に寝てみてください」

「やだよ、チクチクすっから。バカじゃねーの、ゆっちょ」

「ナニ言うとるんですか。そのチクチクがたまらんのじゃないですか」

「ぎゃはははっ! うるせぇよ変態。なんだその、ドエムの主張」

「それにしてもアレっすね。ココはちょっとしたリゾートっすね」

「だなぁ。ゆっちょ、家族連れてリゾートに来りゃいいじゃん。近いんだし」

「もちろん、そのつもりっす。娘にこのプール見せて『コレが海じゃ』って教えるんです」

「つーかさ、ドルはもう、この中で生きていけばいいじゃん。単車とかいらねーじゃん」

「ちょ、要りますよ!」

なんつってると、どよどよとお下品な排気音が聞こえてくる。山口組の最年長デコが、ヤツの愛機M109Rに乗ってやってきたのだ。そのデコを捕獲して、プールに放り込もうとする俺とゆっちょむ。俺たちの攻撃を笑いながら避けると、デコはドル家に荷物を運び込んだ。

なので、俺とゆっちょむも着替えることにする。

いいかげん、寒かったしね。

いつの間にか、デコの毛が増えてる(伸ばしただけです)。

 

着替えたら、ちょうど帰ってきたJちゃん(ドル嫁)のクルマに乗って、ラーメンを食いに出る。

行った先の店が休みだったので、結局、家の近くまで帰ってきて、『山小屋』で夕食になった。俺とデコ、ドルの三人がワンタンメンだったかな? んで、ゆっちょがチャーシューメンみたいなので、Jちゃんが山小屋のイチオシメニュー(?)の、むかしラーメン。

んで、このJちゃんがまぁ、ナオミばりに高菜好きだったからちょっとした騒ぎになる。

注文が終わるなり、いきなり席を立ったJちゃん。

入れ放題の高菜をとりに、せっせと歩いてゆく。

しかも、皿にいいだけ取ってきたと思ったら、それを同じく高菜好きだと言うゆっちょに半分あげて、自分はまた、もう一皿取りに行った。最終的に、やってきたラーメンの色が変わるくらい、高菜だらけにして食ってたよ。ナオミと喰ってるかのような、軽いデジャヴを感じたね、俺は。

ちなみにコレが、俺の喰ったワンタンメン。

ま、この浮かんでる物体は断じてワンタンじゃないけどね。俺の中では。デコも笑いながら、「これはどっちかって言うと、シューマイですよね」つってたから、こういうのが山口ワンタンのデフォルトってわけじゃないんだろう。やっぱワンタンは中身が少ない方が美味いね。

皮のつるって食感が、ワンタンの命だよやっぱり。

 

さて、ラーメン食っておなか一杯になったら、コンビニで軽くツマミでも買い出そうか。

みんな腹いっぱいなので、スナック系の軽いつまみを買い込み、それぞれ好きなモノを買ったら、ドル家に戻って宴会スタートだ。俺は、ドルやデコ、ゆっちょむが「ビール買ってありますよ」つってるのに、オマケについてたグラスに惹かれて、ヱビスの三本セットを買った。

このグラス、缶ビールの形してるから、ついつい欲しくなっちゃったんだよ。

ま、結局、ドルんちに置いて来ちゃったんだけど。

 

ゆっちょむは今日、泊まらずに帰るのでノンアルコールビールを。

他の三人はもちろん、ビールをひっかけてバカ話。

 

ところで。

俺は普段、ツーリングマップルを見ながら、良さ気なワインディングを探すのが趣味だ。ちょっと前に、このへんの地図を見てるとき、米子のあたり、ツーリングマップル中国四国で言うと8ページに、豪(えら)くソソられるワインディングを見つけて、前からとても気になっていた。

右側の部分、山の周りをワインディングが一周し、そこからさらに放射状のワインディング。

拡大すると。

ほら、なにやらステキなパラダイス。

こんなん、曲がり道の好きな単車乗りなら、気にならないわけがないだろう?

「米子のあたりによ、山イッコまるまるワインディングだらけの場所があるじゃん?」

「えぇ? どこの話だろう?」

「アレだよ、オオヤマだかダイザンだか書くトコ」

「ああ、大山(だいせん)ですね。あそこはいいですよ」

「あー大山はいいっすねぇ」

なにやら山口組ベタボメなので、明日の目的地が決まってしまった。

 

いつの間にやら、結婚どころか一児の父になってた、ゆっちょむ。

いつもと変わらないバカの中にも、やっぱり父親つーか男らしいたくましさが感じられた。つっても、ニッコニコの笑顔で、「娘が可愛くてしょーがないんすよ」なんつートコは、やっぱりゆっちょむらしい。なんだかこっちまで嬉しくなっちゃって、「ぎゃははは、親ばかだ」とからかったり。

色んな話をして笑いあった後、ゆっちょむは愛娘(と愛妻)の待つ自宅へ帰っていった。

 

実は意外と話してなかったようで、この日は初めて、デコとたくさん話した。

仕事の話、単車の話、生き方の話。バカな話に、まじめな話。特に、仕事の話が多かったかな。オトコが仕事の話をすれば、その男の生きるスタンスってのが、なんとなく浮き彫りになる。不平ばかりで他人任せなんてヤツとは話してても面白くない。

その点、デコはたとえ不平を言うにしても、必ず代替案を提示してた。

これはただの不満屋には出来ないことだ。デコの場合は愚痴ではなく、「こういうことがあった。俺はこう対処したんだが、かみさんはどう考える?」といった類(たぐい)の、男同士、呑んで語るに足る不満とでも言えばいいだろうか。むしろ、こっちの器が試されるカンジだ。

いずれにせよ、呑んだくれてダチと色んな話をするのは、本当に楽しい。

 

相変わらず仲のいい、ドル夫婦。

Jちゃんはこの日、遅くから仕事だったので、このままベッドへ行っておやすみなさーい。相変わらずむさくるしい、バカな集団が急に押しかけちゃって、ごめんね。そのうちまた顔出した時にでも、身体で返すんでカンベンしてください(誤解をまねく言い回しはやめましょう)。

 

ドルも明日仕事なのに、遅くまで付き合ってくれてありがとな?

いつもの激烈な仕事話に、単車の話。それに酔っ払ってきてからはドルの得意技、BGM代わりのビデオ鑑賞も加わる。世田谷ベースやディスカバリーチャンネルのバイクの番組なんかを流しつつ、時々思い出したように、関連した話や、全然関係ない話をする。

まぁ、俺とデコは普段、あんまりTVを見る習慣がないから、バカ話のが多かったけど。

 

みんなそれぞれ忙しく、なかなか集まれない山口組。

それでも、俺が来た時はいつも、こんな風に無理して集まってくれる。それは申し訳ないコトかもしれないが、とんでもなく嬉しいことでもある。それにまぁ、『柏からバカが来る』ってコトで無理やりにでも集まれれば、山口組としても結束を固めるいいチャンスになるだろうしね。

とりあえず、山口での夜は、いつものごとく最高に楽しかったよ。

デコ、ドルフィー、ゆっちょむ。みんな、ありがとな?

また、俺が行った時は、ガッチリ呑んだくれようぜ。

 

四日目へ続く

 

一日目 二日目 三日目 四日目 五日目 六日目 七日目

index

inserted by FC2 system