solo run
風に吹かれて
2010.08.19 六日目(前編) 名古屋〜岐阜・長野 ―19 GROWING UP―
「おはよう、プシュさん」 「おう、おはよう。昨日はビデオ撮影ご苦労さん。面倒かけたな」 「いやいや、そのくらい何でもないさ。気にしないで」 「おまえ、そんなに悪いやつじゃなかったんだな。今までシカトして悪かったよ」
ちょっと距離の縮まった感がある、俺とプシュさん。
朝食をいただいたら。
近づいた距離をさらに詰めるべく、朝からプシュさんと遊ぶ。 お気に入りの『水引き』を差し出すと、興味を持っていただけたようだ。 「どうすか、これ。プシュさん」 「ん〜? いいじゃないか。ちょっと貸してみろ」
プシュさん、ご満悦。 とは言え、このままプシュさんと遊んでいると、昼を過ぎかねない。 ともっちさんは、これからツーリングに行くとのことで、「ゆっくりしてって下さい」なんて言ってもらったのだが、さすがにそうもいかない。そうもいかないとか以前に、ともっちさんが準備したりしやすいように、おめぇが先に出ろっつー話だと、遅まきながら思い当たる。 「俺、そろそろ行きますね。トツゼン押しかけてすいませんでした。ありがとうございました」 アイサツをいれ出発準備をすると、ともっちさん夫婦に見送られて走り出す。毎度のコトながら、俺のワガママに気持ちいい笑顔で応えてもらった上、楽しい時間をすごさせてもらって、ともっちさんとなおっちゃんには感謝の言葉もない。いつもありがとうございます。 でも、俺を甘やかすのは程々にしておかないと、また性懲りもなく顔を出しますよ。 基本構造が『空気読めない子』なんで(子ではありません)。
行き先は、もちろん風まかせ。 走り出してすぐ、工事渋滞してたのだが、えらく近いトコでアスファルトを剥がすので。
ちょっと楽しくなってきちゃって、思わず写真を撮った。
やっぱカッコいいよなぁ、ウォーカーマシンって。免許取ろうかな。買えないけど。
大都市、名古屋の朝は、もちろん渋滞している。
コレはたぶん、環状線。 どこに行こうか迷ってたので、とりあえず環状線を回りながら考えていたのだが、「よし、あそこへ行こう」とひらめくより先に、まず渋滞が嫌になってきた。途中から絡んできたスポーツスターやスクータと通勤バトルを繰り広げていたのだが、それもいい加減飽きる。 なので、適当なところでわき道に入り、地図を開いて現在地を確認。
するとどうやら、このわき道は国道19号線らしい。途中まで中央道と併走しながら、多治見、中津川と抜けて、木曾の方から最終的に長野で18号と繋がる道路のようだ。木曾、長野と、なにやら涼しそうな地名が並んだので、俄然、やる気が出てきた。 途中からなんとなく指標になった、「日本をジグザグに走る」にも合致するしね。
さぁ、そうと決まれば善は急げ、悪はもっと急げ。 前半に高速を使いまくった分、なるべく下道で走りたいから、国道19号を信州まで走ろう。
つわけで、比較的マシになった(ような気がする)天気の中を、たんたんと走りだす。
天気はあまりよろしくないが、かといって涼しいわけでもない。 肌をジリジリ灼かれないのが、救いといえば救いか。
内津トンネル……じゃないよなぁ、きっと。内津より、もちっと手前のトンネルかな。
何かしら指標がないと、どこがどこやらわからないけど、とりあえず国道19号。
19号をひたすら走り続けたので、ここがドコなのか判らない。 つ−かそれ以前に、なぜここの写真を撮ったのかさえ、判然としない。 特にキレイでもないし、面白いわけでもないんだけどなぁ。 何でだっけ?(世界中の誰も答えられません)。
コレはなんとなく判る気がする。
壁のあるところを走ってたから、壁の途切れる瞬間が嬉しかったんだろう。 ただ、だとしたらシャッターを切るのがちょっと早すぎる。まだまだ、修行が足りないね。まぁ、確かに道のぐいーん具合とかは好きだけどね。40歳にもなって、『ぐいーん具合』とか言っちゃってる哀しいオッサンは、どっちかって言うと嫌いだけどね。
ここで、名古屋市街を出てからはじめて、クルマが列を成してるのに行き当たる。
えらい大渋滞してるなぁと思ったら、工事渋滞だった。 もちろん、模範的いい子ちゃんライダーの俺は、このままトラックの後ろで列が進むのを待つ。いくら混んでて進まないからって、対向やり過ごした瞬間、黄色線をまたいで一気に前まで行くとか、そんなことゼッタイしちゃダメだよね(ハナクソほじりながら)。
気づいたらなぜか渋滞を抜けていたので、そのまま快適に進む。
走りながら撮るから、こんな感じの写真ばかりだけど、実際の19号はも少しくねった面白い部分もたくさんある。距離は延々と長いけど、曲がり道が好きな連中なら、まったく苦にならないだろう。もちろん距離は稼げないけど、体感時間は高速より短い感じ。 あくまで体感ね? あと、あくまで長時間乗るのが平気な、俺目線の話ね?
フューリィの時は、まっつぐな道も好き。好きっつーか楽しいし、退屈しない。 ケーロクだと退屈もクソも、まっすぐの道は怖いんだよね。 出すぎちゃって。
これはダイナミックなカーヴを登ってきて、振り返って撮った写真。 こういう道は、走るのもいいけど、眺めるのもいいね。
さんざっぱら走った気はするが、下道だから、時間のわりに距離が稼げない。 んでもってようやく、道の駅『賎母(しずも)』に到着。つーか賎母ってのも難読だなぁ。
まて、わかってる。キサマらが言いたい事はわかってる。 だが、男には黙ってなきゃならない時もあるんだ。でもまぁ、とりあえず安心しろ。少なくとも俺が見たときには、ココから直(じか)に水を飲んでる美少女はいなかったから。万が一そんなのいたら、キサマらに言われるまでもない。誰より先に俺が逮捕覚悟で、写真を撮ってるから。 かみさん、やるときはやる男だから。 やる時が来ないだけで。
ここで、ツーリング中の俺には珍しく、ちょっと小腹が空いた気がした。 なので、フードコート的なところへゆくと、やる気の出ないメニューの中に、わさびソバを発見。他のがすべて暖かい系な中、わさびソバのところにだけ、『夏にピッタリ。冷たくてピリっとわさびのなんちゃらかんちゃら』と書いてあったので、これを喰うことにする。 俺の場合、ツーリング中のメシは、基本的に喰えればいいから、過度の期待はしない。
出てきたわさびそばは案の定、「ま、こんなもんでしょ」的な見栄えだ。 が、この子が意外にやれる子だったので、ちょっとビックリした。上に載ってるのは、野沢菜じゃなくて葉わさびなんだが、これがピリっと爽快な辛さで、つゆも思ったほど濃くない。んで、この絵だけ見るとそばの量が少なそうだが、じつは結構大きな丸いカタマリで、量もたっぷり。 ソバ自体も見た目を裏切って、存外に美味い。 「なんだよ、やるじゃないか。さすが長野だなぁ」 ま、実際は限りなく長野に近い岐阜県なんだが。
意表を突いた美味さのそばを喰いながら、この先のルートを考えるべく地図を見る。
すると、19号からそれた国道256号と、その先の県道8号がうねうねぐねぐねじゃないか。 この県道8号はドコへ繋がるんだろう? 次のページをめくってみると。
南アルプスの麓(ふもと)、飯田あたりに出るようだ。 「南アルプスかぁ……涼しいんだろうなぁ……」 どうやら、行き先は決まった。
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