solo run
in ご近所
2010.09.18 納車の顛末(てんまつ)
ここ数日、風邪でフラフラだったとは思えないほど、ムダに元気になった土曜日。 仕事をしつつも心ウキウキ、気分はすっかりユリシーズと一緒に走り出してる。午後のラスト、いつものようにGOを治療したあと、彼のスクータのケツに乗せてもらって、タクの店へ。そこで書類書いたり細々した注意を聞いたら、さぁ、新しい相棒とご対面だ。
Buell(ビュエル) XB12X Ulysses(ユリシーズ)。 2007年モデルは新型より脚が長いが、初期型よりはローダウンしてる。その上、俺のはディーラの試乗車だったので、さらにローダウンしてあり、足つきは悪くない。フロントフェンダーもアップしてて俺好み。新型はダウンフェンダーなので、俺的にはイマイチなのだ。 「お、思ったよりシート高くないな」 言いながらまたがってみると、ま、そりゃ『足つきがいい』とは言い難いが、思ったよりは低い。一緒に行ったGOにいたっては、ほぼベッタリつっても良いんじゃないだろうか。おまけに見た目よりもずっと軽いので、怖さはまったくと言って良いほどナッシング。 またがっただけで、顔がにやけてくる。
ホイールベースは、ビュエルの中では最長。 つっても『キチガイ沙汰にホイールベースの短いビュエル』の中での話だからね。一般的な観点で見れば、この手の単車としては冗談みたいに短い。思いのほか足つきがいいのと相まって、イキナリやる気にさせてくれる感じだ。 かなりテンションをあげながら、帰り道の途中でGOと別れ、いちど帰宅する。
「ナオミ、ユリシーズすげーいいぞ。ケツ、乗ってみるか?」 「いい。ちょっと体調悪いから」 「ふん、キサマとは一生、わかりあえんな!」
捨てゼリフを吐いたら、メットをオフロード用にかぶりなおして、さぁ、出かけよう。 どこにってもちろん、フラットダートに決まってる。
走り出したら、まずは16号から北柏を抜けて6号線へ。 慣れてきたので、ここらですり抜けをはじめてみる。言ってもスポーツスターのエンジンだから、過度な期待はしていなかったのだが、すり抜けはじめるや否や、認識を改めざるをえなくなった。思ったよりずっと厚いトルッ感と、アクセルに忠実なレスポンスが、やけに気持ちいいのだ。 もちろんケーロクみたいなドカン加速はないけど、開けたら開けただけ前に出る。 エンジンパワーが結構あるのと、その割に重量が軽いからだろう。パワークルーザ的なカタマリ感たっぷりの加速というよりは、スポーツネイキッドって感じでひらひらと走れる。アイポイントが高くポジションもオフ車なので、乾燥200キロのビッグバイクだってコトを思いっきり忘れるくれぇ。 「こ・れ・は・お・も・し・れ・ぇ!」 フューリィのときはじわじわ楽しくなったが、コイツはイキナリ横っ面を張り飛ばしてきやがった。
そうなったら、もう遠慮なんかしてられない(慣らし運転中です)。 気合を入れてすっ飛ばし始めるのだが、嬉しいことに、ぜんぜん付いて来やがる。アイポイントの高さが状況判断をしやすくしてくれるからか、すり抜けの状況によっては、むしろケーロクより速く走れるかも。さらにコーナリングし始めるに至っては、もう、笑いしか出てこない。 エンジンの感触がクルーザっぽいから、そのつもりで曲げようとして、思わず大声を上げた。 「ぎゃはははっ! なんだこれ? バカじゃねぇの?」 『フロントがキッチリ入り込んで、しかもケツが曲がる』つーんだろうか。気持ちいいのを通り越して、うす気味悪いくらいよく曲がる。言い過ぎなのは承知の上で、まるで4WSかってくれぇ。マシンなりにダラダラ曲げてもそこそこ曲がるし、入力すればしっかり応えてくれる。 ここに至って、俺はネットで読んだ知識をすべて捨てた。 他の人間はどう感じるか知らないが、こいつは俺のために作られた単車だ。
ものすげぇゴキゲンで、いつものダート入り口に到着。
写真撮りながら思ったね。「早く、ロングツーリングに行きてぇ」って。 わずか数十分、しかも街乗りしただけで、ここまで楽しかった単車は久しぶりだ。はじめてV-MAXに乗ったときの感動を思い出したよ。強いて欠点を挙げるとしたら、あまりにもひらひら楽しいから、コイツが車高の高い重量車だってことを忘れちまうことかな。 停まるときに、ようやくそれを思い出すのだ。
信号待ちで足をつこうとして、「おぉ、そうだ。ベタ足じゃなかったんだっけ」とあわてることが多かった。俺は本来、とても『足つき』にうるさい短足オヤジなのだが、コイツに関しては自説を曲げてもいい。多少の足つきなんて、こいつの前ではまったく問題にならない。 なんて言うんだろう。 間違いなく勘違いなんだけど、ホント、俺のために作ってくれたような味わいなのだ。
さて、オンロードは満点をやってもいいデキだったが、オフロードはどうだろう? ユリシーズ購入の、最大の後押しになった売り文句が、『フラットダート最速』だった。
ならば、フラットダートを走らずして、こいつの真価は問えない。 乗る前まではみんなが言うように、「スタイルはともかく、性能的にコイツはオフじゃない」と思っていたのだが、オンロードでの手ごたえがあまりにも良かったので、俺の中でかなり期待値が上がっている。それにここは、クルーザでも走ってる場所だから、イキナリやらかすこともあるまい。 とりあえずプリロードを最弱にして、抑え目に、のんびりと走ってみよう。
走り始めはこんな感じで、途中、もすこし凹凸が激しくなるが、基本的にはフラット。 「よーし、それじゃ行ってみようか!」 そろそろと走り出し、だんだんと速度を上げる。 タイアは『ほぼロード』だから、もちろんバカ開けすれば滑るのだが、その挙動がちっとも怖くない。最初こそギャップをよけていたのだが、だんだんその気になってきて、ギャップをガンガン踏み越え始めると、長めのストロークを持ったサスが、まるっきし問題なく吸収してくれる。 「ぎゃはははっ! 思ったとおりだ! ぜんぜんヤレるじゃん!」 安心感のある幅の広いステップのおかげで、スタンディングも自然に出来るから、ギャップの踏み越えがすげぇ楽々。スタンディングでケツが流れてもガンガン開けていける。今のところフラットダート限定ながら、オフロードバイクとしてきちんと成立してると言っていいと思う。 すっかり有頂天の40歳は、奇声を発しながらダートを駆け抜けた。
ダートを抜けて、舗装路に戻る。 「やべー、こんな楽しいなら、このまま筑波山あたりにでも行っちゃおうかなぁ」 なんて思いながら走っていると、ありゃ? なにやらやけにガタガタ言い出したな。 最初は気のせいかと思ったんだが、どうもリアサスがおかしい。なんだろうと思いながら、路肩に単車を停めた瞬間、おもわず「は?」と声を出してしまった。もしも、俺の脚がこの数分で伸びたんじゃないとしたら、間違いなく車高がさがってる。それもベタ足になるくらいハデに。 「プリロードを抜いた云々のレヴェルじゃねぇなぁ」 首をかしげながらリアサスを覗き込む。 サスが外れてるわけではないが、スイングアーム周辺にストロークするスペースは見当たらない。ほとんどリジットのような状態だ。上の方のマウントがイカれたのかと思って、リアシートを外した瞬間、「からん」と音がして何かのパーツが落っこちた。ドーナツの半欠けみたいな薄い金属片だ。 「あれ? これってサスのバネの上についてるやつじゃね?」 そう思ってリアサスを確かめてみると、サスの上側の金属に、イキナリバネが乗ってる。
水色の矢印の金具が、外れやがったのだ。
とりあえず、そーっと走れば自走できそうなので、そのままタクの店に向かって走り出す。 そのあいだに、気分はドンドン落ち込んでくる。 ユリシーズがものすごく楽しかっただけに、「明日からまたしばらく乗れない」と思う、そのガッカリ具合たるやハンパじゃない。普段なら、「タクをからかうヒトネタできた」くらいの感じで笑ってるだろう俺らしくもなく、かなりしょぼくれたツラで店に入った。 オモテにいたメカのヒトに、「いきなしリジットになりました」と笑う、その笑いにもチカラがない。 そのうえ、顔を出したタクに「まいったよー、さすが外車だなぁ」なんつってると、 「かみさん。リアのウインカーも大変なことになってます」 「え? なにが?」
ああ、ホントだ。なんか両方折れてるねぇ。ま、ウインカーなんかどうでも良いけどね。
つわけで、ものすげぇ楽しいところからイキナリ叩き落された、これが本日の納車の顛末。 パーツがあれば二三日で直るそうだが、なければまた、しばらくかかりそうだ。
くっそー! 早く乗りたいぜー!
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