solo run
in 鹿島
2010.09.26 死神、あるいは
のんびり起きて、11時くらいだったか。 バイク屋さんに行くGOを見送ってユリシーズをまたぐ。天気はいいが風は涼しいから、革ジャンを着てちょうどいいだろう。昨日はすっ飛ばしたから、今日はのんびり、鹿島の方にでも行ってみよう。つわけで走り出し、いつもの土手沿いへ向かう。 6号線は広いので軽快にすり抜け、水郷ラインに入ってからはクルマと一緒にのんびり。 低回転でドコドコうなるVツインに身を預けていると、まるでクルーザなんじゃないかと錯覚を起こしそうだ。トップ2〜3000回転、80〜100スピード(=1/2時速)くらいで流れに乗って走り、栄橋を渡って利根川の茨城側、いつもの場所へでる。
土手沿いの道は、空いていて気持ちいい。 120スピードくらいで流しつつ、時々パワーバンドに入れ、ドカンと加速してみたり。 もっとも天気も風景も最高なので、そんなのは長く続かないんだけど。
すいすい進んで、いつものイレブン。
休憩してても落ち着かないのは、ユリシーズに乗ってる時間が楽しいから。タバコ一本も吸ったら、すぐに出掛けたくなる。51号線を鹿島灘へ向かって走り出し、潮来をぬけて北上。GOやよしなし、irohaと走ったゆるゆるツーリング。あの時に寄った海岸を越えたあたりで。 それは起こった。
あの海岸を過ぎたあたりで、前方にデカい保冷車が見えてきた。 一車線をみっちりふさぐほどドでかいサイズのハコを見て、「この後ろはちとうっとうしいな。抜けよう」と、車体を左側に寄せた瞬間、いきなりその巨大な図体が、進路を左に寄せてくる。俺は思いっきり前をふさがれる形になった。だが、ユリシーズは動きがいい。 アブねーと思いつつ、ひらりと右にかわして、そのまま抜こうとした。
瞬間。
目の前に、右折待ちで停まってる乗用車。 トランクに貼られた『スリーポインテッドスター』を見ながら、やけに冷静に「あぁ、間に合わねーや」とあきらめたので、そこで試合終了になる。俺は結構なイキオイでカマ掘ったベンツを飛び越えて、道路にゴロゴロと転がった。無意識に頭をかばって受身を取ったら、そのままもう一回転。 一瞬、息が詰まるが、意識は連続している。 右脚に痛みが走るが、大丈夫。 この痛みなら折れてない。
身体を起こして立ち上がり、右脚が無事なことを確認。 それから、道路に転がったユリシーズを引き起こしてると、トラックの運転手さんが手伝ってくれた。事故相手の人も、最初こそ、「俺は止まってたぞ。俺は悪くないぞ」なんつってたが、俺がよろよろと単車を動かす姿を見て、「大丈夫かい?」と声をかけてくれる。
ユリシーズを道路わきへどけてから、荷物やメットを持って路肩に座り込む。 「大丈夫? 救急車、よぶかい?」 「ちょっと休めば大丈夫です。突っ込んじゃってすみません。そちらは、お怪我ないですか?」 とりあえず、相手方に怪我がなくて、ほっとひと安心。
そのまま、事故相手のヒトと一緒に、警察の到着を待ちながら、お互いの情報交換をする。夏のツーリングでムラタんちに行くとき、ジョークで持って行った名刺の残りが、初めて役に立った。それから単車のそばへ行って、壊れっぷりを確認。
フロント回りのカウルや、ライト類、ステーはガッチリ逝ってる。
フロントフォークは目視で曲がりは感じないけど、アンダーカウルにタイアの当たった跡があるから、自走するのはやめた方がいいだろう。エンジンはバッチリ生きてる。例のガソリン入りフレームは凹んでるが、フレームガードで隠せる場所なので大丈夫そう。ギアも入るしオイル漏れもない。 ここまで確認して、ようやく溜めていた息を吐く。 とたんに、ぶつけた場所がアチコチ痛み出した。 現金なもんだ。
警察がきて事情聴取を済ませ、事故相手にもう一度わびる。 警察と事故相手が帰ってゆくのを見送って、また路肩に腰を下ろしてタバコに火をつける。 吐き出した煙が、真っ青な空に吸い込まれてゆく。 それをぼけーっと眺めながら待ってると、やがてバイク搬送のトラックがきた。つーか普通に四輪車を積むやつだ。藤原文太がハチロク引き上げに乗ってきたやつ。レッドバロンの手が空かなくて、保険屋が最寄りの契約してるクルマ屋さんを寄越してくれたのだ。
トラックの中からは、藤原文太とは似ても似つかない、優しげで気のイイおじさんが出てきて、「かみさんですか? お待たせしました」「どうも、お手数おかけします」てな感じで積み込み開始。時間が経つごとに痛みが強くなる身体を抱えながら、しゃがみこんで作業を眺めてると、突然。 「こんにちはっ!」 びっくりして声の方を見ると、自転車に乗った男の子が、ニコニコしながら俺を見ている。
一瞬、戸惑ってから、「ああ、そうか」と納得した。そう言や俺がガキのころは、知らない人にも挨拶してたっけ。なんだかやけに嬉しくなって、俺も満面の笑みを浮かべて、「こんにちはっ!」と返した。身体の痛みが、少し和らいだ気がした。
積み込み終わったら、 「帰りはどうするんですか?」 「タクシーでも拾って、最寄り駅から電車で帰ります」 「じゃあ、鹿島神宮駅まで送りますよ」 「ありがとうございます! 助かります!」 つわけで、クルマ屋さんに駅まで送ってもらって、鹿島神宮駅から電車に乗った。
とりあえず、スイカが使えないのは、いかがなものか東日本旅客鉄道。
今回は、「お気楽に走ってこよう」と出かけて、思いがけなくガッチリやってしまった。 事故に関しては100%俺が悪い。トラックは右折車を避けようとしただけなのに、勝手に「幅寄せされた」と思った俺が、『停まるのは癪だ』と、いいイキオイで右から抜こうとしたのが原因だ。眼前をふさぐトラックがいるなら、その前にクルマが居る事くらいは予測できて当然。 フルブレーキングして停まってれば、何事もなかったのにね。
それにしても、さすがに厄年。 いや、もちろん俺が悪いんだけど、それにしてもアレなタイミングだった。今年はあと三ヶ月ほどあるから、もう一度気を引き締めて、何とか生き抜いていこうと思う。つーか、普通はこういう時って、「死神に呼ばれてる」なんて言うんだろうけど、俺は相変わらず死んでない。 その代わりに、修理代がかさむってことは。 俺を呼んでるのは、死神じゃなくて貧乏神なのかもしれない。
みんなはホント、事故らないでくれよな?
つわけで、ユリシーズのカスタムはこれを機に、一気に進むのだった。
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