solo run

ゴールド・エクスペリエンス

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2011.05.02 三日目(後編)

―空に抱かれながら―

 

インターを降りてしばらく走り、『旧ともっち邸』の近く。

「あ、もしもし、かみです。今、国道から入ってすぐのところに居るんですが」

ともっちさんに電話を入れて、『新ともっち邸』の場所を詳細に教えてもらい、しかも家の前で待っててもらいながら、それでも天才かみさんはビシっと一回迷ったが、なんとかかんとか無事、ともっち邸に到着する。

「おひさしぶりですー!」

「いらっしゃい!」

ともっちさんは、いつものあの笑顔で迎えてくれた。

嬉しくなると同時に、なんかほっとした気持ちになる。これぞまさに、ともっちさんマジックだ。優しい笑顔に癒されながらも、しかし、そこは傍若無人が売りのかみさん41歳。着いた早々、ガレージでシュラフを広げさせてもらったりと、出足からワガママを言う。

それから、ともっちさんの案内で、ついに新しいともっち邸へ。

 

一階の事務所で、ともっちさんの愛妻、なおっちゃんに挨拶。

「なおっちゃん、ひさしぶりいー!」

「あー、かみさん。いらっしゃーい!」

気持ちよく迎えてもらったら、案内されるまま、階段を二階へ上がってゆく。

「かみさんちの半分くらいは、マンガがそろいましたよ」

ともっちさんがガキのように、ニコニコしながら目を輝かせる。

ココの書架が一杯になるのも、遠い日の話ではないだろう。

エアマット。これにはろろちゃんが寝た。

 

宿泊場所に荷物を置いて落ちついたところで、ろろちゃんから連絡が入った。

近くまで来てるらしいとのコトで、「俺はもう着いてるよー」と返事をする。それからしばらくかかって、いったん前を通り過ぎたあと、ようやくろろちゃんも到着。つーかまだ、明るい昼下がりと夕方の間っこくれぇ、早すぎると言ってもいい時刻だったんだけど。

ろろちゃんも宿泊場所に荷物を解いて、さてそれじゃあ呑みますか。

なんつってると、ともっち邸の『癒し部長』こと、猫のプシュさんが登場。相変わらず俺とは一線を画す方向のようだが、新顔のろろちゃんにはどうだろう? つーかコレでろろちゃんに懐くようなら、俺は法廷闘争も辞さないつもりだ。

俺がダメでろろちゃんがOKとか、差別としか考えられないからね。

 

つわけで、早速プシュさんを手なずけにかかる、ろろちゃん。

もちろん、ろろちゃんもウルトラ警戒されてた。

どうやら法廷で争うことはなくなった。プシュさんとはいい関係が築けそうだ。

つーか、この後ともっちさんが教えてくれたところによると、どうやらプシュさんは、タバコを吸う人間がダメのようだ。確かに俺もそこそこ吸う方だし、ろろちゃんに至っては重度のニコチン依存症、ヘヴィスモーカーだからね。

 

ひと笑いしたところで階下に降り、そのまま窓の外へ。

ウッドデッキがあり、心地よい風が吹き抜けてゆく。

「こらぁ、とりあえずココで呑まないとならんだろう。タバコも吸えるし」

ともっちさんトコは禁煙なので、タバコを吸いながら呑める場所があるというのはありがたい。

 

つわけで早速、宴会スタート。

あいかわらず、カメラを向けられると怖い顔をする、ろろちゃん。

 

もちろん、かみさんもゴキゲン。

ちょっと顔が赤いのは、酒じゃなくて日焼け。さすがにビール一本目だからね。

「写真を撮る人って、意外と自分の写真が残ってないんだよね」

と笑いながら、ともっちさんが部屋の中から写真を撮ってくれた。まあ、写真と言う客観的な証拠を突きつけられると、自分がもうジャニーズには入れないという事実を痛感させられるから、俺としてはそんなにたくさん自分の写真は要らないんだけど。

つーか『室内から撮られた写真』を見ると、ちょっとしたサファリパークみたいだね。

いちおう、肉食動物だし。

 

心地よい風の中、ウッドデッキでワインを飲みつつ、ろろちゃんとバカ話してると。

サイボーグさん登場。

メタボ会の会員なのに、体脂肪率10パー以下という歌舞伎者。そして、この細い身体でよしなしと同じR1200GSを振り回す剛の者。いやまあ、よしなしも細いっちゃ細いけど。初見とか話してみたらフツー人っぽいけど、やっぱり変態だってことが、あとで証明される。

そのうち、メタボ会の面々が、満面の笑みで到着。

写真奥が、俺と同い年のオサムくんで、手前がともっちさん。そしてダンボールを抱えていい笑顔を見せてるのが、メタボ会の会長タケシさんだ。むっちゃくちゃ面白い人で、オサム君とは実の兄弟。つーかこの写真で見ると、三兄弟だね。

みんなそろったところで、メタボ会のチームカラー(看板)を見せてもらう。

プロのデザインだけに、めちゃめちゃカッコイイ。

そしてこの男が着ると。

違和感ゼロ。むしろ会員じゃないのが信じられない。

 

それから、なおっちゃんの作ってくれる晩飯をツマミに、メタボ会の宴が始まった。

パスタ入りのグラタン? だったかな。

 

カリカリベーコンのサラダ。

なおっちゃんは、ダメ人間どもに「何とか野菜を食わせよう」と必死だ。

同じ苦労をナオミさんもしてる、かみ家と似た光景。

 

そして、喰った瞬間、ろろちゃんが絶叫したと言う逸品。

アボガド丼。むしろ、アボガ丼。

サイボーグさんのレシピだって言ってたかな? 泥酔してたからよく覚えてないけど。覚えてるのは、コレが悲鳴をあげるのも仕方ないと思えるほど、抜群に美味かったこと。俺は比較的、喰わないで呑むことが多いんだけど、メタボ会の料理は全部美味いので、ついつい手が出る。

そして着々と、メタボ会への道を進むのだ。

どう考えても、陰謀としか思えない。

やり口が悪の組織だ。

 

「だいたい、なんでサイボーグさんがメタボ会なんですか? メタボのメの字もないのに」

「ははは、なんでだろうねー」

会長タケシさんと、実弟のオサムくんには会っていたが、サイボーグさんとは初めてなので、呑んだくれながら色々と話をした。そして当然、その合間にはタケシさん&ともっちさんのツッコミが入り、オサム君がそれを聞いて笑ってる。サイボーグさんも苦笑してる。

まるで自分ちに居るような、リラックスした時間だ。

次々出てくる美味しいもの、気持ちのいい人たちと呑む美味い酒。爆笑の会話に、ときたま、真面目な話。やはり酒ってのは楽しいものだ。いや、楽しく飲まなきゃいけないものだと思う。ストレスの間違った発散や、酩酊のみを目的とするのは、酒に失礼だよね。

そしてもちろん、メタボ会のメンバーに、そんな心配はまったく必要ない。

 

ともっちさんと言う、ダメ人間と人格者が両立する稀有なひと。

そして、その人と若いころからツルんでるタケシさん、オサム君、サイボーグさん。彼らが作るメタボ会って空間は、ただの馴れ合いや適当なだけでは断じてない。相手に気づかれないように気遣いしながら、しかし気を使わないで底抜けに楽しむ。そんな心地よい感覚に満ちている。

何度か一緒に呑ませてもらいながら、俺はいつも

「なぜ、そんな矛盾した感覚が成立するんだろう?

と、不思議に思っていた。そしてこの夜、その理由がわかったように思う。

コレはアレだ。

戦国武将や江戸時代の武士が、相手の立場を慮(おもんぱか)ったり、言いたくても言えないことを無言のうちに理解して、ワガママや暴言を吐く形をとりながら諌めたり、代弁したりするのと、ちょっと似ている。無言の気遣いと無言の理解。そんな漢(おとこ)らしい関係なんだ。

俺は気分よく杯(さかずき)を傾けながら、メタボ会の醸(かも)す空間を楽しんだ。

 

腹いっぱいになって、いいだけ酔っ払ってきた、かみ&ろろ。

プシュさんを構いだす。もとい、プシュさんにカラみだす。

つっても、ここまで来るのには、ずいぶん時間がかかっているのだ。初めて会った時は2メータ以内に近寄らなかったからね、プシュさん。捕まえられる距離まで近づいてくれるようになっただけ、だいぶん仲良くなったと言えるだろう。

そしてこっちは、初対面でなかなか心を開いてくれないプシュさんと、

なんとかコミュニケーションを図ろうとする、ろろちゃん。

 

「プシュさん、こっちおいでー! いっしょに埼玉へ帰ろう」

「いかないよ! プシュはママのソバがいいんだもんね?」

なおっちゃんが、プシュさん誘拐を企てるろろちゃんと、激しく対立する。

「プシュさん、埼玉はいいよー! 美味しいものがいっぱいあるよ」

「プシュはカリカリと猫缶しかたべないもん!」

「ふっふっふっふ、果たしてそんなワガママを言ってられるかなぁ? 埼玉のボクの家にきたら、冷たい味噌汁をかけた冷たいごはんしか食べるものがないからねぇ? そして、家の中に閉じ込められて、ボクの帰りを延々と待つんだ」

「やめてー! プシュ逃げて! その人には近づいちゃダメー!

「サイドバッグに入って、埼玉まで行こうよー!」

「プシュ、死んじゃうよー!」

 

いいだけ呑んで喰って笑ったら、明日は本番、琵琶湖宴会だ。

タケシさんとオサム君が帰ってゆき、サイボーグさんは泥酔して沈没。そこで俺とろろちゃん、「ラーメンが食べたい!」と騒ぎ出す。いや、たぶん俺だけが騒ぎ出した。関東から来たクズのワガママに、ともっちさん&なおっちゃんはニッコリ笑って、俺たちをラーメン屋に連れて行ってくれた。

夜の住宅街を散歩しながら大通りへ出て、やってきたのは。

やたら猫グッズにあふれた、ラーメン屋さん。

 

ともっちさんとなおっちゃんは、常連のようだ。

 

ろろちゃんの頼んだ、つけ麺。

ろろちゃんは猫舌なので、みんなと食べる時は、つけ麺とか冷たいものをオーダーする。自分ひとり時間がかかると、一緒に行った人を待たせることになるからだ。もちろん、待ったって怒るようなヤツは居ないが、これは彼の美学なのである。

俺がどうしても、ろろちゃんという男に惹かれてしまう、これがそのゆえんだ。

 

そして柏のバカは、ノーマルのしょうゆラーメンを喰って、美味い美味いと騒いだあと。

追加でトンコツラーメンを注文。久しぶりにしっかりと九州トンコツで、かみさん大満足。

そして着々とメタボ。

 

酔って満腹して、帰ってきたらもう、あとは寝るだけ。

ろろちゃんもゴキゲンのまま、やがて気持よさそうに夢の中。

 

しかし、俺にはやらねばならないことが残っている。

書架に並んだ、『ガンツ』を読まなくてはならないのだ。

そそくさと、マンガを引っ張り出して読んでいると、ともっちさん(あれ、なおっちゃんだったかな?)が、電気スタンドを持って来てくれたので、「おぉ、ありがとうございます!」とお礼を言って、そのままオールナイトでガンツ大会。

結局、朝の四時半くれぇまでかかって、全巻制覇したった。

「おめ、もう寝ろよ。明日もまた、宴会なんだろう?」

すんませんプシュさん。そらぁムリっす。ガンツ面白れぇんだもん。

 

てなわけで、夜が明けたらいよいよ、琵琶湖大宴会だ。

 

四日目に続く

 

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