solo run

ゴールド・エクスペリエンス

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2011.05.07 八日目

―あした―

 

大きな荷物は全て、宅急便で自宅へ送り。

代わりにナオミという大荷物を積んで、三重から千葉へ帰る。

おーが家を辞して、コンビニで最後の手荷物を送っていると、飼い主ちゃんが現れた。さっき挨拶してきたばっかりなんだが、彼女も何か用事があったんだろう。そして、ノリのいい彼女は、俺たちの姿を見るなり当然のように。

「おぉ、かみ、ナオミちゃん! 奇遇やなぁ、久しぶり!」

「おー久しぶり! そうだ。今日これから、飼い主ちゃんトコに泊めさせて」

「ええよー!」

と掛け合いして遊ぶ。

そのあと笑って手を振ったら、それじゃあ、タンデムツーリングで帰りますか。

 

最寄のインターから高速に乗り、のんびりと東を目指す。

天気はあまり良くない、つーか、行き先はハッキリと雨予報

心躍るねぇ(死んだ魚の目で)。

 

ユリでタンデムは初めてなので、どのくらいの距離を乗ってられるのかカイモクわからない。

なので最初は乗ってすぐ、50キロくらい先のパーキングへ。

 

刈谷SAにて、飯を食いながら今後の方針を決める。

きしめんと、かしわ飯だったかな?

 

「ここまでで、50キロくらいだ。この調子で休憩を入れていくか?」

「そう……だねぇ……よくわかんないけど」

「50キロ休憩だと、あと六、七回だ。ちなみに100キロなら、あと三、四回」

「100キロでお願いします」

つわけで、だいたい100キロごとに休憩を入れようという話になる。

 

刈谷で見た、なんかアレなサイダー。

 

同じくアレなポテチ。とりあえずこの業界は、メタボ会を見習って欲しいと思う。

 

刈谷を出発してほどなく、風がかなり冷たくなってきた。

出る前、ナオミにはダウンを着せてたのだが、俺はTシャツに軍ジャケだったので少々寒い。底冷えするほどではないが、アクセルを握る右手の動きが、シブくなってくる。今回は後半ちっとも走ってないので、これは完全に疲労じゃなくて冷えだ。

「次のパーキングでダウンを着よう」

決意しながら淡々と走り、浜名湖SAに入って休憩する。

俺のダウンのうちデカい方を、ライディングジャケットの上から羽織っていたナオミは、

「風がばたついて疲れるー! あと寒いから後ろにもぐってたら、眠くなったー!」

と、「のどちんこ引っこ抜いてやろうか」と思うほど呑気なセリフを吐いてたので、もうひとつのインナーダウンをジャケットの中に着せて、俺は軍ジャケの下にナオミが着てたダウンを着込む。これで寒さ対策は充分だ。ハンドガードのおかげで手はちっとも寒くない。

疲労もずいぶん違うし、ハンドガードって、オフっぽい見た目のためだけじゃなかったんだねぇ。

 

サービスエリアから見た浜名湖。

こうして見るといい天気っぽいけど、寒いし雨だし、割とシンドかった。

 

ナオミを乗せてるから、バカ開けもできず、淡々と距離を稼ぐ走りになる。

これが俺には意外と苦痛だった。普段ひとりなら、のんびり走るといっても、その時その時で好きな速度を出すんだけど、タンデムだと完全に一定の速度で、しかもあんましフラフラ走れないから、それなりに神経を使う。すごくツラいワケじゃないけど、地味に疲れる。

ナオミが100だと若干キツそうなのもあって、結局70〜80キロ休憩に作戦変更。

 

後ろのナオミにカメラを持たせ、「綺麗な景色があったらテキトーに撮れ」つったら。

なぜかトラックの写真。「なんでこんなもんを?」と思ったが、拡大して理由がわかった。

 

さぞかし引き締まった、流れるように芸術的なもういいですかそうですか。

 

厚く垂れ込める雲の向こうに青空が少し。これはいいじゃない。

 

これも悪くないけど、俺のアタマがジャマ。ちょっと手でよけながら撮れつー話だ。

ホントに手でアタマよけられたら、きっと怒るけどね俺。

 

とまあ、走る距離に比して時間がかかるのと、退屈なのがちと辛いくらいで。

基本的には何の問題もなく、淡々と距離を稼いでゆく。

コロッケ食ってるから、これはもう、お昼近いのかな。

 

懸念していた東名の渋滞も、時間が時間だけに大騒ぎするほどのこともなく。

ナオミは、「最後は環八で行くんだ」と思って気合を入れてたらしく(昔、ハヤブサのケツで体験した環八のすり抜けがトラウマになってる)、「C2で高速に乗ったまま帰れるよ」と聞いた時の、腰砕け気味に安堵した顔は、なかなか見ものだった。

そのC2から6号三郷線への入りっぱな。

いきなり渋滞してたので、「なんだろう?」と先まですり抜けて見ると。

パトカーが車列を停めている。

すり抜けてきた俺を見て、女の子のオマワリが近づいてくると、「皇太子殿下が被災地を訪問なさるため二、三分ほど通行止めになります」との説明。ま、一般車に併走されて、万が一なんかあったりしても困るだろうし、二、三分なら仕方ねーか。

なんだかんだ俺も日本国民なのだな、と再確認しながら解除を待つ。

やがて通行止めが解除され、ケーサツの後ろに付いて走る。

「なははっ、名阪でフラのこと笑ってたら、俺もかよ」

苦笑しながらついてゆき、テキトーなところで前に出て、そのまますり抜け始める。

 

と。

またもパトカーが渋滞を作っていた。

今度はセダンタイプ。

 

ナオミ乗っけて抜くわけにも行かないので、ひたすら大人しくついてゆき。

 

「バイバーイ!」

つわけで、雨の中ラストスパート。

一気に柏まで走りきり、インターを降りればもちろん、16号はいつものように渋滞。

「この渋滞を家まで、ずっとすり抜けされるのはイヤだろう?」

出口の渋滞でいったん止まり、ヘルメットのシールドを上げ、後ろに向かってそう叫ぶと、ぶんぶんと音が出そうなほど、ものすごい勢いで首をタテに振るナオミさん。なので最初の信号を左に入り、県道7号をするすると走って、国道6号からようやく自宅へ到着。

三重から六時間は、俺の最遅記録だ。

 

駐車場にて、とりあえずお疲れさん。

笑いが出るくらいだから、タンデマーはそんなに辛くなかったようで何より。

 

と思ったら、「いやー雨が辛かった」とのたまう。

「おめ、俺の後ろでほとんど雨喰らわなかったろ」

「喰らったよー! ユリシーズに喰らわされた!」

ホントだ。

次回までに、なにか対策を練らなくちゃね(ハナクソほじりながら)。

 

つわけで春のツーリング、『ゴールド・エクスペリエンス』はコレにて閉幕。

ソロツーリングを満喫し、ダチの家を訪問し、琵琶湖では大宴会。そして龍神では、むちゃくちゃ気持ちのいい追いかけっこをして、最後の数日は久しぶりに古いダチと過ごした。いいだけ楽しめた、本当に黄金の一週間だった。

今でも思い返すとにやけてくる、ステキな思い出だ。

 

『今までの集大成』と言うのは、俺の目線に過ぎるかも知れない。

別に今回の誰ひとり、俺が集めたわけじゃないんだから。

だけど、傲慢(ごうまん)を承知で言わせてもらえれば、俺にとってはまさに集大成とも言うべき、『日本の真ん中の大宴会』だったのだ。「日本中のバカと、笑って呑んだくれたい」という、俺の夢のひとつが叶った瞬間だったのだ。俺は本当に、泣けてくるほど嬉しかったのだ。

そして、だからこそ思うことがある。

 

もちろんまだまだ、もっとたくさんで呑めたら楽しいだろう。

でも、それによって失われるものがあるなら、俺はやらなくていいと思ってる。

今回だって、ほとんど偶然に集まったと言っていい。これを『企画』したり、「さあ集まるぞ!」とやってしまったら、その瞬間、今回の琵琶湖とは違ったものになってしまうだろう。そうじゃなくて、「また集まって呑みたいなぁ」と言う気持ちだけを持ち続け、虎視眈々と『偶然』を待とう。

その挙句、ひとりで飲んだって、それはそれでいい。

ふたり三人しか集まらないなら、そのふたり三人で呑んだくれて騒げばいい。

俺には強引な『企画』より、そっちの方が面白いと感じるのだ。

 

そしてこの一週間。

大宴会も楽しかったけど、ひとりで走るのも、龍神スカイラインで追いかけっこするのも、おーがん家でグダグダするのも、どれもみんな楽しかった。関わった人数で言ったらともかく、俺ひとりの視点から言えば、すべて等価な最高の時間だった。

だから俺は、これからも走り続ける。

走れなくなるまで、走り続ける。

そして、こんな風にステキな時間を、一秒でも多く持ちたいと思ってる。

 

みんな、ありがとう!

本当に、本当に楽しかった!

また遊ぼうぜ!

 

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