solo run
北北東に進路をとれ
2011.07.18 二日目 男鹿〜白神 ―北へ走れ、山の道を(中篇)―
最高の気分で、入道崎に到着。 駐車場にハーレイやBMなんかが停まってるのを横目に、歩かないかみさんが、珍しく歩く。 言っても、この景色だからね。さすがの俺も歩くよ。 ちゃんと見たいもの。
これは『北緯40度のモニュメント』つー、まぁ要するに日時計だ。 「こんなんで、本当に時間がわかるのかなぁ?」 と疑わしいまなざしで眺めつつ、携帯を取り出して確認してみると。 時刻は午前8時6分26秒。かなり正確だったので、感心してしまった。
ここで寝転んだら、気持ちいいだろうなぁと思うだろう? でも、そんなことしたらすぐに干上がるぞ。 写真に気温は写らないからね。
入道崎を堪能して駐車場に戻ってくると、男の人が声をかけてきた。 「こんちは、ボクもユリシーズに乗ってるんですよ。今日はGSですけど」 「あ、ども、こんちわ。GSもいいですよね」 「ところで、このハンドルってノーマルじゃないですよね。実はボクもハンドルを……」 同じ単車に乗る同士、情報交換や感想を話して歓談し、それじゃと手を上げて走り出す。別になんてことない会話なんだが、「そう言えば今回のツーリングに出てから、脳内小人やユリシーズ以外の誰かとしゃべるのは初めてだ」と気づいて、思わずニヤっとしてしまった。 「ソロの時はしゃべらないから、なんとなく人恋しくなるのかなぁ」 走りながら、独り言ちる。
コレはどっちかって言うと、直売所の方に置いて欲しいなぁと、個人的には思う。
入道崎を出たら、男鹿半島の北岸を走ろう。 つーかホント言うと。「せっかくだから南岸を回ろう」と思って走り出したのに、ふと気づいたら、いつの間にか北岸を走ってたのは、ココだけの秘密だ。走りながら、「あれ? どうして左手に海を見て走ってるんだ、俺?」とか、素で口に出したからね。 ま、入道崎を出るとき、ボーっと考え事しながら走ってたからに決まってンだけど。
来ちゃったものは仕方ないので、そのまま北岸を走って、能代(のしろ)あたりを目指す。 これは男鹿半島北岸、五里合(いりあい)の海岸からみた海。 ちなみに五里合の場所はココ↓ 北岸つーか、もう、半島も終わりのあたりだね。 あとは日本海側を走って、能代へでも行こうか。 こっちはたぶん、もう7号に入ってる。防風林の中じゃねぇだろうか。
コレはボーっとしたまんま、7号線をたんたんと進んでるところだろう。 そんでこの後、道の駅に入って気づくのだ。 「あれ、ここ『ふたつい』じゃん。前も海沿いを走るつもりで、気づいたら内陸だったじゃん」 前回とまったく同じルートミス。五年たっても、うっかり具合は変わらない。 前回は、引き返して海沿いを走り、竜飛岬を目指した。ならば今回は、このまま内陸を走ろう。どこを走ろうと、要は気持ちよく走れればいいのだ。つわけで今後は、『道を間違った』のではなく、『俺の潜在意識が、こちらの道を選んだ』と解釈することにした。 つまり、間違ってない=Uターンしない。 その方がリカバリとか大変だけど、そのぶん面白いからね。 いやまあ、さすがに行き止まりならUターンするけど。
方針が決まったので、7号線を東へ走る。 列車が左手に見えてるから、これは『しもかわぞい』のあたりかな。 弘前(ひろさき)の手前、矢立あたりに差し掛かったとき、「暑いなぁ、汗びっしょりだ。そう言えば、昨日は風呂に入ってないし、温泉でも入って汗を流すか」なんて思ってると、ちょうど道の駅『やたて峠』が見えてきた。日帰り温泉マークも書いてある。 なので、えらいナナメってる駐車場に、ユリシーズをアタマから突っ込んだ。 奥から手前にむかってキツい下り坂なので、アタマから突っ込まないと単車が自立しない。 ここにケツから駐車できるのは、右側にスタンドがある単車か、『スタンド取っ払って、駐車時は常に倒して転がしておく』キチガイ仕様の単車だけだろう。アメリカ人でたまに居るヤツ。俺もたいがいバカだが、あれだけはさすがにマネできない。
入浴セットを持って、建物の中に入ってみると。 中は古い感じの施設だった。 それも、味が出るほどは古くないという、中途半端なくたびれ具合の。んで、同じくハンパに古い更衣室で服を脱ぎ、早速、温泉に入ってみたのだが……いやぁシビれた。含鉄泉(赤湯)てのは初めて入ったのだが、コレがもうすんげぇハンパねぇの。 ナニがって『匂い』が。 鉄分が酸化した赤い湯船に漂うのは、あたりまえだが酸化鉄の匂い。 つまり血の匂いなのである。 最初は、「うわぁ、鉄の匂いがすげぇな」と思いながら湯に浸かったのだが、そのうち、「これって要するに血の匂いと同じだよな?」と思っちゃったら、もうダメ。内湯に充満する血の匂いがむせ返るようで、浸かってられない。俺はドラキュラじゃねぇんだ。 露天風呂だと少しはマシなので、そっちでしばらく浸かってから、シャワーを浴びて出てきた。 身体はサッパリ気持ちいいのに、精神的には何やらぐったり。
血の匂いにアテられてグダグダ走ってると、突然、真っ白な鳥居が見えた。 立派な鳥居だったので、停まって写真を撮る。 「境内に比べて、鳥居だけずいぶん新しいな。鳥居だけ建て直したのか?」 と首をひねりながら、鳥居をくぐって進んでゆく。 すると、途中で疑問が氷解した。 なるほど、元の鳥居は昔の地震かなにかで崩れ落ちたんだな。 今回の震災で、柏神社の鳥居も崩れてたし、あらためて地震の怖さを感じる。
神社を辞して7号線を走ってると、すぐに県境の看板。 「そーか……もう、青森県に入ったのか」 とニンマリしながら進んでゆくと、やがて大好きな広域農道の看板が見えてくる。『アップルロード』の文字に、「青森だもんなぁ。まあ、俺はリンゴ喰えねぇから、ただのアップルよりぁ、アップルロードの方がいいな」と小さく笑って、広域農道へ。 俺は果物アレルギーなので、ほとんどの果物が喰えない。 喰うと赤く腫れ上がって、七転八倒するのだ。 ま、単車に乗っても七転八倒するけどな。 ほっとけ。
アップルロードから看板を頼りに、今度は弘前(ひろさき)城へ。 弘前城のお堀。 つーか地図を確認してみたけど、俺、この日はめちゃくちゃな走り方してる。地図がないところに持ってきて、観光地らしくアチコチに、かなり手前から案内看板が出てるので、それに振り回されてしまったようだ。10〜20キロくらいのスパンで、行ったり来たり迷走してる。 ま、その錯乱した軌跡を、今こうして、机上で追うのもまた楽しいんだけど。
コレも弘前城の……これは何門だろうね。 とにかく弘前城のあたりは、さすが観光地だけあって混んでた。天気は曇りだけど、気温が高かったので、この日もずいぶんユリシーズとケンカした。ヤツの吐き出すエンジンの熱が、渋滞や信号待ちのたんびに俺の太ももへ吹きつけるのだ。 あやうく、『かみモモ肉の燻製』が出来上がるところだったよ。
とにかくココからの写真は、自分でもホンキで見当がつかないので、全部、『たぶん』で書く。 岩木山へ向かって、県道をすっ飛ばしてるところ……たぶん。
弘前あたりには、たくさんの神社があった。
岩木山周辺の県道を、ツイストしてるところ……たぶん。
岩木山を一周して、弘前方面に戻るところ……かなぁ?
弘前へ戻る途中の、県道わきを流れる川……だと思うんだよなぁ。
思いつくまま、目につくままに、ワインディングを見つけちゃ走ってたら。 道の駅つーかドライヴインつーか、そんな感じの施設『ビーチにしめや』を見つける。 この辺でようやく、元からゼロにひとしい俺の判断力が、さらにテンパってることに気づいた。ナンボなんでも地図も見ず勘だけでワインディングってのは、さすがに無駄が多いだろう。や、それでも楽しいから、いいっちゃいいんだけど、どっちにしても休憩は必要だ。 そういや、もう24時間以上、酒とお茶しか胃に入れてないじゃん。
つわけで、まずは固形物を胃袋に納めよう。 なめこおろし山菜うどん。 最初のヒトクチを喰って、「しょっぱ!」と思ったのは、俺の口がもう、西の味に調教されているからだろう。俺は北海道と栃木のハーフで、東京と埼玉で育ち、現在は千葉に住んでる生粋の関東人だけど、食い物に関しては西日本の方が美味いと思う。 もちろん東日本にも美味いものはたくさんあるけど、味付けって意味では西の方が合う。 いや、合うように慣らされたのかな?(`▽´)
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