solo run

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2011.08.14 二日目 榛名湖〜ビーナスライン

―女神の微笑(前編)―

 

翌朝、みんなの笑い声に目を覚ます。

撤収作業しながらも、バカ話が絶えない。

 

eisukeさんのテントをみんなで片付けてるのだが、順番や仕舞い方があるようで、手伝うのもなかなか難しい。eisukeさんは、「いいよ、いいよ。どうせ俺、温泉施設が開くまでは暇だから、のんびりやってるよ」と最後まで俺たちを甘やかす。

俺も撤収作業を終わらせ、トイレに行ったり出発の準備をした。

飼い主ちゃんと、おーがの愛息UKT、愛娘NNK。

まあ、半分俺の嫁と子供みたいなもんだ。

養育費は出してねぇけど。

 

出発する準備は整ったのだが、なかなか出るに出られない。

湖畔を抜ける風が涼しいわ、山賊どもとくっちゃべってるのが楽しいわで、動きたくないのだ。

みんな似たような想いだったようで、いつにも増して腰の重い面々。

今回はホント、eisukeさんに甘え通しだった。山賊宴会と言うよりは、まさに『eisuke夜会』だったと言っていいだろう。そのeisukeさんも含めて、みんな充分に楽しんだ、笑いの絶えない宴会だった。肩肘張らないこんな宴会は、これからもずっと続けてゆきたいなと思う。

どうせまた、近いうちに集まってヤるんだけど。

つーかこれ書いてる今、まさに週末またやるんだけど。

 

昼近くなってようやく、俺はユリシーズをまたいだ。

「そんじゃ、また!」

いつものようにひょいと手を上げて、心地よい風が吹く湖畔の道路を走りだす。そのまま湖畔を半周したら、まずは裏榛名へ。集まってるライダーを横目に、速度域の高いくだりのワインディングを一気に駆け下りる。攻め甲斐がある分、事故の多い場所だ。

降りたところで左へ曲がって、榛名西麓広域農道に入った。

天気は快晴、気温は高し。

我がゆく手を阻(はば)むものあらず。

たーのしいねぇ!

 

数年前にNEKOさんやeisukeさんと走った、ちょっと狭いが楽しい広域農道を走りぬけ、山の中の県道33号を南へ下る。シンと静かな朝の山中を走っていると、あたりに鳥のさえずりや蝉(セミ)の声が満ちて、まさに染み入るようだ。

芭蕉、やるじゃん。

 

途中で若干まよいつつ、妙義山の麓(ふもと)にある道の駅、『みょうぎ』に到着。

妙義のお山は、今日も勇壮な姿でそこに立ってる。

これから先、俺が死んでからも数百年、いや、千年以上そのままの姿だろう。

「そう考えると、山ってすげぇな」

スケールのでかさに感心したら、そのお山の片隅で、ちょっと遊ばせてもらおう。

 

道の駅側からの入りっぱなは、まだ少し濡れていた。

木陰だと涼しくて気持ちいいが、陽の当たるところは相変わらず暑い。「だったら路面もキッチリ乾いててくれりゃいいのに」とせん無いことをボヤきつつ、ユリシーズの車体を右へ左へと傾ける。そのうち路面の乾いてる部分が多くなってきた。自然とアベレージスピードも上がる。

調子に乗って攻めててたら、『水たまり寸前』くらいのウエット部分で、ちょっとケツが流れた。

「うほっ! 気ぃつけよ。つーかアレだ。そろそろ、タイア交換ってことだな」

独り言を言いながら(俺は非常に独り言が多い)、お山を駆け上がる。

神社のある妙義山の駐車場に到着。

 

相変わらず日本離れした、ちょっと幻想的な景色だ。

でも、妙義の御山は、早朝の霧に包まれてる方が似合う気がしないでもない。

 

しばらく景色を堪能したら、こんだ大好きな下りだ。

荷物を積んでるからだろうか、いつもよりリアのトラクションが抜けづらいようで、やけに曲がりやすく感じた。もっとも、走ってるうちにそんな事はどーでもよくなって、タイアのショルダーを路面に押し付ける感触を、ただただ楽しむ。ひらひらと山を駆け下りて、下仁田あたりへ抜けた。

「下に降りてくると暑いなぁ。やっぱし山の中を走ろう」

そう決めて国道254に乗ると、長野の山を目指し走りだす。

西へ走って142号に乗ったあたりで、暑いわハラ減ったわ、だいぶん参ってきたので。

道の駅『ほっとぱ〜く浅科』で一服。

お茶を飲みながら道の駅を見回ってると、地元の主婦だろうか、浅漬けやおまんじゅうを売っているところがあった。そこに三個入りのゆで卵があったので、ゆで卵大好きかみさん、130円のそれを買いこみモゴモゴと喰いながら、地図を開いて行く先を決める。

「そういやユウヒが明日、ビーナスラインに行くつってたな。ま、『明日まであそこで待つ』のはナシだとしても、とりあえず涼しそうだ。おし、ビーナスラインを走ってから、その先はまたあとで考えよう」

行き先が決まったので、ゆで卵を飲み込んで出発。

相変わらずバッカみてぇに晴れ上がった空は、とても美しいのだが、それにしても暑い。

 

これは142号、望月あたりのトンネルだと思うよ、たぶん。

 

やがて青看板に、『諏訪』『白樺湖』の文字が見えてくる。

こっから、県道178号に入って美ヶ原へゆき、一服してからビーナスラインを走るのだ。

地図でいうとこんな感じ。

そしていつものごとく、いっそ華麗に県道を入り間違える、かみさん41歳。

トンチンカンな道を、なぜか自信満々でしばらく走り、カンバンに出た藤沢だか熊沢だかの表示を見て、ようやくルートミスに気づく始末。つっても、ガラガラでくねくね面白い道だったから、万事OK。こんなのも、ひとり旅だから許される醍醐味だしね。

迷うのが醍醐味ってのも、どうかとは思うけど。

 

気を取り直してリルートし。

178号から464号へ。

 

途中にショートカットっぽい道があったので、そっちへ折れて抜けてみる。

この手の思い付きが、いつも俺が道に迷う原因なのだが、今回はコレが正解だった。

道は荒れて狭いけど、とにかくガラガラで見通しも写真ほど悪くない。

気持ちよく走るうち、見たことのある道へ合流した。

稜線を抜ける気持ちのいいワインディング。コレはビーナスラインの終わりの方になるのかな?

やがて美ヶ原の文字と共に、駐車場の案内が見えてきた。

タバコに火をつけ、ため息と共に吐き出し、美しい景色にしばし見入る。

ここを起点に今度は、ビーナスラインを霧降まで駆け抜けるのだ。

つわけで、ここからはしばらく、関東有数の美しい景色を堪能してもらおうか。

 

スカイブルー、フォレストグリーン、アスファルトグレイ。

 

丘陵に雲の影が差す風景は、その場に立つと、ため息が出るほど美しい。

俺の写真じゃ、万分の一も伝わらないけど。

 

夏の代名詞、入道雲の立体感も、旅心をくすぐる。

 

「この青空の下なら、どこまででも走って行きたいなぁ」

夏のソロツーリングらしくなってきた。

 

後編に続く

 

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