solo run
春ツーリング
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2012.04.29 一日目 柏〜秩父 〜ふたたび出発〜
いきなり財布を忘れるという、土曜なのに日曜の夕方っぽいオチをつけたあと。 しばらくは、「もう今日は出るもんか!」とスネてたのだが、やはり、連休が始まった高揚感には敵(かな)うべくもない。苦笑するナオミに見送られながら荷物を担ぎ上げると、またユリシーズの元へ戻って荷造りをし、こんどこそ意気揚々と出発する。 ガソリンを入れて、トリップ計をゼロにしたら、さあ、旅の始まりだ。 混雑する週末の柏を出たら、16号から今度は高速に乗る。 常磐、外環、関越ときて花園で降り。 国道140号をつらつらっと走って、タンクトップシティ(秩父)へ。 おなじみ、ヘリポート川原に到着。
今夜は雨の心配もないようだから、コット(キャンプベッド)だけ出せば準備完了だ。
途中で買ってきたビールを開けたら、地図を見ながら酒盛りに興じる。
やがて陽がかげり、月が煌々と輝きだした。 「気持ちいいなぁ」と伸びてると、携帯にメールが来た。mioちゃんの妹分のピンキーからで、「ママと友達と三人で飲みに行く予定だから、その途中でちょっと顔を出すよ」とのこと。買っていくものはないか? と聞かれたので、「タバコとウエットティッシュを買ってきてくれ」と返信。
んでまた呑みながら、川原の風に吹かれていると。 タンクトップシティを影で牛耳る男、mioちゃんがやってきた。 この寒空に、もちろんタンクトップだ。
「おー! mioちゃん、呑もうぜ!」 「いや、クルマで来てるんで」 「だから、呑んでからクルマに泊まってけつってんだ」 「やですよ、明日は用事があるのに」
そんな掛け合いをしながらmioちゃん、地べたにどっかり座り込む。そのまま、近況やダチの話など、相変わらずのバカ話に興じてたのだが、mioちゃんは飲み物を持ってきてないので、なにやら手持ち無沙汰のようだ。酒は呑まないといってるが、俺だけ呑んでるのもアレなんで。 ふと思いついて、訊いてみた。
「そーだmioちゃん、コーヒー飲むか?」 「あ、あるならいただきます」 「ドリップだから自分で入れろよ?」 「へぇ、ドリップですか。つーかそれ、明日の朝の分じゃないんですか?」 「おう、明日の朝用には、しじみのみそ汁を買ってあるから大丈夫だ」
つわけで、アサルトリュックから『お茶セット』をとりだす。 ちなみに『お茶セット』とは、マグカップ、風防、やかん、そしていったん火をつけたらコントロール不能な自作のアルコールストーブ、『暴走くん』をひとつにパッキングして、『水さえあればどこでもお茶できる』ようにした、湯沸しセットのことだ。 『暴走くん』の暴走っぷりを眺めて喜んでる、mioちゃん。
燃費は悪いが火力は強力な、『暴走くん』の沸かしたお湯で、コーヒーを入れる。 それから俺は酒を、mioちゃんはコーヒーを飲みながら、数日後に予定されている琵琶湖宴会の話や、ダチそれぞれの予定の話をした。そんな話の流れから、酔っ払った俺は大阪のムラタに電話する。しばらく話して笑ったら、いつものようにmioちゃんと交代。 漏れ聞こえてくるふたりのバカ話に笑いながら、うまい酒を呑む。 電話を切ってからもふたりで話し込んでると、クルマが一台やってきた。お母さんの運転するクルマで、ピンキーとその友達がやってきたのだ。相変わらずムダに元気なピンキーに、使いっ走りしてもらったお礼を言ったら、お母さんや友達の男の子も一緒にしばらく雑談。
「かみちゃん、これから呑みに行くんだけどさ、あとでまた来るから花火やろうよ」 「やらねーよ、俺はもう寝るんだ。つーかおめ、間違っても花火を俺に向けて撃つなよ?」 「撃たないから、花火やろうよー!」 「ぎゃはははっ! なんだその、わけのわからん取引は。やらんつーの!」
ゴネるピンキーをテキトーにいなしながら、お母さんや友人とも、ちょっと話しをした。 やがて去ってゆく三人に手を振ったら、またmioちゃんと二人でしんみり……するはずもなく、ゲラゲラ笑いながらバカ話をする。とりあえず、そのうちふたりでフリークライミングをやろうって話になったけど、その話はすでに数度目なので、実際にどうなるかはわからん。 やがて夜もふけてきたころ。 「それじゃ、俺はそろそろこのへんで」 「おう、おやすみ! また数日後に琵琶湖で会おう!」 mioちゃんも帰ってゆき、あたりに静寂が訪れる。 シュラフ(寝袋)に結露防止のカバーをかけると、幸せな気持ちでコットの上に転がった。 心地よい酔いとダチの笑顔に、ほっこりとした気分になって、俺は眠りにつく。
と思ったら、夜中の12時すぎだったか。 「かみちゃん、かみちゃん! 花火やんないの?」 まさかのピンキー来襲。 本気モードで花火やる気マンマンだが、こっちは今の今まで寝てたのである。 俺はシュラフから顔だけ出した間抜けな状態で、「やんねーよ、もう寝る」と答えた。するとピンキーは、「そっかー寝るかー、わかった! じゃーまたねー!」と、ローラみたいなテンションでけらけら笑いながら、お母さんの運転するクルマで帰ってゆく。 ピンキーに振り回されるお母さんの苦労をしのびつつ、 「まさかホントに来るとはなぁ。アイツ面白れぇなぁ」 と苦笑しながら、俺はあらためて眠りについた。
財布を忘れて出直し、mioちゃんと笑い、夜中の襲来まであった、最初の夜の話。
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